10代の価値観を読み解き、10代の不安に寄り添うヒントを探る
10代、特に10代後半(15歳~19歳)と聞いて、どのようなことを思い浮かべるだろうか。
一般的には、中学卒業、高校受験・入学、大学受験・入学など、学業に関するイベントがある時期である。そして「社会に出るタイミング」を迎える人も多く、社会人になる時期は人によって異なる。大学卒業後に就職する人もいれば、高校卒業後に働き始める人もいる。中学校卒業後に就職するケースも含め、その進路は多様だ。
この特集は、そうした10代後半(※以降「10代」と表記)の価値観や考え方、感じている不安などをマイナビが行った調査データから読み解いていく。これから新たな世界への第一歩を踏み出そうとしている10代はどのような考え方を持ち、働くことに対してどのような不安を抱いているのか。
こうした実態を紐解くことで、10代とどのように向き合い、支え、寄り添うことができるのかを考えていきたい。その過程で、働くことへの不安への向き合い方や、どのようなキャリア教育が有効なのかについても探ることで、10代のキャリア支援に携わる学校・教育関係者のみならず、10代を身近に支えている家族・保護者に対して有益となる示唆を提示することを目指している。
10代が抱く仕事や生活に対する価値観
「今の若者は無気力」「競争心がない」は本当か
「今の若者は無気力だ」「競争心や向上心がない」といった言葉を見聞きしたことがある人も多いのではないだろうか。
「マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版」では、自身の生活や仕事の考え方について「何事にも無気力だと思う」か「気力・活力にあふれていると思う」かどちらであるかを聞いたところ、「何事にも無気力だと思う」と回答した割合(「あてはまる」+「ややあてはまる」の合計)は、10代・20代・30代が以降の年代と比べてやや高くなっている。【図1】
【図1】何事にも無気力だと思うか、気力・活力にあふれていると思うか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
また「競争が好き」と「競争は好きではない」のどちらにあてはまるかを聞くと、「競争が好き」と回答した割合(「あてはまる」+「ややあてはまる」の合計)は10代(15歳~19歳)では38.7%、20代では30.4%と、いずれも5割に満たなかった。
ところが、この「競争が好き」と答えた割合がもっとも高い年代は、実は10代なのだ。30代では24.8%、40代では21.2%と年代が上がるにつれて割合が低くなり、高年齢層ほど競争を好むという割合が低くなる傾向がある。【図2】
【図2】競争が好きか、競争h好きではないか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
「目立ちたくない」「周囲と横並びがいい」は本当か
もうひとつ、若者へのイメージとして「目立ちたくない」「周囲と同じであることを好む」など「横並び意識が強い」といった言葉を聞いたことはないだろうか。
これについてもマイナビの調査において、「周囲と足並みをそろえたい(横並びがいい)」か「周囲より抜きん出たい」かを聞いたところ、「周囲と足並みをそろえたい」という回答(「あてはまる」+「ややあてはまる」の合計)は、10代は54.7%、20代は61.8%であり、以降、年代が上がるごとに割合が高くなっていく。
世の中がイメージしているより、10代は競争心があり、横並び意識も特別強くはないようだ。【図3】
【図3】周囲と足並みをそろえたい(横並びがいい)か、周囲より抜きん出たいか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
10代に関しては、「無気力である」と「競争心がある」「周囲より抜きん出たい」という一見矛盾する傾向が見られた。背景には、ひと昔前のようなわかりやすい成功モデルが見えにくくなっていることがあるのかもしれない。SNSなどを通じてさまざまな成功や生き方に触れられる一方で、自分にとっての正解を見つけることは容易ではない。そのため、他者より優位に立ちたい気持ちはありながらも、何に向かって努力すべきか定めにくく、無気力感につながっている可能性がある。
また、今の若者は失敗を回避したいという欲求が非常に強いとされ、調査でも、生活や仕事において「失敗が許されない社会だと思う」と考える割合は10代がもっとも多い。【図4】
【図4】失敗が許される社会だと思うか、失敗が許されない社会だと思うか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
失敗することへの抵抗感があることにより、10代にとって競争とは「王道の成功像を獲得するための手段」から「不確実な時代において損失を回避・最小化する手段」となっている可能性もある。
年代が上がるごとに競争心が薄れ、横並び意識が強くなることは、社会に出ることで周囲と協調する重要性を学んでいった結果とも捉えることができるため、必ずしも「競争心が強いほどよい」「横並び意識が低ければよい」という問題ではないだろう。
しかし、年代が上がるにしたがって競争や自己主張への意識が弱まっていること、なおかつ、一般に多くの人が新しい環境に飛び込んでいくタイミングである10代から20代にかけてその変化が大きいことは、非常に特徴的である。
10代の「働くこと」へのイメージとは
10代の将来への不安は「収入」「働くこと」
進学や就職など進む道は人それぞれだが、10代とは「働くこと」について現実的に考え始める時期でもある。それは10代が抱える不安にも表れている。「自分の将来について不安を感じること」という質問に対し、10代で回答の多かったのは「収入に関する不安」「貯蓄に関する不安」、そして「働くことに対する不安」であった。
収入や貯蓄への不安に関しては全年代を通して回答が多いが、「働くことに対する不安」がもっとも多いのは10代であり(43.0%)、また「就職・転職活動に対する不安」も10代がもっとも多い。社会人経験がない状態だからこそ、10代では働くことに対して強い不安感があることがわかる。
