大学生低学年のキャリア観-低学年次の地元(Uターン)就職意識-

中島英里香
著者
キャリアリサーチLab研究員
ERIKA NAKASHIMA

はじめに

現在、多くの大学生はインターンシップや仕事体験を通じてキャリア形成活動を行い、就職先を決定している。キャリア形成活動を本格的に始めるのは大学3年生が一般的であるが、本来「キャリア」とは過去の選択や経験の積み重ねによって形成されるものであり、大学入学前の進路選択からその後のキャリアについて考える必要がある。

そこで本連載では、積極的なキャリア形成活動が始まる前の大学1、2年生を対象に、大学入学前の選択から今後の活動までの一連の流れを探っていく。

第2回目のコラムでは卒業後の進路(キャリアの方向性)をすでに決めている学生の特徴をみてきた。第3回目となる今回は、低学年次の地元(Uターン)就職意向をみていく。 

就職活動時の学生の勤務地希望

地元(Uターン)就職を希望する割合

マイナビが行った2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査より、2026年卒の地元就職希望率(希望勤務都道府県=出身高校所在地)をみると、地元(=出身高校在住地)の大学に進学した学生は68.1%、地元外(≠出身高校在住地)の大学に進学した学生は27.6%であった。 

また、どちらの学生も年々、地元への就職希望率が減少していることがわかる。【図1】 

出身都道府県に就職を希望する割合/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【図1】出身都道府県に就職を希望する割合/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査

希望する理由を尋ねると、1位が「両親や祖父母の近くで生活したい(48.1%)」、2位が「実家から通えて経済的に楽(41.7%)」、3位が「地元(Uターン先)での生活に慣れている(39.6%)」という結果であった。【図2】

地元(Uターン含む)就職を希望する理由/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【図2】地元(Uターン含む)就職を希望する理由/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査

上位の理由をみると、身近に家族がいることで得られる精神的な安心感や経済的サポートなどが背景としてあることが推測される。社会人として初めて仕事に就き、新たな人間関係を築くといった環境変化を考えた際に、地元での就職を選択することで、そうした負担や不安を少しでも和らげようとする学生の姿がうかがえる。 

地元(Uターン)就職を希望しない理由

一方で、地元就職をしない理由については、1位は「志望する企業がないから(36.8%)」、2位は「給料が安そうだから(27.3%)」が、3位には「都会の方が生活の上で便利だから(27.0%)」となった。【図3】

地元企業(Uターン先企業含む)を希望しない理由/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【図3】地元企業(Uターン先企業含む)を希望しない理由/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査

志望する企業がないとは具体的にどういうことであろうか。学生の自由回答をみてみると「希望する業界・職種で採用を行っている企業がない(少ない)」ということのようだ。

 また、一部の学生からは「若いうちは都会で経験を積んで、いずれは地元に戻る」という意見もみられ、地元就職を希望しない学生が生涯にわたって地元へ戻らないということではなく、中長期的なキャリアを考えた際に初期キャリアを地元外で始める学生もいるようだ。【表1】 

地元(Uターン含む)就職を希望しない理由(自由回答)/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【表1】地元(Uターン含む)就職を希望しない理由(自由回答)/2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査

以上より、就職活動中の学生における地元(Uターン)就職希望について確認してきた。【図1】で示したとおり、地元進学の学生では68.1%が地元就職を希望しているのに対し、地元外進学の学生では27.6%にとどまっており、進学先によって地元就職希望に大きな差がみられた。

では、こうした差異は、学生が大学進学を機に地元を離れた時点ですでに存在しているのだろうか。次に、低学年(大学1、2年生)を対象とした調査結果からこの点を検討していく。 

大学1、2年生の地元(Uターン)就職希望

地元(Uターン)就職を希望する割合

低学年次の地元進学学生における地元就職希望割合は65.3%であったのに対し、地元外進学学生では39.6%にとどまった。低学年と2026年卒の就職活動中の学生の結果を比較すると、地元進学学生の地元就職希望率では低学年の方が2.8pt低いものの、その差は小さく、両者はほぼ同程度であった。

一方で、地元外進学学生では低学年の方が12.0pt高く、低学年から就職活動期に進むにつれて地元就職希望が低下していることが確認された。もっとも、両調査は異なる学生を対象としたものであるため、単純な比較には留意が必要である。【図4】

【図4】地元への就職を希望する割合の変化/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【図4】地元への就職を希望する割合の変化/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査

低学年次における「働く場所」に対する意識をより詳しくみると、地元進学学生・地元外進学学生のいずれにおいても、約3割が「働く場所にはこだわらない」と回答しており、低学年段階では就業地に明確なこだわりを持っていない学生が一定数存在することが確認された。

