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個性と才能を強みに、1人ひとりが自分らしく成長と進化をし続ける「開かれた組織」へ(トレンダーズ株式会社)

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

マーケティング事業を展開しているトレンダーズ株式会社。2024年3月時点では、「女性従業員割合」「女性管理職割合」ともに87%を占めている。女性社員の産休育休からの復帰率はもちろん、男性社員の育休取得率もともに100%を実現しており、ライフイベントとキャリアを両立するための職場環境を整えている。

個人のキャリアを応援し、成長スピードを加速させるためにどのような取り組みを行ってきたのだろうか。経営戦略Div. 執行役員を務める大西さんに、同社のダイバーシティ&インクルージョンの実績や取り組みについて聞いた。

D&Iに取り組む企業を評価する「D&I AWARD」で2年連続「ベストワークプレイス」に認定された
D&Iに取り組む企業を評価する「D&I AWARD」で2年連続「ベストワークプレイス」に認定された

トレンダーズ株式会社
設立:2000年
事業内容:マーケティング事業

経営戦略Div. 執行役員 大西 香織さん
2009年にトレンダーズ株式会社へ新卒入社。クライアントのマーケティング支援に携わる。2019年には経営戦略Div.を立ち上げ、エグゼクティブマネージャーに就任し、社内の中期的な課題解決につながる全社横断プロジェクトを担当。現在は執行役員として人事領域なども広く管掌している。

「想定外の自分に出会える場所」でありたい

「想定外の自分に出会える場所」でありたい
「想定外の自分に出会える場所」でありたい

社員の個性が会社成長に直結する

トレンダーズはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進する企業としても注目を集めていますね。「社員1人1人働きがいが感じられる組織」を目指し、さまざまな努力をされていると思います。その背景には、どのような想いがあるのでしょうか?

大西:背景としては「社員の個性を大切にするカルチャー」がベースにあると思っています。トレンダーズは「トレンドを捉え、新しい時代を創る」をミッションに掲げ、事業内容の柱であるマーケティング領域において、常に新しい事業やサービスに着手してきました。デジタルやSNSを活用したマーケティングをいち早くクライアントに提供し、プロモーションに活用してきた実績があります。

そうなると自然に「新しいものに興味がある」「今、ここにないものを作りたい」と考える人材が集まるようになり、そんな想いを持ち、異なる個性を持つ社員1人ひとりの存在がビジネスの根源になっています。そうしたメンバーが働きがいを感じ、最大限に個性や能力を発揮して自由に働ける環境こそが、当社のビジネス成長にも直結しますし、必然的に「社員の個性が活きるカルチャー」が根付いていったと感じています。

また創業以来、事業内容的にも女性社員比率が高く、結果として女性管理職比率が高い水準にあることも、女性が活躍しやすい環境整備につながっています。しかし本質的には、男女問わずあらゆる人の個性が輝く会社を目指し、「想定外の自分に出会える場」を創っていきたいと考えています。

誰もが望んでいるキャリアに挑戦できる環境を

「女性活躍推進のため」だけではなく、すべての社員が活躍できる環境を目指しているのですね。

大西:はい。年齢性別問わずフラットでオープンな、それぞれが自分らしく活躍し続けられる組織にしたいと思っています。

「D&I推進」を語る時には、どうしても「女性活躍」という文脈だけが大きくフォーカスされがちです。特に当社は元々の女性社員数が多いため、管理職比率も高くなりますが、男女問わず個人の能力・評価によってキャリアアップし続けられる組織・仕組みづくりにこれからも注力したいですね。

全社横断で取り組んでいる「D&I推進」の取り組み

オフィス内は開放感があり、周囲に声をかけやすいレイアウトとなっている
オフィス内は開放感があり、周囲に声をかけやすいレイアウトとなっている

各事業部と連携しながら施策を協議

具体的にはどのようにD&Iを推進されているのでしょうか?

