専業主婦の就労意向に地域差はない?一都三県とその他エリアの専業主婦の違いを探る

嘉嶋麻友美
著者
キャリアリサーチLab研究員
MAYUMI KASHIMA

専業主婦とは、仕事に就かず、炊事や掃除、育児などの家事に専念する既婚女性を指す。高度経済成長期には「夫はサラリーマン、妻は専業主婦」という家族モデルが広く浸透したが、現在は共働き世帯が増え、専業主婦世帯は減少している。

こうした中、専業主婦の就労意向に関する実態調査※1では、専業主婦の約4割が「今後働きたい」と回答した。では、その就労意向は住む地域によって異なるのだろうか。

※1上記調査では、専業主婦を就業・通学のいずれもしていない20~50代の既婚女性と定義している。

共働き世帯の割合には地域差がある。都市部では共働き世帯が多いと思われがちだが、一都三県はいずれも全国平均を下回っている。そこで本コラムでは、こうしたイメージと実態のずれに着目し、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を「一都三県」、それ以外を「その他エリア」として比較する。

共働き世帯の割合と専業主婦の就労意向に同様の地域差がみられるのかを確かめたうえで、働きたい理由や周囲の支援、就職に感じる難しさをみていく。

地域別にみた共働き世帯の割合

令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとに都道府県別の共働き世帯割合※2を算出すると、「山形県」「福井県」が78.8%で最も高く、「島根県(78.5%)」「鳥取県(77.9%)」「富山県(77.8%)」が続いた。【図1】

※2 「共働き世帯の割合」は、夫が就業している世帯のうち、妻も就業している世帯が占める割合として算出した。

【図1】共働き世帯の割合が高い都道府県(上位10位)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成
令和2年国勢調査を基に、夫が就業者である世帯のうち妻も就業している世帯の割合を「共働き世帯割合」として算出したところ、最も割合が高かったのは山形県(78.8%)で、福井県(78.8%)、島根県(78.5%)、鳥取県(77.9%)、富山県(77.8%)が続いた。上位10県には山陰・北陸・東北地域の県が多く並び、6位以降は高知県(76.6%)、新潟県(76.5%)、石川県(76.4%)、秋田県(75.5%)、長野県(75.4%)となった。
【図1】共働き世帯の割合が高い都道府県(上位10位)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成

一方、一都三県はいずれも全国平均の69.2%を下回り、東京都は67.3%、千葉県は66.5%、埼玉県は66.3%、神奈川県は65.2%だった。【図2】

【図2】共働き世帯の割合が低い都道府県(下位10位)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成
【図2】共働き世帯の割合が低い都道府県(下位10位)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成

さらに、一都三県とその他エリアに分けて算出すると、共働き世帯の割合は一都三県で66.4%、その他エリアで70.4%となり、一都三県が4.0pt低かった。【図3】

【図3】共働き世帯の割合(一都三県とその他エリアを比較)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成
【図3】共働き世帯の割合(一都三県とその他エリアを比較)/令和2年国勢調査(就業状態等基本集計)をもとにマイナビにて作成

では、現在は働いていない専業主婦の「今後働きたい」という意向にも、同じような地域差がみられるのだろうか。

専業主婦の就労意向も違うのか?

一都三県に住む専業主婦のうち、「今後働きたい」と答えた割合は37.9%だった。その他エリアでは40.5%とやや高いものの、就労意向に大きな地域差はみられなかった。

共働き世帯の割合には違いがあっても、現在働いていない専業主婦の「働きたい」という気持ちに、同じような差があるわけではない。では、働きたい理由や、就労を考える際に置かれた状況はどうだろうか。【図4】

【図4】専業主婦の就労意向/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図4】専業主婦の就労意向/専業主婦の就労意向に関する実態調査

専業主婦の状況を一都三県とその他エリアで比較

共働き世帯の割合には地域差がある一方、現在は働いていない専業主婦の就労意向には大きな差がない。では、働きたいと考える理由や、就労を考えるうえでの周囲の環境には違いがあるのだろうか。

