共働きのしんどさは何から生まれるのか~「両立」と「心のゆとり」の実態から考える

元山春香
著者
キャリアリサーチLab研究員
HARUKA MOTOYAMA

はじめに

「仕事も育児も、どちらも大切にしたい。」
そう思いながら日々を過ごしていても、ふとした瞬間に「もう限界かもしれない」と感じることがある人もいるのではないだろうか。

昨今、子どものいる世帯の多くが共働きとなり、仕事と家事・育児を夫婦で分担・両立していく重要性も高まっている。一方、SNS上で「共働き限界界隈」というワードが飛び交うなど、そのしんどさを感じる人も少なくない。

同じように働きながら子育てをしていても、限界を感じる人とそうでない人がいる。その違いはどこにあるのだろうか。

今回は、子どもがいて共働きをしている会社員男女(正規・非正規問わず)を対象に、「仕事と家事の両立」と「心のゆとり」に着目し、共働きのしんどさにどのような要素が関係しているのか探った。

4人に1人が「仕事と家事の両立に限界を感じている」

子どものいる20~60代の共働き世帯(会社員)に、「仕事と家事の両立」について聞いたところ、24.1%が「限界を感じている」「どちらかといえば限界を感じている」と回答した。共働きが広がる中約4人に1人が仕事と家事の両立に限界を感じている​​ことになる。【図1】

【図1】共働きをする中での「仕事と家事の両立」の限界感/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図1】共働きをする中での「仕事と家事の両立」の限界感/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

共働きでしんどさを感じやすい層とは

限界を感じている層の特徴をみると、限界を感じる割合は男性より女性で高く、特に20~30代の女性や、配偶者も自身も「正社員」として働く層で高い傾向が見られた。【図2・3】

【図2】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(性年代)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図2】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(性年代)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図3】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(雇用形態)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図3】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(雇用形態)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

また、子どもの年齢別では6歳以下の子どもがいる」人で34.6%となりもっとも高く、年齢が上がるほど限界を感じる人の割合が低くなる傾向がみられた。子どもの人数別では大きな差はないものの、人数が少ないほど限界を感じる人の割合がやや高かった。【図4】

【図4】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(子どもの年齢・人数)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図4】共働きにおける仕事と家事の両立で限界を感じている人が多い層(子どもの年齢・人数)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

こうした結果から、子どもを持つ世帯の共働きのしんどさは特定のライフステージに集中していることがうかがえる。

一方で、同じような環境や状況に置かれていても、限界を感じている人とそうでない人がいる。限界を感じていないからといって必ずしも余裕があるとは限らないが、両者を分けるものは何なのだろうか。

「仕事と家事の両立」を左右するものとは

「仕事と家事の両立」について限界を感じる人(限界層)と感じていない人(非限界層)の職場環境・家庭内援助・働く意識の違いを見たところ、下記の結果であった。【図5】

【図5】共働きをする中での支えや環境についてあてはまるもの(「仕事と家事の両立」限界層と非限界層で比較)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図5】共働きをする中での支えや環境についてあてはまるもの(「仕事と家事の両立」限界層と非限界層で比較)/出典:「マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

限界層では、「仕事と私生活を意識的に切り替えられている」「家事や育児において『完璧でなくてもよい』と割り切れている」が非限界層より10pt以上低かった。限界を感じる背景には、気持ちを切り替える難しさなどが関係している可能性がある。

また、こういった意識面の項目を除くと「仕事量や業務内容を状況に応じて調整できている」で非限界層との差がもっとも大きかった。子どもの急な発熱や学校行事など、子育てでは予定通りにいかない場面も少なくない。そのような状況でも仕事量や役割を調整できる余地があるかどうかは、両立に大きく関係している可能性がある。

