- 管理職を中途採用した割合は49.6%で、2021年から10pt以上増加
- 人事担当者の約7割が管理職の中途採用に「満足している」
- 管理職の転職理由1位は「会社の将来性が不安」、非管理職は「給与が低い」
株式会社マイナビは、2025年1~6月に中途採用を行った人事担当者と、直近1年以内に転職した20代~50代の正社員男女を対象に実施した「マイナビ 管理職※1の中途採用・管理職転職に関する調査2025年」の結果を発表した。
※1) 本調査では「管理職」を課長クラス以上の役職とした
調査にいたる経緯
マイナビが個人向けに実施した転職動向調査2025年版では、全体として転職率は微減した一方で、40代~50代の転職率は増加していた。この結果を受け、「管理職の転職」が増えているかもしれないという仮説が生じたため、今回初めて管理職の転職に焦点を当てた調査を実施している。
トピックス
- 中途採用で管理職を採用した割合は49.6%で、2021年から10pt以上増加。採用した役職別では部長クラス、課長クラスどちらも約10pt増加している【図1】
- 管理職の採用理由は「マネジメント経験が豊富な人材を求めたため」が最多【図2】
- 人事担当者の約7割が管理職の中途採用に「満足している」。満足の理由は「即戦力となった」「求める以上の人材が入社した」など【図3、4】
- 転職活動時に管理職だった人の転職理由トップは「会社の将来性に不安があった」。非管理職では「給与が低かった」が最多【図5、6】
- 転職した人の約半数が、今後も「他に良い会社があれば転職したい」【図7】
調査詳細
企業側の「管理職の中途採用」状況について
管理職を中途採用した割合
- 中途採用で管理職を採用した割合は49.6%で、2021年から10pt以上増加
- 採用した役職別では部長クラス、課長クラスどちらも約10pt増加している
2025年1~6月に中途採用を行った人事担当者のうち、管理職を採用した割合は49.6%だった。管理職を採用した実績を年別で聞いたところ、2021年から管理職の中途採用は増加傾向にあり、2021年(38.9%)比では10.7pt増加している。採用した管理職の役職別で見ると、部長クラスが29.9%(2021年比10.1pt増)、課長クラスが38.9%(2021年比9.5pt増)で、いずれも増加が見られた。【図1】
【図1】管理職の中途採用を行った割合/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
管理職の中途採用を行った理由
- 管理職の採用理由は「マネジメント経験が豊富な人材を求めたため」が最多
管理職の採用理由を複数回答で聞くと、「マネジメント経験が豊富な人材を求めたため(33.0%)」が最多で、「管理職層の多様性を高めるため(性別・年齢・バックグラウンドなど)(32.0%)」が続いた。
また、最もあてはまるもの(単一回答)では「採用市場が活況で、好条件で採用できるタイミングだったため(11.6%)」という回答も上位に挙がっている。
厚生労働省の調査※2によると管理職の平均年齢は40~50代で、近年40~50代の転職率が上昇していることが影響している可能性があり、企業は即戦力人材の確保に加え、採用市場の動向を踏まえた柔軟な判断を行っていると推察される。【図2】
※2)厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
【図2】管理職の中途採用を行った理由/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
管理職の中途採用に対する満足度
- 人事担当者の約7割が管理職の中途採用に「満足している」
- 満足の理由は「即戦力となった」「求める以上の人材が入社した」など
管理職を採用した満足度を聞くと、「満足している(満足+どちらかといえば満足)」割合は69.9%で、「不満(不満+どちらかといえば不満)」の7.4%を大きく上回った。役職別では、部長クラスの採用満足度が全体より5pt以上高く、企業はより経営層に近く高いマネジメントスキルを持つ人材の獲得に満足感を覚えているようだ。【図3】
【図3】管理職の中途採用への満足度/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
満足している理由では、「スキルが高く即戦力となった」「求める以上の人材が入社した」など、採用した人材のスキル面や、仕事の成果に満足しているという意見が多くみられた。
一方、不満とした理由では、「求めていたスキルに達していない」「前職のやり方に固執し柔軟性に欠ける」といった意見が見られた。【図4】
【図4】管理職の中途採用に満足・不満足な理由/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
個人側の「管理職転職」状況について
