日本では、2022年の民法改正により、18歳から「成人」として扱われるようになった。かつて成人式と呼ばれていた行事は多くの自治体で「二十歳のつどい」や「二十歳を祝う会」など名称を変更し、開催されている。18~20歳の時期は、進学・就職などさまざまな人生選択の重なる時期だが、若者たちは仕事や将来をどう捉えているのだろうか。
「二十歳のつどい」を目前に控え、社会とのつながりが少なからず発生しているアルバイト就業中の18~20歳の若者がどんな夢を描き、職業観を持っているのか調査データをもとに考察する。
若者の現状
人生全般に対する満足度
ライフキャリア実態調査より18~20歳のアルバイト就業者に対して、2024年4月~2025年3月の1年間を通した人生全般の満足度を聞いたところ、満足していた(とても満足していた+やや満足していた)割合は47.2%だった。一方で不満であった(とても不満であった+やや不満であった)割合は20.6%だった。【図1】
【図1】1年を通しての人生全般の満足度/ライフキャリア実態調査(2025年版)
孤独・孤立感
人生の満足度を左右する要素は何なのだろうか。前提として、自身の人生に満足感を得る方法や状況は人それぞれである。しかし、アリストテレスが「人間は社会的動物である」と述べたように、人は他者との関係性の中で生きる存在であり、「周囲との繋がり」は人生にとって欠かせない要素である。特に18~20歳は大学進学の時期にもあたり、子どもが「親離れ」を意識する時期である※1ことが分かっており、周囲の人との関係性が変化する時期だと考えられる。
こうした背景をふまえ、本稿では人生満足度の差を生む要素として、孤独・孤立感に着目し、「人生に満足(とても満足+やや満足)」層と「人生に不満(とても不満+やや不満)」層の比較を行った。その結果、仕事と私生活における孤独感はともに「人生に不満」を抱く層の方が感じていることが明らかとなった。
※1 詳細については下記コラムをご確認ください。
仕事での孤独・孤立感
人生に不満を抱く層でみると、アルバイト先の職場での孤独・孤立感を感じている割合は29.2%で、人生に満足している層(19.4%)よりも孤独感を感じている割合が9.8pt高かった。【図2】
【図2】人生満足度別でみた仕事・職場での孤独・孤立感/ライフキャリア実態調査(2025年版)
私生活での孤独・孤立感
また、私生活での孤独・孤立感では、人生に不満を抱く層では、孤独・孤立感を感じている割合が41.5%となり、人生に満足している層(29.1%)より12.4pt高い結果となった。【図3】
【図3】人生満足度別でみた私生活での孤独・孤立感/ライフキャリア実態調査(2025年版)
私生活に孤独・孤立感を感じる理由
私生活での孤独・孤立感を感じる理由では「友人関係が希薄なため(28.3%)」がもっとも高く、「金銭面での心配があるため(24.1%)」「劣等感があるため(24.1%)」が同率で続いた。
また人生満足度別に孤独・孤立感を感じる理由を聞くと、人生に不満を抱いている層で「友人関係が希薄なため」が46.3%ともっとも高かった一方で、満足層では「金銭面での心配があるため」が20.7%でもっとも高かった。
18~20歳のアルバイト就業者の場合、学業など私生活での時間が多い。そのため、職場よりも私生活での孤独感が人生満足度に強く影響している可能性が考えられる。特に「友人関係の希薄さ」は人生不満層で顕著であり、他者とのつながりが人生満足度に影響することが考えられる。【図4】
【図4】私生活に孤独や孤立を感じる理由/ライフキャリア実態調査(2025年版)
将来の夢・目標
では、将来についてどう捉えているのだろうか。
将来の夢や目標の有無
アルバイト就業者調査によれば、18~20歳でアルバイトをする「高校生」「大学生」「フリーター(非学生)」に「将来の夢や目標」の有無を尋ねたところ、「ある」と回答した割合は全体で61.5%だった。高校生では70.9%と高い一方、大学生は55.4%、フリーターは48.7%にとどまった。【図5】
【図5】将来の夢や目標の有無/アルバイト就業者調査(2025年)
将来の夢や目標の内容
また、夢や目標の内容を自由回答で分析したところ、以下の4つのカテゴリーに分類できた。【図6】
① 仕事×自己実現タイプ
「経営者」や「デザイナー」、「金持ち」や「大手企業に就職」など、仕事面で自身がありたい姿を示す回答が多くみられる傾向にある。
② 仕事×他者貢献タイプ
