1on1とは?部下が主人公で心理的安全性を高めるための活用方法を解説

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

リモートワークでの働き方や職場における心理的安全性などに関する意識が高まってきている。こうした中で、上司と部下の信頼関係を構築していくための手段として、1on1ミーティングが注目されている。

本コラムでは、ビジネス現場での1on1での制度についてや活用方法、類似した制度との違いについてわかりやすく解説する。

1on1の定義

1on1ミーティング(1on1)とは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話のことであり、部下の成長支援やエンゲージメント向上を目的としたマネジメント手法である。通常、15分から30分程度の短時間で、週1回から月1回程度の頻度で実施されることが多い。

ただし、近年でのビジネス実践では「直属の上司」に限らず、「他部門の上司」や「同じ 部門を管轄している、より上位の管理職」での横やナナメでの1on1も意識的に実施されていることが増えてきている傾向である。

1on1の最大の特徴は、その主役が「部下」である点にある。従来の人事面談が上司主導で評価や目標設定を行うのに対し、1on1では部下が話したいこと、相談したいことを中心に対話が展開される。上司は傾聴やコーチングのスキルを活用し、部下の内省を促し、自律的な成長を支援する役割を担う。

1on1の源流は、1980年代にインテルのCEOアンディ・グローブが著書『High Output Management』で提唱した手法にあるとされる。

その後、2010年代後半から日本の企業でもビジネス現場での導入が広がり、急速に広がった働き方改革やテレワークの進展、価値観の多様化といった社会背景のもとで、個別対応型のマネジメント手法としてビジネス現場では注目を集めている。

類似されやすい制度との比較

ここからは、ビジネス現場での類似した制度での整理を解説する。

人事評価面談との違い

1on1と人事評価面談は混同されやすいが、目的と性質が大きく異なる。人事評価面談は半年や1年に1回程度実施され、目標達成度の評価や次期目標の設定、昇給・昇格の判断など、「評価」を主目的とする。主導権は上司にあり、会社の人事制度に基づいた定型的なプロセスで進められる。

一方、1on1は評価を目的としない。むしろ、評価の場と切り離すことで、部下が本音で話しやすい心理的安全性を確保することが重要である。頻度も高く、部下の日常的な業務上の悩みや成長、キャリアについて対話することで、継続的な関係構築と成長支援を図る。したがって、両者は目的が異なる別の施策であり、併存させることが望ましい。

目標管理面談(MBO面談)との違い

目標管理における面談は、組織目標と個人目標の連動、進捗確認、達成度評価を目的とする。目標の設定と評価という「管理」の側面が強く、上司が部下の業務進捗をモニタリングする場となりやすい。

1on1においても業務の進捗は話題になりうるが、それは部下が抱える課題の解決や学びの機会創出のための文脈である。目標管理面談が「何をどこまで達成したか」を確認するのに対し、1on1は「なぜそう考えたのか」「そこから何を学んだのか」といった内省的対話を重視する。したがって、1on1は目標管理の代替ではなく、補完的な関係にある。

立ち話・雑談との違い

オフィスにおける日常的な立ち話や雑談も重要なコミュニケーション手段だが、1on1とは意図と構造が異なる。立ち話は偶発的・即興的であり、時間も内容も不定である。

一方、1on1は「定期的に実施すること」「専用の時間と場を確保すること」を前提とし、部下の成長支援という明確な目的のもとで行われる。特にリモートワーク環境では、偶発的なコミュニケーション機会が減少するため、意図的に対話の場を設ける1on1の重要性が高まっている。

ただし、1on1が立ち話を完全に代替できるわけではなく、両者は職場のコミュニケーション全体の中で相互補完的な役割を果たすと考えるべきである。リモートワークについての詳細はこちらで解説している。

メンター制度との関係

メンター制度は、経験豊富な社員が若手社員のキャリア形成を支援する仕組みであり、多くの場合、直属の上司以外の先輩社員が担当する。1対1の対話を基本とするが、評価権限を持たないメンターだからこそ話せる内容もあり、1on1とは異なる価値を提供する。

企業によっては、直属の上司との1on1に加えて、メンターとの定期面談を併用することで、多面的な成長支援を実現している。両者は対立するものではなく、組織における人材育成施策の一環として統合的に実施されていることが多い。

1on1を成功させる要素

『日本の人事部 人事白書2020』(https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/2303/) の調査では、1on1を成功させる上でもっとも必要なこととして「上司の傾聴力」(42.4%)が挙げられた。次いで「心理的安全性」(24.1%)、「1on1に関する研修・教育」(10.6%)、「上司による事前準備」(7.6%)、「適切な時間と頻度」(6.5%)の順となっている。

1on1のポイント

目的の明確化と共有

1on1の目的を組織全体で共有することが重要である。「何のための1on1か」が曖昧なまま形だけ導入すると、形骸化のリスクが高まる。部下の成長支援、信頼関係構築、心理的安全性の確保など、自社における1on1の位置づけを明確にする必要がある。

