働く女性は近年増加傾向にある。労働力調査によると、女性雇用者数は2015年から2025年の10年間で384万人増加した。一方で、働く女性の増加に伴い、専業主婦世帯は減少を続けている。
かつては一般的なライフスタイルの一つであった専業主婦は、いまや少数派となりつつある。しかし、そのなかには「働きたい」という気持ちを持ちながらも、実際の就業には至っていない人もいるのではないだろうか。
「働きたい」から「働く」までには、何があるのか。
本調査では、専業主婦の就労意向とその背景に着目し、就労を希望する専業主婦の特徴やキャリア意識、就業開始を阻む要因を明らかにすることで、共働き時代における専業主婦の実態を探る。
【本調査における専業主婦の定義】
- 現在就業していない
- 現在通学していない
- 20~50代の既婚女性
- 求職活動の有無は問わない
専業主婦の現在地
専業主婦世帯と共働き世帯の逆転現象
労働力調査によると、専業主婦世帯は減少を続けている。2025年には476万世帯となり、2000年の916万世帯から約半数まで減少した。一方で、共働き世帯は391万世帯増加し、現在では1,333万世帯に達している。いまや共働きが一般的となる中、専業主婦は少数派の存在となった。【図1】
【図1】専業主婦世帯と共働き世帯の推移/総務省統計局「労働力調査特別調査」「労働力調査(詳細集計)」より
女子学生における専業主婦意向の低下
また、マイナビの「大学生ライフスタイル調査」では、2027年卒の女子学生(大学生・大学院生)のうち、専業主婦意向がある割合はわずか9.2%となった。2018年卒では25.0%であったことから、専業主婦を希望する若年女性も減少傾向にあることがうかがえる。【図2】
【図2】女子学生(大学生・大学院生)における専業主婦意向/2027年卒 大学生のライフスタイル調査<社会問題・収入について>
本調査の問題意識
このように、専業主婦は実数・意向の両面で減少しており、共働きを前提とするライフコースが一般化しつつある。
一方で、そのような社会変化の中でも、専業主婦として生活する女性は一定数存在している。そしてその全員が、自ら望んで現在の状況を選んでいるとは限らない。働きたいと考えながらも、何らかの理由で就業に至っていない人が含まれている可能性がある。
では、就労意向がある専業主婦とはどのような人なのだろうか。また、現状「働きたい」と考えながらも実際には働いていない背景には、どのような要因があるのだろうか。就労意向がある専業主婦が直面する課題を、大きく2つの側面から整理する。1つは就業を始める「時期」に関わる制約、もう1つは「就職」そのものに関わる壁である。前半、後半に分けてみていく。
専業主婦の就労意向
働きたい専業主婦の割合
20~50代の専業主婦6,534名のうち、今後働きたいと思う(今後働きたいと思う13.6%+どちらかといえば今後働きたいと思う26.0%)割合は39.7%だった。【図3】
【図3】専業主婦の就労意向/専業主婦の就労意向に関する実態調査
年代別にみた就労意向
年代別に「今後働きたい」割合をみると、20代が56.8%でもっとも高く、30代が53.0%で続いた。一方、40代・50代ではその割合は低くなっており、若年層ほど就労意向が高い傾向がみられた。【図4】
【図4】年代別でみた専業主婦の就労意向/専業主婦の就労意向に関する実態調査
就労希望者と非就労希望者の違い
今後働きたい人と働きたいと思わない人の割合は、【図3】で示したようにほぼ同率となり、専業主婦の中でも就労に関する意識は一様ではないことがうかがえる。では、就労希望者と非就労希望者ではどういった点に違いがみられるのだろうか。
前職退職時の違い
就労希望者(1,546名)※1と非就労希望者(106名)※2に対し、専業主婦になる前の就業状況を聞いたところ、就労希望者では95.3%、非就労希望者では89.6%が何らかの職業に就いていた。いずれの層も就業経験者が大半を占めており、就業状況の有無による大きな違いはみられない。【図5】
※1※2 令和4年就業構造基本調査における「無業者かつ家事をしている者」の年齢構成比を基準とし、年齢構成が一致するよう割付回収を実施。
