ガラスの天井とは?意味や壊れたはしごとの違い、原因・日本の現状・解消に向けた取り組みを解説

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

「ガラスの天井(Glass Ceiling)」とは、能力や実績があるにもかかわらず、組織内の制度や慣行、固定的な価値観などによって昇進・昇格の機会が制限される“見えない障壁”を指す言葉である。

近年は女性活躍推進やダイバーシティ経営への関心が高まるなかで、「ガラスの天井」のほかにも「壊れたはしご(Broken Rung)」や「ガラスの崖(Glass Cliff)」といった概念も注目されている。 

本記事では、ガラスの天井の意味や由来、関連する概念との違い、日本における現状や原因、解消に向けた取り組みについて解説する。

ガラスの天井とは?意味や具体例

ガラスの天井とは、能力や成果があるにもかかわらず、組織内の慣行や固定的な価値観、無意識の偏見などの見えにくい障壁によって、上位役職への昇進・登用機会が制限される状態を指す。これは、主に女性をはじめ、多様な属性や背景を持つ人材のキャリア形成における課題を説明する際に用いられる。

「天井」と表現されているように、一定のキャリア段階までは昇進できても、その先の上位ポストへの道が見えない壁によって閉ざされている状況を意味している。

具体例としては、以下のようなケースが挙げられる。

  • 過去の管理職の多くが男性だったことから、無意識のうちに同様の人材が優先して選ばれるケース
  • 創業家出身者や特定のバックグラウンドを持つ人材に昇進機会が集中し、多様な人材が経営層に到達しにくいケース
  • グローバル企業において、外国籍人材が重要ポストへの昇進に必要なネットワークや機会へアクセスしにくいケース
  • 障がいのある社員に対し、挑戦的な業務や管理職候補としての育成機会が十分に提供されないケース など

この概念は1980年代のアメリカで広まり、その後、職場におけるジェンダー格差を表す代表的な言葉として世界的に用いられるようになった。

2016年にはヒラリー・クリントンがアメリカ大統領選挙で敗北した際のスピーチで使用したことでも知られている。日本でも高市首相という女性リーダーの誕生を契機に、「ガラスの天井を打ち破った」と再び注目される場面がみられた。 

ガラスの天井については性別に限るものではないが、本記事では特に日本において課題になっている「性別によるガラスの天井」をメインに解説していく。

ガラスの天井と壊れたはしご、ガラスの崖との違い

近年では、ガラスの天井に加えて「壊れたはしご」や「ガラスの崖」という概念が注目されている。ここでは、その違いを解説する。

「壊れたはしご」との違い 

壊れたはしご(Broken Rung)とは、アメリカのMcKinsey & CompanyとLean Inによる報告書『Women in the Workplace』のなかで提唱された概念で、女性が社会人としてキャリアをスタートした後、最初の昇進機会を得にくいことを指す。

同報告書では、女性のキャリア形成における最大の障壁は経営層近くの「ガラスの天井」ではなく、最初の管理職登用にあると指摘している。女性が初期段階で昇進機会を得られないことで、その後の管理職候補層が不足し、最終的に上位職にも女性が少なくなる構造が生まれるのである。

つまり、ガラスの天井が「キャリア後期の昇進を阻む壁」であるのに対し、壊れたはしごは「キャリア初期の昇進機会を阻む壁」という違いがある。

「ガラスの崖」との違い

ガラスの崖(Glass Cliff)とは、2004年にイギリスの研究者ミシェル・ライアン氏らによって提唱された概念で、企業業績の悪化や組織の混乱など、失敗するリスクが高い状況において女性がリーダーに任命されやすい現象を指す。

組織が危機的状況に陥った際、男性ではなく女性がトップに抜擢される傾向があり、結果として失敗した場合に女性リーダー自身が責任を負いやすい状況が生まれるとされる。

つまり、ガラスの天井が「昇進できない問題」であるのに対し、ガラスの崖は「リスクの高い状況でのみ昇進機会が与えられる問題」といえる。

日本におけるガラスの天井の現状と政府の取り組み

それでは、ガラスの天井の日本における現状と、それを解消するための政府の取り組みを見ていく。なお、すでに述べたようにガラスの天井については性別に限るものではないが、本記事では特に「性別によるガラスの天井」について考えていく。

女性管理職比率の現状

日本では女性の就業率が上昇している一方で、管理職への登用は十分進んでいない現状がある。内閣府「男女共同参画白書」によると、2024年時点で民間企業における女性比率は、係長級が24.4%、課長級が15.9%、部長級が9.8%となっており、役職が上がるほど女性比率が低くなる傾向がみられる。

これは、依然として管理職候補層や経営幹部層への女性登用が進んでいないことを示している。

国際比較でみる日本の現状

世界経済フォーラム(WEF)が公表した「Global Gender Gap Report 2025」によると、日本のジェンダー・ギャップ指数順位は148カ国中118位であった。特に経済分野や政治分野の順位が低く、女性の管理職比率の低さも課題として指摘されている。

