転職を後悔しないために。退職後悔者の特徴から考える

嘉嶋麻友美
著者
キャリアリサーチLab研究員
MAYUMI KASHIMA

近年、キャリア形成において「転職」という選択肢は一般化しつつある。一方で、転職をすればすべてが良い方向に進むとは限らない。マイナビが行った企業向けの調査で、アメリカで「ビッグ・ステイ(Big Stay)」と呼ばれる、同じ会社に留まる労働者の年間賃金上昇率が転職する労働者を上回る現象が日本でも到来すると思うかを聞いたところ、「来ると思う」とした割合は8割を超えた。

このように、転職よりも同じ会社に留まる方が賃金面で有利になる可能性があると考える企業も多い。

転職によって得られる可能性があるものと、失う可能性があるもの。その両方を慎重に見極める必要性は、今後さらに高まっていくと考えられる。本コラムでは、2025年に転職した正社員を対象に、転職後に後悔している人としていない人を比較し、後悔しない転職のヒントを探る。

転職等希望者の推移

総務省の労働力調査によると、正規の職員・従業員の転職等希望者数は2025年に579万人と、前年から15万人増加し、増加傾向が続いている。この数値には副業希望者も含まれる点には注意が必要なものの、現在とは異なる働き方を希望する人は増加している。【図1】

【図1】正規転職等希望者の推移/労働力調査「詳細集計」よりマイナビが作成
【図1】正規転職等希望者の推移/労働力調査「詳細集計」よりマイナビが作成

転職率の推移

さらに、転職動向調査では、2025年の正社員の転職率が7.6%となり、過去最高を更新した2022年と同率で高い水準となった。【図2】

【図2】正社員の転職率推移/転職動向調査2026年版
【図2】正社員の転職率推移/転職動向調査2026年版

転職を希望する人は増え続け、転職率も高水準を維持しており、「転職の一般化」は、着実に進行している。だが、語られるのはいつも転職後の「満足」ばかりだ。うまくいかなかった転職、つまり「後悔」が語られる機会は驚くほど少ない。

では、転職した人のうち、前職を離れた選択を後悔している人はどれくらいいるのだろうか。

前職を退職したことに対する後悔有無

転職動向調査で、2025年に転職した正社員に「前職を退職したことを後悔しているか」を尋ねたところ、全体の22.3%が「そう思う」と回答した。5人に1人以上が、前職を離れた選択に後悔を抱えている。

また、前職の役職別にみると、「部長クラス以上」が29.5%でもっとも高く、「課長クラス」(28.7%)、「係長・主任・職長クラス」(24.8%)と続いた。役職が高いほど後悔している割合が高い傾向がうかがえる。【図3】

【図3】前職を退職したことを後悔している割合/転職動向調査2026年版
【図3】前職を退職したことを後悔している割合/転職動向調査2026年版

なぜ退職を後悔しているのか

なぜ後悔が生まれるのか。その背景を探るため、前職を退職したことに対する後悔有無別に現状を比較した。

転職前後での仕事量・仕事難易度の変化

まず特徴的だったのは、後悔を抱えている人ほど、現職において仕事の量や難易度の低下を感じていることである。「後悔している」層では、仕事の量が少なくなったと感じる人、仕事の内容が簡単になったと感じる人がともに33.2%を占めた。これらの割合は、「どちらともいえない」層や「後悔していない」層よりも高かった。

一方、「後悔していない」層では、仕事の量が「多くなった」が28.2%、仕事の内容が「難しくなった」が29.1%となり、いずれも他の層より高い傾向がみられた。【図4】

【図4】転職前後での変化/転職動向調査2026年版
【図4】転職前後での変化/転職動向調査2026年版

一般的に、仕事量の減少や業務負担の軽減は、働きやすさの向上につながる変化と捉えられやすい。しかし後悔している層では、それが必ずしも肯定的に作用していない。

社内ニートのような状態にある?

その背景として考えられるのが、転職後に十分な仕事や役割を与えられていない状態である。実際に、現職で自らを「社内ニート(会社から仕事を任せられず、自分が担当する業務が少ない、またはほとんどない状態)」のような状態にあたると答えた割合は、「後悔している」層で39.1%となった。「どちらともいえない」(25.8%)、「後悔していない」(15.0%)と比べて高い。【図5】

【図5】現職で社内ニートのような状態だと感じている割合/転職動向調査2026年版
【図5】現職で社内ニートのような状態だと感じている割合/転職動向調査2026年版

前職からの仕事量や業務内容の負担が軽くなったことが、かえって手持ち無沙汰な感覚につながり、社内ニートのような状態にあるという実感を生んでいる可能性が考えられる。後悔の背景には、新しい職場で十分な役割を与えられていないという感覚があることがうかがえる。

後悔しているのはどのような人か

前職を退職したことへの後悔の背景には、転職後の仕事に対する物足りなさがあるのかもしれない。では、後悔を抱えている人にはどのような特徴があるのだろうか。データをみると、いくつかの共通点が浮かび上がってきた。

