「仕事はつらいもの」は今も当たり前なのか【キャリア神話をデータで見直す】

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

「仕事はつらいもの」「働くとは我慢すること」「若いうちは苦労して当然」。こうした言葉を、これまで一度は耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。

もちろん、仕事には責任が伴う。納期や成果を求められる場面もあれば、人間関係に悩むこともある。すべての仕事が楽しいわけではなく、時には負荷やストレスを感じることもあるだろう。そういう意味では、「仕事にはつらい側面がある」という見方は、決して間違いではない。

しかし、それは本当に仕事(そのもの)が「つらいもの」だと言い切れる根拠になるのだろうか。近年は、転職の一般化や働き方の多様化、ワークライフバランスへの関心の高まりなどにより、仕事に対する価値観は大きく変化している。

働くことを、単なる我慢の対象や生活の手段としてではなく、成長や自己実現、生活の充実と結びつけて考える人も増えている。そこで本稿では、マイナビキャリアリサーチLabの調査データをもとに、「仕事はつらいもの」というキャリア神話(※)ついて検証していきたい。

※本稿における「キャリア神話」とは、法律や制度として定められているわけではないが、多くの人が正しいことだと信じ、判断の前提として共有している考え方(通説)を指す。
※この記事で引用している調査の詳細は、各調査を参照してほしい。

なぜ「仕事はつらいもの」と考えられてきたのか

そもそも、なぜ「仕事=つらいもの」という考え方は広く根づいてきたのだろうか。背景には、さまざまな要因があると思うが、その一つに日本型雇用慣行がある。

かつての日本では、終身雇用を前提にしており、同じ会社で経験を積み、年功序列で昇進・昇給していくキャリアモデルが一般的だった。この仕組みの下では、多少の不満があっても「耐えること」に一定の合理性があった。若いうちは下積みをし、厳しい環境を乗り越えることで一人前になる。そうした価値観が、職場や社会の中で共有されてきた。

また、転職に対するハードルも今より高かった。会社を辞めることは「逃げ」や「失敗」とみなされやすく、一度入った会社で頑張り続けることが望ましいとされていた。たとえ仕事がつらくても、環境を変えるよりも自分が我慢することが求められやすかったのだ。

つまり、「仕事はつらいもの」というキャリア神話は、そういった雇用環境や社会構造の中では一定の説得力を持っていたといえる。しかし、現在の働き方やキャリア形成のあり方は大きく変わっている。転職は以前より一般的になり、若年層だけでなくミドル層の転職も活発化している。

たとえば、マイナビキャリアリサーチLabの「転職動向調査2026年版(2025年実績)」では、2025年の正社員の転職率は7.6%で過去最高水準となり、特に40代・50代の転職率が上昇していることがわかる。【図1】

【全体/年代別】正社員の転職率推移/転職動向調査2026年版(2025年実績)
【全体/年代別】正社員の転職率推移/転職動向調査2026年版(2025年実績)

このように、働く環境を選び直すことが以前より現実的になっている現在、「つらい仕事を我慢し続けること」が唯一のキャリアの選択肢ではなくなっているのだ。

データから見えてくる仕事観の変化

「楽しく働きたい」という学生の就職観

まず注目したいのが、これから社会に出る大学生の就職観である。

マイナビキャリアリサーチLabの「2027年卒大学生就職意識調査」では、就職観について「楽しく働きたい」が40.2%で最多となっている。2027年卒の結果は、2010年卒以降では、初めて4割を超えている。【図2】

就職観の推移/2027年卒大学生就職意識調査
就職観の推移/2027年卒大学生就職意識調査

若い世代が仕事に対して「楽しさ」や「前向きに働けること」を重視していることがわかる。ただし、ここでいう「楽しく働きたい」とは、単に仕事の負担を減らしたいという意味ではないだろう。

