「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」7年の歩みを振り返る
—学生と企業への効果とは

矢部栞
著者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

インターンシップに関するグッドプラクティスを世の中に発信すること、そして、インターンシップに対する新しい知見を世の中に広めていくことを目的に2018年にスタートした「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード(旧:学生が選ぶインターンシップアワード)」。さまざまな切り口でインターンシップの教育的効果を検証してきたが、今回、選考委員の梅崎先生と坂爪先生、そして、さまざまな角度から調査研究を進めていただいた初見先生の御三方にお話を聞いた。足かけ7年にわたって実施してきたこれまで取り組みの成果を振り返り、今後のアワードの方向性と可能性を確認する。

(写真左から)法政大学 キャリアデザイン学部 梅崎修教授
法政大学 キャリアデザイン学部 坂爪洋美教授
多摩大学 経営情報学部 初見康行准教授

(写真左から)法政大学 キャリアデザイン学部 梅崎修教授
法政大学 キャリアデザイン学部 坂爪洋美教授
多摩大学 経営情報学部 初見康行准教授
/聞き手:マイナビキャリアリサーチLab所長 栗田卓也

「キャリアの焦点化」と「キャリアの展望化」

——第一回の「学生が選ぶインターンシップアワード(現:学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード)」は、その前年に実施されたインターンシップに対する学生アンケートをもとに受賞法人を決定しました。表彰式を兼ねた2018年の「インターンシップカンファレンス」では、梅崎先生にインターンシップの効果を測定するための尺度作成のプロジェクトについてご講演いただきましたね。

梅崎: 最初のステップは、第一回のアワードで学生アンケートの感想をテキスト分析することでした。どのような言葉がインターンシップ経験と共に想起されるのかを分析し、最終的に4つのカテゴリーに集約しました。それが、「自己理解」「視野の拡大」「キャリアの明確化」「意欲・行動」です。次に学生にWEB調査を実施して、その結果を因子分析すると、インターンシップには5つの効果があるという結論が導き出されました。それが、「キャリアの焦点化」「キャリアの展望化」「人的ネットワークの認知」「就労意欲」「自己理解」です。

坂爪: これら5つの効果のなかでも、特に「キャリアの焦点化」と「キャリアの展望化」がキーになっていることが判明しました。「キャリアの焦点化」とは、たくさんある業界や職種のなかから自分の志望を選択していくことで、「キャリアの展望化」とはインターンシップに参加することで他にも面白い業界や職種、企業があることを知り、視野が広がることです。焦点化と展望化は同時に起こりうるもので、焦点化と展望化がどういうふうに関連しながら進んでいくのかを解き明かしていくことが、インターンシップの効果を学生サイドから見る際に、とても大事になるのではないかということが見えてきました。

初見: 今では約6割の企業が実施しているインターンシップ(※1)ですが、当時はまだまだ実施率は低くて3割程度だったと記憶しています。2016年卒から選考開始時期が後ろ倒しになり、キャリア観や職業観醸成を目的としたインターンシップの注目度も高まっていましたが、企業側は、インターンシップで何をやればいいのか、まだはっきり見えていない状況でした。

学生が自由に記述したアンケートをもとに、学生が感じている効果を分析するという手法は、アカデミックでは珍しいことだと思うのですが、この分析によって「キャリアの焦点化」と「キャリアの展望化」を促すプログラムの重要性が示せたのは、当時のアワードの大きな成果ではないかと思います。
※1:「マイナビ2024年卒企業新卒採用活動調査」では、上場企業で81.8%、非上場企業で57.3%、全体で59.5%の企業がインターンシップを実施している。

インターンシップ体験と企業への志望度

——初見先生には、2019年の第二回「インターンシップカンファレンス」のクロージングキーノートで、インターンシップと企業に対する志望度の関係をご報告いただきました。

初見: 梅崎先生と坂爪先生と共同で実施した調査の結果を分析すると、インターンシップは企業に対する志望度の向上にポジティブな影響があることがわかりました。また、「キャリアの焦点化」「キャリアの展望化」「人的ネットワークの認知」「就労意欲」「自己理解」の5つの効果 (以下、インターンシップ効果測定尺度とする)と企業に対する志望度は、有意な正の相関関係にあること、そして、「キャリアの焦点化」がもっとも志望度の向上と関係していることがわかりました

