大学生の企業選択におけるキャリア形成活動の影響

大学生の企業選択におけるキャリア形成活動の影響

中島英里香
著者
株式会社マイナビ
ERIKA NAKASHIMA

身近になったキャリア形成活動

近年、大学3年生の3月に行われる就職活動広報解禁前にインターンシップ等のキャリア形成活動を行うことが身近になっている。2027年卒の学生では、85.6%の学生が2月までに何らかのキャリア形成プログラムに参加したことがあると回答している。【図1】 

【図1】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率/一人当たりの平均参加社数 / 2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査
【図1】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率/一人当たりの平均参加社数 / 2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査

多くの学生が行っているインターンシップ等のキャリア形成活動は、学生のキャリア観に対してどのような効果をもつのだろうか。 

インターンシップの効果

インターンシップの効果については、初見ら(2021)がインターンシップ効果測定尺度(事後調査版)を開発し、5つの要素(因子)を定義している。【図2】 

【図2】インターンシップ効果の5要素(因子) / 初見康行, 梅崎修, & 坂爪洋美. (2021). 大学生のインターンシップ効果測定尺度の開発―テキスト分析とパネルデータによる実証研究―. 日本労務学会誌, 21(3), 18-42.
【図2】インターンシップ効果の5要素(因子) / 初見康行, 梅崎修, & 坂爪洋美. (2021). 大学生のインターンシップ効果測定尺度の開発―テキスト分析とパネルデータによる実証研究―. 日本労務学会誌, 21(3), 18-42.

5つの要素の概要は以下である。

因子 概要
キャリアの焦点化 将来のキャリアについて、興味・関心が絞られ、明確化されること
キャリアの展望化 自らの将来のキャリアについての可能性が広がること
自己理解 インターンシップを通して認識された自己の長所ならびに補うべき短所
就労意識 インターンシップを通して獲得された働くことへの意欲
人的ネットワークの認知 大学のキャリアセンターやOB・OGなど、周囲の社会人を、就職活動を円滑に進めるために利用可能な有益な資源として認知すること

インターンシップ経験から得られる効果として、5要素があげられたが、さらに、「キャリアの焦点化」は内々定の有無、「キャリアの展望化」は内々定先の満足に正の影響を及ぼすことが示されている。(初見ら, 2020)【図3】 

【図3】キャリアの焦点化と展望化の効果 / 初見康行, 梅崎修, & 坂爪洋美. (2020).大学生のインターンシップ効果の検証―インターンシップの5つの効果とパネルデータを用いた分析.日本労働研究雑誌, 41-57.
【図3】キャリアの焦点化と展望化の効果 / 初見康行, 梅崎修, & 坂爪洋美. (2020).大学生のインターンシップ効果の検証―インターンシップの5つの効果とパネルデータを用いた分析.日本労働研究雑誌, 41-57.

インターンシップ経験によって、「自分が本当にやりたいことが分かった」「働きたい業界・業種、仕事内容のイメージが明確になった」というようにキャリアの焦点化が進み、その結果、内々定を得やすくなったと考えられる。

また、キャリアの展望化は「興味のある業界・業種、仕事内容の範囲が広がった」「就職活動には、自分の可能性を試すチャンスがたくさんあることが分かった」といったようなインターンシップ経験を得ることで、より中長期的に自身のキャリアを考えられるようになり、結果として内々定先の満足度が高まったと考えられる。 

インターンシップ経験の個人差

一方で、インターンシップの効果については「個人差」がみられることがわかっている。梅崎ら(2025)では、同じインターンシッププログラムを経験した学生を、キャリアの焦点化と展望化を組み合わせた4タイプに分類し、個人差が生じる背景を探索的に分析した。【図4】 

