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働き方改革で単線型のキャリアパスは変化するか!?
副業・兼業の実態を探る

厚生労働省が、「働き方改革実行計画」(2017年3月 働き方改革実現会議決定)に基づき「副業・兼業についてのガイドライン」を作成したのは2018年1月。同計画では、柔軟な働き方を実現するために副業・兼業を促進することの必要性を説き、副業・兼業は新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備としても有効だと指摘した。

上記ガイドラインが策定されて3年が経過した。この間、コロナ禍でテレワークが広く浸透し、働き方に対する労働者の意識も大きく変化した。また、欧米のみならず日本でも「リスキリング=新たにスキルを身につけること」が注目を集め始め、既存の能力では対応できない新しい職業や仕事の進め方に対応するための能力開発の重要性が高まり、副業・兼業への期待も高まっている。

現状、企業側や労働者は副業・兼業に対してどういった意識を持っているのか、そして副業・兼業がどこまで普及しているのか、統計データをもとに実態に迫りたい。

追加就業希望者は増加傾向

まずは、総務省が3年ごとに調査を実施している「就業構造基本調査」の結果から確認する。直近の調査結果が2017年(第17回)なので、少し古いデータにはなってしまうが、長期的なトレンドは把握できるだろう。グラフを見ると、追加就業希望者、つまり本業以外に追加で仕事を持ちたいと考えている人は、年々増加傾向であることがわかる。

副業をするのは、経済的な理由が第一

では、なぜ副業をするのか、その理由を探ってみよう。下記のグラフは、2020年7月に厚生労働省がインターネットで実施した「副業・兼業に関する労働者調査」の結果だ。同調査では、調査会社が約67万人に調査回答依頼のメールを送信し、 約23万人から回答が寄せられた。有効回答は15万9,355人で、うち「仕事は1つだけ(副業なし)」の人は90.3%、「仕事は2つ以上(副業あり)」の人は9.7%だった。

この9.7%の人について、なぜ副業をしているのか理由別に整理したのが左のグラフで、もっとも回答が多いのが「収入を増やしたいから」(56.6%)で、次に多いのが「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」(39.7%)となっている。3位に「自分が活躍できる場を広げたいから」(19.8%)というキャリア開発に対する意識が感じられる回答が登場するものの、数値を見ると2位の約半分で、副業をする理由は圧倒的に経済的な事情によるものが大きいことがわかる。

兼業・副業導入に向けた企業側の動きはにぶい

国を挙げて働き方改革を推進し、多様な働き方の実現をしようとしているものの、副業をしたいという労働者側の意識とは別に、企業側の対応はあまり芳しくない。下記は、東京都産業労働局が2020年に都内の企業を対象に実施した「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」だ。従業員の兼業・副業を認めているかどうかについて企業別に見てみると、大企業の場合は、条件付きで認めている場合を含めて39.9%。中小企業の場合は34.7%となっている。

大企業の数値が高いのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)など技術の進化への対応が急務で、社内の人材教育だけでは追いつかないという実状があるのかもしれない。あるいは、副業・兼業を推進することで、将来の経営リスクに備えて人員の調整がしやすい環境づくりを進めていることも考えられる。

ちなみに、兼業・副業を認めている形態としては、「個人事業主として」がトップで52.7%。次が「他社の社員として」が36.6%となっており、本業との兼ね合いでプラスの効果が期待できる場合は、他社での業務を認める企業が少なくないことがわかる。

※大企業、中小企業の定義について
中小企業基本法では、資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であり製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第4号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むものを中小企業と定義している。また、大企業に関して明確な定義はなく、一般的には中小企業以外の企業とされている。

人材確保とモチベーションアップのために普及が進む可能性

では、企業側が従業員の兼業・副業を認めている理由についても確認してみよう。「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」によると、トップが「柔軟な働き方による優秀な人材採用」(38.7%)、2位が「人材の定着(離職率の低下)」(37.8%)、3位が「従業員のモチベーション向上」(35.2%)という結果となっている。

しかしながら、兼業・副業による効果については、「あった」と「ややあった」の合計が33.0%で、「あまりなかった」と「なかった」の合計が57.9%となっており、従業員の兼業・副業を認めたものの、効果がなかったと判断している企業が6割近くあるようだ

採用や定着で一定の効果も、懸念点も多い

「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」では、企業が兼業・副業でどんな効果があったと考えているのか、また、どんな課題や問題点があると考えているのかについても調査している。

効果については、「人材の定着(離職率の低下)」「従業員のモチベーション向上」「柔軟な働き方による優秀な人材採用」が上位に入っており、兼業・副業を導入することの本来の目的ともいえる「人材育成・従業員のスキル向上」は4位という結果になっている。

また、課題・問題点として、「従業員の健康管理上の問題」「社内業務への支障」「従業員の労務管理上(時間管理・給与管理等)の問題」が上位に入っており、労働者の労働時間や健康管理、運用面の難しさを反映した結果となっている。

柔軟な労働市場の確立には、課題も残る

最後に、兼業・副業が広く普及するための課題と今後の可能性について整理しておきたい。「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」によると、兼業・副業を認めない理由として、本業への影響、業務への支障を懸念する企業が多いようだ。さらに、本業以外に仕事を持つことによる健康への影響、労働時間や給与などの労務管理の難しさを心配する回答が多く寄せられている。

こうした懸念が払拭されない限り、今後についても「当面取り組む予定はない」と回答する企業が6割以上あり、「従業員の意向」や「地域や他社の動向」を見て導入を検討するという慎重な姿勢の企業も少なくないようだ。

しかしながら、「働き方改革」は日本経済再生の鍵ともいえる。コロナ禍で減少した収入をカバーする目的の兼業・副業であれば、労働者の能力開発にプラス効果は期待できないが、自らの能力を本業だけに縛られずに生かすチャンスが広がれば、単線型のキャリアパスから脱却し、各人のライフステージにあった働き方が実現する可能性は高い。労働条件などのルールづくり、労働者の健康を守るための法整備など、課題は少なくないが、労働者の多様な働き方を実現するためにも、意識改革と制度変革の積極的な推進が、企業にも労働者にも求められている。


著者紹介 吉本 隆男(よしもと たかお)キャリアライター&就活アドバイザー

1960年大阪生まれ。1990年毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)入社。各種採用広報ツールの制作を幅広く手がけ、その後、パソコン雑誌、転職情報誌の編集長を務める。2015~2018年まで新卒のマイナビ編集長を務め、2019年からは地域創生をテーマとした高校生向けキャリア教育プログラムおよび教材の開発に従事。2020年定年退職を機にキャリアライター&就活アドバイザーとして独立。
日本キャリア開発協会会員(CDA)、国家資格キャリアコンサルタント。著書に『保護者に求められる就活支援』(2019年/マイナビ出版)

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