【図5】専業主婦になる前の就業状況/専業主婦の就労意向に関する実態調査
前職の退職理由
一方で前職の退職理由を比較すると、就労希望者では「妊娠したため」(21.2%)が非就労希望者より9.7pt高く、非就労希望者では「専業主婦という生活を選びたかった」(13.7%)が就労希望者より8.7pt高かった。両者ともライフイベントを契機に退職した人が多いものの、非就労希望者では専業主婦という生活を希望して選択した人が比較的多いことがうかがえる。【図6】
【図6】前職の退職理由/専業主婦の就労意向に関する実態調査
前職退職時の継続意識
また、前職退職時の就業継続意識について比較したところ、就労希望者では「仕事を続けたかった」と回答した割合が42.1%となり、非就労希望者(15.8%)を26.3pt上回った。
一方で、「仕事を辞めたかった」と回答した割合は、非就労希望者が74.7%と、就労希望者(34.5%)より40.2pt高かった。【図7】
【図7】前職退職時の継続意識/専業主婦の就労意向に関する実態調査
これらの結果から、現在就労意向を持つ専業主婦には、退職時に本来は仕事を続けたいと考えていた人が比較的多い一方で、就労意向を持たない専業主婦では、退職そのものを望んでいた人が多い傾向がみられた。
専業主婦であることで感じた不平等
また、現在専業主婦をしていることによって不平等な経験をしたことがあるか聞いたところ、就労希望者では、「不平等だと感じた経験がある」と回答した割合が79.5%となり、非就労希望者(56.6%)よりも22.9pt高かった。【図8】
【図8】専業主婦であることで感じた不平等/専業主婦の就労意向に関する実態調査
就労希望者が不平等だと感じた内容では、「将来の年金・保障面で不安や不利さを感じた」(41.2%)がもっとも高かった。続いて、「自分名義で使えるお金が少ないと感じた」(38.9%)、「ブランクがあることで選択肢が狭まると感じた」(38.5%)が上位となった。専業主婦が感じる不平等感には、収入や保障といった経済面だけでなく、キャリアの継続性に対する不安も含まれているようだ。【図9】
【図9】就労希望者が感じた不平等な経験内容/専業主婦の就労意向に関する実態調査
具体的なエピソードとしては、下記のようなものが挙げられた。【図10】
【図10】不平等な経験の具体的エピソード/専業主婦の就労意向に関する実態調査
就労希望者の特徴
就労希望者の姿からみえてきたのは、本来は働き続けたいと考えながらライフイベントを機に離職し、「現状に課題を感じている」人の姿である。しかし、そうした思いがあっても、実際に働き始めるまでにはさまざまな制約やハードルが存在している。
次に、その実態をみていく。
現実的な就業開始時期
現在の状況を加味した現実的な就業開始時期
今後就労を希望している専業主婦に対して、現在の家庭状況や生活環境などを踏まえたうえで、現実的に想定している就業開始時期を聞いたところ、「1年~3年未満」と答えた割合が38.4%でもっとも多い一方で、「3年以上」と答えた割合は25.2%と4人に1人以上となった。【図11】
設問文:現在のご家庭の状況や生活環境などを踏まえた上で、現実的には、どれくらい先から働き始めることを想定していますか。(今から 【】か月後を目安に働き始めることを想定している)
回答ベース:就労意向がある専業主婦(n=1,546)
【図11】家庭状況や生活環境を踏まえた現実的な就業開始時期/専業主婦の就労意向に関する実態調査
現実的な就業開始時期を遅らせる要因
現実的な就業開始時期が遅い人の特徴をみたところ、末子が幼く、家事・育児負担が大きいという特徴がみられた。また、家庭内での緊急対応や役割責任を多く担う傾向に加え、自分に合った働き方のイメージが具体化できていない傾向も確認された。家庭面での制約と、就業後の働き方に対する見通しの持ちにくさが、就業開始を遅らせる要因となっている可能性が考えられる。
家事・育児負担の量
現実的な就業開始時期別に末子の年齢をみたところ、「3年以上」と回答した人の約半数に未就学児(0~5歳)の末子がいることが明らかになった。また、就業開始時期が早くなるにつれて、末子の年齢を「高校生(16~18歳)」「19歳以上」と回答する割合が高くなる。【図12】
