人生の葛藤から考える「人生の危機」-年代別によって異なる悩みや不安、葛藤の内容とは?

嘉嶋麻友美
著者
キャリアリサーチLab研究員
MAYUMI KASHIMA

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、日常生活の中で悩みやストレスがある人の割合は44.8%となった。多くの人が何らかの悩みやストレスを抱えながら生活しているといえる。

悩みの内容は仕事や人間関係、健康、将来への不安などさまざまであり、こうした悩みやストレスは人生の満足度にも影響を及ぼす可能性が指摘されている。では、人々は人生に対してどのような不安や焦りを感じ、葛藤を抱えているのだろうか。また、その内容は年代によって異なるのだろうか。

本連載は、「人生の危機」について考えるために、人生に対する不安や焦燥感、憂鬱感などの「人生に対する葛藤」を年代別に見ていき、クォーターライフクライシスやミッドライフクライシスとの共通点について整理する。

※本稿では「葛藤」を、心の中で相反する感情や価値観の間で揺れ動く状態に加え、理想と現実のギャップから生じる不安や焦燥感、迷いなどを含む広義の意味で用いている

20代の人生の葛藤

まず、20代における人生の葛藤の実態を確認する。

【20代】人生の葛藤を感じている割合

正社員で働く20代のうち、人生に対して不安や焦燥感、憂鬱感など、「葛藤」を感じている割合は、51.3%(強く感じている15.3%+やや感じている36.0%)となり、全体(45.8%)よりも5.5pt高く、2人に1人以上が葛藤していた。

【20代】葛藤の内容

20代の葛藤内容では、「十分に稼げていない」が56.2%でもっとも高く、「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」が40.9%で続いた。また、全体と比べると、「今後のキャリアのために次に何をすべきかわからない」は33.5%と9.7pt高く、「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」も5.7pt高かった。

20代は、今後のキャリアや人生において選択の余地が大きい一方で、将来の見通しがまだ定まりにくい年代でもある。そのため、自分が最適な選択をできているのか、今後どの方向へ進むべきなのかといった不安を抱きやすい様子がうかがえる。

【20代】葛藤への対処段階

また葛藤を感じている20代において「葛藤」への対処段階を聞いたところ、「このままでは良くないと考え、悩んでいた段階から行動の準備をはじめる段階」が41.0%でもっとも高く、「理想にむかってゆっくりとスタートを切る段階」が14.7%で全体(10.9%)と比べ、高い傾向にあった。将来への不安や葛藤を抱えながらも、それを解消するために行動に移そうとしている人が一定数いることがうかがえる。

【図3】20代―葛藤への対処段階/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図3】20代―葛藤への対処段階/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【20代】葛藤し始めたきっかけ

葛藤のきっかけについて自由回答を分析したところ、「仕事」「給料」「転職」「お金」「子供」「時間」「不安」などのワードが多くみられた。

具体的には、「今の仕事があまり向いていないと感じた時」といった現在の仕事と自身の適性とのミスマッチや、「仕事量と給料が見合っていないと感じた」など仕事に対する報酬への不満、ミスマッチや不満をふまえ転職すべきかどうかといった選択への迷いなどが挙げられた。

また、「家計管理の動画を見ると自分より稼いで充実している人が多くいて羨ましく思う」といった、SNSや動画サイトなどを通じて他者の生活やキャリアを知り、自身との差を感じて悩む声もみられた。20代では、自身のありたい姿と現実とのギャップや、将来に向けた選択への迷いが葛藤の背景にあることがうかがえる。

【図4】20代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図4】20代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

30代の人生の葛藤

次に、30代における人生の葛藤の実態を確認する。

【30代】人生の葛藤を感じている割合

正社員で働く30代のうち、人生に対して不安や焦燥感、憂鬱感など、「葛藤」を感じている割合は、42.2%(強く感じている10.9%+やや感じている31.3%)となり、全体(45.8%)を3.6pt下回った。

