近年、さまざまな企業が社会活動や地域活動への取り組みを行っていたり、そういった取り組みに個人で参加したりする人も増えています。そのような中で、「社会活動や地域活動に参加することで参加した個人にどのような効果があるのか」「参加した人の仕事に与える影響とは?」といった視点から事例を紹介する本企画。
第1回では、地域活動を越境学習の視点から大正大学の中島先生にお話を伺い、第2回では、ネイチャーポジティブの実現と人材育成を組み合わせた取り組みを行うみずほリース株式会社にお話を伺いました。
第3回となる今回は、株式会社マイナビの事例を紹介します。当社では、中学生を対象に、オリジナルカードゲーム(株式会社マイナビとNPO法人企業教育研究会が共同開発)を用いて楽しく学ぶ、出張授業を行っています。
今回は、この授業を主管しているサステナビリティCSR推進部の今井と、実際に出張授業に参加した社員6名に話を伺いました。
今井 普彦
キャリアデザイン学部卒。2007年、株式会社マイナビ(旧:株式会社 毎日コミュニケーションズ)入社。就職情報事業本部へ配属され、企業の新卒採用や研修の営業に従事。その後、10代のライフデザインを推進する新規事業の立ち上げを経験後、高校生の進学を支援する未来応援事業本部へ異動。生徒の進路サポートや探究学習教材の企画編集等を経験後、社長室サステナビリティ推進部へ異動し、現在のサステナビリティ・トランスフォーメーション推進室に至る。
マイナビが行う出張授業とは?概要や参加者の傾向
質問:まず、今井さんに質問します。中学生を対象に行っている出張授業とはどのようなものか教えてください。
今井:当社では、中学生を対象に、オリジナルカードゲームを用いて楽しく学ぶ、50分×2コマ連続の出張授業を行っています。
まず、1コマ目では、カードゲームの教材を用いて社会にはさまざまな業種・職種があることを知ります。次に2コマ目では、振り返りのワークショップやマイナビ社員の解説を聞き、多様な勤労観を持つさまざまな業種・職種が連携して社会を支えていることを学ぶという内容です。
質問:出張授業にはどのような形で社員の参加を募っているのでしょうか。また、実際に参加された方は、どのような傾向がありますか?
今井:出張授業は、全国各地で実施しており、各エリアの社員に声をかけて参加を募っております。出張授業実施後にアンケートを行っているのですが、その結果を見ると、参加した社員は、社会貢献意欲が高く、参加後に業務へ結び付けたり、日々の業務に関するモチベーションが向上したりしている人が多いように感じます。
また、授業を通し中学生へ伝える難しさからプレゼンテーションなどの表現スキルの向上を意識したり、中学生と接した経験から、求職者やユーザーのキャリア支援をより多角的に考えたりするようになった、といったコメントが多くありました。このように実際の業務へ還元している人も多いのではないかと思います。
早い段階でキャリアに触れる機会を届けたい
ここからは、実際に出張授業に参加したみなさんに話を伺います。
- Aさん(新卒採用支援/東北エリア/女性)
- Bさん(支社長/北陸エリア/男性)
- Cさん(新卒採用支援/中国エリア/男性)
- Dさん(中途採用支援/東北エリア/女性)
- Eさん(新卒採用支援/九州エリア/男性)
- Fさん(新卒採用支援/関東エリア/男性)
質問:まず、出張授業に参加しようと思ったきっかけについて教えてください。
Aさん:私は新卒領域に長年携わる中で、大学生の就活スキルや視野の広さに大きな差があることに課題を感じていました。もっと早い段階で気づきを届けたいと思ったんです。加えて、地元に貢献したいという思いもありました。
Bさん:その気持ち、すごくわかります。私も大学で就職活動に入るまでの大学生を対象にキャリアガイダンスに登壇する機会が多かったんですが、学生が大学に入ってからキャリアを考えるのでは遅いのでは?と感じていました。だから、この取り組みを聞いたとき、迷わず手を挙げました。
Cさん:確かに、早い段階でのキャリア教育って大事ですよね。私は当時、支社長として地域に根ざした活動を進めたいと思っていたときに、担当県の中学校が出張授業の企画に積極的に応募してくれたことに驚き、その熱意に応えたいと思い参加しました。
Dさん:熱意への貢献、いいですね。私の場合は、学生時代に教員を目指していたこともあり、キャリア教育にはもともと関心がありました。それに、現在、人材紹介事業に携わっているのですが、転職を希望されている相談者と面談をする中で「やりたいことはあるのに、どう叶えればいいかわからない」という声を多く聞いて、早い段階でキャリアに触れる重要性を痛感しました。
Eさん:私は妻が中学校の教員をしていることもあって、以前から興味がありました。自分自身、学生時代にキャリアを深く考えなかったことを後悔しているので、中学生にとって良いきっかけになればと思って参加しました。
Fさん:みなさんの話を聞いて、やっぱり共通しているのは早い段階での気づきですね。私ももともと教員志望だったこともあり、今の仕事で改めてキャリア教育の重要性を感じて、参加を決めました。
「伝わるのか」という不安と期待の間で
質問:出張授業に参加するまでに、台本の読み合わせやカードゲームのルール説明、当日の流れの確認などを実施してから授業に臨むということなのですが、初めて出張授業に参加する際に期待や不安はありましたか?