【図12】現実的な就業開始時期別でみる末子の年齢/専業主婦の就労意向に関する実態調査
また、1日あたりの家事・育児時間をみると、現実的な就業開始時期を先に想定する人ほど、「9時間以上」と回答する割合が高くなる傾向がみられた。【図13】
【図13】現実的な就業開始時期別でみる家事・育児時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査
末子が小さく、家事・育児に多くの時間を費やしている人ほど、就業開始時期を先に見積もる傾向があることがうかがえる。
生活面・家庭面でのハードル
こうした傾向を裏付けるように、現実的な就業開始時期別に、働く際に生活面・家庭面で調整が必要なことやハードルとなりそうなことをみると、「3年以上」先を想定する人では、「子どもの体調不良や急な呼び出しへの対応が難しくなる」(34.4%)、「家事・育児が自分に偏っており、手放しにくい」(26.0%)、「子どもへの心理的影響が心配」(24.4%)と回答する割合が、「1年未満」「1年~3年未満」を想定する人よりも高い傾向にあった。【図14】
【図14】働く上で、調整が必要なことやハードルになりそうなこと/専業主婦の就労意向に関する実態調査
現実的な就業開始時期を先に見積もる人は、家事・育児の実務だけでなく、子どもの体調不良への対応など家庭内の緊急対応も担っている割合が高いと考えられる。家庭における役割や責任の大きさが、見通しを立てにくくしている可能性がある。
働き方のイメージの具体性
また、現実的な就業開始時期を先に見積もる人ほど、将来どのように働くかのイメージが固まっていない様子もうかがえた。「今後の自分に合った働き方が明確であるか」を聞いたところ、「3年以上」先の就業開始を想定する人では約半数が「そう思わない」と回答している。
家事・育児や家庭内の役割への対応に追われる中では、働きたい気持ちがあっても、実際にどのような働き方であれば実現できるのかを具体的に描きにくいのかもしれない。【図15】
【図15】働き方のイメージの具体性/専業主婦の就労意向に関する実態調査
現実的な就業開始時期と希望のギャップ
ここまでみてきたように、働きたい専業主婦の現実的な就業開始時期には、現在の生活状況や家庭状況が大きく影響している。特に、家事・育児負担の大きさや、子どもの体調不良時の対応など家庭内で担う責任や役割が、現実的な就業開始時期を先送りする要因となっている可能性がうかがえた。
では、こうした家庭面での制約が解消された場合、どの程度の人が就業開始時期を早められるのだろうか。また、希望と想定との間に生じるギャップを特に大きくしている要因は何なのだろうか。
次に、働きたい専業主婦が抱える「働きたい」と「実際に働ける」の間にある隔たりについてみていく。
現実的な想定時期よりも早く働きたい専業主婦の割合
はじめに、現実的な就業開始時期を回答した専業主婦に対して、「制約がなければ、本来の希望として、どれくらい先から働き始めたいですか」と尋ね、希望就業開始時期を聴取した。
その結果、制約がない場合の希望就業開始時期が、現実的な就業開始時期よりも早いタイミングである「希望先行グループ」は39.6%となり、働きたい専業主婦のうち約4割となった。各区分の定義および解釈については【表1】に示している。【図16】【表1】
【図16】現実的な想定時期よりも早く働きたい専業主婦の割合/専業主婦の就労意向に関する実態調査
表1 現実的な就業開始時期と制約がない場合の希望就業開始時期のギャップで分類した3グループの定義・解釈/専業主婦の就労意向に関する実態調査
この結果から、現在の家庭状況や生活環境によって就業開始時期を先送りしているものの、本来はより早いタイミングで働き始めたいと考えている人が一定数存在することが分かった。すなわち、「働きたい」という意向と「実際に働ける」という現実との間には、少なからずギャップが存在している。
ギャップ期間の分布
希望先行グループに分類された612名に対して、そのギャップ(ずれ)期間をみたところ、「半年~1年未満」が28.4%でもっとも高く、約3割を占めている。次いで「1年~2年未満」が17.5%だった。
