コンピテンシーとは?意味や評価・採用面接での活用方法も

キャリアリサーチLab編集部
著者
キャリアリサーチLab編集部

企業の人材戦略は、年功序列や「人に依存する評価」から、職務や成果に基づく仕組みへと変わりつつある。その中で注目されているのが「コンピテンシーである。

これは、仕事で成果を出すために必要な行動や考え方を整理したものだ。近年、日本ではジョブ型雇用や人的資本の情報開示が進み、企業はどんな行動が成果につながるのかを明確にする必要が高まっている。

本稿では、コンピテンシーの意味や注目される背景、人事評価や採用面接での活用方法などを紹介していく。

コンピテンシーとは

コンピテンシーとは、仕事で高い成果を出すハイパフォーマーに共通してみられる行動や考え方の特徴を指す。単に知識やスキルを持っているだけではなく、それをどう使うか、どんな行動を取るかに焦点を当てるのが特徴だ。

そして、ハイパフォーマーの思考や行動を分析し、評価や採用に使えるようにしたものが「コンピテンシーモデル」であり、人事評価や面接、人材育成に活用されている。

この考え方はアメリカの心理学者であるデビッド・マクレランド氏が1970年代に行った研究をもとに、1980年代にアメリカの研究者ボヤツィス氏によって広まったとされる。以来、世界中の企業で人材評価や育成に使われている。

コンピテンシーの「氷山モデル」

コンピテンシーの「氷山モデル」/マイナビ作成
コンピテンシーの「氷山モデル」/マイナビ作成

デビッド・マクレランド氏は、コンピテンシー理論の「氷山モデル」を提唱した。このモデルでは、人の能力や行動特性を氷山にたとえて、水面から見える部分を「知識」や「スキル」、水面下に隠れた部分を「価値観」「動機」「自己概念」として表現している。

水面から見える部分は比較的習得しやすく、研修や学習で短期間に向上できる一方、隠れた部分は行動の根底にあるため、直接測定をすることや短期的な変化を捉えることは難しい。しかし、成果に大きく影響するのはこの深層部分であることを示した。

この考え方を踏まえると、面接や評価では、表面的なスキルだけでなく、過去の行動事例や価値観を確認する質問を組み込み、深層特性を推測することが重要になるといえる。

知識・スキルとの違い

コンピテンシーは「知識・スキル」とよく比較される。知識やスキルは「何を知っているか」「何ができるか」を示す要素である。たとえば、プログラミング言語を理解していることや、営業の基本手法を知っていることがこれにあたる。

一方、コンピテンシーはそれらを実際の仕事でどう生かすかという行動特性に焦点を当てている。成果を出すために重要なのは、単に知識やスキルを持っているだけでは不十分であり、状況に応じて適切な判断をし、行動に移せるかどうかである。つまり、コンピテンシーは「知識+スキル+態度」を統合し、成果につながる行動として定義される点で、より実践的な概念だといえる。

コンピテンシーが注目される理由

コンピテンシーが注目される理由は、働き方や人事評価制度の大きな変化にある。これまで日本企業では「年功序列」や「総合職」という仕組みが中心で、評価は勤続年数や上司の印象に左右されることが多かった。しかし、近年は「ジョブ型雇用」という考え方が広がり、職務内容や成果に基づいて人材を評価する企業も出てきた。

ジョブ型雇用では、仕事の役割や責任を明確にし、その職務に必要なスキルや行動を定義することが重要になる。ここで役立つのがコンピテンシーだ。単に「知識がある」「経験がある」だけではなく、「どんな行動を取れるか」を基準にすることで、より公平で納得感のある評価が可能になる。

なお、ジョブ型雇用についてはこちらの記事で詳しく説明している。

さらに、企業には「人的資本」を投資家や社会に開示する動きも広がっている。人的資本とは、企業価値を生み出す資産として人材を捉える考え方だ。政府のガイドラインでは、企業に対し「人材育成の方針や指標」を公開することを求めている。こうした情報を示すためにも、行動特性を明確にしたコンピテンシーは欠かせない。

