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目標達成に必要となる自己効力感とは?

キャリアリサーチLab編集部
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人生100年時代を生きていく中で、お金や不動産など目に見える資産を増やすことに加え、目に見えない資産「無形資産」を増やしていくことが重要だ。無形資産とは、スキルや知識、友人関係、心身の健康など、直接お金に換算できないものを指す。無形資産を持つことは価値があるだけではなく、有形資産を生み出す相乗効果が期待できる。

スキルや新しい知識、心身の健康を手に入れることは重要だということは多くの人が理解しているはずだ。しかし、勉強や運動、健康に気を使った食生活など、いつかは行動しなければならないと頭ではわかっていてもすぐに行動に移せない人は少なくないだろう。たとえ最初の一歩を踏み出すことができても3日坊主で終わってしまう場合もある。

近年新しいスキルや知識を身に着ける「リスキリング」が注目されているが、マイナビが行った「2022年2月度中途採用・転職活動の定点調査」においてその必要性を感じている人は全体で77.1%。必要性を感じておりなにか取り組んでいる人は約3割、必要性を感じているが取り組めていない人が約5割となっており、新たなスキルや知識を身につけることの重要性を感じている人は多いが、実際に取り組めている人は少ないのが現状のようだ。

リスキリングの取り組み状況と必要性/2022年2月度中途採用・転職活動の定点調査
2022年2月度中途採用・転職活動の定点調査

やろうと思っているができない、そんな状況に対してどのように向き合えば良いのか。そのヒントになるのが自己効力感だ。

自己効力感とは~自己肯定感との違い~

自己効力感(self-efficacy)とは、ある物事に取り組もうとしたときに「自分ならそれを達成することができる」という自分に対する期待や自信のこと。カナダの心理学者、アルバート・バンデューラが提唱した概念であり、人の行動に大きな影響を与える要因の一つとされている。

自己効力感の高さは、その行動を始めるかどうか、行動をどれだけ続けることができるか、困難に直面したときどのくらい耐えられるかを決定づける。成功体験などを積むことで自己効力感は高まるとされている。

よく自己肯定感と混同されるが、自己効力感は「自分ならその目標を達成できる」という期待感を指すのに対し、自己肯定感は、成功体験の有無や目標を達成するしないにかかわらず、ありのままの自分を受け入れるという考えである。
自己効力感は「自分の能力」に対する期待、自己肯定感は「自分の存在そのもの」を肯定する感覚、という違いがある。

自己効力感が高いことによるメリット

では、自己効力感が高いとどのようなメリットがあるのか。具体的に説明していく。

行動を始めることができる

何事もまず行動しなければ始まらない。自己効力感が高ければ素早く行動に移すことができる。「達成できないかもしれない」「行動しても意味がないかもしれない」といった不安は行動に移せない要因の一つだ。「自分ならそれを達成できる」という自信があって初めて人は行動することができる。自己効力感が高いことは行動を始めることにつながるのだ。

行動を継続することができる

一歩を踏み出すことができたとしても、それを続けることができず途中で止めてしまう人も多いだろう。目標設定が高すぎたり、結果がすぐに出なかったりすると精神的に大きなストレスがかかる。自己効力感が高いと、理想と現状のギャップを埋めるために実行可能なプランを立てることができる。そして「自分ならそれを達成できる」という自信があるので、すぐに結果が出なくても焦ることなく行動を継続することができる。

困難にぶつかったときに諦めずに堪えることができる

なにか行動を起こすとき、常に順調に行動できるとは限らない。急に仕事が忙しくなって勉強する時間をとることができなくなったり、ダイエット中にリバウンドしてしまったりと、困難や壁にぶつかることもあるだろう。自己効力感が高ければ、「自分は目標を達成できる」と信じることができるので、失敗から早く立ち直ることができたり、行動を継続するためにどうすれば良いかなど考えたり工夫ができる。

以上のことから、自己効力感が高い人の方が、自己効力感が低い人より目標達成に近づくことができることがわかるだろう。

自己効力感を高める4つの方法

では自己効力感を高めるにはどのようにすれば良いのだろうか。ここでは自己効力感を高めるための4つの方法について説明していく。

成功体験

もっとも自己効力感を高めることができるといわれているのが成功体験である。小さくとも良いので「成功した」「目標を達成した」という事実が自己効力感を高め、さらなる挑戦を促す。成功体験を積むためには「目標を設定する」「現在地の把握」「目標と現状のギャップを埋めるための行動を洗い出す」「予定を立て行動する」という流れが一般的である。
ただし、いくつか注意が必要だ。行動を起こすと、高すぎる目標を設定して挫折してしまったり、他人と比べてやる気を失ってしまったりということが起こり得る。必要なのは小さな変化や積み重ねを成功体験ととらえ、着実に行動することだ。

代理体験

代理体験とは、他人が目標達成する様子を見たり聞いたりすることである。このとき、なるべく自分と条件が近い人物であることが望ましいとされる。英語の勉強であればTOEICで同じスコアだった人物がスコアを大幅に伸ばしたという体験。ダイエットであれば自分と同じ年齢、体格の人物が減量に成功したという体験だ。自分と条件が近い人物の成功体験を見聞きすると、目標達成までのプロセスをイメージしやすく「自分もできるかもしれない」という自信がつきやすい。

言語的説得

言語的説得とは、第三者に励ましてもらうことである。成功したときに褒めてもらったり、挫折しそうなときに励ましてもらったりすることだ。特に、自分の達成したい目標に関する専門知識を有している人物に定期的に励ましてもらうことが望ましいとされている。ただし、一つ目にあげた成功体験ほどの効力は期待できないといわれており、精神的に不安定なときや自信が落ち込んでいるときにいくら言語的説得を受けたとしても自己効力感の上昇は見込めない場合もある。

生理的情緒的喚起

生理的情緒的喚起とは心身の生理的な状態を意識することである。自身の状態を把握し、気持ちを盛り上げることによって自信や意欲の上昇につながる。本番前に緊張して心臓の鼓動が早くなり、汗が出ると不安感が高まって「できないかもしれない」という気持ちが強まる。逆に、リラックスしているときや気分の高揚を自覚しているときは「今ならできそう」という気持ちが強くなる。好きな音楽を聴く、お酒を飲む、カフェイン錠剤などのサプリメントを使うなどして気持ちを落ちつかせたり、気分を盛り上げたりして自己効力感を高めることができる。

おわりに

キャリア自律やリスキリング、アンラーン など、キャリアを形成するうえで重要とされる考え方や理論は世の中に多く存在するが、それらを達成するには地道に行動するしかない。しかし、実際に行動に移し継続することが一番難しい。

「小さな成功体験を積み重ねる」「第三者の成功体験を見聞きする」「定期的に第三者に励ましてもらう」「どんなときに緊張するか、リラックスするかなど自分の心身の状況を把握する」。以上の4つを意識して実行すれば自己効力感を高めることができ、行動を継続させることができるだろう。

目標達成に必要なのは一辺倒でやみくもな行動や我慢ではない。自分の現状を冷静に把握し、理論に基づいた実行可能な行動こそが成功への近道であることをぜひ知っていただきたい。

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