また、「1年以上」のずれがある人も45.1%に上り、多くの人が希望する時期よりも就業開始を先送りせざるを得ない状況にある。【図17】
【図17】(希望先行グループ)想定時期と希望就業開始時期のギャップ期間/専業主婦の就労意向に関する実態調査
制約がない場合の希望就業開始時期を早める“将来不安”
では、このギャップはどのような要因によって生じているのだろうか。ギャップには、希望就業開始時期を早める要因と想定就業開始時期を遅らせる要因があると考えられる。そこでまず、希望就業開始時期と関連すると考えられる将来不安との関係をみていく。
将来不安については、「不安を感じない」から「不安を感じる」までの5段階で回答を求めた。分析にあたっては、専業主婦全体を対象に、子どもに関する不安項目を除く11項目の平均値を将来不安スコアとして算出した。
また、子どもがいる専業主婦については、子どもに関する不安項目を含む14項目の平均値を用いて将来不安スコアを算出し、希望就業開始時期別に比較した。
【将来不安に関する項目】
1.夫婦仲の崩壊・離婚
2.家族(親・子)との関係悪化
3.友人関係の軽薄化
4.仕事と家事・育児との両立
5.住宅ローンの返済
6.親の介護
7.自分や配偶者の介護
8.自分や家族の病気・事故
9.老後の経済生活
10.家族の失業
11.社会における孤立
子どもに関する不安▽
12.子どもの進学問題
13.子どもの教育費用
14.子どもの就職
希望就業開始時期別に将来不安スコアを比較したところ、時期が早い層ほど将来不安スコアが高い傾向がみられ、群間差は統計的に有意であった(F(3,1542)=6.97, p<.001)。
この結果から、将来不安の高さと希望就業開始時期の早さには関連がみられた。将来への不安が強い人ほど、より早い時期から就業したいと考える傾向がうかがえる。【図18】
【図18】希望就業開始時期別の将来不安スコア(子ども項目除く)/専業主婦の就労意向に関する実態調査
次に、子どもがいる専業主婦に限定し、子どもに関する不安項目を含めた14項目の平均値から将来不安スコアを算出した。その結果、子どもがいる専業主婦においても、希望就業開始時期が早い層ほど将来不安スコアが高い傾向がみられ、群間差は統計的に有意であった(F(3,1261)=6.03, p<.001)。
子どもに関する不安を含めてみても同様の傾向が確認された。【図19】
【図19】希望就業開始時期別の将来不安スコア(子ども項目含み、対象は子どもがいる専業主婦に限定)/専業主婦の就労意向に関する実態調査
このように、将来不安は希望就業開始時期を「早める」方向の要因として関連していた。一方で、実際に働き始められるかは別の要因に左右される。
個人特性とギャップ期間の関係
ここまでみてきたように、早く働きたいと思っていても、実際に行動へ移せるとは限らない。そこで次に、希望就業開始時期と現実的な就業開始時期とのギャップに関係する個人特性についてみていく。
本調査では、その要因として完全主義と先延ばし傾向に着目した。完全主義とは、過度に高い基準を設定し、それを達成しようとする意識のことを指す。一方、先延ばし傾向とは、達成すべき取り組みを後回しにする行動傾向を指す。
完全主義傾向が強い人は、十分に納得できる状態や準備が整った状態で行動したいと考えるため、希望就業開始時期と現実的な就業開始時期のギャップが広がる可能性があると考えた。また、先延ばし傾向が強い人は、就労意向があっても実際の行動開始を後回しにすることで、希望就業開始時期と現実的な就業開始時期のギャップを広げる可能性があると考えた。
しかし、結果としては、完全主義および先延ばし傾向を説明変数とした重回帰分析を行ったものの、モデル全体は有意ではなかった(p=.701)。用いた尺度や標本の制約による可能性もあるが、希望就業開始時期と現実的な就業開始時期とのギャップは、完全主義や先延ばし傾向といった個人特性だけでは十分に説明されない可能性が示唆された。【図20】
【図20】個人特性(完全主義・先延ばし)の就業開始時期のギャップへの影響/専業主婦の就労意向に関する実態調査
そこで次に、現実的な就業開始時期と制約がない場合の希望就業開始時期との差が生じる理由について尋ねた自由回答を、ギャップ期間別に分析した。