また、内閣府「男女共同参画白書」によると、2024年時点で就業者に占める女性の割合は45.5%と諸外国と比較して大きな差はないものの、日本の管理的職業従事者に占める女性割合は16.3%であり、多くの先進国が30%を超えるなかで低い水準にとどまっている。

近年の法制度や政策の動向

こういった現状から、日本では女性活躍推進法を中心に、女性登用を促進するための施策が進められている。

同法では一定規模以上の企業に対し、女性活躍に関する状況把握や行動計画の策定、公表などを求めている。また、男女間賃金差異の公表義務化に加え、2026年4月からは女性管理職比率の公表義務も拡大される予定である。

企業の情報開示を進めることで、課題の可視化と改善を促す狙いがある。

ガラスの天井が生じる主な原因

日本においては、女性管理職比率やジェンダー・ギャップ指数が低いことが分かった。ここからはガラスの天井が生じる主な原因について解説する。

性別役割分担意識の残存

ガラスの天井が生まれる背景として、固定的な性別役割分担意識の存在が挙げられる。日本では以前から、「男性は仕事、女性は家庭」という考え方が根強く存在してきた。

近年は共働き世帯が増加し、価値観も多様化しているものの、こうした意識が完全になくなったわけではない。そのため、女性に対して「いずれ出産や育児で仕事を続けられなくなるのではないか」「責任の重いポジションは負担が大きいのではないか」といった見方がなされることがある。

マイナビが行った「【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2026年(2025年実績)」では、残業時間と家事時間を聞いた。結果を見ると、1カ月あたりの残業時間について、共働き正社員の男性平均18.6時間に対し共働き正社員の女性平均が8.9時間であり、その差は約10時間である。

1日あたりの家事時間については、共働き正社員の男性平均1.5時間に対し共働き正社員の女性平均が2.6時間であり、女性のほうが家事に費やす時間が1時間以上多い。【図1】

【図1】共働き正社員・1カ月あたりの残業時間と1日あたりの家事時間/マイナビ「【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2026年(2025年実績)」
【図1】共働き正社員・1カ月あたりの残業時間と1日あたりの家事時間/マイナビ「【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2026年(2025年実績)

この結果は、価値観が多様化した現在でも、仕事では男性の長時間勤務の負担、家庭内では女性の家事負担が大きい現状を示している。この背景には、無意識のうちに「男性は仕事」「女性は家庭」という役割分担意識が残っている可能性も考えられる。

アンコンシャス・バイアス

アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)も、ガラスの天井を生み出す大きな要因の一つである。

アンコンシャス・バイアスとは、自分では気付かないうちに持っている先入観や固定観念のことを指す。たとえば、「リーダーシップは男性のほうが発揮しやすいだろう」「女性はサポート業務のほうが適しているだろう」などの思い込みである。

詳しい説明は以下の記事をご覧いただきたい。

こうした思い込みは、必ずしも悪意によるものではない。しかし、人事評価や昇進判断に影響を与えることで、女性が重要なプロジェクトや責任あるポジションに抜擢される機会を減少させる可能性がある。

近年はアンコンシャス・バイアス研修を導入する企業も増えているが、無意識の偏見は組織全体に存在することが多いため、継続的な意識改革が求められる。

ロールモデル不足

ほかにも、女性管理職や女性役員が少ない職場では、将来のキャリア像を描きにくいという課題がある。

たとえば、管理職や経営層のほとんどが男性で占められている環境では、若手女性社員が「自分も将来その立場になれる」というイメージを持ちにくい。目標となる先輩や相談できる存在が身近にいなければ、管理職への挑戦そのものをためらう可能性もある。

また、企業側も女性管理職の候補者が少ないことを理由に登用を見送るケースがあり、その結果として女性管理職が増えないという悪循環が生まれることがある。

ロールモデル不足の問題は、単に管理職の人数を増やすだけでは解決しない。多様な働き方やキャリア形成を実現している事例を社内で共有し、女性が将来の選択肢を具体的にイメージできる環境を整えることが重要である。

長時間労働中心の評価制度

企業の評価制度や昇進基準が長時間労働を前提としていることも、ガラスの天井を生む要因となる。日本企業では長らく、「遅くまで働くこと」や「常に会社にいること」が評価につながりやすい傾向があった。現在では勤務時間の長さではなく、成果や能力によって評価されるべきであるという考え方に変化しつつあるものの、長時間労働を評価する風土が残っている企業もある。

すでに紹介したように、マイナビの調査では、共働き正社員の1カ月あたりの平均残業時間は男性18.6時間、女性8.9時間と、男性のほうが長い傾向がみられた。

育児や介護を担う従業員にとっては特に、長時間労働を前提とした働き方は大きな負担となる。能力や実績があっても、時間的な制約を理由に重要な案件や昇進候補から外されるケースも考えられ、このような価値観もガラスの天井の原因になる。