大西:D&I推進においては、代表取締役はじめ役員・人事チーム・バックオフィス部門のメンバーで連携をとりながら推進しています。各事業部と連携し、リモートワークの活用やフレックスタイム制、各種休暇制度の整備といった基本的な制度をはじめとし、各種研修の実施、産育休復職サポート体制や各種面談制度の充実なども進めてきました。

社員からの要望や意見を受け、必要に応じて協議をしながら制度設計や導入をしていくことが多いです。「どうすればもっと働きやすくなるだろう?それならば、こうしてみよう」と考え、よりよい組織にアップデートし続けたいと考えています。

D&I推進の取り組みに対し、社員の方からの声や反応などはありますか?

大西:中途入社したばかりのメンバーと面談すると「とても働きやすい」との声をよく聞きます。「産休育休後の復帰率100%なので、安心して戻って、長く働けそう」という声もありますね。育休復職後のメンバーからも、サポート体制があり安心して戻ることができたという声をもらうこともありますね。

これまでにも社員が増え、組織規模が大きく成長していくタイミングで「こういう制度が必要では?」との声が上がり、実現してきました。最初は個別に対応する機会も多かったのですが、少しずつ汎用化し、充実した制度へと変化させてきたんです。声が挙がれば、制度へ柔軟に反映するようにしています。

たとえば直近ですと、病院の付き添いなどの看護休暇の利用にあたり、より柔軟に短時間単位で取得できるよう制度を変更しました。

また、「気軽に相談できる相手がほしい」という声をふまえてオンラインカウンセリングサービスを導入するなど、1人ひとりの声をヒントに、柔軟かつスピーディに実現することを心がけています。その都度、社員にとって必要なことを実行する。そういうスタンスで、動くようにしています。

働き方が変わるのは当たり前のこと

「さまざまな取り組みを進めてきたものの、まだまだ取り組みたいことが多くある」と語る大西さん
「さまざまな取り組みを進めてきたものの、まだまだ取り組みたいことが多くある」と語る大西さん

「人が好き」という気持ちが根底にある社員たち

トレンダーズのカルチャーとして「D&I推進が当たり前」になっているのは、なぜだとお考えですか?

大西:「D&I推進に取り組む」という意識ではなく、自然とそうなったのではないでしょうか。会社の成長に伴いライフイベントによる働き方が変化するなかで個人に合わせた働き方を選べなければキャリアや仕事をあきらめることになります。

当社のミッションに掲げている「新しい時代を創る」を実現するために、社員1人ひとりにとって今の時代における理想の働き方やキャリアを叶えられる環境でありたい。だからこそ、柔軟かつ個人が最大限活躍するために必要な働き方やミッション・機会に溢れた組織でありたいと考えています。

もちろん、すべてがうまくいっているわけではありませんが、課題があっても「解決に向けて、仕組みを見直そう」とポジティブに捉えています。これからも会社の成長とともに起こる沢山の課題を乗り越え、働きがいのある会社にしていきたいです。

社員の働きやすさを支えるには

そうした風土やカルチャーがあるからこそ、社員1人ひとりの成長スピードも加速していくのかもしれませんね。

大西:キャリアについて考える機会も定期的に設けています。半年に一度、希望制で代表や役員とのキャリアや組織改善の面談制度があります。異動の希望に関わらず、中長期的なキャリアの相談が出来たり、組織の改善につながる場になったりする制度です。

このように各自の要望をなるべく反映しつつ、本人も想定していなかった新しいミッションの提示なども含め、トレンダーズという場所でより活躍できるキャリアやミッションに挑戦できる機会があふれるといいなと思っています。

それぞれの「大切にしたい価値観」を丁寧に聞く

実際に「働きがいと働きやすさ」を求めてキャリアチェンジをされた方について教えてください。どのような働き方をされている方が多いのでしょうか?

大西:私自身も入社当初の「営業」からミッションチェンジし、様々な領域にチャレンジさせていただいています。他にも産休取得の前は「営業」でしたが、「マネージャー」として復職したメンバーもいたり、新規事業立ち上げに携わった社員もいます。

人によって「大切にしたい価値観」は違いますから、勤務時間を優先して短時間勤務に切り替える方もいますし、それぞれの価値観に沿って働き方を選択しています。

会社としては「あなたはこうだから」と押し付けたりせず、希望を丁寧に聞いて、優先するようにしてきました。提案する場合は、きちんと希望を聞いた上で「これはあなたに適性があるかも」と伝えています。