【図4】インターンシップ効果の個人差4タイプ / 梅崎 修, 坂爪 洋美, 初見 康行. インターンシップの学習過程に対する探索的研究 : 焦点化と展望化の比較から-An Exploratory Study of Internship Learning Processes : A Comparインターンシップon of Focusing and Viewing. 人材育成研究 : 人材育成学会機関誌 / 「人材育成研究」編集委員会 編. 2025. 20. 1. 29-43
【図4】インターンシップ効果の個人差4タイプ / 梅崎 修, 坂爪 洋美, 初見 康行. インターンシップの学習過程に対する探索的研究 : 焦点化と展望化の比較から-An Exploratory Study of Internship Learning Processes : A Comparインターンシップon of Focusing and Viewing. 人材育成研究 : 人材育成学会機関誌 / 「人材育成研究」編集委員会 編. 2025. 20. 1. 29-43

分類については、インターンシップを通じたキャリアの焦点化・展望化の変化の大きさで高群・低群に分け、2×2のマトリクスとして4タイプに分類した。

  • タイプA:キャリアの焦点化高群×キャリアの展望化高群
  • タイプB:キャリアの焦点化低群×キャリアの展望化高群
  • タイプC:キャリアの焦点化高群×キャリアの展望化低群
  • タイプD:キャリアの焦点化低群×キャリアの展望化低群

結果、同じインターンシップという経験であっても、タイプによって認識の具体性や予期的不安の有無が異なることが明らかになった。 

インターンシップの効果は企業選択にどのような影響を与えるのか

本研究の課題

調査の流れ

※研究全体についてはPDFをダウンロードし、ご覧ください。

  • 調査1 就職活動直前となる2月に学生を対象にしたアンケート調査
  • 調査2 就職活動直前となる2月に学生を対象にしたインタビュー調査

本研究では、インタビューから企業選択におけるインターンシップ経験の影響を探索的に調査することを目的とした。(調査2) 

そのため、事前調査としてアンケート調査(調査1)にて、学生のタイプ振り分けを行うためにインターンシップ効果測定尺度や、就職活動前の企業を選ぶ上での「こだわり」などについて尋ねた。

調査2については、調査1の結果から学生を4タイプに振り分け、各タイプの学生が同程度の数となるようにインタビュー対象を選定した。  

調査1アンケート調査

調査1の概要

方法マイナビ2027会員(退会者含む)にWEB DMを配信し、インターネットアンケートで回収
対象2027年3月卒業予定の全国の大学生、大学院生 
期間2026年1月30日(金)~2026年2月6日(金)  
有効回答数1,102名 

就職活動の広報開始直前である2月に大学3年生、大学院1年生を対象にアンケート調査を行った。インターンシップ効果測定尺度の結果を元に4タイプに分類し、タイプごとの傾向をみていく。【図5】 

<4タイプの分類方法>
キャリアの焦点化得点(α係数0.89):平均25.5  
高群:26以上の学生 / 低群:25以下の学生

キャリアの展望化得点(α係数0.85):平均26.6  

高群:27以上の学生 / 低群:26以下の学生

それぞれの高群・低群を組み合わせて4象限に分類

Aタイプ:キャリアの焦点化高群×キャリアの展望化高群
Bタイプ:キャリアの焦点化低群×キャリアの展望化高群
Cタイプ:キャリアの焦点化高群×キャリアの展望化低群
Dタイプ:キャリアの焦点化低群×キャリアの展望化低群

【図5】各タイプの学生人数
【図5】各タイプの学生人数

タイプごとのキャリア形成活動について

タイプごとにキャリア形成活動の参加有無の割合を示した。【図6】

【図6】タイプごとのキャリア形成活動参加割合
【図6】タイプごとのキャリア形成活動参加割合

各キャリア形成活動において、もっとも参加経験の割合が多いタイプはA(焦点化高群×展望化高群)であり、もっとも少ないタイプはD(焦点化低群×展望化低群)であった。また、仕事体験やインターンシップについてはB(焦点化低群×展望化高群)・DよりもA・C(焦点化高群×展望化低群)のほうがわずかではあるが経験割合が高いことがわかる。