また、インターンシップに参加して企業志望度を高めるには、4つのコンテンツが有効であることもわかりました。「個人のフィードバック」「社員との交流」「座学以上の工夫」「企業の特長を活かしたプログラム」です。こういったコンテンツが効果的に組み込まれたプログラムでは、インターンシップの効果が向上し最終的に志望度が上がる可能性が高いということが判明しました。

——2020年の第三回「インターンシップカンファレンス」では、大学生のインターンシップ経験が大学での学習経験や企業への志望度にどのように影響を与えるのかを発表していただきました。

梅崎: 学生アンケートの結果を分析して、初見先生がおっしゃったインターンシップ効果測定尺度が明らかになりましたが、これら5つの効果を確認するために設定した質問項目が、正確に効果を計測できるかどうか検証を行い、結果的に5つの効果が正確に計測できていることがわかりました。そこからそれらの項目を高めている要因の分析ができるようになったのです。

——初見先生には、インターンシップ体験が大学での学習にどのように影響するのか、あるいは企業への志望度にどのような影響を及ぼすのかについて分析していただきました。

初見: 大学での学習意欲や企業への志望度の向上に、どのようなプログラムが有効なのかを、共分散構造分析(※2)を用いて詳しく分析しました。その結果、教育効果を高める要因として、「大学の専門・専攻との関連の深さ」「事前・事後学習の充実」「就業体験の充実」「社会人基礎力の向上」の4要素が重要であることがわかりました。また、企業への志望度を高める要因として、「インターンシップの満足感」「事前・事後学習の充実」「就業体験の充実」「社会人基礎力の向上」が重要であることが判明しました。
※2:複数の構成概念間の関係を分析する統計手法

個人的に大きな発見だったのは、インターンシップに参加してスキルや能力が向上したという知覚 ・認知が学生にあると、間接的にも直接的にも企業への志望度が向上することでした。詳細については、2021年の第四回「インターンシップカンファレンス」で発表させていただきましたが、インターンシップを通して社会人基礎力などのスキル・能力の向上感が得られると、学習意欲や学習態度に肯定的な影響を及ぼすことが確認されました。

図:インターンシップの教育効果モデル/キャリアデザインプログラムアワード「Special Column 01」より
図:インターンシップの教育効果モデル/キャリアデザインプログラムアワード「Special Column 01」より

また、インターンシップに対する満足感が高まると、企業への志望度が向上することがわかりました。さらに、インターンシップの満足度を高めるには、プログラムの事前・事後学習を充実させることが非常に重要だということが判明しました。

図:インターンシップの志望度モデル/キャリアデザインプログラムアワード「Special Column 02」より
図:インターンシップの志望度モデル/キャリアデザインプログラムアワード「Special Column 02」より

——「実務を体験=満足度の向上」とはならないということでしょうか? 就業体験の中身を充実させるだけではなく、事前にインターンシップに参加する目的を確認し、事後にどういう成果があったのかを確認することが重要だということですね。

梅崎: インターンシップに参加する学生が増え、また、参加社数も増加してきたので、インターンシップに対する学生の評価もシビアになってきているのかもしれません。学生生活のなかでインターンシップに充てられる時間にも限りがあるので、インターンシップに参加することでどれだけ自分の能力を伸ばす機会になるのか、明確な成果を意識するようになりました。

ただ、インターンシップの効果を計測する手法については、まだまだ開発中の段階です。学生自身は、能力が上がったという自己認知を持てたり、自己評価できたりしないと、あまり意味を感じないのかもしれませんが、実は、将来につながるキャリア意識が芽生えたとか、本人は意識していなくても実は効果があったことを明らかにできる尺度として完成を目指したいですね。

坂爪:採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が、インターンシップをはじめとする学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取り組みを4類型に整理しました。

タイプ1:オープン・カンパニータイプ2:キャリア教育タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップタイプ4:高度専門型インターンシップ(試行)
就業体験なし任意必須必須
実施時期学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間
取得した学生情報の採用活動への活用不可不可採用活動開始以降に限り、可採用活動開始以降に限り、可
学生のキャリア形成支援における産学協働の取り組み4類型/文部科学省、厚生労働省、経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」より