ガラスの天井がもたらす影響と解消するメリット

ガラスの天井は個人だけでなく企業や社会にも影響を与える。個人にとっては、昇進機会の減少やモチベーション低下、キャリア形成の制約につながる。

企業にとっては、有能な人材を十分に活用できないことによる生産性低下や人材流出のリスクがある。また、多様な視点が経営に反映されにくくなり、イノベーション創出の妨げになる可能性もある。

一方で、ガラスの天井を解消できれば、多様な人材が能力を発揮しやすくなり、人材確保や企業競争力の向上につながるというメリットがある。女性管理職の登用促進やダイバーシティ経営の実現は、ESG経営においても重要であり、組織へのエンゲージメント向上や企業価値の向上も期待できる。

ESG経営やエンゲージメントについては、以下の記事をご覧いただきたい。

ガラスの天井を解消するための取り組み

それでは、ガラスの天井を解消するために企業に求められる取り組みにはどんなものがあるのだろうか。大きく以下の四つが挙げられる。

公正な評価・昇進制度の整備

昇進や昇格の判断が上司の主観や慣例に依存している場合、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が入り込む余地が生まれやすく、ガラスの天井の原因となる。

そのため、企業には職種や役職ごとに求められる能力や成果指標を明確化し、性別にかかわらず公平に評価できる制度を整備することが求められる。たとえば、昇格要件や評価基準を明文化して全社員に共有したり、複数の評価者によるレビューを導入したりすることで、評価の透明性を高められる。

また、働く時間や場所に関係なく実力を発揮できる仕組みを整えることで、育児や介護と仕事を両立する人材にも公平に機会を提供することができる。

女性管理職候補の育成

女性管理職や女性役員を増やすためには、管理職候補となる人材の育成を計画的に進める必要がある。

多くの企業では、管理職層に占める女性の割合が少ないため、若手・中堅社員が将来のキャリアを具体的にイメージしづらいという課題を抱えている。そこで、リーダーシップ研修やマネジメント研修の実施、経営層との対話機会の創出などを通じて、管理職として必要なスキルや経験を身に付けられる環境を整えることが重要となる。

また、メンター制度の導入も有効である。実際に管理職として活躍する先輩社員がキャリア形成を支援することで、昇進への不安を軽減し、自身の成長や将来像を描きやすくなる。

メンター制度については、以下の記事をご覧いただきたい。

柔軟な働き方の推進

働き方の多様化も、ガラスの天井解消に向けた重要な施策である。前述したように、長時間労働が評価されやすい企業風土では、育児や介護などの家庭責任を担う人にとって大きな負担となり、キャリア形成に影響を及ぼす可能性がある。

そのため、テレワークやフレックスタイム制、短時間勤務制度などを整備し、ライフステージに応じた柔軟な働き方を選択できるようにすることが重要である。また、制度を整えるだけでなく、利用しやすい職場風土を醸成することも欠かせない。

柔軟な働き方が浸透すれば、優秀な人材の離職防止やエンゲージメント向上にもつながる。結果として、管理職候補となる人材の裾野を広げる効果も期待できる。

多様な働き方については、以下の記事をご覧いただきたい。

性別役割分担意識の解消

前述したように、共働き世帯が増えた現在でも家事や育児の負担は女性に偏る傾向があり、そのことが昇進機会やキャリア形成に影響を与えているケースは少なくない。そこで注目されているのが、男性の育児参加を促進する取り組みである。

たとえば、男性社員の育児休業取得を推進したり、育児中の社員が働きやすい制度を整備したりすることで、家庭内での負担を分散しやすくなる。さらに、育児休業を取得した男性社員の事例を社内で共有するなど、育児参加を前向きに評価する企業文化を醸成することも効果的である。

育児や介護を一部の人だけが担うのではなく、性別を問わず両立できる環境を整えれば、性別役割分担意識の解消に寄与できるだろう。

ガラスの天井の解消は企業の持続的成長にもつながる

能力や実績があっても見えない障壁によって昇進や昇格が妨げられる「ガラスの天井」は、女性をはじめ、多様な属性や背景を持つ人材のキャリア形成課題において語られることが多い。日本では女性の就業率が上昇する一方で、管理職や経営層に占める女性割合は依然として低い水準にある。その背景には、性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアス、長時間労働を前提とした働き方などが挙げられる。

ガラスの天井の解消に向けては、公正な評価制度の整備や柔軟な働き方の推進が重要であり、多様な人材が活躍できる環境づくりは企業の競争力向上にもつながる。ガラスの天井を組織全体の課題として捉え、一人ひとりが活躍できる職場づくりを進めることが求められている。

矢部栞
担当者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

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