ケイパビリティとは?ビジネスでの意味や使い方、把握する方法も紹介

キャリアリサーチLab編集部
著者
キャリアリサーチLab編集部

ビジネスシーンで注目を集めている言葉のひとつに「ケイパビリティ」がある。本コラムでは、ケイパビリティの意味やコアコンピタンスとの違い、企業経営と関係が深い「ダイナミック・ケイパビリティ」と「オーディナリー・ケイパビリティ」の意味などを詳しく解説。また、企業のケイパビリティを把握する方法や高める方法も紹介する。

ケイパビリティとは?ビジネスにおける定義

ケイパビリティ(capability)とは、能力や才能、可能性といった意味を持つ単語である。ビジネスにおいては、企業や組織が持つ総合的な組織力、また他社よりも優位なその企業ならではの強みを指す。ケイパビリティは個人の能力ではなく、組織全体の能力を示す言葉である点が特徴だ。

この概念は、ボストン・コンサルティング・グループのジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス・シュルマンの3名による1992年の論文『Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy』のなかで提唱された。

コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティとよく混同される用語に「コアコンピタンス」がある。コアコンピタンスとは、他社に真似できない核(コア)となる能力や技術を指し、ゲイリー・ハメルとコインバトール・K・プラハラードによる1990年の論文『The Core Competence of the Corporation』のなかで提唱された。

どちらも企業の強み、能力をあらわす言葉であるが、ケイパビリティは組織全体の力、コアコンピタンスは核となる特定の技術やノウハウそのものを指す点に違いがある

ケイパビリティの種類

アメリカの経営学者であるデイヴィッド・J・ティースによると、ケイパビリティには、大きく分けて「ダイナミック・ケイパビリティ」と「オーディナリー・ケイパビリティ」の二つがある。それぞれについて解説する。

「ダイナミック・ケイパビリティ」と「オーディナリー・ケイパビリティ」の違い/マイナビ作成
「ダイナミック・ケイパビリティ」と「オーディナリー・ケイパビリティ」の違い/マイナビ作成

ダイナミック・ケイパビリティ

ダイナミック・ケイパビリティとは、変化の激しい環境のなかで企業が持続的な競争優位性を確保するために、組織内部の資源や能力を再構築・統合・変革していく力を指す概念である。

日本においても近年注目を集めており、経済産業省や厚生労働省、文部科学省が発行した『2020年版ものづくり白書』のなかで「企業変革力」と定義された。

ダイナミック・ケイパビリティは、単なる改善活動ではなく、企業の根幹となるリソースを大きく作り替える「変革能力」を意味する点が特徴だ。これは、市場や技術の変化に適応しながら、自社のビジネスモデルや組織構造、プロセスを継続的にアップデートしていく能力ともいえる。

デイヴィッド・J・ティースは、ダイナミック・ケイパビリティを「感知(Sensing)」「変容(Transforming)」「捕捉(Seizing)」の3つに分類しており、企業はこれらを通じて環境変化に迅速に対応していく。そのためこの能力は一度構築したら終わりではなく、環境変化に合わせて絶えず鍛え続ける必要があるといえる。

オーディナリー・ケイパビリティ

オーディナリー・ケイパビリティとは、企業が日々の業務を効率的かつ安定的に遂行し、利益を最大化する能力を指す概念である。先述の『2020年版ものづくり白書』のなかでは、「通常能力」と表現されている。

生産管理や営業活動、人材育成、品質管理、IT運用など、企業のオペレーションを支える一連のプロセスがこれに含まれる。これらの能力は短期的な成果創出やコスト効率の向上に直結する。

オーディナリー・ケイパビリティは既存活動の最適化を目的としているため、急激な環境変化に対応したり、ビジネスモデルを刷新したりする力とは異なる。つまり、安定した価値提供を可能にする一方で、それだけでは競争優位を持続的に生み出しにくい側面がある。

とはいえ、どれほど高度な変革能力を持つ企業であっても、日常業務を支えるこれらの基本能力が欠けていては事業運営が成立しないため、オーディナリー・ケイパビリティは企業活動の土台として不可欠な役割を果たしているといえる。

自社のケイパビリティを把握する方法

それでは、ここからは企業が自社のケイパビリティを把握するための方法をふたつ紹介する。

SWOT分析

SWOT分析とは/マイナビ作成
SWOT分析とは/マイナビ作成

一つ目は、「SWOT分析」である。SWOTとは、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat) 」の頭文字からなり、「スウォット」と読む。

SWOT分析とは、企業の内部環境である「強み」と「弱み」、外部環境である「機会」と「脅威」を体系的に整理する手法で、ケイパビリティの現状把握と将来の方向性検討を行うことができる

内部環境の分析は、自社の能力がどの領域で優位性を持っているのか、どこに改善余地があるのかを明確にできる。これにより、限られた経営資源のなかでも、どの能力に投資すべきかを判断する基盤が整う。

外部環境の分析は、企業の能力が今後どの方向で活かされるべきかを示す。市場トレンドや技術革新、制度変化、競争状況などを機会と脅威の観点から整理することで、どの能力が強化されるべきか、どの能力が不要になる可能性があるかを考察できる。

