マイナビ キャリアリサーチLab

副業希望は本当に増えているのか~過去調査との2時点比較~

副業・兼業をめぐる最近の報告

近年、「副業・兼業」に注目が集まっている。以前であれば「副業・兼業」はいわゆる内職のような生活費の足しに実施するイメージだったが、近年は自らのキャリア形成や自己成長のためといった、ポジティブな要因も含まれるようになってきていると感じる。弊社が実施しているマイナビライフキャリア実態調査によると、就業者を対象に2020年4月~2021年3月の1年間で副業・兼業を行ったことのある人は18.1%となっている。副業・兼業を行ったことがない人でも「副業・兼業はしたことがないが、今後はしたいと思っている」割合は27.3%と希望する割合は高い。
ただ、弊社内で副業・兼業に関する調査はここ1~2年に実施したものが多く、10年以上前の状況と比較してどう変化しているのかは判断ができない。そこで今回は、実験的な取り組みとして、弊社以外の機関や団体で過去に実施された調査と比較して、時系列的な変化をみることができないか、トライしてみた。

副業経験者は14年前より増加傾向

この副業・兼業を時系列で比較するにあたり、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2007年11月に実施した「副業者の就労に関する調査」(以後JILPT調査と表記)と比較させていただくことにした。10年以上の間隔が開いていて時系列的な比較ができ、且つ信頼性の高い調査だと判断したためだ。弊社のデータは前述のマイナビライフキャリア実態調査(以後、マイナビ調査と表記)をJILPT調査の調査条件にできるだけ近づける形で対象を選定して使用する。両調査の概要は巻末の表を参照いただきたい。

ここで両調査の副業経験に関する定義の違いについて説明しておく。
JILPT調査では「仕事をしている」133,522人に対し、「あなたが現在している仕事はいくつありますか」と問い、「仕事は2つ」と「仕事は3つ以上」と回答した人の合計10,803名を副業経験者としており、比率にして8.1%となっている。

マイナビ調査の集計に際しては、JILPT調査に年齢・構成等をできるだけ寄せる形で対象者7.743名に絞り込み、主観的に「副業・兼業をした」と回答した人の合計1,717名を副業経験者としており、比率は22.1%※1となっている。
この比較でJILPT調査は調査時点に限定されているのに対し、マイナビ調査は1年間という期間があるため、マイナビの方がやや高めに出る可能性はある。また13年前の2007年11月はリーマンショック直前の年で、どちらかというと景況感は上昇基調にあった時期に対し、マイナビ調査はコロナ禍中の時期となるなど経済的な背景の違いはあるだろう。しかしそれを加味しても14年前の8.1%から22.1%まで14pt以上増加しているため、副業を実施している人の割合は増加しているといっても差し支えない結果となっているのではないだろうか。【表1】

※1マイナビキャリア実態調査で既発表の副業兼業比率18.1%は、対象分母や集計方法が異なるため、数値が異なる。

表1


副業数についてもマイナビは1~21以上までの選択式としており、そこからJILPTの分類に併せて分割している。ウエイトバックに関しては副業経験者において男女比率の比較をしてみたが、さほど大きな差異が見受けられなかったため、補正をかけずに集計を行っている。【表2】

表2 JILPTの調査では「本業のみの人」を2,000名ランダム抽出しているため、副業者経験割合を算出する際は133.522名が分母となる。


副業経験者の属性比較

ここから副業経験者の属性に関していくつか比較してみたい。まず年齢をみると、JILPT調査では「副業1つ」で38.5歳、「副業2つ以上」で39.2歳に対し、マイナビ調査では「この1年で副業・兼業経験あり1つ」が36.7歳、「この1年で副業・兼業経験あり2つ以上」が34.9歳とやや年齢が低めになっており、13年前と比較すると若い世代で副業をポジティブなものとして受け止めている可能性も考えられる。
最終学歴はさほど大きな違いはないが、JILPT調査よりマイナビ調査の方が「四年制大学」の比率が高く、「短期大学・高専」の割合が低くなっている。この20年で短大の四年制大学化が進んだ影響があるのかもしれない。既婚割合を比較すると、JILPT調査の62.4%に対し、マイナビ調査は32.0%と低かった。これは後述する非正規社員割合の高さが多少影響しているのかもしれない。【図1・2】