続いて、活動量として、平均参加社数をタイプごとに割り出した。【図7】

【図7】各タイプのキャリア形成活動の平均経験社数
【図7】各タイプのキャリア形成活動の平均経験社数

結果は経験割合と同様に、参加社数がもっとも多いタイプはAであり、もっとも少ないタイプはDであった。 

タイプごとの企業選択のこだわり 

第一志望企業の有無を尋ねたところ、AとCは第一志望企業がすでにある学生が7割を超えていた。また、BとDは半数程度であった。A・Cともにキャリアの焦点化が高いタイプであるため、キャリアの焦点化は志望企業の絞り込みに影響があることが推測される。【図8】

【図8】各タイプの第一志望企業の有無
【図8】各タイプの第一志望企業の有無

続いて、第一志望業種と職種を尋ねたところ、第一志望企業と同様にAとCの8割以上が2月の時点で志望を決めていた。特にCの9割以上が志望業種、職種を決めている状態であった。【図9】

【図9】各タイプの第一志望業界・職種の有無
【図9】各タイプの第一志望業種・職種の有無

そこで、第一志望の業種と職種へのこだわりの強さを尋ねた。【図10,11】 

【図10】各タイプの第一志望業種のこだわり
【図10】各タイプの第一志望業種のこだわり
【図11】各タイプの第一志望職種のこだわり
【図11】各タイプの第一志望職種のこだわり

結果、Cの「第一志望業種(もしくは職種)以外は考えられない」という回答は4割程度あり、その業種、職種へ強くこだわっている学生が一定数いることがわかる。 

調査2インタビュー調査

調査2の概要

方法WEBでのインタビュー(約1時間)
対象調査1回答者の中からインタビュー協力に合意いただけた学生
期間2026年2月13日(金)~2月27日(金)
2026年7月10日(金)~2026年7月16日(木)
有効回答数23名(タイプA:5名 タイプB:6名 タイプC:6名 タイプD:6名)

質問内容

インタビューにて質問した内容は以下である。

  • 現在の状況(応募社数、内々定保有社数などの就職活動の状況)
  • キャリア形成活動の取り組み(参加社数、印象に残ったプログラム内容や企業について、その企業が第一志望か)
  • 第一志望企業について(選考状況、興味をもったきっかけ、志望理由)
  • 就職活動の軸(どんな軸で活動しているか、こだわりの背景)
  • 【A・Cのみ】焦点化が高い背景(どれくらい第一志望がいいのかとその理由、第一志望企業に不合格だったら)
  • 【B・Dのみ】焦点化が低い背景(他に迷っている企業はあるか、決めきれない理由、複数内々定をもらった場合どうするか)

分析の手続き

先行研究を参考としたA、B、C、Dのグループについて、特徴に差が見られそうな要素を5つの観点(以下、コアコード)を設定した。コアコードとは、本研究でインタビュー内容を分析する際の着目点となる概念である。

次に、インタビューの逐語録を対象として、各コアコードに関連する発言やエピソードが含まれているかを確認し、該当する箇所に対応するコードを付与するコーディングを行った。そのうえで、各グループにおいてどのような語りがみられるかを比較・分析した。

コアコード

インタビューにおいて、以下の5つの要素をコアコードとした。 

※コアコードを元にしたタイプ別の特徴についてはPDFをご覧ください。 

【図11】コアコード一覧
【図11】コアコード一覧

結果 

タイプごとの企業選択におけるインターンシップの影響は以下である。

A|焦点化↑・展望化↑

インターンシップの影響

  • インターンシップによってそこで働くイメージを明確にしていた
  • インターンシップを経て自己理解を深め、インターンシップに参加した企業は自分の望む働き方ができないため選考に進まないなどの判断を行った発言がみられた