上司のスキル育成

1on1を効果的に行うためには、部下の話を丁寧に聴き、考えを引き出す質問をし、良い点をきちんと認めたうえで、必要な助言を伝える力が必要である。そのため、状況に応じてコーチングやティーチング、フィードバックを使い分けることが重要となる。

多くの管理職は、こうしたスキルを体系的に学ぶ機会がないまま現場経験で習得してきたため、研修やトレーニングの提供が重要となる。

心理的安全性の確保

1on1で話した内容が評価に影響したり、本人の了解なく他の人に内容を共有されたりすること(アウティング)があれば、部下は本音で話せなくなる。1on1の内容は守秘を原則とし、評価面談とは明確に切り離すことで、心理的安全性を確保する必要がある。心理的安全性についてはこちらで解説している。

定期的な実施

1on1の効果は、一度きりではなく継続的な実施によって発揮される。週1回から月1回程度の定期的な実施が推奨されるが、組織の実情に応じて無理のない頻度を設定し、継続することが重要である。

部下主導の対話

1on1の主役は部下であり、部下が話したいことを話せる場とすることが重要である。上司が一方的に話し続けたり、業務の進捗管理だけで終わったりしないよう、部下の関心や悩みに焦点を当てた対話を心がける必要がある。

ツールの活用

近年、1on1を支援するデジタルツールも増えている。事前にアジェンダを共有する機能、対話内容を記録する機能、AIによるフィードバック機能などを備えたツールが登場しており、1on1の質向上や継続的な実施を支援している。ただし、ツールはあくまで手段であり、本質的には上司と部下の信頼関係と対話の質が重要である。

1on1での課題

上司のスキル不足と負担増

新たな手法である以上、上司のスキル不足はついてまわる課題であると言える。たとえば、1on1の課題として「上司の面談スキル不足」がもっともよくある。1on1には傾聴やコーチングといった専門的なスキルが求められるが、多くの管理職はこれらを体系的に学ぶ機会がないまま実施している。

また、「上司負荷の高まり」も大きな課題である。部下の人数が多い管理職にとって、全員と定期的に1on1を実施することは時間的に大きな負担となる。「全員と実施しようと思うと1日が終わってしまう」という声も聞かれ、業務との両立が困難な状況もよくある現状である。

マンネリ化

毎回、同じ上司と部下の2人で話し合うミーティングであるという特徴からマンネリ化や個別の面談の特性上、ハラスメントも起こりやすい傾向がある。

また、緊張感の欠如が問題となりうる。MENTAGRAPH社の調査(2025年)によれば、1on1について「毎回似たような内容の繰り返しになっている」と回答した人は51.9%と過半数に達しており、「表面的な会話にとどまり、本質的な議論に発展しない」が42.8%となり、マンネリ化の実態が報告された。

一定期間実施すると「部下の話は一通り聞いてしまった」と感じる上司も多く、さらに話を引き出すアプローチがわからないという悩みも存在する。

また、1on1ミーティング自体の目的が不明瞭なまま進めてしまっているという問題もある。形だけ導入しても、「何のための1on1か」が腹落ちしていなければ、単なる時間の浪費となってしまうことになる。また、部下の規模間としても10名以下のような少人数の組織構成であれば、1on1にこだわる必要性もないだろう。

1on1を効果的に機能させるためには、「人材育成を重視する組織風土をつくる」ことがもっとも重要だと上司・部下ともに認識しているとの調査結果 もあることから、こうした課題に対しては、社内全体で毎回のミーティングで何を話すべきかを決め、テーマの多様化を図るなど、全社的に1on1ミーティングに取り組んでいく姿勢が必要になると考えられる。

今後の1on1

近年では職場における心理的安全性などに関する意識が高まってきている。こうした中で1on1は、チームの中でも上司と2人きりで話すことができる機会であり、信頼関係構築の向上に寄与することのできる大きな機会として期待することができる。

部下が主人公である等といった1on1独自の考え方を大切にしながら、今後の働き方改善や多様性の人材活用・キャリア開発の機会のために浸透していくことを期待したい。


【参考文献】
MENTAGRAPH株式会社「1on1に関する実態調査」2025年
https://www.mentagraph.com/report/report-00005
厚生労働省 キャリア形成・リスキリング推進事業チャンネル「1on1の導入に関する動画教材 キャリアコンサルティングの技法を取り入れた1on1ミーティング」
https://www.youtube.com/playlist?list=PLee2XGBbR6mrU0V3HPjwAKJfb75mWugY7
厚生労働省 労働政策審議会「職場におけるコミュニケーションの在り方に関する議論」2019年
日本の人事部編集部「日本の人事部 人事白書2020」2020年
https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/2303/

穂刈顕一
担当者
キャリアリサーチLab編集部
KENICHI HOKARI

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