バリューチェーン分析

二つ目は、バリューチェーン分析である。これは、企業の価値創造プロセスを「連鎖(チェーン)」として捉え、どの活動が競争力の源泉となっているのか、あるいは価値を阻害しているのかを明確にするための手法である。

ケイパビリティは企業の各活動に埋め込まれたプロセスやノウハウの総体であるため、バリューチェーンを分解して考えることは、能力の源泉を可視化するうえで非常に有効である。

分析は、購買・物流・マーケティング・営業といった主活動と、人事労務や開発などの支援活動に分けて行われる。この枠組みを用いることで、企業が「どの活動で価値を生み」「どの活動がボトルネックになっているのか」を体系的に把握できる。

バリューチェーン分析がケイパビリティの把握に有効なのは、単なるプロセスの棚卸しではなく、企業の強みがどの活動の組み合わせから生まれているのかを特定できる点にある。また、外部環境や競合との比較にも適しているため、自社の価値創造プロセスが市場の要請に適応しているかを診断できる。

企業がケイパビリティを高める方法

自社のケイパビリティを把握できたら、次はそのケイパビリティを高める必要がある。ここからは、その方法を紹介する。

ケイパビリティ・ベース競争戦略―今ある強みを生かして市場の競争優位確保

企業が自社のケイパビリティを最大限に活用し、競争優位性の確保を目指す戦略を「ケイパビリティ・ベース競争戦略」と呼ぶ。これは、以下の4つの原則に基づいて行われる。

  1. ビジネスプロセスの重視
    市場や製品ではなく、価値を生み出す組織のプロセス(ビジネスプロセス)に焦点を当てて戦略を立てる
  2. 主要なビジネスプロセスの変換
    従来のやり方を単に改善するだけでなく、プロセスそのものを再設計し、より高い生産性・顧客価値・スピードを実現する
  3. 部門間のインフラ整備
    部門間のインフラを整備することで、各部門の連携が強化され組織全体の力を向上させる
  4. トップの推進
    組織横断的なケイパビリティを推進するためには、経営トップからの積極的な推進が求められる

これらにより、組織力の強化と持続的な競争優位性の確保を目指すことができる。他社には模倣が困難なケイパビリティで長期的に安定した競争優位が保たれるため、とくに安定した市場において有効となる。

ダイナミック・ケイパビリティ戦略―変化に対応し新価値を創る

ダイナミック・ケイパビリティの意味は先述の通りである。ダイナミック・ケイパビリティ戦略とは、会社が「変化に強い力」を身につけるための戦略を指す。

デイヴィッド・J・ティースによる3つの分類、「感知(Sensing)」「変容(Transforming)」「捕捉(Seizing)」を詳しく説明すると、まず「感知(Sensing)」は、”外部の変化を見つける力”であり、顧客ニーズや技術の進化、規制の変化などを迅速に捉える仕組みが求められる。

次に「変容(Transforming)」は、見つけた変化を”素早く自社の行動につなげる力”であり、察知した機会を戦略として具体化し、果断に意思決定していく。

最後に「捕捉(Seizing)」は、”会社の資源や組織を柔軟に作り替える力”である。新しい事業や技術に合わせて組織の仕組みを変え続けられる企業は、環境変化が激しくても競争力を維持しやすい。

ダイナミック・ケイパビリティ戦略の本質は、「変化を恐れず、変化を自らつくり出す能力」を育てる点にある。既存のケイパビリティを磨くだけでなく、新しいケイパビリティを素早く獲得し続けることで、企業にとって不確実な時代に変化し続けること自体が強みとなり、長期的な競争優位を築くことができる。

ケイパビリティを高めて企業価値向上を

本コラムでは、ケイパビリティのビジネスにおける意味や把握する方法、高める方法について紹介した。企業が持続的に成長し、社会から選ばれ続けるためには、優れた製品やサービスを持つだけではなく、企業の持つ「ケイパビリティ」をいかに高めるかが重要となる。

まずは自社の強みと弱み、価値を生み出すプロセスの実態を把握すること、そしてビジネス環境の変化に合わせて柔軟に変化する姿勢が求められている。ケイパビリティを意識して強化していくことは、競争力の向上だけでなく、企業理念の実現や顧客価値の創出にもつながる。自社の「能力の源泉」を見つめ直し、企業価値向上に向けた取り組みを一歩進めてみてほしい。

矢部栞
担当者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

関連記事

レジリエンスとは?ビジネスでの重要性や高めるためのポイントを解説

コラム

レジリエンスとは?ビジネスでの重要性や高めるためのポイントを解説

データをもとにしたプログラムで次世代のリーダーを育成<br>【コカ・コーラ ボトラーズジャパンビジネスサービス株式会社】

コラム

データをもとにしたプログラムで次世代のリーダーを育成
【コカ・コーラ ボトラーズジャパンビジネスサービス株式会社】

「ネタバレ消費」「失敗したくない」…Z世代の傾向を「ネガティブ・ケイパビリティ」を通して見る

コラム

「ネタバレ消費」「失敗したくない」…Z世代の傾向を「ネガティブ・ケイパビリティ」を通して見る