マイナビ キャリアリサーチLab

副業・兼業実施者にみる副業の実態とキャリア開発の可能性

前回のコラムで「副業・兼業」を実施している人の割合が増加しているのかについて、日本労働政策研究・研修機構(以降JILPTと表記)が2007年に実施した「副業者の就労に関する調査」との比較を紹介した。
今回はその比較時に利用したマイナビライフキャリア実態調査(以降マイナビ調査と表記)を使って、実際の副業における収入や労働時間等を紹介しつつ、副業で「しっかり稼いでいる人」と「ほどほど稼いでいる人」とはどのような人なのかを紹介する。また最近話題に上ることが多い「副業を新たなキャリア開発の機会」ととらえている人が実際に存在するのかを副業の実施理由などから探りつつ、キャリア開発の側面としての可能性を検討してみたい。集計においては、前回と同じ1,717名を対象に分析を行っている。

副業・兼業の年収と費やしている時間

まずマイナビ調査で本業と副業の平均年収を、この1年副業をしたことがない「本業のみの人」と、「副業・兼業経験有りの人」で算出してみた。また、副業・兼業経験のある人の内、「副業・兼業経験有1つ」の人と「副業・兼業経験有2つ以上」の人に分けて集計も行った。結果は以下の通り。
副業をせず「本業のみの人」の本業の平均年収が325.3万円に対し、「副業・兼業経験有り」の人は本業では272.9万円とやや低い。副業の年収と合算することで394.3万円と本業のみの人の年収を上回るが、「副業・兼業経験有1つ」の人が346.7万円に対し、「副業・兼業経験有2つ以上」の人は592.1万円と複数の副業を行っている人の方が1.7倍の収入を得ており、副業の年収を引き上げる結果となっている。【表1】


【表1】「副業・兼業の年収と費やしている時間」出典:マイナビライフキャリア実態調査
※本業は賞与・ボーナスを含む年収。複数の副業を実施している人は合算した年収で回答。

実際に「副業・兼業経験有2つ以上」の人はそれだけ労働に時間を費やしている。副業の1週間の実労働時間をみると「副業・兼業経験有り」の平均が8.1時間。その内、「副業・兼業経験有1つ」が6.9時間に対し、「副業・兼業経験有2つ以上」が13.4時間と倍近い時間を費やしている。企業においても労務管理の観点から、社員の過重労働による健康管理に懸念を持つケースが多いが、本業の労働時間に加えてこれだけの労働を行っているとすれば、「副業・兼業経験有2つ以上」の場合は、健康管理面において、やや心配される結果となっている。

副業で「しっかり稼いでいる人」と「ほどほど稼いでいる人」の違い

先に示したように「副業・兼業経験有2つ以上」の人は年収も高いし、実労働時間も多めな傾向がみられた。そこでもう少し副業の年収による差を深掘りするため、副業で「しっかり稼いでいる人」と「ほどほど稼いでいる人」に分けて、改めてそれぞれの傾向を比較してみたい。先に示した副業の平均年収は121.4万円だが、中央値は30万円と、かなり低くなる。そこで副業年収を人数比で四つに区分すると下限25%の人の平均副業年収が9.3万円以下だったため、分かりやすくする為に「ほどほど稼いでいる人」を10万円以下と設定した。逆に「しっかり稼いでいる人」はより明確な違いが出るように、上位10%程度となる平均副業年収200万円以上に設定し、その範囲の人々はどのような属性の人か分析してみた。結果は以下の通り。【表2】

【表2】「副業で『しっかり稼いでいる人』と『ほどほど稼いでいる人』の比較」出典:マイナビライフキャリア実態調査

改めて「しっかり稼いでいる人」をデータで比較してみた結果、傾向として年代は高めで本業の年収も高く、一家の稼ぎ頭となっている。本業でも役職に就いている割合が3割とやや高く、本業以外にも複数の副業をこなす姿が思い描かれる。独立開業の意思も高く、転職にもポジティブなため、自ら稼ぐことに自信を持って働いているようだ。また自己啓発にも余念がなく、常に学習する姿勢が感じられる。
一方、「ほどほど稼いでいる人」は、販売や接客などの業務に従事し、単発の副業を限られた時間でやれる範囲で実施している姿が思い描かれる。今後も副業を継続したいと思っている割合がやや低く、望んでいない副業に従事しているのかもしれない。自己啓発も行っていないわけではないが、費用の関係もあってか行っている割合は、やや低い傾向にある。
同じ副業から収入を得ているといっても、さまざまなケースがあることを改めて認識させられる結果となっている。

副業で「しっかり稼いでいる人」はキャリアに関する関心も高い

それではこの「しっかり稼いでいる人」と「ほどほど稼いでいる人」の間に、キャリアに対する価値観も比較してみよう。同じマイナビ調査のキャリアに関する価値観の項目と掛け合わせて集計してみた結果、「しっかり稼いでいる人」の方が自律的なキャリアを歩んでいると感じる割合が高く出ており、「しっかり稼いでいる人」は一定の割合で自分のキャリアに満足しているということは言えそうだ。【図1】

