マイナビ キャリアリサーチLab

リカレント教育とは?生涯学習やリスキリングとの違いを解説

キャリアリサーチLab編集部
著者
キャリアリサーチLab編集部

現代社会において、急速な技術革新や社会の変化に対応するために、継続的な学びが求められている。その中で近年、注目されているのが「リカレント教育」だ。

本記事では、リカレント教育の意味や注目されている背景、近しい言葉として生涯学習やリスキリングとの違い、国の支援制度について解説している。

リカレント教育とは?

リカレント教育とは、社会人が仕事(就業)と学び(就学)を繰り返しながらスキルを向上させることを指す。リカレント(recurrent)は「再発する」「循環する」という意味を持ち、社会に出た後も必要なタイミングで大学や社会人向け講座に参加し、仕事と学びを交互に行うことで、常に新しい知識や技術を身につけることができる。

政府広報オンラインによると、

リカレント教育とは、学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことです。日本では、仕事を休まず学び直すスタイルもリカレント教育に含まれ、社会人になってから自分の仕事に関する専門的な知識やスキルを学ぶため、「社会人の学び直し」とも呼ばれます。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202108/1.html

と記載があり、日本におけるリカレント教育は、仕事から離れて学ぶことのみを指すわけではないようだ。

リカレント教育が求められる背景

リカレント教育が求められる背景には、社会の変化や技術革新が挙げられる。これまでの社会では、「学校で勉強(学び)」→「就職や転職し、ある程度の年齢で退職(就業)」→「リタイア後の生活(老後)」というスタイルが主流だった。

しかし、平均寿命が延びたり、働き方が多様化したりすると、一度社会にでた後も「キャリアアップ・スキルアップのために大学に入りなおす」「仕事を辞めて留学する」「子育てで離職したが仕事に復帰する」「リタイア後に新しい仕事に挑戦する」などのさまざまな選択肢が生まれてきた。これにより、ライフキャリアの描き方は画一的なものではなく、一人ひとりに合ったスタイルが求められるようになったのだ。

また、労働市場の変化も大きな要因だ。日々、さまざまな技術が生まれてくる昨今において、それまでのやり方に固執するのではなく、柔軟に対応できる人材が求められている。社会に出た後も学びを取り入れ、より実践的な知識や経験を積むことで、それまでよりも高度なスキルを身につけることが求められるようになっている。

リカレント教育と生涯学習の違い

生涯学習とは?

生涯学習とは、個人が生涯にわたり学び続けることを指す。リカレント教育と生涯学習は似ているが、目的が異なっており、リカレント教育は仕事に役立つスキルを身につけることが主な目的であるのに対し、生涯学習は個人の興味や趣味、自己啓発、ボランティアなどを目的としている。

また、リカレント教育と生涯学習のもう一つの違いは、学びの頻度やタイミングである。リカレント教育は、仕事と学びを交互に行うことが特徴であり、特定の期間に集中して学ぶことが多いが、生涯学習は個人のペースで継続的に行われることが一般的である。

リカレント教育は、特に職業スキルの向上やキャリアアップを目指す社会人向けであるが、生涯学習は、職業に限らず個人の自己実現や社会参加を促進することを目的としており、両者を適切に使い分けることで、個人の成長や社会の発展に寄与することができる。
※ただし、政府広報オンラインの記述のように、日本での違いは上記ほど明確でない場合もある。

生涯学習が求められる背景

生涯学習が求められる背景には、個人の自己実現や社会参加の促進がある。生涯学習を通じて、個人は新しい知識やスキルを身につけるだけでなく、興味のある分野や趣味を通じて、社会とのつながりを深めることができるのだ。たとえば、地域のコミュニティセンターで行われる講座やワークショップへ参加することなどは、生涯学習の一環として多くの人が利用している。

リカレント教育とリスキリングとの違い

リスキリングとは?

