政府の関係省庁連絡会議では、就職・採用活動日程における正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降としている。多くの企業が内定式を執り行うこのタイミングに合わせて、マイナビキャリアリサーチLabでは、2026年卒学生の動向や企業の採用活動について講演を実施した。本コラムはその内容を紹介するものである。
現在、学生の就職活動における情報源や情報の取得方法が多様化している。インターネットの発達や、SNSの登場によって情報源が急激に増え、情報を容易に得られる状況となった。企業HPやナビサイト等の公式情報以外に、SNSや口コミサイト等の非公式情報も主要な情報源となっているようだ。こうした現状を踏まえ、非公式情報を求める学生の心理に焦点をあてる。
非公式情報から何が得られるのか
非公式情報の利用状況
2026年卒の学生に対して「就職活動において、HPやナビサイト等の公式情報以外に、口コミサイトやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報をチェックしたことがあるか」という問いに対して、70.6%の学生が非公式情報をチェックしているという回答が得られた。【図1】
【図1】就職活動において、HPやナビサイト等の公式情報以外に、口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報をチェックしたことはありますか。/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
学生が匿名情報や非公式情報を得る手段・情報源
また、そういった口コミやSNS投稿などの非公式情報について、参考にしたことがあるもの、つまりどの情報源から非公式情報を得ているかについて選択してもらった結果、もっとも回答が多かったものが「就活口コミサイト」となっており83.5%の学生が見ているということがわかった。
その他に「SNSの投稿(ショート動画なども含む)」や「YouTubeの動画」といった回答が続いているがいずれも3割を下回り、「就活口コミサイト」の利用が突出して多い。【図2】
【図2】口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報について、参考にしたことがあるものをすべて教えてください。/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
就職活動に関する情報や企業に関する情報は企業HPや説明会などで得られ、一般的には「出どころがわかっている」信ぴょう性の高い情報をもとに判断をするのが妥当だ。公式情報が容易に手に入るようになった中で、なぜ約7割の学生が非公式情報に注目しているのだろうか。
なぜ学生は非公式情報を見るのか
匿名情報や非公式情報から得たい情報の内容
学生に「HPやナビサイト等の公式情報よりも口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報のほうが、よりリアルな情報が得られると思うもの」を聞いた。もっとも多かった回答は「社員の本音や不満点」で50.6%である。また「実際の残業時間や労働時間(42.7%)」、「給与や待遇面などの実態(39.8%)」、「職場の人間関係や雰囲気(37.3%)」などが続き、実態に近いリアルな情報を求めていることがわかる。【図3】
【図3】HPやナビサイト等の公式情報よりも、口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報のほうが、よりリアルな情報が得られると思うものはどれですか。/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
上位の回答を見てみると、学生にとって比較的ネガティブな観点での内容が多いことがわかる。企業は、あえて自社のネガティブな情報を発信するというのことには、非積極的であると思われる。学生はなぜネガティブな情報を求めるのだろうか。
なぜ匿名情報や非公式情報を見るのか
口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報を確認した理由について聞いてみたところ、最も多かった回答は「ネガティブな情報も含めて判断材料にしたい」が58.1%となった。【図4】
【図4】口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報を確認した理由に当てはまるもの/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
「非公式情報から得られると思うもの」で回答の多かった「社員の本音や不満点」や「実際の残業時間や労働時間」といったものは企業からは積極的には発信しづらいと考えられるが、学生はむしろそういったネガティブな情報を判断材料として得ようとしているということがわかる。