次いで「配偶者と家事・育児は協力し合えている」が5pt以上低い数値となり、配偶者と協力しながら家庭を運営できることも重要であることがうかがえる。

一方で、「勤務時間や働き方に柔軟性がある」や「家事・育児の負担が一方に偏りすぎていない」「家事代行サービスの利用」「時短家電の利用」などについては、むしろ限界層の方が高い結果となった。
一見すると意外な結果だが、限界を感じやすい層ほど制度やサービスを利用しながら両立を模索しているのではないかと考えられる。また、制度や分担の仕組みが整っていたとしても、それだけでしんどさが解消されるわけではない可能性​も示唆される。

共働きのしんどさを左右していたのは、制度や分担の有無そのものではなく、家庭や職場で状況に応じて仕事を調整できる環境や関係性だったのかもしれない。

ところで、「何とか両立できている」と感じることと、「心に余裕がある」と感じることは同じだろうか。日々のタスクはこなせていても、どこか気が休まらない。そんな感覚を抱えている人も少なくないかもしれない。

次に、精神的・心理的なゆとりについて見ていく。

両立できていても心が限界なケースも

ここで、もう一つの視点として「精神的・心理的なゆとり」を見てみたい。調査では精神的・心理的なゆとりについて限界を感じている人は子どものいる共働き会社員全体の28.3%だった。

また、「仕事と家事の両立」と「精神的・心理的なゆとり」を組み合わせてみると、「仕事と家事の両立」は限界ではなくても「精神的・心理的なゆとり」が限界である人が11.8%みられた。​何とか仕事と家事は回せていても、心の余裕はギリギリの状態である人が一定数いるのではないかと推察される。【図6】

【図6】共働きをする中で「精神的・心理的なゆとり」の限界を感じているか/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図6】共働きをする中で「精神的・心理的なゆとり」の限界を感じているか/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

共働きについて語られるとき、私たちはつい「両立できているかどうか」に目を向けがちだ。しかし今回の結果からは、両立できていたとしても必ずしも心に余裕があるわけではないことがうかがえる。

心の余裕を左右するもの

では、「心の余裕」の差は何から生まれるのか。

精神的・心理的なゆとりに限界を感じている人と感じていない人の職場や家庭での支援・意識の差を見ると、前述の「仕事と家事の両立」の分析では大きな差がなかった「家事・育児において、配偶者と役割分担について話し合えている」普段、家族から家事・育児に対するねぎらいや声かけがある」でも5pt以上の差が見られた。話し合えることや、ねぎらいの言葉があることといった「支え合っている」実感が背景にあると推察される。

また、職場関連では「職場の上司や同僚から、家事・育児に対する配慮がある」「急な家庭の事情(子どもの体調不良など)に対応しやすい働き方ができている」​について5pt以上の差が見られた。職場では家事・育児への配慮を感じられることや、急な家庭事情にも対応しやすいといった、「理解されている」と感じられる関係性が重要なのではないか。【図7】

【図7】現在、共働きをする中での支えや環境についてあてはまるもの/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図7】現在、共働きをする中での支えや環境についてあてはまるもの/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

意識面や業務量の調整によるやりくりだけではなく、「理解されている」「支えられている」と感じられることもまた、心の余裕を支える重要な要素​と考えられる。

共働きを無理なく続けるために

これまで、子どもをもつ共働き世帯で両立や心の余裕について限界を感じている人が少なくないこと、そういったしんどさは個人の意識や業務調整力の問題だけではなく、家庭内の話し合いやねぎらい、職場の気にかけによっても左右されている可能性が示唆された。

しかし興味深いことに、仕事と家事の両立に限界を感じている人でも83.0%、精神的・心理的なゆとりに限界を感じている人でも82.9%が「今後も共働きを継続したい」と回答している。

「限界だからもうやめたい」ではなく、多くの人は「限界を感じながらも、できる限り工夫や改善をしながら共働きを続けたい」と考えているのではないだろうか。だからこそ、「どうやって続けられる環境をつくるか」が重要になる。