「看護師」や「教師」など、人の生活や成長を支援する職業や、「多くの人を助けたい」「貧困の課題解決」など、仕事を通じて他者や社会に貢献する回答が多くみられる傾向にある。
③私生活×自己実現タイプ
「楽しく生きたい」「余裕のある生活」といった価値観に加え、「一人暮らし」「海外旅行」「推し活」など、私生活での経験やライフスタイルを重視する回答が多くみられる傾向にある。
④ 私生活×他者貢献タイプ
「誰かを幸せにする」「周りの人を幸せにする」「親孝行する」など、他者への貢献や家族への思いやりを回答している傾向にあり、他と比較してやや抽象的である。
下記にて各カテゴリーの自由回答を抜粋する。
① 仕事×自己実現タイプ
- 資格を取得し、その資格を必要とする職に就いて、お金を貰い、そのお金で自立した人間になること(18歳女性/高校生)
- ブラジリアン柔術でプロ選手として生活すること(18歳女性/高校生)
- 野球関係の仕事に就き、より野球の面白み凄みを知ってもらえるような仕事に就きたい(19歳男性/大学生)
- コミュニケーションスキルを磨き、対人関係をうまく築けるようになること(19歳女性/大学生)
- 自分のペースで、自分の個性を活かせる仕事に就くこと(19歳女性/フリーター)
- 金利関係の事務職に就きお金を沢山稼ぐこと(18歳女性/高校生)
- 大手企業に就職して企画の仕事につくこと(19歳女性/大学生)
- 大学を出て、エンジニアになる(20歳男性/大学生)
- 年収500万以上稼ぐ(20歳女性/大学生)
- 就職したい企業に入る(20歳女性/大学生)
- 大学院でて、研究職に就く(20歳男性/大学生)
② 仕事×他者貢献タイプ
- 将来起業して、働きやすく楽しい職場を作って親孝行するのが夢で、そのための目標として現在資格を取るための勉強をしている(20歳男性/大学生)
- 製薬企業に就職して自分の知見を活かして日本だけでなく、世界の薬を必要としている人たちのために従事すること(19歳女性/大学生)
- 手話ができる社会福祉士として聴覚障害者の相談援助に携わること(18歳女性/高校生)
- 人の心の健康を守れる仕事に就きたい(18歳女性/高校生)
- 将来学校の先生になり、子供たちの成長をサポートしたい(19歳男性/大学生)
- 警察官になり、児童虐待また少年非行防止活動を行いたい(19歳女性/大学生)
- グローバル企業に務め世界の貧困などに対する課題解決(19歳女性/高校生)
- 言語聴覚士になって多くの人を助けること(19歳女性/大学生)
- 患者さんの心に寄り添う医師になりたい(20歳男性/大学生)
- たくさんの人を支えられる人になること(18歳男性/高校生)
- みんなを笑顔にできるトリマー(18歳男性/高校生)
③私生活×自己実現タイプ
- 楽しく生きたい。これといって何かになりたいとかはないがとにかく自由に楽しく、笑顔でいたい(19歳男性/大学生)
- お金に困ることなく、幸せに暮らす。家族との時間を大切にしながらも、仕事を楽しくできる(18歳女性/高校生)
- 自由な時間が多いうちに海外旅行や、自身の成長に繋がること、趣味や推し活を沢山やりたい(18歳女性/高校生)
- 一人暮らしをして、毎週日曜日に甘いものが食べられるくらいの余裕のある生活を送ること(18歳女性/高校生)
- 程よく収入があり、自分の趣味など気ままにのんびり過ごすことができる日々(18歳女性/高校生)
- ワークライフバランスのとれた生活をしつつ、猫を飼い、健康にすごすこと(20歳男性/大学生)
- 明確な夢は無いが、生涯を通して安定した生活を送りたい(18歳男性/高校生)
- 値段を気にせず食べ物を買えるようになる(18歳女性/高校生)
- 家族と幸せに暮らしていくこと(18歳女性/高校生)
- 一人暮らしをして猫を飼うこと(18歳女性/高校生)
- たくさん笑って過ごすこと(18歳女性/高校生)
④ 私生活×他者貢献タイプ
- 人を楽しませること(20歳男性/大学生)
- みんなが幸せになること(20歳男性/大学生)
- 誰かを幸せにする(19歳女性/大学生)
- 彼女を幸せにする(19歳男性/大学生)
- 人の役に立つこと(19歳女性/大学生)
- 音楽で人を幸せにする(19歳女性/フリーター)
- 祖父母・親孝行をすること(19歳女性/大学生)
- 人の役に立つ(19歳女性/大学生)
- 周りの人を笑顔にする(18歳女性/高校生)