インターンシップを受ける目的が明確であった

  • IT業界で働きたいから
  • 採用担当者とコミュニケーションを取りたいから
  • など目的意識が明確であった

企業選択:なぜその企業ではないといけないのかの説明が明確

  • 自分のやりたいことや希望を自覚しており、それがかなえられる企業であることを他者に説明できている

B|焦点化↓・展望化↑

インターンシップの影響

  • インターンシップを経験したことによるキャリア観の変化や、その業界などの理解の深まりについての発言が全タイプの中で最も多かった
  • 全タイプの中で最もインターンシップの影響を受けていた

企業選択:その企業を選んだ理由は待遇が多かった

  • 複数の企業で迷っており、さらに迷っている企業は業界・職種が異なることが多かった
  • 志望する理由が「社員の雰囲気がよい」といった理由が多く、どんな仕事をしたいかではなく「働く環境が自分に合っているか」という評価軸がみられた

C|焦点化↑・展望化↓

インターンシップを受ける企業選びの軸がすでに明確であった

  • インターンシップを受ける段階で志望業界がおおよそ決まっていた、絞り込んでいた学生が多かった
  • 志望している業界もしくは志望している職種の企業のインターンシップに複数社参加して、入社予定先を決める学生が多い
  • 結果としてインターンシップは企業選びの場となっているケースが多かった
  • これまで判断軸に入っていなかった理由(元々地元企業に就職が決まりかけていたが友達がいるから東京の会社に就職したい、就職活動をやりなおすなど)で決まりかけていた企業の選考を辞退するなど、途中で別の判断軸が入り込む様子もみられた

企業選択:NG事項が明確

  • 志望業界、志望職種が明確
  • 待遇に関するNG項目(例:初任給●万円はきびしい)の発言が多い

D|焦点化↓・展望化↓

インターンシップの影響

  • インターンシップの経験がどのように個人へ影響し、企業選択につながったのかに関する発言が少ない

企業選択:その企業を選ぶ理由に待遇が多い

  • 給与の高さが重要(給与の高さ以外にも志望した理由はあるが、重視度合いは給与よりも弱い)
  • 具体的な待遇(給与であれば●万円ほしいなど)や、その待遇でどのような生活をしたいかに関する発言はほぼみられない
  • 社会とのつながりに関する発言が少ない
  • 仕事をすることで社会にどのような影響を及ぼしたいかなどの発言が少ない

総合考察

企業選択におけるキャリアの焦点化の影響

キャリアの焦点化が高いほど、学生の志望が明確であることが推測される。また、キャリア形成活動を通して、キャリアの焦点化を高めることは、働くイメージや求めるキャリア像を深めることだけではなく、NG要件といった、「どういった点は自分に合わないのか」といった理解も深めることが推察される。また、自身の志望や動機を他者に伝えられるほど、明確となっている。 

企業の絞り込み方

キャリアの焦点化が高い場合、キャリア形成活動のタイミングからすでに志望業界や職種で絞り込みを行っていることも少なくなかった。企業間の比較もまずは業界・職種が自分の志望にあっているか、その中から企業ごとの特色を検討し、自分とあっている企業を選択するといったように企業属性という条件をベースとした判断が多くみられた。

一方で、キャリアの展望化が高い場合は、キャリア形成活動などで知った企業で自分が働けそうという感触を得て、志望するという流れが多くみられ、企業属性という条件を強い判断軸として利用している発言はあまりみられなかった。 

最後に

本研究は、キャリア形成活動後の学生を対象に調査を行ったため、キャリアの焦点化・展望化が必ずしもキャリア形成活動によってもたらされたものではない可能性がある。しかし、本研究からは、キャリア形成活動の経験が学生の企業選択のあり方と関連している可能性が示された。

企業にとっては、自社の魅力を伝えるだけでなく、学生が自身の価値観やキャリア観を整理できる機会を提供することが、納得感のある企業選択を支援する上で重要になるだろう。 

関連記事

2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査

調査・データ

2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査

2027年卒 内定者意識調査

調査・データ

2027年卒 内定者意識調査