やはり本人がやりたいことであったり、モチベーションを持って働けたりする方が、スキルも伸びると思うんです。また、定期的に面談をして「無理をして働いていないか」なども確認し、必要であればサポートや業務調整をしています。新たな仕事を始めるためのオンボーディングも、仕組み化するようになりました。個人の働きがいを尊重しながら、働きやすい環境も充実させていきたいです。

仕組み化を進め、より柔軟な対応を可能に

社員の声はなるべく直接聞くようにし、次の制度設計・施策導入にも活用している
社員の声はなるべく直接聞くようにし、次の制度設計・施策導入にも活用している

カスタマイズしやすくするための仕組み化

人事制度や福利厚生として「仕組み化」をする際に、意識されていることはありますか?

大西:このまま社員数が増えれば、個別対応はさらに増えていくでしょう。その時のために準備しておきたい気持ちもありますので「整備できる点は決めてしまおう」と考え、今は共通項を洗い出している最中です。

今後社員がますます増えたとしても対応できるように、先んじて仕組み化を進め、ブラッシュアップしていこうとしています。そうなれば余力も生まれ、カスタマイズ対応もできるようになるでしょう。

まずは相手と向き合い、じっくりと聞く

仕組み化を進める上で、大切にしていることは何ですか?

大西:社員からの「これってどうですか?」「トレンダーズとしてどう考えますか?」と意見が上がったものに対しては、きちんと聞くようにしています。

特別な施策などはないのですが、いつでもオープンに相談できるようにしています。転職されてきたばかりの方、新卒入社の方は特に「新しい視点」を持っているので、面談の機会を多く持ち、そこから出た意見を反映することも多いです。

人事のメンバーもフラットなコミュニケーションが好きなタイプなので、社員と世間話をしながら「こういう困りごとがあって」と気軽に相談してもらえるような関係を作っていけるように心がけています。

社員の持つ背景を理解し、尊重していきたい

トレンダーズが発行しているフリーマガジン『ampule magazine』。美容業界のトレンドが分かる
トレンダーズが発行しているフリーマガジン『ampule magazine』。美容業界のトレンドが分かる

活躍できる環境とキャリアを、全力で応援したい

最後に、今後の目標について、教えてください。

大西:多様な個性や背景をもつあらゆる方が、1人1人の得意や強みを活かして安心して働けること、そして関わってくださる周囲の皆さまから愛され応援される会社でありたいと思っています。

そのためにも、相手をリスペクトすることを大切にしていきたいですね。相手のことを考えて、コミュニケーションを取ることがやはり重要だと思います。当社が掲げているクレド(行動指針)の中にも「RESPECTFULLL !」という言葉がありますが、一緒に仕事を進めるメンバーやクライアント、社外パートナーも含めて相手の気持ちについて考える姿勢を忘れないでいたいと思います。

具体的な施策にもそうした想いを反映させ、アンコンシャスバイアス研修などを実施する機会も増えてきました。実施後のアンケートを見ると、社員の考えが深まっている様子も分かり、手応えも感じました。これからも継続して学ぶ機会を持ちながら、それぞれの社員としても、会社としても成長していきたいですね。

編集後記

働きがいと働きやすさを両立してきたトレンダーズは、そのD&I推進の実績が評価され、2024年5月には「プラチナ企業ランキング」32位を獲得しました。(日本経済新聞朝刊(2024年5月7日付)におけるプラチナ企業上位ランキングにて)

「D&I推進」は、女性活躍の文脈で語られることが多々あります。しかし本来は性別に関係なく、誰もが自分らしく働き、活躍できるために取り組む施策であるべきでしょう。個人が「自分の意志で、働き方を自由に選択できるかどうか」は、ウェルビーイングな働き方を実現する上で欠かせない要素だと思います。

取材を通じて印象的だったのは、組織の柔軟さです。「こうした方がもっと働きやすい」という声を個人が挙げると、すぐに対応し、制度として仕組み化されていきます。その一連の流れは非常にスムーズで、スピード感がありました。設立以来、「働き方の多様性」を認め、選択しやすい環境を作り続けてきた結果、個性を活かしたオープンなカルチャーを社内に根付かせることができたのだと感じました。

執筆:林 美夢

片山久也
登場人物
キャリアリサーチLab編集部
HISANARI KATAYAMA

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