専業主婦が働きたい理由を比較

今後働きたいと考えている専業主婦に理由を聞いたところ、「家計の収入を補いたいため」はその他エリアで62.4%と、一都三県(58.9%)よりも3.5pt高かった。一方、「社会とのつながりを持ちたいから」はその他エリアで20.9%となり、一都三県(32.6%)よりも11.7pt低い結果となった。【図5】

【図5】今後働きたい理由/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図5】今後働きたい理由/専業主婦の就労意向に関する実態調査

その他エリアでは家計の補助、一都三県では社会とのつながりを理由に挙げる人の割合が、それぞれもう一方の地域より高い。就労意向の割合が近くても、働きたい理由には違いがある。

配偶者の年収と生活の中で感じる孤独感

その背景を考える手がかりとして、配偶者の年収と日常生活で感じる孤独感をみてみよう。

配偶者の年収差

配偶者の平均年収は、一都三県が702.7万円、その他エリアが616.4万円で、86.3万円の差があった。その他エリアで家計を補うために働きたい人がやや多い背景には、この収入差が関係している可能性がある。【図6】

【図6】直近1年間の配偶者の平均年収/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図6】直近1年間の配偶者の平均年収/専業主婦の就労意向に関する実態調査

生活の中で孤独を感じる割合

また、生活の中で孤独を感じることがあると答えた割合は、一都三県が48.1%、その他エリアが43.6%だった。一都三県で「社会とのつながりを持ちたいから」という回答が多いことを考える際に、参考となる結果といえる。【図7】

【図7】生活の中での孤独感/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図7】生活の中での孤独感/専業主婦の就労意向に関する実態調査


では、このように様々な理由から働こうと考えたときに頼れる配偶者や親からの支援にも、地域差はあるのだろうか。

周囲の状況を比較

配偶者の家事・育児時間と残業時間

配偶者の1日あたりの家事・育児時間について、地域差を比べた。
「0時間」と答えた割合は、一都三県で48.1%、その他エリアで42.3%となり、一都三県の方が配偶者の家事・育児への参加が少ない傾向がみられた。【図8】

【図8】1日あたりの家事・育児時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図8】1日あたりの家事・育児時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査

また、配偶者の1日あたりの残業時間についてみると、「0時間」と答えた割合は一都三県で23.4%、その他エリアで28.4%となった。一方で、「2時間」「3時間以上」と答えた割合は一都三県で高く、その他エリアより長時間残業の割合が高い傾向がみられた。【図9】

【図9】1日あたりの残業時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図9】1日あたりの残業時間/専業主婦の就労意向に関する実態調査

このように、その他エリアでは配偶者の家事・育児への参加が比較的みられる一方、一都三県では配偶者の残業時間が長い傾向が確認された。こうした働き方の違いが家事・育児への参加時間の差につながっている可能性が考えられる。

ただし、本調査における配偶者の残業時間は、回答者である妻の認識に基づくものであり、配偶者本人の回答ではない点に留意が必要である。また、家事・育児に充てられる時間には、残業時間だけでなく通勤時間なども影響すると考えられる。特に一都三県では通勤時間が長い傾向があり、残業時間の差のみが家事・育児時間の差につながっていると断定することはできず、結果の解釈には注意が必要である。

実親からのサポート

さらに、こうしたサポートの差は配偶者以外からの支援にもみられる。実親から何らかのサポートを受けているかを聞いたところ、「サポートがある」と答えた割合は一都三県で56.2%、その他エリアで61.2%となり、その他エリアの方が実親からの支援を受けている傾向がみられた。【図10】

【図10】実親からのサポート有無/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図10】実親からのサポート有無/専業主婦の就労意向に関する実態調査

ではどういったサポートを受けているのだろうか。

実親からの物理的サポート・心理的サポート

サポートの種類を、金銭的な支援や代理育児・家事の手助けなど、実際の行動を伴う支援を指す「物理的サポート」と、話を聞いてくれたり、応援や励ましなど精神面を支える支援を指す「心理的サポート」に分けて違いを確認した。

