少子高齢化が進む中、労働力人口の減少と経験人材の活用は避けられない課題である。近年、シニアの活躍が注目される背景には、こうした社会構造の変化がある。さらに企業は、2025年4月の「高年齢者雇用安定法」改正により、希望する従業員全員を65歳まで雇用することが義務化された。
こうした状況を踏まえ、ミドルシニア世代の老後意識やシニアの現状をもとに、セカンドキャリアをどのように再設計すべきかを考察する。
※本稿では「ミドルシニア」を40~50代の正社員と定義する。調査によっては「2024年に転職した人」や「2024年3月時点で正社員」など条件が異なる場合もある。
※さらに「シニア」についても65歳以上と定義し、議論を進める。
少子高齢化による変化
人口推移と将来推計
日本の人口は、総務省「人口推計」によると2024年10月1日時点で約1億2,380万人となり、14年連続で減少となった。15歳未満人口は1,383万人となり、2020年比120万人減、15~64歳人口(生産年齢人口)は7,373万人となり、2020年比136万人減となり、減少傾向が続いている。
一方で65歳以上人口は、3,624万人となり、2020年と比べて21万人増加し、総人口に占める割合(高齢化率)は29.3%だった。1950年(4.9%)と比較すると約6倍となっている。
さらに、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると2025年以降も高齢化率は増加を続け、2065年には38.4%に到達すると推計されている。【図1】
【図1】高齢化の推移と将来推計/内閣府「令和7年版高齢社会白書」
資料:棒グラフと実線の高齢化率については、2020年までは総務省「国勢調査」(2015年及び2020年は不詳補完値による。)、2024年は総務省「人口推計」(令和6年10月1日現在(令和2年国勢調査を基準とする推計値))、2025年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
労働力人口の推移
64歳以下の人口が減少し、65歳以上の人口が増加する中、労働力人口の比率にも変化が出ている。2023年の労働力人口比率では、65~69歳では53.5%、70~74歳では34.5%となっており、いずれも上昇傾向である。また75歳以上(11.5%)についても緩やかに上昇が続いている。【図2】
ミドルシニアの「勤労年齢」意識
働き続けたい年齢
2024年に転職した40~50代の正社員に対して、今後何歳まで働き続けたいか聞いたところ、65歳以上と回答した割合は68.0%だった。全体(54.3%)と比較すると13.7pt高い。
この時点で転職している40~50代であるため、今後のキャリアや働き方を意識しているミドルシニア層であるという注釈はつくものの、それでも65歳以降の就労意欲の高さは十分見て取れる。【図3】
人生で働かないといけないと思う年齢
さらに、重ねて人生で何歳まで働かないといけないと思うか聞いた結果、65歳以上と回答した割合は8割以上となり、平均67.9歳となった。全体と比較すると、「働き続けたい年齢」と同様にミドルシニア層の方が11.0pt高い結果となった。
現行の「高年齢者雇用安定法」では65歳までの雇用確保措置が義務化されているが、ミドルシニアの約8割は法制度の枠を超えて、65歳以上も働く必要性を感じている。なお、70歳までの就業機会確保が努力義務とされていることから、「働かないといけないと思う年齢」は今後さらに高まると予想される。【図4】
【図4】ミドルシニアが働かないといけない思う年齢/マイナビ「転職動向調査2025年」
ミドルシニアが「働かなければならない」と考える就労観を高める要素
では、ミドルシニアが65歳以降も、働く必要性を感じる背景には、どのような要因があるのだろうか。
正社員で働く40~50代のミドルシニアに65歳以降の仕事の予測として「老後資金のために仕方なく働いていると思う」もしくは「資金面だけでなく人との関わりや生きがいのために働いていると思う」のどちらが近いと思うか聞いたところ、「老後資金のために仕方なく働いていると思う」が66.5%となった。【図5】
【図5】ミドルシニアが考える65歳以降の就業理由/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
2019年に実施された金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」では、老後20~30年間で約1,300万円~2,000万円が不足するという試算を報告しており、老後資金に関する不安感もミドルシニアの65歳以降における就労意識に影響を与えている可能性が考えられる。
ミドルシニアが思う65歳以降の理想の働き方
では、具体的にどういった働き方を理想としているのだろうか。
仕事環境の理想
正社員で働く40~50代のミドルシニアに対して65歳以降の理想の働き方として、「慣れ親しんだ仕事・職場で働き続けたい」もしくは「新しい仕事・職場に変えたい」のうち、どちらが理想に近いか聞いたところ、「慣れ親しんだ仕事・職場で働きたい」が71.6%となった。【図6】
【図6】ミドルシニアが考える65歳以降の理想の働き方「慣れ親しんだ仕事or新しい仕事」/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