Dさん:私は普段の業務で1対多数で話すことがほとんどないので、授業をしっかり進行できるか不安でした。それに私の場合、カードゲームについては当日に初めて実物を触ったので、ルールの理解や生徒へのサポートが適切にできるかどうかも心配でした。
Cさん:私は、不安はほとんどありませんでしたが、「キャリア」というテーマに中学生がどれだけ興味を持ってくれるかは少し心配でした。一方で、今の中学生や学校がキャリアをどこまで意識しているのかを知れることに大きな期待がありました。むしろ地域に貢献できる機会だと捉えて前向きな気持ちで臨みました。
Fさん:私は期待と不安が半々でした。期待としては、中学生と密に交流し、キャリア観などを知れる機会になること、そして自社のサステナビリティの一端を担える貴重な機会になることです。一方で、不安としては、自分が中学生のキャリアについて何を伝えられるのか、そして通常業務を圧迫しないかという点でした。
Eさん:私の場合は、台本を見たときに「クライアント」や「産官学連携」などの言葉があり、そのまま話をして中学生に伝わるのかなという不安がありました。普段当たり前に使っている言葉でも、中学生にはピンとこないことがあると思ったので、できるだけわかりやすい表現で伝えることを意識して準備しました。
Bさん:私も同じで、「伝わるのか」という漠然とした不安がありました。中学生に対してキャリア教育の話がどこまで響くのか、正直心配でしたね。ただ、結果的には心配は不要だったなと感じています。
Aさん:私は、誰かひとりでもこの出張授業(キャリア教育)をきっかけに、今まで以上に将来に興味を持ち、深く考えてくれるようになればという期待がありました。ただ、参加するまで授業の全体像がイメージできず、台本を覚え込むだけで良いのかという不安や、授業後のゴールが自分の中でイメージしきれず、事前準備の不足感に不安がありました。
中学生の前向きさに驚きと学びを感じる
質問:実際に出張授業に参加し、中学生とやり取りをして印象に残ったエピソードなどがありましたら教えてください。
Fさん:カードゲームでのまちづくりワークでは、どの分野に投資するかを考える際に、まず財源となるお金をどう生み出すかという合理的な視点を持つ生徒が多くて驚きました。自分が想像していた中学生よりもずっと大人びた考え方をしていて、頼もしさを感じました。
Cさん:私も印象に残っているのは、授業中に「設計士と施工管理の仕事はどう違うのか」という具体的な質問を受けたことです。中学生の時点で業界や職種に興味を持ち、将来の方向性をある程度定めている姿に驚きました。それに「社会貢献がしたい」「世の中の役に立ちたい」という価値観を持つ生徒が多く、こちらも身が引き締まる思いでした。
Bさん:ある中学校で話してくれた生徒が、身近なところに企業やビジネスがあることに気づいたと言ってくれたんです。カードゲームを通じて、普段の生活を俯瞰する機会を持てたことが大きかったと思います。日常では気がつかない視点を得るきっかけになったのだと感じました。
Eさん:最初に「マイナビって会社を知っていますか?」と聞いたら、クラスの大半が手を挙げてくれたんです。さらに休憩時間に「マイナビって野球大会をやっているマイナビですよね?」と質問してくれた生徒もいて、企業の認知度を実感しました。中学生にもしっかり届いていることが嬉しかったです。
Dさん:私は、生徒たちがとても前向きに取り組み、意見交換しながら学んでいる姿に感銘を受けました。中には社会の仕組みを俯瞰的に捉えた柔軟な発想をする生徒もいて、非常に印象的でした。特に記憶に残っているのは、私自身の失敗体験を話したときの生徒の表情です。将来について真剣に考え始めたような前のめりの姿勢が見えました。もっと多くの大人のリアルな声に触れる機会があれば、さらに良い学びになるのではないかと感じました。
社会活動への参加が自身の仕事観に与えた影響
質問:今回の出張授業に参加したことで、ご自身の仕事に対する考え方や行動に変化はありましたか?
