副業フリーランスの魅力と注意点~本業を維持しながら自己実現~

元山春香
著者
キャリアリサーチLab研究員
HARUKA MOTOYAMA

はじめに

働き方の多様化が進む中で、「フリーランス」という働き方が注目を集めている。加えて働き方改革で副業が解禁されたことを機に、副業・兼業を認める企業も増えており、独立せずに副業でフリーランスになる選択肢も取りやすくなっている。

また、ビジネスマッチングサービスの増加等、さまざまな地域や業界の仕事ができる環境整備が進んでいる中、フリーランスとして自由な時間に本業とは違った経験にチャレンジすることや、副収入の確保につなげることに興味がある人も多いのではないか。

本コラムではマイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」のデータをみながら、副業をフリーランスで行う魅力やその働き方の具体例・注意点などを探っていく。今後副業フリーランサーとして働くことも検討している方の一助となれば幸いである。
※本コラム用に再集計しているため調査レポートの数値と一部異なる点に注意されたい。

本コラムでのフリーランスの定義

マイナビ「フリーランスの就業意識・実態調査2024年版」にて、フリーランスの定義は以下の3つすべてに該当する働き方としている。加えて、他にも仕事を行っているかどうかによって副業系と独立系に分けて、比較している。
【独立系フリーランス】・・・フリーランスに該当し、他の仕事は行っていない
【副業系フリーランス】・・・副業がフリーランスに該当する(正社員などで他の仕事も行っている)

  1. 雇い主がいない、個人事業
  2. 上記「1」の事業のための実店舗はない
  3. 上記「1」の事業において従業員を長期で雇用していない 

※本調査での副業フリーランスの職種内訳
マイナビ「フリーランスの就業意識・実態調査2024年版」の回答者1000名のうち、副業がフリーランスの定義に該当する人を抽出して集計しており、職種や年齢の内訳は下記となっている。

人数構成比
 全 体224100.0%
職種クリエイティブ系6026.8%
ITエンジニア・開発系62.7%
編集・ライター・印刷系2912.9%
映像・芸能系219.4%
コンサルタント系3013.4%
通訳・翻訳系94.0%
企画系事務177.6%
事務・バックオフィス系2912.9%
建築・施行系73.1%
配達・配送・交通・運輸系167.1%
性別男性14464.3%
女性8035.7%
年代別20代104.5%
30代5926.3%
40代7332.6%
50代3917.4%
60代4319.2%

※n=30前後の職種について、具体的な業務は下記のとおり
クリエイティブ系:WEBサイト・インターネットサービス/広告・グラフィックなど
編集・ライター・印刷系:記者・ライター/編集・制作など
コンサルタント系:士業/人材カウンセラー/コンサルタントなど
事務・バックオフィス系:一般事務・秘書/経理・財務・会計/購買など

副業フリーランスはキャリア形成の一手となる?!

現在副業をフリーランスで行っている人(以下、副業フリーランサー)はどのような意識をもっているのか。マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」をみると、キャリア形成意識の高さがうかがえ、将来のキャリアを見据えたスキルアップの一つとしての側面がみえてきた。

収入アップのほか、自己成長を意識する人が多い

副業フリーランサーにフリーランスになった動機を複数回答で聞いたところ、「収入を増やすため」が38.8%でもっとも高かった。本業とは別の収入源を確保することで金銭面の充実を図っている人が多いのだろう。次いで「好きな仕事で働くため」「働く時間や場所を自由にするため」が続く。

特徴的なのが、「自分の能力や資格を活かすため(32.1%)」「挑戦したいことがあったため(21.0%)」「将来的に起業するため(11.6%)」といった自己実現・自己成長関連ともみなせる動機が独立系と比べて5pt以上高い点である。

フリーランスならではの自由な働き方や、副業の目的に多い収入確保に加えて、挑戦したいことや目標に向けて主体的にキャリアを形成する手段として副業フリーランサーの働き方が選ばれていることが推察される。【図1】

図1:フリーランスを始めた動機・きっかけ 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図1】フリーランスを始めた動機・きっかけ 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