その4類型のなかで「タイプ3及びタイプ4 インターンシップ」は、企業側が取得した学生情報を採用活動開始以降に限り、採用活動に活用することが可能となりました。今まさにインターンシップ自体が変わろうとしている時期に来ています。

4類型のなかの「タイプ1 オープン・カンパニー」や「タイプ2 キャリア教育」は別として、「タイプ3及びタイプ4 インターンシップ」はより就職に直結するものに変化しつつあります。そのなかで、社会人基礎力の向上が今後もインターンシップの効果として意味を持ち続けるのかどうかなど、インターンシップの効果がこれからどのように変わっていくのか、それとも変わっていかないのかをこれからも追跡していく必要がありそうです。

学生側からすると、どうしてもインターンシップは就職活動にどう活きるのかということを意識しがちですが、内定先企業を獲得することと同じくらい大事なことは、これから社会人として働いていくキャリアをどう形成していこうとするのかを、仮の姿でもよいので描いてみることであり、インターンシップはその第一歩というか、きっかけでもあるんですよね。アワードの名称が今年、「学生が選ぶインターンシップアワード」から「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」に変わりましたが、キャリアの焦点化やキャリアの展望化というインターンシップの効果は、これからも変化することはないのかなと思います。

梅崎: 「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」は、学生目線での評価を大切にしてきたわけですが、インターンシップと就職活動との距離が縮まりつつあるなかで、学生の視野は狭くなりがちだと思います。我々キャリア教育の専門家からすると、就職活動への効果もあるかもしれないですが、キャリア自律(※3)にも効果があるということも明らかにしていきたいです。今の環境ではインターンシップの参加によってキャリアの焦点化が進み過ぎてしまう危険性があるので、もう少しキャリアの展望化を意識したほうがいい、焦点化と展望化、両方を意識したほうがいいですよと伝えていきたいですね。
※3:キャリア自律とは、変化する環境において自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むことを指す。

インターンシップの効果を測定する尺度開発

インタビュー風景

——アワードをスタートした当初は、審査方法について「学生のためになるのかだけを考えて、とにかく学生が満足すればいいのだろうか?」という議論がありました。そうではなくて、やはり何か気づきを与えられるプログラムを評価すべきでは?というご意見もありました。

梅崎: そこで二回目から審査方法を少し変えました。アンケート形式は従来通りで、その後に学生審査員のみなさまにワークショップをやってもらうようにしました。自分たちでインターンシップ経験を振り返ることで、自分では自覚していなかった変化みたいなものを促したのです。そのときに、インターンシップの5つの効果についてお伝えしながら、学生同士で対話しながら、評価軸をつくっていったわけです。

——アワードでの取り組みを進めながら、「大学生のインターンシップ効果測定尺度の開発―テキスト分析とパネルデータによる実証研究―」という論文を発表されましたね。

初見: 概略については、冒頭で梅崎先生がご説明された通りなのですが、アカデミックの世界では先行研究に準じて進めるのが大前提になっているなかで、自由記述のフリーワードをもとに分析を進めるのは自分にとっては初めての経験でした。最初はテキストデータを定量的に見て、その後にどういうカテゴリーに分かれるのか、先行研究と紐付けられる部分も確認しながら、梅崎先生と坂爪先生と何度も話し合って進めました。

坂爪: インターンシップの効果に関する既存の尺度があまりない中で、尺度開発をすることにはさまざまな難しさがあったのですが、それをマイナビ社の膨大な調査データが補強してくれました。テキスト分析を通じて開発された尺度と就職内定率や内定満足度との間に関連性があることが、マイナビ社のリサーチで裏付けられたということが成果につながったのだと思います。

同時に、この論文で紹介している「インターンシップの効果を測定するための尺度」の有効性をもっと多くの方に知っていただくために、私たちがやらなければならないことはまだまだたくさんあるなと感じています。インターンシップにおいて大切なのは、内定率の向上や社会人基礎力の向上だけではありません。より大事なことは、これから始まるキャリアの第一歩において自分なりの選択をするための焦点化と展望化だと考えています。そのことをこれからも伝えていきたいですね。