Aさん:出張授業に参加したことで、個性や役割を勝手に決めつけず、こちらの投げかけ次第で想像以上に一人ひとりに可能性が広がることを学びました。今回は、中学生への授業ではありましたが、これは組織運営にも全く同じ観点があてはまると思っています。
Bさん:出張授業に参加した後は、部下や後輩に平易な言葉を使うことを心がけたり、確認の声かけが増えましたね。さらに、支社長という立場で各事業部と協働する際に、若い社員の感覚をより多く取り入れるために積極的に声をかけたり、ヒアリングをしたりするようになりました。
Cさん:業務の進め方に直接的な変化はありませんでしたが、出張授業への参加を通じてモチベーションが大きく向上しました。また、意思決定の際に「地域社会」や「経済」という視点を強く意識するようになり、企業や経営者と話す際にも「地域や若者のキャリアのために」という文脈を自然と取り入れるようになりました。地域に根ざした活動が、自分の仕事観に新しい軸を加えてくれたと感じています。
Dさん:私は普段、転職希望者の将来のビジョンをできるだけ具体的に引き出すことを心がけていますが、本来は転職タイミングではなく、もっと早い時期からキャリアの捉え方を理解しておくことが重要だと再認識しました。そのため、日々の業務の中でも、直接的・間接的に「キャリアの考え方」を広めるために何ができるかを意識するようになりました。
Eさん:普段は新卒者向けの広報物の制作や合同説明会の運営をしていますが、今回、通常業務の枠を超え、社会貢献活動として純粋にキャリア教育に関われたことが良い経験となりました。仕事なので予算や目標を追いかけることはもちろん大切ですが、「自分たちが提供しているサービスが学生やクライアントにとって本当に価値あるものになっているか」という視点をより強く意識するようになったと感じます。
Fさん:私は理系人材を採用したい採用担当者と理系人材の早期獲得や育成など、大学生のキャリア形成タイミングでどう介入していくかという議論になることは多いですが、直接中学生と触れ合うことで、企業や社会の短絡的な発想ではなく、彼ら自身が理系を含む多くの選択肢の中から納得する選択をするために、どんな関わり方が必要なのかをもっと議論していく必要があると感じましたね。
社会活動に参加して見えた、企業の社会的役割とブランド価値
質問:出張授業を通じて、会社の社会的役割やブランド価値について考えることはありましたか?
Dさん:今回の出張授業を通じて、学生の段階からキャリアを考える機会を提供することの重要性を改めて感じました。これは非利益的な活動としての社会貢献価値だけでなく、進路や就活、アルバイト、転職など人生の分岐点に関わるテーマとして、今後ますます求められる取り組みだと思います。
Aさん:私は、新卒紹介サービスに携わる中で、働くことを考える機会や社会で人とつながる価値の理解が足りないと感じていました。そんな中、約2,000名もの中学生にキャリア教育を実施できることは非常に大きな社会的意義があると思います。これはマイナビだからこそできた取り組みであり、点ではなく線で続けることで、さらにブランド価値向上につながると感じています。
Cさん:出張授業を通じて、企業の社会的役割は「社員一人ひとりが地域や社会を主語に仕事をすること」にあると強く感じました。こうした姿勢が個人の言葉や行動を通じてクライアントに伝わるので、ブランド価値や社会的意義がより高まると思います。単なるCSRではなく、社員の実体験を通じて企業理念が浸透していくことが重要だと実感しました。
Bさん:私もマイナビのブランド価値の向上を強く感じました。マイナビ社員にとっても「なぜこの仕事をしているのか」を問い直す機会になりました。すべては未来の若者のために、わかりやすく仕事を解説するツールがマイナビであり、社会と人をつなぐ役割を果たしていると実感しました。
所属している組織の社会活動に参加する意味とは
質問:社員が自社の社会活動に参加する意義や意味をどのように感じていますか。
Cさん:社会活動の意義はとても大きいと思います。地域貢献や自己成長、企業価値向上に加え、自分自身が「社会とどう向き合うか」「どう生きていくか」を棚卸しする機会になるからです。今回の出張授業を通じて、自分自身を深掘りし、ビジネスパーソンとしての原点を再確認できたことが大きな学びでした。こうした活動はもっと広がるべきだと思いますし、管理職は参加を迷っている社員に対して積極的に後押しする役割を担うべきだと感じています。
Eさん:私も社会活動に参加することで、自分自身の視野が広がり、日々の業務の意味や価値について改めて考えることができました。これは非常に大きな意義だと私も感じました。
Aさん:私は、営業現場で利益やブランド構築を重視して仕事をしていますが、視野が狭くならないよう、これからもマイナビをさまざまな角度から見続け、自分にできることを模索し続けたいと思っています。こうした活動を通じて、マイナビの規模で各所に配慮しながら0→1の取り組みを進める難しさを実感しました。参加することで自社だからこそできる課題解決に向けて、何か取り組めることがあるのではないかと考えるきっかけになったと感じています。
Fさん:私も同感です。こうした活動を通じて、自社がどんな形で社会貢献をしようとしているか、その一端を実感できることが、社員にとっても大きな意味を持つと思います。
Dさん:普段関わることのない方々と交流することで視野が広がるのは大きな意義だと思います。今回の参加を通じて「もっとこの取り組みを広げたい」と強く感じました。
Bさん:会社の顔として働いている以上、会社のことをもっと知りたいし、こういった活動に参加することで理解を深め、それをしっかり伝えられるようになれるのではないかと思っています。
まとめ
質問:最後に出張授業を運営している今井さんに質問します。企画運営の立場から見て、こういった活動の意義について教えてください。
今井:協力してくれた社員のみなさんの言葉の中に、マイナビがキャリアを支援する会社だからこそ、日々の業務が社会・地域に貢献できることに気がついた、今の仕事をより真摯に誠実に取り組みたいといったものがありました。
この企画は、マイナビ社員がステークホルダーの「キャリアを支援することで、自分たちのキャリアが支援されている」「事業を提供する価値の原体験に気づける」といった貴重な機会になっているのではないかと考えています。