働き方の変化と「休み方」再考の時代
2018年に始まった「働き方改革」や、コロナ禍をきっかけに広まったテレワークなどによって、私たちの働き方や職場の雰囲気はずいぶん変わってきたと感じる。こうした変化の中で、「働き方」だけでなく「休み方」についても、あらためて考えてみようという声が多くなっている。
法政大学の梅崎教授が提案する「休暇学」では、休息や余暇、小休止を単なる余った時間としてではなく、仕事の生産性や心身の健康を支える大切な仕組みとして捉えている。休み方ひとつで、仕事に戻るときの気持ちや集中力が大きく変わる――そんな視点をポイントにしている。
今回、私たちは職場における“ちょっとした休息”である「間食」に注目した。職場での間食は、単に「おなかを満たす」ためだけに留まらない。休暇学的視点で見ると、よりよく仕事をするための気分転換や同僚とのコミュニケーション機会など「自分のリズムを整える小さな工夫」として、さまざまな役割を持つと考えられる。
そこで、職場における間食が働く人にとってどういう存在なのか、またそれがどのような影響を及ぼすのかを探っていきたいと考えた。梅崎教授とともに「職場における間食と働く意識」について調査し、職場における間食についてその実態や機能を探ることになった。
第1回となる本稿では、本企画の導入として、調査から見えてきた職場における間食の実態をまとめる。調査概要は以下のとおりである。
<調査概要>
1.調査名:職場における間食に関する調査
2.調査対象:従業員101名以上の企業で働く、25~59歳のオフィスワーカー(正社員)
3.調査手法:インターネット調査
4.サンプル数:2,000サンプル
5.調査地域:全国
6.調査期間:2025年9月25日~9月27日
職場における間食の実態
間食習慣の有無とその頻度
まずは調査から見えた「職場における間食」の実態について紹介する。勤務中に間食する習慣の有無について聞いたところ、7割の人が間食すると回答していた。また、その頻度については「ほぼ毎日」との回答がもっとも多く21.3%だった。【図1】
【図1】勤務中の間食割合(1週間の頻度)/「職場における間食に関する調査」
よく食べられている間食の種類
次に「勤務中よく食べられている間食」の内容を見ると、「チョコレート類」が最多で88.2%、ついで「洋菓子類」で81.5%だった。【図2】
【図2】勤務中によく食べられている間食/「職場における間食に関する調査」
なお、間食の種類と頻度を掛け合わせてみたところ、「チョコレート類」はどちらかというと頻度が高く1週間に数回程度食べることが多く、「洋菓子類」は月数回からそれより少なかった。【図3】
【図3】勤務中によく食べられている間食×頻度/「職場における間食に関する調査」
仕事の合間にチョコレートをつまんでリフレッシュしたり、たまのご褒美にシュークリームを食べたり…といったように、間食のタイミングや内容を自分なりに工夫している様子がうかがえる結果だった。こうしたちょっとした選択や工夫を仕事中の“自分のリズム”をつくる手助けにしているのだろう。
間食が果たす役割――気分転換とコミュニケーション
一人で食べるか、誰かと食べるか
また間食するときは、一人で気分転換するだけではなく、誰かと一緒にちょっとした会話を楽しみながらという場合もあるだろう。
間食を誰かと一緒に食べる割合を聞いたところ、「いつも一人で食べる」と「誰かと食べる」という回答がおおよそ半々となった。【図4】
【図4】間食を誰かと食べる割合/「職場における間食に関する調査」
次に、業種別に見てみると、「流通・小売」では「0割(いつも一人)」が62.0%だったが、「医療・福祉・介護」では37.3%と全体平均よりも14.9pt低かった。【図5】
【図5】業種×間食するときに誰かと食べる割合/「職場における間食に関する調査」
この結果のみでは、推測の域を出ないが、これは、職場ごとの働き方やコミュニケーションの取り方の違いが表れていると考えられる。間食の習慣を通して、職場の雰囲気や人間関係のつくり方が垣間見えるのは興味深いポイントである。
間食することで得られる効果
職場で間食をする人としない人では、いくつかのポジティブな効果においても違いがみられる。
まず、「キャントリルのはしご」という指標を使って、人生に対する主観的幸福度(10段階で数字を示し、数字が大きいほど良い状態)を調べたところ、間食をしている人の73.0%が「5以上」と回答した。一方、間食をしない人では64.4%だった。数字だけを見ると、間食をしている人のほうが、日々の暮らしに前向きな気持ちを持っている傾向がうかがえる。【図6】
【図6】間食の有無別 主観的幸福度/「職場における間食に関する調査」
さらに、WHOのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)指標を使って、「生活の質への満足度」と「健康状態への満足度」も比べてみた。どちらの項目でも、間食をしている人のほうが「良い(4もしくは5)」と答えた割合が高かった。【図7】【図8】
【図7】間食の有無別 生活の質への満足度/「職場における間食に関する調査」
【図8】間食の有無別 健康状態への満足度/「職場における間食に関する調査」
特に注目したいのは、「健康状態への満足度」についても、間食をしている人のほうが高かった点である。間食というと、つい「太りやすい」「健康に悪いのでは」といったイメージを持ちがちだが、実際には間食を取り入れている人のほうが、自分の健康状態に満足している傾向が見られた。
この結果のみではあくまで推測となるが、間食は単なる気分転換だけでなく、日々の生活や健康への前向きな意識にもつながっている可能性がある。また、反対にこうした気分転換の方略を持つ人だからこそ、人生や生活に対して満足しているとも考えられる。
今後にむけて
今回の調査結果を振り返ると、職場で間食を取り入れている人は、主観的な幸福度や生活の質、健康状態への満足度がいずれも高い傾向が見られた。間食というと、つい「健康に悪いのでは」といったイメージを持ちがちだが、実際には日々のちょっとした楽しみや気分転換として、心身のバランスを整える役割を果たしている可能性がある。
また、間食の習慣は、職場でのコミュニケーションや自分なりのリズムづくりにもつながっており、働く人のウェルビーイングやキャリアの充実に寄与していることがうかがえる。
一方で、今回の分析はあくまで「間食の有無」と「主観的な満足度」との関係を大まかに捉えたものである。間食の内容やタイミング、職場環境との関係など、より細かな要素については今後さらに掘り下げていく必要がある。
たとえば、どのような間食がよりポジティブな効果をもたらすのか、間食を通じたコミュニケーションがどのように職場の雰囲気やチームワークに影響するのか、といった点も今後の分析テーマとなるだろう。 今後は、より多角的な視点から間食習慣の効果を検証し、働く人のキャリアや職場づくりに役立つ知見を深めていきたいと考えている。