また、「楽しく働きたい」に次いで、「個人の生活と仕事を両立させたい」が高い割合で推移しているが、前向きに働ける環境を選びたい、生活とのバランスを取りながら働きたい、といった意識の表れの一つだと考えられる。

さらに同調査では、企業選択のポイントとして「安定している会社」が55.4%で最多となり、次いで「給料の良い会社」も26.6%と増加している。【図3】

企業選択のポイント(上位5項目のみ抜粋)/2027年卒大学生就職意識調査
企業選択のポイント(上位5項目のみ抜粋)/2027年卒大学生就職意識調査

ここから、学生は「楽しく働きたい」と考える一方で、安定や給与も重視しており、仕事に楽しさだけを求めているのではなく、生活基盤や将来への安心感も含めて、総合的に働き方を考えていることがわかる。現在の大学生は「どうすれば前向きに働き続けられるか」を重視し始めているのではないだろうか。

具体的な働くイメージが働く意欲につながる?

大学生は社会に出たことがないため、働くことの具体的なイメージを持ちにくい。働くことへの不安や漠然としたイメージは、仕事に対するネガティブな見方につながる可能性もある。

マイナビキャリアリサーチLabの「2026年卒 大学生キャリア意向調査8月<学生の働くイメージと不安>」では、「社会に出て働くイメージを持っている」学生は55.6%だった。【図4】

社会に出て働くイメージの有無/2026年卒 大学生キャリア意向調査8月<学生の働くイメージと不安>
社会に出て働くイメージの有無/2026年卒 大学生キャリア意向調査8月<学生の働くイメージと不安>

また、働くイメージを持っている学生の8割以上は、働く意欲も高い結果となっている。一方で、働くイメージを「持っていない」と回答した学生は、「意欲が高い(40.4%)」と「意欲が低い(36.8%)」の回答が同程度の割合となった。【図5】

働くイメージと働く意欲/2026年卒 大学生キャリア意向調査8月<学生の働くイメージと不安>
働くイメージと働く意欲/2026年卒 大学生キャリア意向調査8月<学生の働くイメージと不安>

この結果から見えてくるのは、「働く意欲」は、仕事そのものの問題だけではなく、働くことをどれだけ具体的にイメージできているかにも左右されるかもしれないということだ。職場の雰囲気や仕事内容、人間関係、働き方を具体的に理解できれば、働くことへの不安は軽減され、意欲につながりやすくなる。

反対に、仕事の実態が見えないまま「社会人は大変」「働くのはつらい」といったイメージだけが先行すると、働くことそのものが不安や負担として捉えられやすくなる。つまり、「仕事はつらいもの」というキャリア神話は、仕事の実態だけでなく、情報不足やイメージ不足によって強化されている面もあるのではないだろうか。

転職理由の実態とは?

次に、すでに働いている社会人について見ていく。マイナビキャリアリサーチLabの「転職動向調査2026年版(2025年実績)」では、2025年に転職した正社員の転職理由として、「給与が低かった」が23.2%でもっとも高く、次いで「仕事内容に不満があった」が21.0%、「職場の人間関係が悪かった」が20.0%となっている。【図6】

正社員の転職理由(上位抜粋)/転職動向調査2026年版(2025年実績)
正社員の転職理由(上位抜粋)/転職動向調査2026年版(2025年実績)

転職理由を見ると、給与や仕事内容、人間関係など、働くうえでの不満やストレスが背景にあることもうかがえる。一方で、同調査では、転職者の半数以上にあたる52.6%が「前職で自身のキャリアに停滞感を感じていた」とも回答している。【図7】

前職で自身のキャリアに停滞感を感じていたか/転職動向調査2026年版(2025年実績)
前職で自身のキャリアに停滞感を感じていたか/転職動向調査2026年版(2025年実績)

さらに停滞感の理由としては、「毎日同じ仕事内容の繰り返し」「将来性が見えなかった」「評価とのギャップに悩んだ」など、仕事内容や階層、報酬・評価に関する内容が目立っている。【図8】