【図5】30代―葛藤割合/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図5】30代―葛藤割合/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【30代】葛藤の内容

30代では、「十分に稼げていない」が53.4%でもっとも高く、次いで「行き詰まりを感じている(36.5%)」、「理想の私生活を追求できていない(36.0%)」が続いた。収入面への不満に加え、仕事や私生活において理想どおりに進んでいないことへの葛藤もみられた。

【30代】葛藤への対応段階

30代において葛藤への対処段階をみると、「このままでは良くないと考え、行動の準備をはじめる段階」が41.9%でもっとも高かった。また、「自分の過去の選択によって身動きができなくなっているように感じる状態」は36.4%で、全体(32.9%)を上回った。

【30代】葛藤し始めたきっかけ

葛藤のきっかけについて自由回答を分析したところ、「仕事」「お金」「転職」「生活」「結婚」「子供」「給料」などのワードが多くみられた。具体的には、「自分よりも数カ月後に入社した後輩が自分より給料が高い」といった待遇面への不満や、「仕事をこなし、同じような休日を過ごす自分にやるせなさを感じている」といった現状への停滞感がみられた。

また、「気づいたら周りが結婚し、家族に囲まれていた」といった回答もあり、周囲のライフイベントの進展と自身の状況を比較する中で葛藤を抱える様子もうかがえた。

40代の人生の葛藤

次に、40代における人生の葛藤の実態を確認する。

【40代】人生の葛藤を感じている割合

正社員で働く40代のうち、人生に対して不安や焦燥感、憂鬱感など、「葛藤」を感じている割合は、47.3%(強く感じている13.5%+やや感じている33.8%)となり、全体(45.8%)よりも1.5pt高かった。

【図9】40代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図9】40代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【40代】葛藤の内容

40代では、「十分に稼げていない」が55.3%となり、20代、30代と同様となった。一方で、「理想の私生活を追求できていない(40.0%)」が全体よりも高い結果となり、仕事だけではなく、家庭や生活全般に関する葛藤もうかがえた。

【図10】40代―葛藤内容/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図10】40代―葛藤内容/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【40代】葛藤への対応段階

40代において葛藤への対処段階をみると、「自分の過去の選択によって身動きができなくなっているように感じる状態」が34.4%でもっとも高かった。

また、「実際に行動に移す段階。仕事をやめたり人間関係を整理したり、自分を縛っていると感じていたものから離れ、あらゆるものから距離を置き、自分と向き合う状態」は19.0%で、全体(13.0%)を上回った。

【図11】40代―葛藤への対処段階/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図11】40代―葛藤への対処段階/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【40代】葛藤し始めたきっかけ

葛藤のきっかけについて自由回答を分析したところ、「仕事」「お金」「子供」「物価」「生活」「転職」「結婚」などのワードが多くみられた。

具体的には、「仕事がマンネリ化してしまった」といったキャリアにおける停滞感や、「高齢になってきた両親や、実家じまいなどの問題に対処しなければならない」といった周囲の環境変化による葛藤がみられた。また、「仕事量が多く、正月や連休も仕事をしないと間に合わず、自分のリフレッシュ時間が取れない」といった回答もあり、家庭や仕事での責任が増す中、自分自身の時間や心のゆとりを確保できないことへの葛藤もうかがえた。

40代では、キャリアや家庭において一定の役割や責任を担うようになる一方で、キャリアの停滞感や周囲の環境変化、自身が思い描いていた人生と現実とのギャップが葛藤の背景にあることがうかがえた。

【図12】40代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図12】40代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

50代の人生の葛藤

最後に、50代における人生の葛藤の実態を確認する。

【50代】人生の葛藤を感じている割合

正社員で働く50代のうち、人生に対して不安や焦燥感、憂鬱感など、「葛藤」を感じている割合は、43.0%(強く感じている12.6%+やや感じている30.4%)となり、全体(45.8%)よりも2.8pt下回った。