一方で、地元外進学学生に注目すると、約5人に1人が「大学所在地の都道府県で働きたい」と回答していた。地元を離れて大学に進学し、新たな人間関係や生活環境を築く中で、「大学所在地で働きたい」という意識が芽生えている可能性が考えられる。【図5】 

【図5】【低学年】勤務地の希望/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
【図5】【低学年】勤務地の希望/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)

地元外進学学生がUターン就職を希望しない理由 

地元外進学学生で地元就職を希望しない学生に、その理由を尋ねた。結果、低学年の1位は「地域にとらわれず働きたいから(29.8%)」、2位は「都会の方が生活の上で便利だから(23.9%)」、3位は「実家に住みたくない(離れたい)から(17.8%)」であった。【表2】 

【表2】【地元外進学学生対象】地元外で働きたい理由/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査
【表2】【地元外進学学生対象】地元外で働きたい理由/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
2026年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査 

2026年卒の就活生と比較すると、回答内容には大きな違いがみられる。2026卒の学生は就職活動の最中にあるため、「給与が安そう」「大手企業がないから」といった、具体的な企業条件や雇用環境に基づく理由が上位に挙げられていた。

一方、低学年の学生はまだ本格的に就職を意識する段階には至っていない。そのため、特定の企業に対する評価ではなく、「地域にとらわれずに働きたい」といった志向や、都会の利便性への関心など、働くというよりも住む場所としての観点からの理由が上位に挙がったものと考えられる。 

どうすれば地元就職するのか

地元就職を希望しない学生に対し、「実現すれば地元就職を検討する可能性がある条件」を尋ねたところ、もっとも多かった回答は「給料がよい就職先が多くできる(30.3%)」であり、次いで「働きたいと思うような企業が多くできる(25.4%)」「地元の経済が活性化する(23.5%)」が挙げられた。【図6】 

【図6】実現すれば地元就職するかもしれないもの/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象)
【図6】実現すれば地元就職するかもしれないもの/大学生低学年のキャリア意識調査12月(2028・2029年卒対象) 

一方、表2より地元外で働きたい理由としては、地域全体に関する回答が多くを占め、企業に関する項目は、上位5項目の中では「志望する企業がないから(12.8%)」のみであった。

しかし、「地元に就職するための条件」を問う設問では、給与水準の高い企業の存在や地元経済の活性化が重視されており、地元就職を検討する際には、地域での生活を具体的に想定した上で、雇用環境や生活基盤の充実が求められていることがうかがえる。 

まとめ

今回の調査から、地元就職をめぐる学生の意識は、進学先や時期によって少しずつ変化している可能性がうかがえた。まず印象的なのは、地元進学学生では低学年から就職活動期にかけて、地元就職を希望する割合が大きく変わらない点である。大学進学後も生活環境や人間関係が継続しやすいことから、「地元で働く」という選択肢が自然な延長線上にあり続けているのかもしれない。

一方、地元外進学学生では、低学年の段階では一定数が地元就職を視野に入れているものの、就職活動期にかけてその割合が大きく低下していた。大学進学を機に地元を離れ、新しい友人や生活リズムを築く中で、「地元以外で働くこと」への心理的なハードルが下がっていく様子が想像される。実際、低学年の地元外進学学生の中には、「大学所在地で働きたい」と考える学生も少なくなく、進学先が将来の働く場所として意識され始めていることがうかがえる。

また、低学年の学生は、就職をまだ現実的に考える段階ではないため、「働く場所にはこだわらない」「都会のほうが便利そう」といった、暮らし方や価値観に近い視点で回答する傾向がみられた。これに対し、就職活動中の学生では、「給与が安そう」「大手企業が少ない」といった、より具体的で現実的な理由が目立つ。就職活動を通じて企業情報に触れることで、地元を見る目が「なんとなくのイメージ」から「条件としての評価」へと変わっていくのだろう。 

さらに興味深いのは、地元就職を希望しない理由では地域全体に関する声が多かった一方で、「こうなれば地元で働いてもよい」という条件としては、給与のよい企業の存在や地元経済の活性化が挙げられていた点である。これは、地元への気持ちが完全に離れているというよりも、「地元で生活していけるかどうか」を現実的に考えた結果といえそうだ。

こうした結果を踏まえると、地元就職の意識は、進学時点で決まるものではなく、大学生活や就職活動を通じて少しずつ形づくられていくものだといえる。地元外進学学生にとって、地元就職を選択肢として残してもらうためには、早い段階から「地元で働く・暮らす」具体的なイメージを持てる機会が重要だといえる。 

マイナビキャリアリサーチLab 研究員 中島英里香

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