【図5】自分の将来について不安を感じていること/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
「働くこと」に良いイメージを持ったことがあるか
そんな働くことへの不安が強い10代だが、働くことに対して良いイメージも同時に抱いている。働くことに対して良いイメージを持ったきっかけが何かしらある割合は10代では69.3%ともっとも高く(【図6】)、そのきっかけとしては「親・保護者からの話」や「アルバイト経験」が多く、「学校の友人や先輩からの話」「学校の先生からの話」も比較的多くなっている。【図7・8】
【図6】働くことに対して良いイメージを持ったことがあるか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
【図7】働くことに対して良いイメージを持ったきっかけ/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
【図8】働くことに対して良いイメージを持ったきっかけ(10代のみ)/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
アルバイトを通じて実際に働くことを経験することや、家族や学校といった身近で信頼できる存在からの情報に触れることは、働くことに対するポジティブなイメージを喚起し、10代が抱える働くことへの不安を和らげることにもつながる可能性がある。
「働くこと」に悪いイメージを持ったことがあるか
アルバイト経験や周囲から聞くエピソードなどによって「働くこと」に良いイメージを持っている一方で、働くことに悪いイメージを持ったことがあるという回答も10代では約6割となり(【図9】)、もっとも多い。悪いイメージを持ったきっかけとしてもっとも多かったのが「SNSでの情報」だ。【図10・11】
【図9】働くことに対して悪いイメージを持ったことがあるか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
【図10】働くことに対して悪いイメージを持ったきっかけ/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
【図11】働くことに対して悪いイメージを持ったきっかけ(10代のみ)/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
10代は働くという実体験がアルバイト経験などに限られ、社会人生活を具体的にイメージするには情報が不足していると考えられる。そのような中でSNS上の真偽不明な情報に触れることで働くことに対してネガティブな印象を持ったり、働くことへの不安が強くなったりしてしまっている可能性もある。
10代の「働くことへの不安」と「キャリア教育」
10代はアルバイトを通じた実際の就労体験や、身近な人たちからの情報を通じて働くことへのポジティブなイメージを醸成している。しかし同時に、働くことへの不安も強く、SNSの情報などからネガティブな印象を強く受けていると考えられる。
そうした10代の不安や働くことへのネガティブなイメージに対し、アルバイト経験を通じて働くことの面白さや大変さに触れることや、周囲からポジティブな声かけを受けることは、不安を和らげ、働くことに対して過度に萎縮することを防ぐという意味で非常に重要である。
しかし、これらのきっかけは、どのようなアルバイトを経験できるか、家族や学校でどのような声かけを受けたか、といった点に左右されやすい。住んでいる場所によっては経験できるアルバイトの種類に差があったり、周囲にいる大人が携わっている職種・業界にも偏りがあったりする可能性がある。
このような経験機会や周囲の環境による差や偏りを考慮すれば、だれもが職業や働き方について考える機会をもたらし、社会的・職業的自立を促すために、義務教育や高等教育における「キャリア教育」は重要と言えるだろう。しかし、働くことに対して良いイメージを持ったきっかけとして「学校でのキャリア教育の経験」を挙げる割合は10代に限らず全年代を通じて低い。【図12】
【図12】経験したキャリア教育の中で役に立ったと思うもの/マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版
さらに、「経験したキャリア教育の中で役に立ったと思うもの」という質問では、「職業体験」「自己分析」「ボランティア・体験学習」などの回答もあるが、もっとも多いのは「役に立ったキャリア教育はない」となっている。働くことへの不安を和らげ、将来へのキャリアの展望が持てるようなきっかけを与えることを期待されているキャリア教育だが、その効果を実感している人は未だに少ないのが現状だ。
10代の「働くことへの不安」にどう寄り添うべきか
この特集では、これから社会への第一歩を踏み出そうとしている10代が抱く「働くことへの不安」を理解し、働くことに対する考え方や価値観を読み解きながら、どのような支援や寄り添い方が考えられるかを探っていく。
その中で、働くことへの不安に対してどのようなキャリア教育が有効なのかについても考察する。10代のキャリア支援に携わる学校・教育関係者のみならず、10代を支え見守る家族・保護者に対して、10代のキャリア形成をサポートする上での有益な示唆を提示することを目指している。
そのためにまず必要なことは、10代のメンタリティー(心の持ち方)を知ることだろう。冒頭にて、「競争心が薄い」「横並び意識が強い」という特徴は10代に特有のものではないということを示したように、実態とはやや異なるイメージが先行してしまっているケースも多々あることが想像できる。10代の「働くことへの不安」に寄り添うために、次回(第2弾)では、10代の持つ特徴や傾向を改めて見つめ直すことからスタートしたい。
キャリアリサーチLab研究員 長谷川洋介