本業とは違う業務に挑戦できる

副業フリーランサーの本職と副業の関係をみると、本業と同じ業務が27.2%、本業と異なる業務が66.1%となり、似た職種でも違う業務を行っている人や、違う職種と思われる業務を行っている人が多数であった。

たとえば、本業は「教師・講師・インストラクター」でフリーランス業務は「WEBサイト・インターネットサービス」、本業は「経理・財務・会計」でフリーランス業務は「士業(公認会計士・税理士・弁護士)」などだ。

本業のキャリアや収入があるからこそ、新しい業務への一歩を踏み出しやすいのではないか。【図2】

【図2】副業フリーランスの本業の業務 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図2】副業フリーランスの本業の業務 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

独立や業務拡大を目指すプレ期間としての活用も

副業フリーランサーの今後の意向では、「今後もフリーランスとして働き続けたい(どちらかといえば働き続けたいを含む)」が90.2%と大半を占めていた。

継続意向者の今後の具体的な展望では「取引先を増やしたい(41.6%)」「新しい業務に挑戦したい(28.7%)」「副業ではなく、本業としてフリーランス業務を行いたい(31.2%)」が続く。今後の独立に前向きであり、フリーランスとしての仕事を拡大していくことを目指している人が前段階として副業でフリーランスを行っているケースも多いと推察される。

将来のキャリアとして独立を検討している人も、まずは副業としてフリーランスを経験し、独立の土台作りにしてみてはどうだろうか。【図3】

【図3】副業フリーランスの今後の意向/出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図3】副業フリーランスの今後の意向/出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

副業フリーランスの働き方

副業をフリーランスで行うことは、収入アップだけでなく、自己実現やキャリア形成の手段にもなり得ることがうかがえた。次に、本業と並行しながらフリーランスで働くというのは、どういう働き方になるのか。働く時間や仕事の受け方について実際に働いている人のデータをみていこう。

働く時間・場所

働く時間

副業フリーランスに費やす月の労働日数は、本業が正社員の人では平均12.0日、月の労働時間は平均51.8時間だった。大体週3日程度、1日あたり4.3時間程度を本業とは別にフリーランス業務に費やしているイメージだ。

また、本業が非正規社員の人では月平均14.5日/69.8時間、本業が役員・自営業・その他の人では月平均17.3日/83.8時間だった。【図4】

【図4】副業でフリーランスとして働く時間 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図4】副業でフリーランスとして働く時間 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

働く場所

普段フリーランスの業務を行っている場所は「自宅」が全体の77.2%でもっとも多い。職種ごとにみても、「自宅」の回答率が7割を超え最多となる。在宅ワークが可能な業務が多い点は本業と両立する上では大きなメリットだろう。【図5】

【図5】普段フリーランスの業務を行っている場所 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図5】普段フリーランスの業務を行っている場所 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

案件の受注方法

案件の受注経緯は「友人・知人からの(受注先の)紹介・仲介」が31.3%、「友人・知人から仕事をもらうようになった」が30.8%で上位となる。そのほか、独立系フリーランスと比べて「エージェントサービスの利用」「クラウドソーシング」「仲介業者の利用」がやや高く、企業や個人と働き手をつなぐサービスを利用して受注につなげている点が特徴的だ。

新しい業務に挑戦する場合などは人脈があまりない時期があるかもしれないが、その場合はこういったサービスを利用して実績を積むという方法もありそうだ。【図6】

【図6】直近1年間の取引先の取引開始経緯 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図6】直近1年間の取引先の取引開始経緯 出典:マイナビ「フリーランスの意・就業実態調査 2024年版」

副業でフリーランスとして働く上での注意点

続いて、副業フリーランサーとして働くことを検討する場合に考慮した方がよいと思われる点や、課題点について推察する。

収入の増額の実現率は4割以下

副業フリーランサーに現在の不安を聞いたところ「収入額が少ない」が31.7%でもっとも高かった。フリーランスとして実現したかったこと・実現できたことのデータでは、「収入の増額」を実現したかった人のうち、(理想通りに)実現できた人の比率は42.9%で他の項目と比べてやや低めだった。