ギャップ理由とギャップ期間の関係
現実的な就業開始時期と制約がない場合の希望就業開始時期とのギャップ(ずれ)の長さを横軸、各カテゴリーの出現回答数を縦軸として、自由回答を12カテゴリーに分類しマッピングした。【図21】【図22】
【図21】ギャップ理由をカテゴリーに分け、件数・ギャップ期間別にマッピング/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図22】ギャップ理由(自由回答)のカテゴリー分類した自由回答の一部抜粋/専業主婦の就労意向に関する実態調査
その結果、ギャップが大きく、かつ出現頻度も高いカテゴリーとして、「子どもの年齢・成長」と「自身の健康・体力」が分類された。これらは、多くの専業主婦に共通してみられ、かつ希望就業開始時期と現実的な就業開始時期とのずれを大きくしやすい要因と考えられる。
一方で、出現頻度は比較的低いものの、ギャップが大きいカテゴリーとして、「介護・家族ケア」「子どもの健康・発達・障害」「妊娠・出産・妊活」「配偶者・家族の理解/都合」が分類された。これらは該当者こそ限られるものの、経験した場合には希望就業開始時期と現実的な就業開始時期とのギャップを大きくしやすい要因である可能性がうかがえる。
希望する時期に就業を開始できない制約
以上の結果から、働きたい専業主婦の現実的な就業開始時期と制約がない場合の希望就業開始時期のギャップには、本人の意欲や性格特性よりも、家事・育児負担や子どもの成長、健康上の課題、家族の事情といった生活・家庭環境の影響が大きいことがうかがえた。つまり、「働きたい」という意向があっても、現実にはさまざまな制約によって希望どおりの就業開始時期に就業できない人が少なくないと考えられる。
また、将来への不安が強い人ほど早期の就業を希望する傾向がみられた一方で、自由回答の分析からは、「子どもの年齢・成長」や「自身の健康・体力」が、出現頻度が高く、かつ希望と現実の就業開始時期とのギャップが大きい要因として挙げられた。
つまり、働きたい専業主婦においては、「いつ働きたいか」を決める要因と、「いつ働けるか」を決める要因が異なっており、そのずれが就業開始時期のギャップにつながっている可能性が示唆された。
希望する仕事と就職意識
ここまで、就業を阻む家庭や生活上の制約に着目してきた。しかし就業を阻むのはそれだけではない。希望する就業開始時期に働けたとしても、希望する仕事に就けるとは限らない。そこで次に、専業主婦が希望する仕事の特徴と、就職に対してどのような意識を持っているのかについてみていく。
専業主婦が働きたいと思う理由
そもそもどうして、専業主婦は働きたいと思うのだろうか。働きたい理由を聞いたところ、「家計の収入を補いたいから」が61.3%でもっとも高く、「自由に使えるお金を自分で稼ぎたいから(56.5%)」「老後や将来の生活(年金を含む)に不安があるから(44.9%)」「自分自身の収入を得て、経済的に自立したいから(33.7%)」が続いた。相対的に経済面での回答が上位に挙がる。【図23】
【図23】働きたい理由/専業主婦の就労意向に関する実態調査
一方で、家計や将来への蓄えのためだけでなく、自身の経済的自立や自由を求める回答も多いことが特徴的である。
専業主婦が今後希望する働き方について
では専業主婦はどのような働き方を希望しているのか。
希望の雇用形態
希望する雇用形態を聞いたところ、「アルバイト・パート」が86.3%でもっとも高かった。その他、契約社員や派遣社員などを含んだ、非正規社員希望者は87.7%に上った。一方で、正社員希望者は20.3%にとどまる。【図24】
【図24】希望する雇用形態(複数回答)/専業主婦の就労意向に関する実態調査
希望の就業日数・時間
次にどのような就業日数・時間を希望しているのか聞いたところ、希望の日数は1週間あたり平均3.5日、希望の時間は1日あたり平均4.5時間となった。【図25】
【図25】希望する就業日数・時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査