また「安定・現状維持を重視したい」もしくは「さらなる成長・挑戦を重視したい」のうち、どちらが理想に近いか聞いたところ、「安定・現状維持を重視したい」が80.3%となった。
ミドルシニアの多くは、65歳以降はできる限り仕事や職場などの環境を変えず、安定した心理状態で働きたいと考えているようだ。【図7】
【図7】ミドルシニアが考える65歳以降の理想の働き方「安定or挑戦」 /マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
組織の中での理想の立場
では、組織の中ではどういった立場でいることを理想像としてイメージしているのだろうか。
正社員で働く40~50代のミドルシニアに対して、65歳以降の立場について「責任のある立場になりたい・維持したい」もしくは「責任のある立場になりたくない・降格したい」のうち、どちらが理想に近いか聞いたところ、ほぼ半々(責任のある立場になりたい・維持したい:45.0%/責任のある立場になりたくない・降格したい:55.0%)だった。【図8】
【図8】ミドルシニアが考える65歳以降の理想の働き方「責任のある立場or責任のない立場」/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
一方で、仕事量の理想について、「仕事量はできるだけ早く減らしたい」もしくは「できるだけ長く現役世代と変わらない仕事量をこなしたい」のうち、どちらが理想に近いか聞いたところ、「仕事量はできるだけ早く減らしたい」が79.7%となった。【図9】
【図9】ミドルシニアが考える65歳以降の理想の働き方「仕事量を減らしたいor仕事量を減らしたくない」/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
ミドルシニアで、65歳以降に現役世代のようにバリバリ仕事をこなしたいと考えている割合は多くなく、むしろ業務負担を軽減しながら自身にあったゆとりのある働き方ができることを理想としていると考えられる。
シニアの現状
ここまでは40~50代の正社員(ミドルシニア)が思う65歳以降の理想の働き方についてみてきた。ここからは65歳以上の働くシニアの現状についてみていく。
現実と理想のギャップ
何らかの雇用形態で働く65歳以上の人(以下:シニア)に対して、現在の働き方・生活が理想に近いかどうか聞いたところ、理想に近い(現在の働き方・生活は理想に近い+どちらかというと現在の働き方・生活は理想に近い)と答えた割合は67.7%、理想から遠い(現在の働き方・生活は理想から遠い+どちらかというと現在の働き方・生活は理想から遠い)と答えた割合は32.3%だった。【図10】
【図10】65歳以上の働くシニアの現状/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
現在の働き方・生活が理想から遠いと感じる理由を聞いたところ、「年金が少ない(39.0%)」がもっとも高く、「物価が高い(37.2%)」「体力的に厳しい(36.5%)」「貯蓄が足りない(31.1%)」が3割を超えた。【図11】
【図11】65歳以上の働くシニアが現在の働き方・生活が理想から遠いと感じる理由/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
今後の就労意向
シニアに対して、今後の継続就労意識について聞いたところ、「できるだけ働き続けたい」と答えた割合は63.6%だった。理想型シニア(現在の働き方・生活は理想に近いと回答したシニア)では65.4%となり、乖離型シニア(現在の働き方・生活は理想から遠いと回答したシニア)の59.9%と比較して5.5pt高い結果となった。【図12】
【図12】働くシニアの継続就労意識/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
ミドルシニアが考えているような老後資金等の経済面での不安により、やむを得ず働いているシニアも一定数存在するが、7割程度のシニアは働くことを生活の一部として捉え、その生活に満足感を感じ、今後も継続的な就労を望んでいる。
働く意欲があがるきっかけ
理想型シニアと乖離型シニアに対して、働く意欲があがるきっかけについて、聞いたところ、理想型シニアでは「周りから頼りにされたとき」が32.0%でもっとも高く、乖離型シニアでは「収入が上がったとき」が34.7%でもっとも高い結果となった。
理想型シニアは、就労が単なる収入源ではなく、社会的役割や自己実現の場として機能していることが考えられる。【図13】
【図13】(働くシニア)働く意欲が上がるきっかけ/マイナビ「ライフキャリア実態調査2025年」
仕事をどう捉えていくのか
ミドルシニアの多くが、65歳以降のセカンドキャリアに対して「老後資金のために仕方なく働いていると思う」と将来を思い浮かべていることが明らかとなった。しかし、現在のシニアをみると「収入」を仕事のやりがいとしてモチベーションを維持する働き方は、経済面での不安定さとあいまって、思い浮かべる理想とのギャップを感じる可能性がある。
セカンドキャリアをより充実した理想のキャリアとするためには、仕事を人との関わりや自身の生きがいのために自己実現できる場として捉え、自分が理想とする働き方ができるようにキャリアを内省し、将来に向けた選択肢を具体化していくことが必要なのではないだろうか。
キャリアリサーチLab研究員 嘉嶋麻友美