希望する金額によっては、実現の難易度が高いことや、すぐには実現できない可能性が高いことを考慮した方がよさそうだ。【図7】

【図7】フリーランスとして働く上での不安点/収入増加の実現率 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図7】フリーランスとして働く上での不安点/収入増加の実現率 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

年間収入の中央値は120万円

具体的な年間収入額(経費を除いた利益)をみると、副業フリーランサーの年間収入の中央値は120万円だった。参考値であるが、コンサルタント系は300万円に対し編集・ライター・印刷系は50万円など、職種による開きも大きかった。今後の独立や大幅な収入アップを期待していた人にとっては理想とは違うと感じるケースが多いのかもしれない。

本業との兼ね合いで働ける時間に限界があることや、本業とは違う業務の人が多く、経験が浅い人もいることなども収入が伸びにくい要因として考えられる。【図8】

【図8】フリーランスとしての年間収入中央値 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図8】フリーランスとしての年間収入中央値 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

本業や私生活とのバランスの難しさ

フリーランスとして働く中での満足度を独立系・副業系で比較すると、副業フリーランサーの「私生活との両立」満足度は独立系よりも5pt以上低かった。【図9-1】

【図9-1】副業フリーランスと私生活の両立(1)私生活との両立満足度 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図9-1】副業フリーランスと私生活の両立(1)私生活との両立満足度 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

同じくフリーランスとして働く上での不安点を比較すると、副業フリーランサーは「不規則な生活になってしまう」が15.2%で独立系と比べて5pt以上高い。本業に加えてフリーランス業務を行うため、業務時間のコントロールが難しいことが考えられる。

副業フリーランサーの過去の失敗経験で上位に「仕事を受けすぎて過労になってしまった」がランクインしていることからも、本業とのバランスを考慮して計画的に受注しないと、私生活との両立や健康面に影響が出てしまうという課題がうかがえる。【図9-2】

【図9-2】副業フリーランスと私生活の両立(2)働く上での不安点・過去の失敗経験 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図9-2】副業フリーランスと私生活の両立(2)働く上での不安点・過去の失敗経験 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

発注元とのトラブル:募集・受注時のトラブルに要注意

副業フリーランサーのうち56.3%が取引先とのトラブルを経験したことがあり、独立系の経験率(52.4%)と比べてもやや高い。トラブル内容では「報酬と釣り合わない作業量だった」がもっとも多かった。そのほか、「仕事の紹介といわれて話を聞いたが、別のビジネスや宗教の勧誘だった」「商材を購入しないと案件を紹介・継続しないといわれた」等の受注時のトラブルが上位に入る点が特徴的だ。

今後「取引先を増やしたい」副業フリーランサーも多いが、中にはビジネスチャンスではなくトラブルにつながってしまうケースもあることは留意すべき点だろう。【図10】
※厚労省は相談窓口としてフリーランストラブル110番を設置しているのでトラブルの際は活用してほしい

【図10】副業フリーランスの取引先とのトラブル 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図10】副業フリーランスの取引先とのトラブル 出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

満足度の高い働き方のヒントは?

多様な働き方の選択肢の中で、フリーランスとして副業を行うことは、どのような人に適していて、どのような要素が満足できる働き方につながるのだろうか。副業フリーランサーのうち、働き方に満足している人(49.2%、110名)と、それ以外(どちらともいえない~不満)(50.9%、114名)の価値観や働き方の違いに注目して考えていきたい。

働きやすさより働きがいを重視する人との適正が高い

働く上で「働きがい」「働きやすさ」どちらを重視するかを聞いたところ、満足者は「働きがい重視」が57.3%、非満足者は「働きやすさ重視」が57.9%で逆転していた。

フリーランスとして場所や仕事内容はある程度自由であるが、本業もある中での業務のため余裕ある働き方や私生活との両立が難しい課題もあった。多少働きやすさが犠牲になったとしても、収入や好きな仕事への従事、自己成長につながることに満足感を見出す価値観の人にとって、副業フリーランスがよりマッチしていると考えられる。【図11】

【図11】働き方満足度別にみる「働く上での考え方」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図11】働き方満足度別にみる「働く上での考え方」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