リスキリングとは、新しい職業に就くためや現在の職業で必要とされるスキルを再習得することを指す。リカレント教育とリスキリングは、どちらもスキルの向上を目指すが、そのアプローチや目的が異なる。

リカレント教育は、一般的に仕事を辞めるもしくは中断して特定の期間に集中して学び、仕事と交互に行うのに対し、リスキリングは仕事を継続しながら新しいスキルを学ぶことが多い。たとえば、IT業界で働くエンジニアが新しいプログラミング言語を学ぶことはリスキリングの一例である。
※ただし、政府広報オンラインの記述のように、日本での違いは上記ほど明確でない場合もある。

リスキリングが求められる背景

リスキリングが求められる背景には、技術の進化や労働市場の変化が挙げられる。特に、デジタル化・DX化が進む現代社会では、新しい技術やツールの活用方法の習得が必須となり、リスキリングを通じて、現在の職業での競争力を維持したり、新しい職業に就くための準備を整えたりすることが求められているのだ。

リスキリングに関しては、下記の記事でまとめているので参考にしてほしい。

また、リスキリングに関する研究員の過去の記事も以下にまとめている。

リカレント教育の重要性

個人の視点

これまで説明してきたように、技術革新や社会の変化が激しい現代社会において、新しい知識やスキルを身につけるためにもリカレント教育は非常に重要である。

また、個人のキャリア形成においてもリカレント教育は大きな役割を果たす。学びと仕事を交互に行うことで、実践的な知識や経験を積むことができ、より高度なスキルを身につけることが可能となる。リカレント教育を通じて得られる新しい知識や技術は、個人の市場価値を高めることができるのだ。

企業の視点

企業にとっても、リカレント教育は重要な投資となり、社員のスキルアップを支援することで、企業全体の生産性や競争力を向上させることができる。近年では、社員が仕事を続けながら大学で学び直すことができる制度を導入し、成功を収めている例もある。このような取り組みは、企業と社員双方にとって大きなメリットがある。

また、リカレント教育の導入を自社のみで完結する必要はなく、教育機関と連携することも可能だ。たとえば、教育機関が提供する社会人向けの柔軟な学習プログラムの利用やオンライン学習を提供している機関との提携、外部サービスの活用など、仕事と学びを両立できる制度作りが考えられる。

国や地域の支援制度

リカレント教育に関しては近年、国や地域の支援制度も充実している。たとえば、厚生労働省では、教育訓練給付金制度を通じて、社会人が学び直すための費用を支援している。この制度では、一定の条件を満たすことで、教育訓練費用の一部が給付されるため、経済的な負担を軽減できる。

また、リカレント教育を推進するための地域や業界ごとの取り組みも進んでいる。たとえば、地方自治体が主催するリカレント教育プログラムや業界団体が提供する専門的な研修コースなどがある。これらの取り組みは、地域や業界の特性に応じたスキルアップを支援し、地域経済や業界全体の発展に寄与できる。

ここでは、国が案内しているリカレント教育や制度に関するサイトを紹介する。

政府広報オンライン

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202108/1.html

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18817.html

教育訓練給付金制度

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

キャリア形成・リスキリング推進事業

https://carigaku.mhlw.go.jp/

文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/manabinaoshi/index.htm

マナパス

https://manapass.jp/

こども家庭庁

高等職業訓練促進給付金

https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/jiritsu-shien-kyuufukin/

また、リカレント教育以外にも行政が運営するポータルサイトに関して紹介した記事も公開しているので、参考にしてほしい。

まとめ

この記事では、リカレント教育の意味や生涯学習、リスキリングとの違いを解説した。技術革新や社会の変化が激しい現代社会において、常に新しい知識やスキルを身につけ、自己成長を続けていくことが求められる。

国や企業の支援制度をうまく活用することで、経済的な負担を軽減しながら学び続けることが可能だ。スキルアップや自己成長の一つとして活用してほしい。

関連記事

コラム

アンラーン(学びほぐし)とは?概要や必要とされている理由を合わせて解説

コラム

非正規社員の「技術的失業」の課題とリスキリング(学び直し)実態を探る

コラム

リスキリングの前に、人生の「リ・デザイン」を!「ほどよく諦める」適応的諦観という考え方ー法政大学キャリアデザイン学部教授 廣川 進 氏