管理職転職の実施状況
- 転職時に管理職だった人の半数以上が管理職のまま転職
直近1年間で転職した人のうち、「管理職としての転職」を望んだ割合は29.8%だった。転職活動時に管理職だった人では72.8%と、転職活動時に非管理職だった人と比べて高い傾向がみられた。
転職後の役職変化を見ると、全体では「変わらない(79.2%)」が最多で、「役職が上がった」割合は6.8%にとどまった。一方で転職時に管理職だった人では、10.4%が転職後に役職が上がっており、50.6%が転職後も役職は「変わらない」と回答しているため、転職時に管理職だった人の半数以上が管理職のまま転職できていることが分かる。【図5】
【図5】個人の管理職転職状況/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
管理職の転職理由
- 転職活動時に管理職だった人の転職理由トップは「会社の将来性に不安があった」
非管理職では「給与が低かった」が最多
転職理由を見ると、転職活動時に「管理職だった人」では「会社の将来性に不安があった(33.8%)」が最多、「非管理職だった人」では「給与が低かった(26.5%)」が最多だった。
管理職と非管理職の転職理由の差の絶対値を見ると、「会社の将来性に不安があった(+13.9pt)」という転職理由で最も差が見られ、次いで「給与が低かった(-12.2pt)」となった。
管理職は非管理職と比べて経営層に近く、会社の将来性や経営方針が見えやすい立場にある可能性があり、そこに不安を感じると転職につながりやすいと考えられる。非管理職では給与などの待遇が転職理由となる傾向があり、役職によって差が見られた。【図6】
【図6】役職別の転職理由/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
管理職転職者のキャリア観
- 現在管理職である人の過半数が、今後も「他に良い会社があれば転職したい」
直近1年間で転職した人に今後のキャリアプランについて聞くと、全体の47.2%が「他に良い会社があれば転職したい」と回答しており、約半数は転職後も柔軟なキャリア志向を持っていることがわかった。
役職別で見ると、管理職は「他に良い会社があれば転職したい(54.1%)」割合が高かった。
管理職は転職理由に「会社の将来性への不安」を挙げている割合が高かったが、転職先でも同様に「会社の将来性」や「経営方針」について冷静に判断をする姿勢を持っているのではないだろうか。今後も管理職が中途採用市場に現れる可能性は高いと推察される。【図7】
【図7】役職別に見た今後のキャリアプラン/管理職の中途採用・管理職転職に関する調査2025年
調査担当者コメント
本調査では、約2人に1人の中途採用担当者が「直近半年で管理職を中途採用した」ことがわかった。また管理職の中途採用は2021年以降増加傾向にあり、背景には、40~50代の転職率の上昇や、採用市場の活況が影響している可能性がある。
管理職の中途採用満足度も約7割となっており、管理職の中途採用はさらに一般的になっていくことが予想される。転職市場においては「35歳限界説」など、年齢によって転職が難しくなる『年齢の壁』が存在すると言われていたが、管理職を中途採用する動きが一般的になることで、『年齢の壁』を感じる人は減少していくのではないだろうか。
一方で転職者への調査によると、転職活動時の役職によって「転職理由」に違いが見られた。転職活動時に管理職だった人は、会社の将来性や経営方針など「将来への不安」を理由に転職している傾向があり、非管理職だった人の「給与」を転職理由としている傾向と差が見られている。
また転職者は柔軟なキャリア志向を持ち、現在管理職である人の約半数が「良い会社があれば転職したい」と考えていることがわかった。管理職は転職先でも「会社の将来性」や「経営方針」について冷静に判断をする姿勢を持っていると考えられる。
今後、企業が管理職人材を確保するためには、採用活動の強化だけでなく、経営の健全性を保つことが求められるのではないだろうか。
キャリアリサーチLab研究員 朝比奈あかり
調査概要
| 調査期間 |
企業:2025年7月9日~7月14日 個人:2025年7月2日~7月15日 |
| 調査方法 |
インターネット調査 |
| 調査対象 |
企業:2025年1~6月に中途採用業務を担当し、募集活動をしており、採用費用の管理・運用に携わっている人事担当者 個人:正社員として働いている20代~50代の男女のうち、直近1年間に転職活動を行い、直近1年以内に転職した人 |
| 有効回答数 |
企業:1,600件 個人:500件 |
※調査結果は端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
※n=30以下は参考値
※調査は「中途採用実態調査2025年版」「転職活動実態調査(2025年)」と同時実施している