スケジュールについて交渉できる取引先をもつ

主な取引先(もっとも多く収入を得ている取引先)と金額やスケジュールについて交渉できる余地があるかどうかをみると、満足者は「金額」「納期・スケジュール」「業務範囲・仕事内容」のいずれにおいても「十分交渉の余地がある」の回答率が非満足者より15pt以上高かった。特に「納期・スケジュール」については30pt以上も高い結果だ。

本業と副業どちらも両立するためには余裕をもったスケジュールを交渉できる取引先を選ぶことや、交渉できる関係性を構築していくことが満足いく働き方につながるポイントとなりそうだ。【図12】

【図12】働き方満足度別にみる「主な取引先との交渉余地」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図12】働き方満足度別にみる「主な取引先との交渉余地」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

生成AIを利用して効率を上げることも有効

普段フリーランスの業務に生成AIを利用しているかを聞いたところ、満足者は「頻繁に利用している」が11.8%、「時々利用している」が19.1%で非満足者よりも生成AIの利用頻度が高かった。生成AIの利用が限られた時間で効率よく業務を行う上で役立っているのかもしれない。【図13】

【図13】働き方満足度別にみる「フリーランスの業務への生成AIの利用」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」
【図13】働き方満足度別にみる「フリーランスの業務への生成AIの利用」出典:マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査 2024年版」

※マイナビ「ライフキャリア実態調査2024年」ではフリーランスに限らないが、副業で生成AIを利用している人は利用していない人と比べて年間の副業収入が約2倍となっている結果もあるので参考にされたい。

不安に対する工夫・対処法の一例

副業フリーランサーに、現在フリーランスとして働く上でもっとも不安に思っている要素についてどのように対処しているかを自由記述で回答してもらった。リアルな工夫として、参考にしてほしい。

「収入額が少ない」の対処法

  • なるべく1回の取材経費で数回分記事を書くなどし、交通費や諸経費も含めた取材経費を抑える。
  • できるだけ高単価な仕事を見つける。
  • オンラインスクールに通い知識やスキルの向上に努めている。
  • 色んな人に知ってもらって認知度を上げている。

「収入に波がある・不安定」の対処法

  • 普段の生活費はフリーランス以外の仕事で稼いでいる。
  • 隙間時間には必ず案件をいれる。
  • スキマバイトを時々する。

「不規則な生活になってしまう」の対処法

  • 朝に活動する。
  • 自身でスケジュールを組み集中と休む時間にメリハリを付ける。
  • スケジュールを調整し、無理に仕事を受けない。
  • なるべく短時間で仕事を終わらせられるように意識している。短い時間で区切って集中。
  • 作業を早く進められるようタイピングを習得した。

おわりに

副業というと収入アップに目がいきがちだが、本業を維持しながら新しい経験にチャレンジできるという点も大きな魅力であると改めてうかがえた。特にフリーランスは働き方の自由度が高いことから本業との両立もしやすい。将来的に独立することを考えている人も、まずは副業で経験を積み、取引先との関係を築くことができるとより安心である。

もし、本業に力点を置きたい時期や、本業でキャリア形成を目指すなど、環境や気持ちに変化が出てきた場合も、フリーランス活動を休止・中止するという選択肢も取りやすい。終身雇用といった従来の就業スタイルが限界を迎えている今、フリーランスとして自立した働き方を経験することは、きっと大きな経験・強みとなり、企業に依存しない自律的なキャリアの一助となり得るだろう。

一方で、収入を得ることの難しさや本業・私生活とのバランス管理、発注元とのトラブルなど注意が必要な点も多い。柔軟なスケジュールを提供する取引先を選び、生成AIを活用するなど、試行錯誤しながら充実したキャリアとライフスタイルを築いてほしい。

企業側としても、多様な働き方を認めることは、社員のエンゲージメント向上や成長を促し、本業にプラスの影響をもたらすことで社員だけでなく企業も共に成長し、より強固な関係を築くことが期待されるだろう。仮に従業員が独立したとしても新たなビジネスパートナーとなり持続的な関係を築けるのではないか。多様な働き方を認める魅力の一つとして参考となれば幸いである。

キャリアリサーチLab研究員 元山 春香

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