キャリアの停滞を感じた理由・きかっけ(自由回答)/転職動向調査2026年版(2025年実績)
キャリアの停滞を感じた理由・きかっけ(自由回答)/転職動向調査2026年版(2025年実績)

ここからわかるのは、転職は単に「つらいから逃げる」といったものではなく、「このままでよいのか」「もっと成長できる環境はないか」といったキャリア上の問題意識から生じている面があるということだ。

「仕事はつらいものだから我慢する」という思考では、キャリアの停滞感や成長機会の不足に目が向きにくい。現在では、転職はキャリアの選択肢の一つとして位置づけられつつあり、環境を見直す契機となるケースもみられる。

実際、マイナビキャリアリサーチLabの「転職活動実態調査(2025年)」では、直近1年間で転職活動を行った人のうち、「転職することでキャリアは前進する」と思う人は74.4%にのぼっている。【図9】

転職活動時の心境/転職活動実態調査(2025年)
転職活動時の心境/転職活動実態調査(2025年)

この結果は、転職がキャリアを前進させる手段として捉えられていることがわかる。つまり、「つらいから辞める」という側面だけでなく、働く環境やキャリアのあり方を見直す動きもみられる。

働く目的は「お金」だけではない

「仕事はつらいもの」というと、「働くのは生活のため」「仕事はお金を得るために我慢するもの」だからしかたないと考える人もいるかもしれない。もちろん、収入は働くうえで非常に重要であり、近年の物価上昇や将来への不安を考えれば、給与や待遇を重視するのは自然なことだ。

実際、マイナビキャリアリサーチLabの「【20代正社員に聞いた】2026年(2025年実績)」では、20代正社員の働く目的として「お金のため」が75.5%で最多となっている。この結果だけを見ると、「やはり仕事はお金のためにするもの」と考えたくなるかもしれない。【図10】

【20代正社員】仕事の価値観/【20代正社員に聞いた】2026年(2025年実績)
【20代正社員】仕事の価値観/【20代正社員に聞いた】2026年(2025年実績)

しかし、同調査では「趣味のため」に働いているという回答も61.1%で上位に入っている。ここから、働くことを通じて私生活の充実や自分の楽しみを実現したいという意識もうかがえる。

また、20代正社員の現在の生活比重を見ると、「私生活の充実を重視した生活になっている」が52.5%で最多だった。一方で、理想の生活では「仕事・私生活どちらの充実も等しく重視した生活になっていたい」が41.3%となり、現在の状況を13.7pt上回っている。【図11】

【20代正社員】理想と現実の「生活の比重」/【20代正社員に聞いた】2026年(2025年実績)
【20代正社員】理想と現実の「生活の比重」/【20代正社員に聞いた】2026年(2025年実績)

つまり、若手社員は仕事を軽視しているわけではなく、私生活を大切にしながらも、仕事とも前向きに向き合える状態を望んでいると考えられる。このように、働く目的が多様化する中で、もう一つ重要なのが仕事と私生活の関係の捉え方である。

働くことは、我慢してお金を得るだけの行為ではなく、生活を支え、趣味や自己実現を可能にし、場合によっては仕事そのものの充実にもつながるものとして捉えられ始めているのではないだろうか。

仕事と私生活は対立するものではない

「仕事はつらいもの」というキャリア神話の背景には、仕事と私生活を対立的に捉える考え方もある。仕事を頑張れば私生活が犠牲になり、私生活を大切にすれば仕事で成長できない。こうした二項対立で働き方を捉えると、仕事はどうしても負担や犠牲として見えやすくなる。

しかし、実際には仕事と私生活は必ずしも対立するものではない。マイナビキャリアリサーチLabの「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)」では、20~50代の正社員の69.8%が「私生活の充実と仕事の充実はつながっている」と感じている。【図12】