全体的に、フルタイムよりも短時間・短日数での就業を希望する傾向がみられた。希望雇用形態でも非正規雇用が多数を占めていたことから、専業主婦は家庭との両立を前提とした、柔軟な働き方を求めている様子がうかがえる。
就職難易度
こういった希望の就業イメージを持つ中で、専業主婦は就職の難易度をどのように捉えているのだろうか。就労意向がある専業主婦のうち、就職を「難しいと思う」割合は58.4%で半数を上回った。【図26】
【図26】就職の難易度/専業主婦の就労意向に関する実態調査
就職で難しいと思うポイント
就職を難しいと捉えている専業主婦に対して、どういったポイントが特に難しいのか聞いたところ、「希望に合う勤務先を見つけること」が82.3%でもっとも高かった。さまざまな制約がある中で、企業とのマッチングに不安を感じている様子がうかがえる。
また専業主婦になってからの期間別でみると、専業主婦になってからの期間が「10年以上」の層では「書類選考」について、全体より難しさを感じる傾向がみられた。専業主婦でいる期間が長いほど、書類選考への難しさを感じやすくなっている可能性がある。【図27】
【図27】就職で難しいと思うポイント/専業主婦の就労意向に関する実態調査
就職が難しいと思う理由
さらに、なぜ難しいと思うのか、その理由を聞いたところ、「仕事にブランクがあるから」(71.0%)「経験やスキルが不足しているから」(55.5%)が上位となった。
こちらも専業主婦になってからの期間別でみると、「10年以上」では特に「仕事にブランクがあるから」「経験やスキルが不足しているから」が高く、専業主婦でいる期間がブランクとして認識されている現状や経験やスキル不足の課題につながっていることがうかがえる。【図28】
【図28】就職が難しいと思う理由/専業主婦の就労意向に関する実態調査
仕事探しにおけるハードル
このように、専業主婦である期間はブランクとして捉えられ、就職を検討した際に経験やスキルへの不安につながっていることがうかがえた。また、希望に合う勤務先を見つけることへの難しさを感じている割合も高く、就労意欲があっても実際の仕事探しの段階でさまざまなハードルに直面している様子がみられた。
特に、家事・育児との両立を前提として、短時間・短日数勤務やパート・アルバイトを希望する人が多い一方で、その条件に合う仕事が十分に見つかるとは限らない。さらに、ブランクやスキル不足への不安も加わることで、「働きたい」という意欲があっても就職活動に踏み出しにくい状況が生じていると考えられる。
専業主婦の「働きたい」を「働ける」にするには
専業主婦は減少を続けているものの、現在でも約4割が今後働きたいと考えていた。一方で、家事・育児や家庭内での役割・責任を担うなかで、希望する時期に就業できない人も少なくない。
特に、就業開始時期のギャップは個人の性格特性だけでは説明されず、子どもの成長や健康、自身の体力や健康状態、家族ケアなど、生活・家庭環境の影響が大きいことがうかがえた。つまり、「働きたいのに働けない」という状態は、本人の意欲の問題というより、家庭や生活上の制約によって生じている側面が大きいと考えられる。
また、仮に生活上の制約が緩和されたとしても、専業主婦期間におけるブランクやスキルへの不安、希望条件に合う勤務先の少なさなど、就職に向けた壁が存在していた。
共働きが当たり前となった時代において重要なのは、「働くか働かないか」を問うことではなく、「働きたい人が働き続けられるか」、そして「働きたいと思ったときに再び働けるか」という視点である。家庭・企業・地域社会が連携し、「働きたい」を「働ける」につなげていく仕組みづくりが求められる。
キャリアリサーチLab研究員 嘉嶋 麻友美
具体的な支援策の提案についてはレポートに記載しています。
【参考文献】
総務省統計局「労働力調査特別調査」「労働力調査(詳細集計)」
2027年卒 大学生のライフスタイル調査<社会問題・収入について>
桜井・大谷(1997)「自己に求める完全主義と抑うつおよび絶望感」,心理学研究,第68巻,第3号
林(2007)「General Procrastination Scale 日本語版の作成の試み」,パーソナリティ研究,第15巻,第2号
※構成比は四捨五入のため内訳の合計と一致しない場合がある