- 転職検討中の正社員の約6割が「今年の夏の賞与をもらってから転職する予定」
- 転職経験がある正社員の約7割が「賞与が少ない」ことが理由で転職したことがある
- 理想の賞与額は平均98.2万円で、現実と38.6万円のギャップ
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、20-50代の正社員のうち、2024年4月に転職活動を行った人と、今後3カ月で転職活動を行う予定の人1,366人を対象に実施した「2025年夏ボーナスと転職に関する調査」の結果を発表した。
賞与(ボーナス)とは
賞与とは、固定給とは別に支給される給与のことであり、詳しくは以下のコラム冒頭「賞与(ボーナス)とは」において説明している。
賞与は夏と冬の年2回支給されることが一般的であり、今回は夏の賞与支給のタイミングで実施した調査結果をもとに考察を行う。
賞与と転職
今年の夏の賞与が転職に与える影響
- 現在転職を考えている正社員の約6割が「今年の夏の賞与をもらってから転職する予定」
- 5割以上が「夏の賞与額が高かったら転職するのをやめるかもしれない」
転職を検討している正社員のうち、「今年の夏の賞与支給後に転職する予定」と回答した正社員は58.3%となった。年代が若いほど高い傾向がみられ、特に20代では66.4%と最多になった。企業にとっては賞与支給のタイミングは離職リスクの高まる時期といえる。
一方で、「賞与額が高かった場合に転職を思いとどまる可能性がある」と回答した人は51.5%となり、こちらも20代が63.1%と最多だった。【図1】
【図1】直近の転職活動と賞与について/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
予想より賞与額が高かったので転職を中止した経験
- 3人に1人が想定よりも賞与額が高かったことで転職を中止した経験がある
実際に「想定よりも賞与額が高かったことで転職を思いとどまった経験がある」人の割合は全体の33.3%だった。
転職中止を決めた際の賞与額は平均107.1万円で、賞与の金額が転職の意思決定に一定の影響を及ぼしていると考えられる。【図2】
【図2】賞与額が高かったので転職を中止したことがあるか/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
賞与が少なくて転職をしたことがあるか
- 転職経験者の約7割が「賞与が少ない」ことを理由に転職したことがある
- 転職理由となった賞与の平均額は38.2万円
現在転職を検討していて転職経験がある人のうち、過去に賞与が少ないことが理由で転職したと回答した人は69.1%(「1番大きな転職理由だった」(32.1%)+「1番ではないが転職理由だった」(37.0%)の合計)であった。
年代別では賞与が少ないことが「1番大きな転職理由だった」割合が20代において46.0%とほかの年代と比べて高く、賞与額の少なさが特に転職の動機となっていることがうかがえる。また、転職理由となった賞与の平均額をみると、全体平均は38.2万円であった。【図3】
【図3】賞与額が少かったので転職をしたことがあるか/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
また、「1番ではないが転職理由だった」と回答した人に1番の転職理由を聞いたところ、最も多かったのは「賞与以外の給与(月給)が低かった(18.4%)」だった。賞与が一番の転職理由ではなかった人においても、金銭的な点が転職理由となっていたようだ。【図4】
【図4】「賞与が少ない」が一番ではない人の一番の転職理由/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
前年夏の賞与額と理想の賞与額
理想と現実の賞与額
- 前年の夏の賞与額は平均59.6万円
- 今年予想している夏の賞与額は平均60.1万円
- 理想の賞与額は平均98.2万円で38.6万円のギャップ
前年夏の賞与額は平均59.6万円で、自分の仕事に見合うと思う理想の賞与額は平均98.2万円となり、前年の賞与額と理想の賞与額のギャップは38.6万円だった。
年代別にみると、年代が高いほど前年の賞与額・理想の賞与額ともに金額が高い傾向がみられた。前年の賞与額と理想の賞与額の差額が最も大きかったのは30代・50代で40.5万円の差、一方で差額が小さかったのは20代で23.7万円の差となった。【図5】
【図5】夏の賞与額/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
賞与の情報と転職活動
賞与の情報の重要性
- 約7割が「転職先を選ぶ際に賞与金額を重要な情報」と捉えている
- 一方で、7割以上が「選考で賞与について質問しづらい」と回答
「転職先を選ぶ際に賞与金額を重要な情報」と捉えている人は68.6%にのぼり、特に20代でその傾向が強くみられた。
一方で、「選考時に賞与について質問しづらい」と感じている人は73.0%で、こちらも20代が最多であった。賞与に関する情報の重要度は高いものの、実際には選考時に確認しづらいというギャップが存在しているようだ。【図6】
【図6】賞与の情報と転職活動/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
転職先に求める賞与水準
- 転職先に求める賞与の最低水準は基本給の「約2カ月分」
前年夏の賞与額が基本給の何カ月分だったか聞いたところ、最も多かったのは「約2カ月分(22.5%)」だった。転職先に求める最低水準でも「約2カ月分(30.0%)」が最多であった。【図7】
【図7】賞与は何カ月分だったか・転職先の賞与は最低何カ月分が良いか/2025年夏ボーナスと転職に関する調査
調査担当者コメント
厚生労働省の発表※によると、2024年度の実質賃金は3年連続でマイナスとなり、物価高騰に賃上げが追い付いていない状況がみられる。こうした経済環境の中で迎える2025年夏の賞与支給だが、調査からは、賞与額に対する理想と現実のギャップもみられ、賞与額が個人の転職意向に少なからず影響を与えていることがわかった。
現在転職を考えている正社員の約6割が、賞与支給後に退職する予定だと回答している中、賞与額が高ければ転職を思いとどまる可能性があるという人も半数を超えた。特に20代では賞与が転職に与える影響が大きい傾向がみられている。
また、賞与額は転職先を決める重要な判断材料であると考えられる一方で、選考時に賞与について質問しづらいと感じる人は全体の7割を超えた。企業は社員に対してだけではなく、選考時にも賞与に関する情報を丁寧に伝える姿勢が求められるだろう。
※毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)
キャリアリサーチラボ 研究員 朝比奈あかり
調査概要
内容 |
2025年夏ボーナスと転職に関する調査 |
調査期間 |
2025年5月1日~7日 |
調査対象 |
正社員として働いている20代~50代の男女のうち、前月に転職活動を行った人または今後3か月で転職活動を行う予定の人(3か月以内に中途入社した人を除く) |
調査方法 |
<企業調査> ・スクリーニング調査:従業員数3名以上の企業に所属している全国の経営者・役員または会社員で、中途採用業務を担当している人 ・本調査:上記のうち、前月採用活動を行った人、今後3か月で採用活動を行う予定の人 <個人調査> ・スクリーニング調査:従業員数3名以上の企業に所属している全国の20-50代の正社員 ・本調査:上記のうち、前月転職活動を行った人、今後3か月で転職活動を行う予定の人(3か月以内に中途入社した人を除く)
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有効回答数 |
スクリーニング調査 29,217件 本調査 1,366件 |
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