離職率とは?最新データから早期離職の現状を考察

朝比奈あかり
著者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

近年、企業における人材の定着や採用活動のあり方が大きく注目されている。その背景には、労働市場の流動化や働き方の多様化が進む中で、離職率や早期離職が経営課題として浮上していることが挙げられる。特に若年層を中心とした早期離職の増加は、企業の持続的成長や人材育成に影響を及ぼす可能性があると考えられる。

本コラムでは、離職率および早期離職の現状について、公的統計データやマイナビが実施した調査結果をもとに整理し、企業や個人が直面する現状を考察することを目的とする。

離職率とは

離職率とは、一定期間内に組織を離れた従業員の割合を示す指標である。一般的な企業においては、離職率が低いと定着率がよく長く働ける職場であると認識され、反対に離職率が高いと人の入れ替わりが激しい可能性があると認識される。そのため企業にとっては注視すべき指標の一つといえるだろう。

離職率は、調査や統計によって分母・分子の取り方が異なる場合があるため、代表的な計算方法をいくつか紹介する。

厚生労働省「雇用動向調査」における離職率の計算方法

厚生労働省が実施している「雇用動向調査」では、離職率は以下のように計算されている。

離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者(※1)数 × 100 (%)

(※1)常用労働者とは、次のいずれかに該当する労働者をいう。
  ① 期間を定めずに雇われている者
  ② 1カ月以上の期間を定めて雇われている者

「雇用動向調査」では、1月1日を起点とした1年間の人材の減少度合いによって離職率を算出している。また、離職率だけでなく入職率(同じ1月1日を起点とした1年間の人材の増加割合)も算出しており、入職者に対して離職者がどの程度いたのかについても算出されている。

「雇用動向調査」における離職率・入職率の推移

では、実際に離職率・入職率がどのように推移しているのか見ていく。一般労働者(常用労働者からパートタイムを除いた労働者)に絞って転職率と入職率の推移を出したのが図1のグラフである。

経年で見ると、リーマンショックの影響があった2008~2009年において特に離職率の超過が大きいことが分かる。2013年以降は入職率の方が高い状況が続いたが、2020年以降は入職率と離職率がほぼ同じ状況が続いた。直近2024年の離職率は11.5%で前年から減少、入職率は11.8%で前年から減少している。2024年は入職者の方がやや多い状況がうかがえる。【図1】

【図1】一般労働者の離職率と入職率の推移/離職率とは?最新データから早期離職の現状を考察
※出典:厚生労働省「雇用動向調査」よりマイナビが作成
【図1】一般労働者の離職率と入職率の推移/離職率とは?最新データから早期離職の現状を考察
※出典:厚生労働省「雇用動向調査」よりマイナビが作成

人事院「公務員白書」における離職率の計算方法

人事院では、毎年「公務員白書」において公務員の離職率が算出されている。白書内で「一般職の国家公務員の任用状況調査」が紹介されており、それによると離職率は以下のように計算されている。

離職率 = 令和4年度中の離職者数 ÷ 令和4年1月15日現在の在職者数 × 100 (%)

※「公務員白書」令和5年版(2023年版)より引用

「一般職の国家公務員の任用状況調査」では、1月15日を起点とし、年度(4月~3月)における離職者数を計算しているようだ。

一般的な離職率の計算方法

一般的な企業において計算される「離職率」は以下の3パターンであると考えられる。

  • すべての従業員の離職率
  • 新卒入社した従業員の離職率
  • 中途入社した従業員の離職率

「すべての従業員の離職率」の計算方法

まず、すべての従業員の離職率については、以下のような計算式になるだろう。

全従業員の離職率 = ある期間における離職者数 ÷ ある時点における全従業員数 × 100 (%)

※起点となる日や離職率を算出する期間は、企業の方針や戦略によって変わる

たとえば、2024年4月1日を起点としその時点の全従業員数が100人であった場合、2024年度の離職者が10人であれば、離職率は10%となる。

「新卒入社した従業員の離職率」の計算方法

次に、新卒入社した従業員の離職率については、以下のような計算式になるだろう。

新卒社員の離職率 = ある期間における新卒社員の離職者数 ÷ ある時点における新卒社員数 × 100 (%)