仕事や家事・育児を何とか回すことだけでなく、無理なく続けるためにどのような支えが必要なのだろうか。

見落とされがちな「自分時間」のゆとり

同調査では「自分時間のゆとり」について限界を感じている人ほど「精神的・心理的なゆとり」や「仕事と家事の両立」についても限界を感じているという強い相関関係がみられた。【図8】

【図8】「自分時間のゆとり」と「仕事と家事の両立」「心理的なゆとり」の関係性/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」
【図8】「自分時間のゆとり」と「仕事と家事の両立」「心理的なゆとり」の関係性/出典:マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」

もちろん、仕事との両立が難しいから自分の時間を持てないという側面もあるだろう。一方で、自分の時間がほとんど持てないほど余裕のない状態では、仕事と家事の両立にも影響を与えている可能性もある。

自分時間の不足は、しんどさの原因であるというよりも、「少し無理をしすぎているかもしれない」というサインの一つとして捉えることもできるのではないか。

働き方や家事・育児の分担を見直す際には、「自分がひと息つける時間を持てているか」という視点も含めて考えてみることが、しんどさを軽減する一つの手がかりとなるかもしれない。

子育てと仕事の両立を支える職場とは

共働きのしんどさを和らげるためには個人の工夫だけでは限界がある。前述の「仕事と家事の両立を左右するもの」「心の余裕を左右するもの」で共通して差がみられた「仕事量や業務内容を状況に応じて調整できる」についても、分析では「急な家庭事情に対応しやすい」「上司や同僚から家事・育児への配慮がある」「勤務時間や働き方に柔軟性がある」との相関がやや高い結果もみられた。

つまり仕事量の調整は個人のスキルや工夫だけではなく、急な事情に対応できるなどの柔軟な制度や上司・同僚との関係性といった職場のサポートがあって初めて可能になる側面​もあるのではないだろうか。

共働きのしんどさを和らげるためには、制度の整備だけでなく、状況に応じて相談や調整ができる職場環境も欠かせない。共働きを支えるとは、「制度を用意すること」だけでなく、「困ったときに頼れる関係性をつくること」でもあるのかもしれない。

おわりに

今回の結果からは、共働きのしんどさは、家庭で協力し合えること、職場で事情を理解してもらえること、そして自分のための時間を持てるような余白やゆとりとも関係していることが見えてきた。【図9】

【図9】共働きのしんどさを左右する要素イメージ図
【図9】共働きのしんどさを左右する要素イメージ図

共働きで家事や育児をする中で「しんどい」「限界」と感じるとき、それは必ずしも個人の努力不足を意味するものではなく、働き方や家事・育児の分担、職場との関わり方について立ち止まって見つめ直すタイミングなのかもしれない。​

また、目の前の仕事や家事・育児をこなすことに精一杯になり、自分自身の余裕は後回しになりがちだが、今回の結果では、自分時間のゆとりと、仕事と家事の両立や心の余裕との関連もみられた。家庭や職場との関わり方を見直しながら、そうした余白を少しでも確保できる余地がないか考えてみることは、共働きを無理なく続けていくための一つの手がかりになるかもしれない。

職場や企業としても、「子育ては家庭の問題」と切り分けて考えるのではなく、表面上は仕事と家庭を両立できているように見えても、実際にはギリギリの状態で日々を回している人がいるかもしれない​、という視点を持つことが重要ではないだろうか。

今回の結果では、職場からの配慮や急な家庭事情への対応のしやすさ、仕事量を調整できる環境が、心の余裕とも関係していた。

リモートワークやフレックスタイム制度などの整備はもちろん大切だ。しかしそれだけでは十分とはいえず、一人ひとりの状況を理解しようとする対話や相談しやすい関係性づくりも共働き・共育てを支える重要な要素なのではないか。

本コラムが共働きでの子育てを無理なく続けていくにはどうしたらよいかについて当事者・職場双方が考えるきっかけになることを期待する。

キャリアリサーチLab研究員 元山 春香

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