人的資本経営についてはこちらの記事をご覧いただきたい。

加えて、デジタル化やグローバル化で求められるスキルが急速に変化している。新しい技術や働き方に対応するためには、単なる資格や経験だけでなく、問題解決力やコミュニケーション力など、実際に成果を出す行動を評価する仕組みが必要だ。コンピテンシーは、この変化に対応するための「共通言語」として、企業や組織でますます重要になっている。

コンピテンシーの活用方法

コンピテンシーは、評価や育成の仕組みをより公平でわかりやすくするために使われる。ここからは、人事評価や採用面接の場面での活用方法を見ていく。

人事評価:コンピテンシー評価

コンピテンシーをもとに評価基準や評価項目を策定し、評価を行う方法を「コンピテンシー評価」という。

コンピテンシー評価は、行動特性をもとに評価が決められる。たとえば営業なら「顧客の課題を理解し、提案を工夫する力」、企画なら「情報を分析し、論理的にまとめる力」などだ。これを行動レベルで定義することで、評価の基準が明確になる。そのため、評価される側にとっても納得感のあるものになるというメリットがある。

人事評価制度には、上司だけでなく同僚や部下からも評価を集める「360度評価」、従業員自身で目標を決めその達成度を見る「MBO(目標管理制度)」などもあり、これらを併用しながら自社に合った評価制度を作ると良いだろう。

さまざまな人事評価制度については、以下の記事で詳しく説明している。

採用面接:コンピテンシー面接

コンピテンシーを利用した採用面接を「コンピテンシー面接」といい、スキルや経験だけでなく、「候補者が何を考え、どう行動し、どんな結果になったか」に焦点を当てる。単なる自己PRや抽象的な答えではなく、実際の行動に基づいて評価することで、入社後の活躍をより正確に予測できるとされている。

コンピテンシー面接には、候補者の経験を「状況(Situation)」「課題(Task)」「行動(Action)」「結果(Result)」の4つに分けて聞く通称「STAR法」を使うと良い。たとえば、「困難なプロジェクトをどう乗り越えたか」を聞く場合、以下のように質問していく。

  1. 状況:どんな状況でしたか?)課題:どんな課題がありましたか
  2. 課題:どんな課題がありましたか??
  3. 行動:あなたはどう行動たか?
  4. 結果:その結果、どうなりましたか?

この方法を使うと、候補者の行動パターンや問題解決力が具体的に見えるようになる。

人材育成

コンピテンシーは、人材育成においても有用だ。コンピテンシーを活用してハイパフォーマーの行動特性を体系化できれば、組織に合った研修やOJTなどの育成プログラムを作りやすくなる。そうした研修を積み重ねることで、組織全体のパフォーマンス向上が見込めるだろう。

さらに、コンピテンシーは育成の効果測定にも役立つ。行動レベルを定期的に評価し、改善度を確認することで、研修が成果につながっているかを検証することができる。

また、職務ごとに必要なコンピテンシーを設定することで、従業員側も「自分に足りない行動は何か」「どの行動を伸ばせばいいか」を理解しやすくなるため、主体的な成長を促す効果も期待できる。

コンピテンシーを評価などに導入する方法と注意点

コンピテンシーを評価や面接などに導入するには、いくつかのポイントがある。ここでは、導入方法と注意点についてみていく。

コンピテンシーを評価などに導入する方法

まず、コンピテンシーを評価などに 導入する際にもっとも重要なのは、目的をはっきりさせることである。目的が曖昧なまま制度を設計すると、評価基準が混乱し、現場の納得感を得られない可能性があるので注意が必要だ。