※起点となる日や離職率を算出する期間は、企業の方針や戦略によって変わる

たとえば、2024年4月1日を起点とし、その時点の新卒入社社員が10人であった場合、2024年度の離職者が2人であれば、離職率は20%となる。

もし、「入社から3年以内の新卒社員の離職率」を見たい場合は、たとえば2022年の4月1日時点の新卒入社社員のうち、3年後の2025年4月1日までに離職した割合を計算するということだ。

「中途入社した従業員の離職率」の計算方法

さいごに、中途入社した従業員の離職率については、以下のような計算式になるだろう。

中途社員の離職率 = ある期間における中途社員の離職者数 ÷ ある時点における中途社員数 × 100 (%)

※起点となる日や離職率を算出する期間は、企業の方針や戦略によって変わる

たとえば、2024年4月1日を起点とし、その時点の中途入社社員が5人であった場合、2024年度の離職者が1人であれば、離職率は20%となる。

「3年3割問題」とは?入社3年で離職する割合

厚生労働省「新規学卒者の離職状況」と「3年3割問題」

「3年3割問題」とは、新卒で入社した社員のうち、3年以内に約3割が離職するという現象を指す言葉である。この言葉は厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」に基づき広く知られるようになった。

この調査では、以下のように離職率が計算されている。

新規大卒就職者の就職後3年以内離職率 = 新規大卒就職者のうち令和3年3月1日から令和6年3月31日までに離職した者 ÷ 令和3年3月1日から令和3年6月30日までに 新規学卒として雇用保険に加入した者(新規大卒就職者) × 100 (%)

※令和6年(2024年)10月発表分『資料出所及び離職率の集計の考え方』より引用
※就職者は生年月日が平成 11年4月1日以前としている
※離職者について、令和3年3月1日から令和3年6月30日までに新規学卒として雇用保険加入の届けを提出した事業所を上記の期間中に離職した場合、離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出している

厚生労働省「新規学卒者の離職状況」における入社3年で離職する割合

実際の推移は以下のようになっている。新規大学卒業者における2021年の3年以内の離職状況は34.9%となっており、3年で3割が辞める状況は続いているようだ。【図2】

【図2】新規大学卒者の離職状況/離職率とは?最新データから早期離職の現状を考察
※出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」よりマイナビが作成
【図2】新規大学卒者の離職状況/離職率とは?最新データから早期離職の現状を考察
※出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」よりマイナビが作成

早期離職について

ここまで離職率について具体的な計算方法も交えながら説明してきた。ここからは離職率とあわせて語られることの多い「早期離職」について、新卒入社者と転職者それぞれの現状について見ていきたい。

新卒入社者の早期離職について

入社後『長く働きたい』が58.8%(マイナビデータによる学生の声)

3年で3割の新卒入社社員が辞める状況が続いているが、注意したいのは学生は初めから早期離職を前提としているわけではないということだ。

マイナビがマイナビ2026会員に向けて実施した「マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査 8月<就職活動・進路決定>」によると、入社予定先が決まっている学生のうち58.8%が「入社予定先企業で長く働きたい」と回答している。

短期間で転職を希望している割合は非常に低く、「1年以内に転職を考えたい」で0.9%、「3年以内に転職を考えたい」で3.4%となった。学生は、新卒で入社する会社で長期的なキャリアを見据えていることが分かる。【図3】

【図3】入社後のその先のキャリアについて、どのように考えているか(単一回答/n=1,100) /
マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査 8月<就職活動・進路決定>
【図3】入社後のその先のキャリアについて、どのように考えているか(単一回答/n=1,100) /
マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査 8月<就職活動・進路決定>

入社後、仕事内容にネガティブなギャップ(マイナビデータによる学生の声)

新卒入社社員は長期で働く気があるのに3割が3年でやめてしまうということは、就活時の想定と働きはじめた後の状況に何かギャップがあるのではないかと考えられる。マイナビが実施した「2024年卒 入社半年後調査」から、入社前後でどのようなギャップがあったかを見ていく。