梅崎: 研究では通常、海外でつくられた尺度を日本語に翻訳してスタートすることが多いですが、今回は非常に探索的に最初のオリジンをつくってしまおうという取り組みでした。大げさに言えば、新しい言語で研究を始めましょうということです。そして、オリジンになるということは、自分たちだけの中で完結するのではなく、世の中すべての研究者にとってオリジンになるということなので、我々が生み出したインターンシップの効果を計測する尺度は、どんどんいろいろな研究者やインターンシップの担当をされている先生方に活用してほしいです。

キャリア自律というのを感覚的に表現すると、常に変化する社会のなかで、変化を展望しつついざとなったら焦点が合わせられることであり、変化のなかで選べる能力だと思います。焦点化、展望化と聞くと、難しく感じる部分はあると思いますが、大学の就職部やキャリアセンターで学生の相談を受けている方の感覚には非常に近いのではないかと思います。視野が狭くなっている学生には、他の業界も見てみたら、ということになりますし、あれもこれもと広げ過ぎている学生には、どれが一番の関心かを考えてみようと言います。

坂爪: 私たち3人で何度も学生インタビューを実施しましたが、学生一人ひとりが意思決定をする際の展望と焦点の組み合わせを見てみると、進路選択や就職先を選ぶ上での軸の選択がスムーズに進みそうだと感じるパターンと、選択するためには、もう少し時間や経験が必要かもしれないと感じるパターンには、それぞれ特徴がありました。その状態の具体化・見える化ができれば、キャリアカウンセラーや就職課の方が学生の面談をした際に、「このパターンはいいね」とか、「このパターンは働きかけが必要だね」という見立てができるのではないかと思います。

若手社員の早期離職が社会問題になっていますが、それは就職活動時点で、焦点化と展望化がうまくできていなかったことも一因にあるのではないかと感じています。キャリア自律の観点で考えれば、自分のキャリアに迷いが生じたときに、どう焦点化と展望化を組み合わせていくかという自分の選択における勝ちパターンや手法を身に付けることがすごく大切で、インタンーシップは、実はその能力を身に付ける第一歩になるのではないかと思います。

——ここまで、「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」第三回までの内容を振り返っていただきました。後編では、コロナ禍によってインターンシップの手法が変化した第四回から振り返り、インターンシップのこれからについても語っていただきます。


梅崎 修(うめざき・おさむ)

■プロフィール
梅崎 修(うめざき・おさむ)
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
マイナビキャリアリサーチLab 特任研究顧問
1970年生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。2002年から法政大学キャリアデザイン学部に在職。専攻分野は労働経済学、人的資源管理論、オーラルヒストリー(口述史)。人材マネジメントやキャリア形成等に関しての豊富で幅広い調査研究活動を背景に、新卒採用、就職活動、キャリア教育などの分野で日々新たな知見を発信し続けている。主著「「仕事映画」に学ぶキャリアデザイン(共著)」「大学生の学びとキャリア―入学前から卒業後までの継続調査の分析(共著)」「大学生の内定獲得(共著)」「学生と企業のマッチング(共著)」等。

坂爪 洋美(さかづめ・ひろみ)

坂爪 洋美(さかづめ・ひろみ)
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
慶應大学文学部卒業後、(株)リクルート人材センター(現:リクルート・キャリア)での勤務を経て、慶應義塾大学大学院経営管理研究科にて2003年博士(経営学)を取得。和光大学を経て、2015年4月より現職。専門は組織行動論。主たる研究テーマは、多様化した働き方の下での管理職のマネジメントのあり方。近著に「管理職の役割」(中央経済社、共著)。

初見 康行(はつみ・やすゆき)

初見 康行(はつみ・やすゆき)
多摩大学 経営情報学部 准教授
同志社大学文学部卒業。企業にて法人営業、人事業務に従事。2017年、一橋大学博士(商学)。いわき明星大学(現:医療創生大学)准教授を経て、2018年より現職。専門は人的資源管理。主な著書に『若年者の早期離職』(中央経済社)、『人材投資のジレンマ』(日本経済新聞出版)などがある。

梅崎修
登場人物
法政大学キャリアデザイン学部教授
OSAMU UMEZAKI
坂爪洋美
登場人物
法政大学 キャリアデザイン学部 教授
HIROMI SAKADUME
初見康行
登場人物
実践女子大学 人間社会学部 准教授
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