図1・2

副業経験者の本業の状況

続いて副業経験者の本業の状況を比較してみた。JILPT調査では「非正社員(派遣・契約・パート等)」が35.9%に対し、マイナビ調査では58.3%と大幅に上昇している。本業と副業の関係をみても、JILPT調査では「本業も副業も『雇用者』」が37.7%に対し、マイナビ調査では69.9%と増加している。これは調査期間がコロナ禍の1年間(2020年4月~2021年3月)に副業を経験している人が多く、非正規で雇用されている就業者のシフト減少や出勤が制限されたため、やむなく副業に就いた人々が多かったのでないかと推察される。【図3・4】

図3・4

本業の業種を比較しても、JILPT調査でもっとも多い「その他サービス業」が半減し、マイナビ調査において「飲食店・宿泊業」(10.4%)や「運輸業」(6.5%)、「製造業」(11.2%)で副業を行っている割合がJILPT調査と比較して高まっている。「飲食店・宿泊業」や「製造業」は、本業の影響を受けやむなく副業というパターンであろう。「運輸業」に関しては宅配需要の高まりから、複数の企業から配送を請け負っていた可能性が高い。この数値を見る限り、13年前との純粋比較はやや難しく、コロナという特殊要因によって副業が増加した可能性が高そうだ。【図5】

図5


本業の従業員規模について比較してみると、さほど大きな違いは無かった。但し、従業員規模はJILPT調査とマイナビ調査で若干選択肢が異なるため、参考程度にご覧いただきたい。【表3】
本業の役職を比較してみると、マイナビ調査の方が非正規社員の比率が高い関係もあり、「役職には就いていない(一般社員相当)」が9割を占めている。【図6】

表3 JILPTの調査に「わからない」という選択肢があったので、対象を除いた分母で再集計して算出。


図6

副業の状況

今度は副業の状況について比較してみる。まず業種を比較してみると、JILPT調査では「その他サービス業」が多く、マイナビ調査では「その他」がもっとも多い。 職種の自由記述をみると「アンケート回答」や「ネット販売関連」などが多く、業種の分類が難しいことがうかがえる。また、13年前よりもインターネット上での副業が増加している可能性も感じられた。【図7】

図7 JILPTは収入のもっとも多い副業の主な業種を回答、マイナビも「収入が一番多い仕事」として回答

本業と副業における業種の関係性に関しても比較してみた。マイナビ調査においては、一部業種の回答数が30名を下回っているため、参考程度にご覧いただきたい。(電気・ガス・熱供給・水道業17名 不動産業27名)
グラフ自体は本業と副業の業種が同一である割合を示している。全般的にマイナビ調査の方がJILPT調査よりも、本業と副業が同一業種である割合が高めになっている。コロナの影響で、他の副業に従事しようにも物理的に外出が難しく、同業種内で実施が可能な範囲に限られていた可能性が考えられるが、残念ながらこの要因分析に至るような項目の回答は得られていない。【図8】

図8

2時点の比較をした結果

ここまでJILPT調査とマイナビ調査を使って副業の2時点比較を試みてみた結果、以下の変化がみられた。

  • 副業の実施割合は、調査指標は違えど、8.1%から22.1%にまで増加しており、13年前より増加傾向
  • 非正規社員の割合が高く、コロナの影響を色濃く反映している可能性
  • 副業は「その他」の業種に分類される新たなジャンル( アンケート回答、ネット販売等) の内容が多くみられた

13年前の異なる調査と比較してみることで、時間的な変化と共に異なる社会背景での比較の難しさも実感した。特にコロナの影響が副業に及ぼしている可能性について、個人的に改めて気づけたことは収穫だった。次回は同じ副業について、副業の実施理由や、そこから見える副業の実情や、タイプ別の傾向などを示してみたい。

両調査の調査概要

日本労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2009/055.html

キャリアリサーチLab所長 栗田 卓也

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