勤務先で働いてみて、入社を決めた時とのギャップがあるか、16の項目について聞いた。ネガティブなギャップがあったとの回答がもっとも多かったのは「仕事内容(28.3%)」となった。【図4】

【図4】入社を決めた時と入社半年後時点でのギャップ(単一回答/24年卒317名) /マイナビ 2024年卒 入社半年後調査
【図4】入社を決めた時と入社半年後時点でのギャップ(単一回答/24年卒317名) /マイナビ 2024年卒 入社半年後調査

離職に至る理由は複合的であると考えられるが、こうしたネガティブなギャップをきっかけに「このままこの会社にいて良いのか」と不安を感じる従業員も一定数存在すると推察される。企業には、入社時点で働くイメージをより具体的に伝える工夫が求められている可能性がある。

オンボーディングについて

オンボーディング(on-boarding)」とは、新入社員が組織に定着し、いち早く仕事に慣れるためのサポートのことである。

以下コラムでは、新入社員の早期離職を防ぎ、定着率を上げるための取り組みのなかで、具体的に新入社員のどのような感情に寄り添い、サポートしていくことが定着に繋がるのか考察している。

転職者の早期離職について

企業側が思う早期離職は「入社して9.6カ月以内の離職」

マイナビが実施した「中途採用実態調査2025年版」では、2025年1~6月に中途採用を行った企業の人事担当者に対して、早期離職だと思う勤続年数をたずねている。その結果、企業側が早期離職だと認識する平均の勤続期間は「入社してから9.6カ月以内」とされている。また、2025年1~6月に「早期離職者がいた」割合は65.4%となった。【図5】

【図5】企業側が早期離職だと考える勤続年数 /マイナビ 中途採用実態調査2025年版
【図5】企業側が早期離職だと考える勤続年数 /マイナビ 中途採用実態調査2025年版

従来は「3年3割問題」が早期離職の代表的な課題として語られることが多かったが、今回の調査結果からは、企業が認識する「早期離職」の期間が短縮傾向にある可能性が示唆される。

個人には「早期離職は自分のキャリアにとってプラス」という考えも

マイナビが実施した「転職活動における行動特性調査2024年版」では、正社員として働いている20代~50代の男女のうち2023年6月~2024年6月に転職活動をした人を対象に、早期離職が自分のキャリアにとってプラスかマイナスかどちらに感じるかを聞いた。

その結果「プラス(計)」が41.3%となり、「マイナス(計)」の29.5%を大きく上回る結果となった。

早期離職がプラスだと考える理由は、「自分に合う職場を見つけることに繋がる」が57.1%で最も多く、次いで「自分に合う仕事を見つけることに繋がる」55.5%だった。【図3】

【図6】早期離職はキャリアにとってプラスかマイナスか /マイナビ 転職活動における行動特性調査2024年版
【図6】早期離職はキャリアにとってプラスかマイナスか /マイナビ 転職活動における行動特性調査2024年版

この傾向から、個人が自身の適性や希望に合った職場・仕事とは何かを積極的に考えることが、キャリアにとってプラスになる可能性もあると推察される。早期離職には一定のリスクがあるものの、一概に悪いとは言い切れず、自身のキャリアについて自律的に考え、行動する姿勢が重要となってくるだろう。

さいごに

近年、離職率や早期離職は企業・個人双方にとって重要なテーマとなっている。新卒入社者の多くが長期的な就業を希望する一方で、実際には入社後のギャップや職場環境の変化などを背景に、早期離職が一定数発生していると考えられる。企業は採用や人材定着施策の見直しを進める中で、入社時点での情報提供やオンボーディングの工夫が求められている可能性がある。

また、転職者においては早期離職をキャリア形成の一環として前向きに捉える意見も見受けられた。早期離職に伴うリスクも十分に把握する必要があるものの、自律的にキャリアについて考える姿勢は将来のキャリア満足に繋がる重要な鍵となるのではないだろうか。今後は、企業・個人双方が多様な価値観を尊重し、より良いキャリアと人材定着に向けた取り組みが求められるだろう。

キャリアリサーチLab研究員 朝比奈あかり

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