【50代】葛藤の内容

50代では、「十分に稼げていない」が50.8%でもっとも高く、「行き詰まりを感じている(38.1%)」が続いた。一方、「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」は全体よりも5.9pt低く、今後の方向性に迷うというよりも、現在の状況に対する停滞感や閉塞感に葛藤を抱いている様子がうかがえた。

【図14】50代―葛藤内容/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図14】50代―葛藤内容/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

【50代】葛藤への対応段階

50代において葛藤への対処段階をみると、「このままでは良くないと考え、行動の準備をはじめる段階」が39.5%でもっとも高く、全体を1.5pt上回った。葛藤を抱えながらも、現状を変えるための準備を進めている人が比較的多いことがうかがえた。

【50代】葛藤し始めたきっかけ

葛藤のきっかけについて自由回答を分析したところ、「仕事」「生活」「会社」「給料」「給与」「子供」「転職」などのワードが多くみられた。

具体的には、「定年延長、給与の削減により今後の生活がどうなっていくのか不安がある」といった回答がみられ、現在のキャリアだけでなく、引退後の仕事や生活を見据えた不安が特徴的であった。

また、「仕事の限界を感じている」「娘が大学を卒業して就職し、子育てが終わった後は、自分のためにもっと金銭的な余裕のある生活がしたい」といった回答からは、ライフステージの変化を迎える中で、自身のこれからの生き方や働き方について考える様子もうかがえた。

さらに、他の年代と比べて「毎日体調の良い日がないぐらい疲れる」といった健康面での変化に関する回答もみられた。

50代では、仕事や収入に関する課題に加え、定年後の生活設計や健康への不安、子育ての終了などによる役割の変化が重なり、これまでの人生を振り返りながら今後の生き方を見つめ直すことが、「葛藤」の背景にあると考えられる。

【図16】50代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計
【図16】50代―葛藤のきっかけ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)より再集計

年代別まとめ

ここまで年代別に、人生の「葛藤」の実態についてみてきた。

葛藤を感じている割合を比較すると、20代がもっとも高く、40代が続いた。一方で30代と50代は同程度であった。また、葛藤の内容では全年代で「十分に稼げていない」がもっとも高くなっていた一方、その背景には年代ごとの違いがみられた。

20代では、今後の人生やキャリアにおいて何をすべきかわからないといった、将来への見通しの立てにくさから生じる葛藤が特徴的だった。

30代では、自身のキャリアにおける停滞感に加え、結婚や家族形成、生活設計に関する葛藤もみられた。また、周囲のライフイベントやキャリアとの比較を通じて葛藤を感じる声も寄せられた。

40代では、理想の私生活を追求できていない現状への葛藤に加え、過去の選択によって身動きが取りづらいと感じる人も多くみられた。仕事や家庭における責任や負担の増加に伴い、自分自身の時間や余裕を確保しづらい状況がうかがえた。

50代では、定年後の生活やセカンドキャリアへの不安が特徴的だった。50代では、定年後の生活やセカンドキャリアへの不安が特徴的だった。また、健康面での変化に言及する回答もみられた。加齢に伴う体力の低下や健康問題への不安は、これまでと同じような働き方や生活を続けることへの懸念を生じさせ、不安や葛藤を強める要因となっている可能性がある。

このように、一口に「人生の葛藤」といっても、その内容や背景は年代によって異なる。将来への模索、理想と現実のギャップ、周囲との比較、責任の増加、定年後への備え、加齢による心身の変化など、葛藤の形はさまざまだが、いずれも人生の転機や変化と深く関係しており、誰もが経験しうるものである。

「人生の危機」とマイナビデータの比較

ここまで年代別に葛藤の実態をみてきた結果、20代では将来への迷い、30代では理想と現実のギャップ、40代では責任や負担の増加、50代では定年後や健康への不安など、年代ごとに異なる葛藤がみられた。