「私生活の充実」と「仕事の充実」のつながり/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)
「私生活の充実」と「仕事の充実」のつながり/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)

さらに、ワークライフ・インテグレーション(仕事とプライベートの双方を充実させ、人生を豊かにするという考え方)を実現できている人では、「仕事も私生活も満足」と回答した割合が55.5%で、実現できていない人の13.9%を40pt以上上回っている。【図13】

【WLI現実有無別】仕事と私生活の満足度/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)
【WLI現実有無別】仕事と私生活の満足度/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)

また、働くモチベーションが「高い」割合も、実現できている人では55.8%にのぼる一方、実現できていない人では14.4%にとどまっている。【図14】

【WLI実現有無別】働くモチベーションが高いが多い割合/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)
【WLI実現有無別】働くモチベーションが高いが多い割合/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)

この結果から、仕事は「つらいものだから私生活で埋め合わせる」のではなく、仕事と私生活の双方の充実が意識される中で、働き方への関心も高まっていると考えられる。

「つらさ」がないわけではない

ここまで見てきたように、データからは「仕事はつらいもの」と単純には言い切れない実態が見えてくる。学生は「楽しく働きたい」と考え、20代正社員は私生活を大切にしながら仕事にも前向きに向き合いたいと考えている。転職も、単に逃げるためではなく、キャリアを前進させる手段として捉えられている。

ただし、だからといって「仕事のつらさが存在しない」と言うことはできない。転職理由では、給与や仕事内容、人間関係への不満が上位にあがっており、学生が社会人になるにあたって不安に思うことでは、「職場の人間関係」がもっとも多い結果となっている。

仕事のつらさには、個人の努力だけでは解決できないものもある。業務量や人間関係、評価制度、働く時間や場所、キャリアの見通しなど、職場環境や組織の仕組みによって生じるつらさもある。そうした問題を「本人の忍耐不足」と捉えてしまうと、改善の機会を失ってしまう。

大切なのは、「仕事にはつらい側面がある」ことを認めたうえで、「だから我慢するしかない」と考えないことである。つらさの原因を見極め、必要に応じて環境を変えたり、働き方を調整したり、キャリアの方向性を見直したりすることが大切だ。

「我慢」から「納得感」で働く時代へ

「仕事はつらいもの」というキャリア神話の問題点は、働く人に「つらくても耐えるべきだ」という前提を与えてしまうことにある。

しかし、データを見ると、働く人々の価値観は少しずつ変化している。こうした変化を踏まえると、これからのキャリアに必要なのは、「つらさに耐えられるか」ではなく、「自分が納得して働けるか」という視点ではないだろうか。

仕事には大変なこともある。責任を負う場面もあれば、壁にぶつかったり、新しいことに挑戦したりする中で負荷を感じることもある。しかし、その負荷が自分の成長や目標の実現、あるいは生活の充実につながっていると感じられれば、同じ大変さであっても意味のある経験として受け止めやすくなる。

一方で、近年は「ゆるブラック」や「ホワイトハラスメント」といった言葉が注目されるように、負荷やプレッシャーそのものをなくせばよいという考え方にも課題が指摘されている。過度なストレスは避けるべきだが、適度な挑戦や責任は成長やエンゲージメントの向上につながる場合もある。重要なのは、「つらい」と感じる瞬間があるかどうかではなく、その負荷が自分にとってどのような意味を持つのかということだろう。

「仕事はつらいものだから我慢する」という考え方から、「自分が納得できる働き方やキャリアを選ぶ」という考え方へ。仕事の大変さを否定するのではなく、その大変さとの向き合い方を見直すことこそ、「仕事=つらい」というキャリア神話を乗り越える手がかりになるのではないだろうか。

マイナビキャリアリサーチLabでは、今後もキャリア神話を取り上げる予定だ。

片山久也
担当者
キャリアリサーチLab編集部
HISANARI KATAYAMA

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