それでは、コンピテンシーを導入するステップを紹介する。

現状分析とヒアリング

まず、自社の人事制度や評価の課題を洗い出す。評価が成果偏重になっていないか、育成の指針が不明確ではないかを確認する。

そして、社内のハイパフォーマーを選定し、ヒアリングを行っていく。ハイパフォーマーは、部門や職種、役割ごとに選定すると良い。ヒアリングでは、取った行動だけではなくそこに至るまでの考えも深掘りしていく。

一般的には、入社3~5年目前後の社員を職種や部門ごとに細かく選定して、第三者のパートナー企業などにヒアリングしてもらうといった方法を取ることが多い。

コンピテンシーモデルの設計

次に、必要な行動特性を定義する。職種別や階層別に分けて設計することが多い。設計時には、社内ヒアリングや先行事例を参考にし、抽象的な言葉ではなく具体的な行動例を盛り込むことが重要である。

コンピテンシーモデルには、「理想型モデル」「実在型モデル」「ハイブリッド型モデル」の3つのタイプがある。「理想型モデル」は企業が理想とする人物像、「実在型モデル」は実際に高い成果を出している優秀な社員をモデル化したもの、「ハイブリッド型モデル」は理想型と実在型モデルの良い部分を組み合わせ、両者の長所を活かしたバランスのいいモデルだ。

自社にモデル化できそうな優秀な社員がいれば「実在型」、いなそうであれば「理想型」など、どのタイプが良いかも検討する必要がある。

企業理念とのすり合わせ

コンピテンシーモデルが設計できたら、自社の企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と大きな乖離がないかを確認する。企業理念やビジョンなどと整合性を取ることで、制度が組織全体に浸透しやすくなる。

運用開始と定期的な見直し

制度設計ができたら、実際に運用へと進む。導入後は評価制度や育成プランに組み込み、定期的に見直すことが重要である。たとえば採用面接であれば、コンピテンシーモデルをもとに採用した「求める人材像」が実際に活躍しているかを確認する必要がある。

環境変化や事業戦略の変更に応じてアップデートする仕組みを作ることで、変化の多い時代に対応していく。

コンピテンシーを評価などに導入する際の注意点

コンピテンシーを評価などに導入する際にはいくつかの注意点がある。

過度な複雑化を避ける

コンピテンシーの項目が多すぎると現場の運用がしにくくなるおそれがある。必要最低限にしぼり、実務で使えるレベルにすることが重要である。

定義を曖昧にしない

「主体性」「協調性」など抽象的な言葉だけでは解釈が分かれる。とくにコンピテンシーを評価に導入する際は、具体的な行動例を示し、評価者間のズレを防ぐことが必要である。

定期的に見直しを行う必要がある

事業環境や経営方針の変化で、求められる行動特性も変わることがある。コンピテンシーを取り入れた制度の導入後は定期的な見直しを行い、必要に応じて再設定すべきである。

コンピテンシーを上手に活用してパフォーマンス向上を

ハイパフォーマーの行動特性であるコンピテンシーについて、言葉の意味や注目される背景、人事評価や採用面接への活用方法などを紹介してきた。企業を取り巻く環境が変化している中で、コンピテンシーを評価などに導入し、定期的に見直すことは、組織の競争力を高めるうえで重要になるだろう。

しかし、導入するには、ハイパフォーマーの選定からヒアリング、分析など大きな負担がかかることは否めない。だからこそ、本稿で紹介した注意点にも気を付けながら、上手く活用して組織のパフォーマンス向上に生かしてほしい。

矢部栞
担当者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

関連記事

人事評価制度をなぜ今、問い直すのか-歴史と既存制度から振り返る

コラム

人事評価制度をなぜ今、問い直すのか-歴史と既存制度から振り返る

越境学習とは?異業種・異文化の経験がもたらす効果と実践例を紹介

コラム

越境学習とは?異業種・異文化の経験がもたらす効果と実践例を紹介

成果を生み出す特性と性格の関係について

コラム

成果を生み出す特性と性格の関係について