その結果、実親から何らかのサポートを受けていると回答した専業主婦のうち、「心理的サポート」を受けている割合は一都三県が88.8%、その他エリアが87.6%と大きな差はみられなかった。一方、「物理的サポート」を受けている割合は一都三県が71.7%、その他エリアが76.6%となり、その他エリアの方が高かった。【図11】

【図11】実親から受けているサポートの種類/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図11】実親から受けているサポートの種類/専業主婦の就労意向に関する実態調査

このように、実親からの心理的な支援は両地域で広くみられる一方、金銭面や育児や家事の手助けといった具体的な支援は、その他エリアの方が受けやすい状況がうかがえた。

専業主婦の母親の就業状況

その他エリアで実親より物理的サポートを受けている割合が高い要因は、本調査からは明らかではない。ただし、実親との居住距離や親世代の年齢、地域における家族間のつながり方の違いなど、さまざまな要因が影響している可能性が考えられる。

一方で、その他エリアの専業主婦では実母が現在就業している割合が34.5%となり、その他エリアの専業主婦(26.3%)よりも高かった。【図12】

【図12】(現在)専業主婦の母親の就業状況/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図12】(現在)専業主婦の母親の就業状況/専業主婦の就労意向に関する実態調査

加えて、実母が現在働いている専業主婦ほど実親からの支援を受けている傾向がみられた。【図13】

【図13】(現在)専業主婦の母親の就業状況別でみた実親からのサポート状況/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図13】(現在)専業主婦の母親の就業状況別でみた実親からのサポート状況/専業主婦の就労意向に関する実態調査

実母自身が仕事と子育てを両立してきた経験に加え、現在も働いていることで就業のメリットや大変さを理解しており、娘の就労に対する理解や後押しにつながっているのかもしれない。

就職難易度には差があるのか

ここまで、配偶者や実親による家事・育児参加やサポートの状況についてみてきた。最後に、就労意向を持つ専業主婦が感じる就職難易度について、一都三県とその他エリアを比較する。

就職難易度について一都三県とその他で比較

就職を「難しいと思う」と答えた割合は、一都三県で59.3%、その他エリアで58.0%だった。

その他エリアの方が配偶者や実親から支援を受けている割合は高かったものの、就職を難しいと感じる割合には大きな地域差はみられなかった。【図14】

【図14】就職難易度/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図14】就職難易度/専業主婦の就労意向に関する実態調査

就職が難しい理由を一都三県とその他で比較

では、難しさを感じる理由は同じなのだろうか。「難しいと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「仕事のブランクがあるから」は一都三県で72.9%、その他エリアで70.1%と、両地域で高かった。

一方、地域間の差が比較的大きい項目をみると、一都三県では「採用側の理解が得られにくいと思う」がその他エリアより9.0pt、「情報が多すぎて、どの仕事を選べばよいか分からないから」が4.0pt高かった。【図15】

【図15】難しいと思う理由(複数回答)/専業主婦の就労意向に関する実態調査
【図15】難しいと思う理由(複数回答)/専業主婦の就労意向に関する実態調査

仕事のブランクへの不安は地域を問わず共通している。そのうえで一都三県では、自分に合う仕事の選び方や、ブランクについて採用側の理解を得られるかを気にかける人が相対的に多い。就職を難しいと感じる割合がほぼ同じでも、難しさの内容には違いがみられた。

「働きたい」を支えるために必要なこと

共働き世帯の割合には地域差がある一方、現在専業主婦である人の就労意向には大きな差がみられなかった。しかし、働きたい理由や周囲から受ける支援、就職を難しいと感じる理由は地域によって異なる。
その他エリアでは、家計を補うために働きたい人や、配偶者・実親から支援を受けている人の割合が一都三県より高かった。一方、一都三県では、社会とのつながりを働きたい理由に挙げる人や、仕事選び・採用側の理解に不安を感じる人の割合が高かった。
同じように「働きたい」と考えていても、置かれた状況や直面する不安は一様ではない。専業主婦の就労支援を考える際には、「働く・働かない」という二択ではなく、その背景にある事情や地域ごとの課題にも目を向けることが求められるだろう。

                  

マイナビキャリアリサーチLab研究員  嘉嶋 麻友美

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