全体では、職業や就職に関する回答が多く、就職に向けた資格獲得の声もみられた。属性別の傾向としては、男性の方が「自己実現タイプ」が、女性と比較して多い傾向にあり、女性の方が、「他者貢献タイプ」が男性と比較して多い傾向にあった。
またフリーターでは「自己実現タイプ」が多い傾向にあり、高校生では「他者貢献タイプ」が多い傾向にあった。
将来の夢・目標は、キャリア選択の決め手となりうるが、内容をみると、必ずしもそれだけとは限らない。職業を通じて社会や他者に貢献したいと考える若者もいれば、資格やスキルを磨き、経済的な自由を得て自己実現を目指す若者もいる。また、仕事に限らず、幸せな生活や健康を重視する声もみられる。若者の価値観は一様ではなく、さまざまな周囲の環境からの影響と自身の価値観を混ぜ合わせながら変化すると考えられる。
職業観の形成について
職業観の形成タイミング
先ほど、将来の夢・目標では18~20歳のアルバイト就業者の多くが職業や就職に関して記入していたが、若者たちは仕事について、いつ頃から考え始めたのだろうか。
ライフキャリア実態調査の18~20歳のアルバイト就業者に対して、仕事について漠然と考え始めた時期を聞いたところ、「15~18歳」が32.2%でもっとも高く、「小学校高学年」が14.8%で続いた。
また、もっと早く考えておけばよかったと思うタイミングも「15~18歳」が39.2%で最多であり、「中学3年生」が18.2%で続いた。15~18歳の高校生期は文理選択や進学・就職を検討する重要な時期であり、この時期に仕事について考え始める層が多く、この時期に考えておけばよかったと振り返る層も多いことがわかる。【図7】
【図7】仕事や職業・業界について具体的に考え始めた最初のタイミング/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
職業観への影響要因
また、将来の仕事について考える上で影響があったものを聞いたところ、「自分が得意なことだった」が18.3%でもっとも高く、「家族の話やアドバイス」が16.3%、「SNS・インターネットで見聞きした情報の影響」が16.0%で続いた。【図8】
【図8】将来の仕事について考える上で影響があったもの/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
上位に挙げられた「自分が得意なことだった」という回答について、「自分はこれが得意なんだ」と認識するきっかけを推察すると、家族や友人など周囲の人に褒められた経験などが考えられる。
家族や友人とのつながりは、孤独・孤立感の緩和だけでなく、自己理解にもつながり、キャリア形成に影響を及ぼす可能性がある。
ただし、SNSやインターネットで見聞きした情報の影響、テレビ・映画などの影響が上位に来ている点も見逃せない。自分が実際に経験していない第三者からの情報のみで仕事のイメージを膨らませることは、キャリアを考えるきっかけとしてはよいが、個人単位のロードマップにはなりづらい傾向にある。
多様な職業について幅広く理解し、個人にマッチしたロードマップをどのように引いていくのか、デジタル世代ならではの方法が求められる。
まとめ
若者の孤独感を解消することは、人生満足度を高める上で重要な課題である。本稿では、18~20歳の人生不満層で「友人関係の希薄さ」に起因する孤独感が突出しており、他者とのつながりを求める傾向が強いことがわかった。
また他者とのつながりの中で褒められる経験は、自分の得意分野を認知するきっかけとなる。さらに、アドバイスを受けることは、自分と他者の違いを発見する機会となり、いずれも将来の職業キャリア形成にも影響を与える可能性がある。このように家族や友人との会話や繋がりは若者の将来イメージを描くうえで非常に重要な役割を果たす。
また若者では、SNSやネット、テレビや映画なども情報収集の手段として利用される傾向がみられた。SNSは幅広い情報の収集に役立つ一方で、誤情報や情報漏洩リスク、ネット犯罪への対応の難しさといった問題を抱えており、キャリア形成に必要な個別性の反映には限界がある。
若者に将来の夢や目標をより具体的に幅広く描くためには、SNSやネットなどオンラインツールをどう位置付け、活用するかが鍵となる。デジタル世代に適したキャリア支援の設計はオンラインとオフライン両面のつながりを強化し、孤独感の解消とキャリア形成を両立させる支援が今後ポイントとなるだろう。
キャリアリサーチLab研究員 嘉嶋麻友美