こうした人生の節目における不安や葛藤は、近年注目される「クォーターライフクライシス(Quarter Life Crisis)」や「ミッドライフクライシス(Midlife Crisis)」にも通じるものがある。そこで続いて、本調査結果とこれらの概念との共通点をみていく。

クォーターライフクライシスとは

クォーターライフクライシス(QLC)とは、20代後半〜30代前半に、人生に対する漠然とした不安や焦燥感などの葛藤を感じた経験のことを指す。詳しくは以下のコラムで解説している。

マイナビデータとの比較

調査データでは、20代は「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」「今後のキャリアのために次に何をすべきかわからない」といった項目が全体より高く、将来への迷いがみられた。これは、クォーターライフクライシスで指摘される将来不安や自己実現への葛藤との共通点といえるだろう。

また、自由回答ではSNSなどを通じて他者の生活やキャリアを知り、自身と比較した結果として焦りや不安を感じている様子もみられた。人生の選択肢が増える一方で、周囲との比較によって自らの将来に迷いを抱きやすくなる点も、クォーターライフクライシスの特徴と重なる。

ミッドライフクライシスとは

ミッドライフクライシス(MLC)とは、「中年の危機」とも呼ばれ、中年期である40~50代にかけて、自身の人生に対する悩みや葛藤を感じる心理状態を指す。詳しくは以下のコラムで解説している。

マイナビデータとの比較

調査データでは、40~50代は、仕事のマンネリや周囲の環境変化による役割変化、定年後の生活への不安、健康面での変化などがみられた。

これらはミッドライフクライシスにおいて指摘されるキャリアにおけるマンネリ化や自身の限界を感じる“社会的要因”、職場や家庭での役割が変化する“個人的要因”、健康問題やホルモンの変化によって不安・ストレスを感じる“生物学的要因”と重なる部分といえる。

さいごに

本コラムでは、人生に対する不安や焦燥感、憂鬱感などの「葛藤」の実態についてみてきた。

今回の調査からは、葛藤の内容やきっかけは年代によって異なるものの、いずれも人生の転機や環境の変化と深く関係していることがわかった。将来への不安、理想と現実のギャップ、責任の増加、定年後への備えなど、その形はさまざまだが、「人生に悩み、立ち止まる経験」という点では共通している。

近年注目されるクォーターライフクライシス(QLC)やミッドライフクライシス(MLC)も、こうした人生の節目に生じる葛藤の一つと捉えることができる。実際に、マイナビキャリアリサーチLabの調査では、クォーターライフクライシスを乗り越えた経験がある人の方が、クォーターライフクライシスを経験していない人よりも人生満足度が高い傾向もみられている。

葛藤の最中は、不安や焦りから先が見えづらくなることもあるだろう。しかし、その経験は自身の価値観や生き方を見つめ直すきっかけにもなり得る。葛藤は必ずしもネガティブなものではない。

今後の人生においても、何らかの葛藤に直面する可能性は誰にでもある。だからこそ、今抱えている葛藤と向き合うことは、自身の価値観や人生の方向性を見つめ直し、これから訪れる人生の変化を乗り越えるための糧になるのではないだろうか。

キャリアリサーチLab研究員 嘉嶋 麻友美朝比奈 あかり

朝比奈あかり
担当者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

関連記事

30代前後に訪れる「クォーターライフクライシス」の乗り越え方

コラム

30代前後に訪れる「クォーターライフクライシス」の乗り越え方

中年期に陥りやすいミッドライフクライシスとは?原因と乗り越え方のヒント

コラム

中年期に陥りやすいミッドライフクライシスとは?原因と乗り越え方のヒント

20代の危機~クォーターライフクライシスに陥る若者たち~【第3章】

コラム

20代の危機~クォーターライフクライシスに陥る若者たち~【第3章】