【図1】「副業で『しっかり稼いでいる人』のキャリアの価値観」出典:マイナビライフキャリア実態調査

副業・兼業を行う主な理由は収入確保だが、若手や複数副業者は収入以外の目的も高め

ではここから副業が実際のキャリア開発に活かせるのかを検討してみたい。まず副業を行っている理由について何か傾向が得られないかをみてみると、主たる理由は「生活費や学費など生計維持のため」(60.3%)や「生計維持以外の、貯蓄や自由に使えるお金を確保するため」(36.1%)と、収入が第一義的な目的となっていることは明らかだ。これは13年前に調査を行っている「副業者の就労に関する調査」と同様の結果となっており、今も昔も主たる理由は収入目的であることに変化はない。
副業者の就労に関する調査(出典:JILPT)

この理由を「副業・兼業経験有1つ」と「副業・兼業経験有2つ以上」で比較してみると、どちらも収入が主目的であることに変わりないが、「新たな知識や経験を得るため」(28.0%)や、「自分自身の知識や能力を試してみたい」(21.3%)などが「副業・兼業経験有2つ以上」でやや高く出ており、収入以外の目的でも副業を行っていることが分かる。また年代別の比較では、10~20代で「新たな知識や経験を得るため」や、「将来の転職や独立準備のため」などの回答が他の年代より高い。このことから、全体に占める割合はまだ少ないが、若手や複数の副業経験者は副業・兼業を将来のキャリアに結び付けて考える傾向もあるようだ。【図2・3】

【図2・3】「副業・兼業を行った理由(副業個数別・年代別)」出典:マイナビライフキャリア実態調査

副業経験の有無とキャリア価値観で関係性がみられる

続いて、この1年で副業・兼業を行った経験のある人とない人で先に示したキャリアの価値観について比較をしてみたい。実際に差があるならば、副業経験が就業者のキャリア観に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられるからだ。
結果はご覧の通り。この1年で副業経験のある人の方が経験の無い人より自律的なキャリアを歩んでいると感じる割合が高い結果が得られた。これは、元々キャリアに対して意識の高い人が副業を始めることが多いのか、後天的に副業を経験したことによって得られた価値観なのかという因果関係を今回のデータから分析することは難しいが、少なくとも副業経験と自律的なキャリアの価値観には何らかの関係がありそうな結果となっている。【図4】

【図4】「副業経験の有無によるキャリアの価値観比較」出典:マイナビライフキャリア実態調査

副業はキャリア開発の一翼を担えるのか

ここまでみた限り、副業の主目的は収入を得ることだが、一部の若い年代などでは自らのキャリア開発の機会としてとらえる動きもみられ、実際に副業経験者の方が自律的なキャリアの価値観を得られているという結果もみられた。実際の因果関係は明確ではないものの、副業における一定の効果は期待できそうだ。
また昨今の大手企業中心とした終身雇用終焉の風潮を鑑みるに、今後は副業や兼業を容認することで個人のキャリアの可能性が拡がるとも考えている。

<個人としての副業・兼業の利点>

  • 自身のキャリアにどの程度価値があるかをテスト的に体験することが可能になる
  • 社員の知見と異なる経験を持つ社外人材との交流を通じて、
    イノベーションが得られる可能性
  • 年配者のセカンドキャリアや再雇用時の新たなキャリア発見の機会創出
  • 1つの会社に依存しなくなることで、自身のライフスタイルを考慮した
    働き方が可能になる

無論、企業としても労務管理や本業の知財漏洩リスクなどの懸念点もあるが、社員に副業・兼業を認めたり、外部の副業人材を受け入れたりすることのメリットは多い。

<企業としての副業・兼業の利点>

  • 外部から人材受け入れることで新たな知見を得られる
  • 社内人材だけで起きにくいイノベーションが生まれやすくなる
  • 従業員のモチベーション向上や採用時の企業PRポイントとしても活用できる
  • 外部交流を通じて、社内人材のリスキリングや再配置に

上記の観点からも、今後「副業・兼業」はキャリア開発の一手段として少しずつ浸透していくのではないだろうか。

最後に

前年のマイナビライフキャリア実態調査で分析を行った際、社内から評価の高い人材程、「副業・兼業」を望む傾向もみられた。海外では「大辞職時代(Great Resignation)」といった言葉が飛び交うように、今後人材の流動化は避けることのできない潮流ではないかと感じている。日本国内でも近い将来、同様のことが起こる可能性は高い。

そんな時代において、各企業の人事施策として、自社の社員に「副業・兼業」を過重労働とならない範囲で、キャリアの選択肢の一つとして選択できる状況を作っておくことが重要な要素になりそうだ。

キャリアリサーチLab所長 栗田 卓也

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