出世意向が高い

第一に挙げられるのが、キャリアに対する上昇志向の強さである。後悔している層では、「出世したい」と考える割合が51.6%と半数を超えた。組織のなかで役割を広げ、キャリアを積み上げていきたいという意識が強い層であることがうかがえる。

裏を返せば、この層にとって仕事の負荷が軽くなることは、必ずしも歓迎すべき変化ではない。担う責任の縮小は、キャリアの停滞と映りかねないためだ。【図6】

【図6】出世意向/転職動向調査2026年版
【図6】出世意向/転職動向調査2026年版

前職で評価されていた

第二に、前職での立ち位置にも明確な差がみられた。注目したいのは、後悔している層が必ずしも「前職でうまくいかなかった人」ではない点である。むしろ、その逆の姿が浮かび上がる。

前職で昇進できたと思う割合

「前職で昇進できたと思う」割合は、後悔している層で49.7%となり、どちらともいえない層(29.6%)、後悔していない層(24.2%)を大きく上回った。後悔している層のおよそ半数が、前職に留まっていれば昇進の可能性があったと感じている。【図7】

【図7】前職で昇進できたと思う割合/転職動向調査2026年版
【図7】前職で昇進できたと思う割合/転職動向調査2026年版

前職で周囲から評価されていたと思う割合

同様に、「前職で周囲から高く評価されていたと思う」割合も、後悔している層で63.0%にのぼり、どちらともいえない層(40.1%)、後悔していない層(39.5%)と比べて20pt以上高かった。【図8】

【図8】前職で周囲から高く評価されていたと思う割合/転職動向調査2026年版
【図8】前職で周囲から高く評価されていたと思う割合/転職動向調査2026年版

つまり、前職を離れたことを後悔している人は、前職で評価され、昇進も視野に入っていた層である。だからこそ、転職先で業務が縮小したときの落差は大きくなる。

なぜ転職を決断したのか

では、彼らはなぜ転職したのだろうか。昇進も視野に入っていたのであれば、そのまま留まって上を目指す道もあったはずである。

後悔している層が転職活動を始めた理由をみると、もっとも多かったのは「給与が低かった」(19.3%)だった。ただしこの割合は全体(23.2%)を下回っており、給与が転職のきっかけとして突出していたわけではない。むしろ全体と比べて高かったのは、「休日や残業時間などの待遇に不満があった」(15.5%)、「働く環境に不満があった」(15.5%)といった項目である。【図9】

【図9】転職活動を始めた理由(複数回答・上位抜粋)/転職動向調査2026年版
【図9】転職活動を始めた理由(複数回答・上位抜粋)/転職動向調査2026年版

給与や仕事内容、人間関係、会社の将来性など、転職を考える理由は複合的である。そのうえで後悔している層に特徴的だったのは、働き方や職場環境を変えたいという動機だった。労働時間や休日といった「働きやすさ」を求めて動いた結果、その希望自体は一定程度かなえられたと考えられる。実際、転職によって働き方の選択肢が広がった側面もみられる。

転職によって増えた選択肢

副業ができるようになった割合

後悔している層では、副業ができるようになった割合が34.2%となり、3人に1人以上となった。全体(24.6%)と比べて9.6pt高い結果となった。【図10】

【図10】副業ができるようになった割合/転職動向調査2026年版
【図10】副業ができるようになった割合/転職動向調査2026年版

リモートワークができるようになった割合

同様に、リモートワークができるようになった割合も29.8%となり、全体(22.9%)を6.9pt上回った。【図11】

【図11】リモートワークができるようになった割合/転職動向調査2026年版
【図11】リモートワークができるようになった割合/転職動向調査2026年版

働き方の選択肢という点では、後悔している層はむしろ働きやすい環境に移っているといえる。副業やリモートワークは、転職先を選ぶ際にわかりやすい魅力として映る条件でもある。それでもなお後悔が残るのは、こうした制度面の充実だけでは満たされない要素があることを浮き彫りにしている。

転職を後悔しないために

転職市場では、給与、休日数、リモートワークや副業の可否といった、可視化しやすい条件に関心が集まりやすい。求人情報として比較でき、面接でも確認しやすいからだ。

しかし本調査の結果は、自分の能力を発揮できる機会があるか、相応の役割を任せてもらえるか、将来的に昇進の道が開けているかといった要素もまた、転職の納得感を左右することを示唆している。これらは求人票からは読み取りにくく、入社してみて初めて実感される部分でもある。

これらの結果は、企業側にとっても示唆がある。柔軟な働き方を整備するだけでは、意欲の高い人材をつなぎとめることはできない。入社後にどのような役割を任せ、どのようなキャリアの見通しを示すのか。その設計こそが、ミスマッチを防ぐ鍵になる。特に管理職経験者を迎える場合、経験に見合う裁量をどう用意するかは重要な論点だろう。

働きやすい会社に移ることは、ゴールではなく出発点である。そこで何を任され、どう成長していけるのか。転職を検討する際には、得られるものと同じだけ、手放す可能性のあるものにも目を向けたい。

マイナビキャリアリサーチLab研究員 嘉嶋 麻友美

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