口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報を確認した理由についての自由回答を見てみると「企業側からは良い情報しか出てこないし、載せないと思う。入社してみてイメージと違うと嫌なので、悪いところも知りたい。すべて鵜呑みにするわけではないが、判断材料にはしている。」や「ポジティブよりも、ネガティブチェックで使用することが多い。SNS等の匿名情報だと、不正確な情報が見分けづらいという難点はあるが、説明会では得られない情報も獲得することができると考えられるから。ただ鵜呑みにしすぎず、参考程度に留めるようにしていた。」といった回答が寄せられた。【図5】
【図5】口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報を確認した理由(自由回答)/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月
<就職活動・進路決定>
入社後を見据えてネガティブな情報を知りたいと考えていることがわかる。ただ学生も、こうした非公式情報には不正確な情報が含まれる可能性があることを理解しているようだ。必ずしも非公式情報のすべて鵜呑みにはせず、参考程度に見ていることもこの自由回答からうかがえる。
実際の口コミ投稿やそれに対する人事担当者の反応
前職の口コミを投稿したことがあるか
退職した社員に対して、「前職の口コミを投稿したことがあるか」を聞いてみたところ「退職後にSNS・口コミサイトに前職企業のことを投稿した」と回答した割合は51.3%となった。学生はこうした投稿を実際に見ており、なおかつ企業選びの判断材料としているのだろう。【図6】
【図6】退職後における前職情報の投稿有無/マイナビ 転職動向調査2025年版(2024年実績)
自社に対する元社員による投稿を見たことがあるか
さらに、中途採用担当者を対象にした調査で「元社員によるSNSや口コミサイトの投稿をみたことがあるか」という問いに対して、65.9%がみかけたと回答している。【図7】
【図7】元社員による投稿を見かけた経験/マイナビ 転職動向調査2025年版(2024年実績)
自由回答を見てみると、「ありもしない嘘を書かれて、面接がしにくくなった。」や「職場がブラックだったなどの職場批判で実際と違う内容を発信している。」などの「実態にそぐわないことを書き込まれていた」といった内容のコメントが寄せられた。
中途採用担当者から見てもSNSや口コミサイトでは事実と異なる口コミや投稿者の主観に基づいた投稿がされていることが実際にあるということがわかる。SNSや口コミサイトの意見を参考にする際は内容が事実と異なる可能性があることを十分に理解することが重要であるということがわかる。【図8】
【図8】口コミサイトで見かけたネガティブな書き込み(自由回答)/マイナビ「企業の雇用施策に関するレポート(2025年版)」
非公式情報を見た学生の行動について
ネガティブな口コミを見たことがあるか
興味があった企業のネガティブな非公式情報をみたことがあるかという問いに対して「見たことがある」と回答したのは59.9%となっている。【図9】
さらに、図10は「見た」と回答した学生のうち実際に取った行動を聞いたものになる。もっとも多かった回答としては「行動を起こしたことはない」の46.2%となっており、裏を返すと53.8%が何かしらの行動を起こしていることになる。【図10】
【図10】企業のネガティブな情報を見たことで、実際に取った
行動をすべて教えてください/マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
中には「応募するのをやめたことがある」(23.2%)や「別の非公式情報や匿名情報を探しにいった」(20.1%)といった結果が出ているように、実際にネガティブな非公式情報を見たことによって一部の学生は応募をやめるといった行動に出てしまっていることがわかる。
ネガティブな投稿があまりにも多い場合や、あたかも本当であるような情報を見たときに学生の意思決定に影響を及ぼす可能性があるのではないかと考えられる。
おわりに
ここまで非公式情報についての話をしてきたが、学生と企業でそれぞれどのように向き合っていくべきか。まず学生としては非公式情報の中には事実と異なる投稿がされている、または投稿者の主観に基づいた投稿がされている可能性があることを認識したうえで、あくまで判断材料の一つとして捉えることが重要であり、鵜呑みにしないことが重要ではないかと考える。
また、企業としてはSNSや口コミサイトに投稿されるネガティブなものも含めたリアルな情報が学生の判断材料として需要がある可能性があるため、社員との座談会やOB・OG訪問などの様々な方法で企業理解を促進していくことがポイントになるのではないかと考える。学生と企業それぞれの非公式情報の向き合い方を考えたうえで活用してほしい。