“仕事ができないと評価されてしまう人”の傾向と対策実践-現場支援をするキャリアコンサルタントが解説

佐野真子
著者
キャリアコンサルタント/キャリアコンサルティング総研株式会社 代表取締役
MAKO SANO

日々、さまざまな企業でキャリア面談を行う中で、以下のような相談を受けることがあります。

「周囲から仕事ができない、と言われた。仕事に一生懸命に取り組んでいるのに、どうしたらいいのかわからない」
「同じチームに仕事ができないメンバーがいる、どのように育成・指導したらいいのかわからない」
「異動してから自分は仕事ができないと思うことが増えた、今の仕事に自信が持てない」

これらの相談は立場や視点こそ異なるものの、「仕事ができない」という評価や認識が、本人・周囲の双方にとって大きな悩みの種になっているという点で共通しています。そして一度周囲から「仕事ができない」と思われてしまうと、本人の自己効力感は下がりやすくなってしまうとともに、周囲もどのような仕事を任せたらいいのか指導方針に悩む場合があります。

「仕事ができない」と周囲が思うのは、すべて本人の問題だけとも言い切れません。スキルと職種のミスマッチやチームとのミスマッチといった環境要因も考慮する必要があります。仕事ができない要因となっているミスマッチを解消し、「仕事ができない人」から脱却するためにどのような視点が必要なのか、事例を通してお伝えしていきます。

「仕事ができない」と周囲から思われてしまうのはなぜなのか?

そもそも「仕事ができない」と周囲から思われてしまうのは、なぜなのでしょうか。仕事ができないと思われてしまう人が、必ずしも業務遂行能力が低いとは限りません。日々熱心に業務に取り組み、定量面では比較的高いパフォーマンスを上げていても、周囲から“仕事ができない”と思われてしまうケースを目の当たりにすることがあります。

仕事ができる、仕事ができないの定義

まず、仕事ができる/できないという定義について、考えてみましょう。

「仕事ができる」という評価は、本人の自己申告によって決まるわけではありません。求められている役割や周囲からの期待により、基準が変化するものです。仮に高い能力を有していても、業務上課せられている期待や役割を果たすことができなければ、“仕事ができない”と思われてしまう場合があります。

とりわけ能力が高いからこそ、求められる役割と発揮する方向性が噛み合わないと、そのズレが大きなギャップとなり、実態以上にネガティブなレッテルを貼られてしまうこともあるのです。筆者は現場支援の一環として、社会人向けのキャリアデザイン講義も行っていますが、そこでは個人と環境の相互作用を例に挙げてお話ししています。

キャリア理論には、職業満足や職業上の安定性、業績は、個人のパーソナリティと働く環境との一致の程度に左右されると捉える考え方があります。 個人の能力を発揮するためには、環境との相互作用が不可欠であり、職場環境に適合しているかが満足度や成果に大きく影響を与えます。個人特性と職場環境にミスマッチがある場合、せっかく能力を発揮しても「仕事ができない」と判断されてしまうことにつながるのです。

ケース1:職責のギャップ

プレイヤーとしては優秀だが、チームマネジメントが苦手なAさんの場合

一つ目の例として、職責が変わったことにより、仕事ができないと判断されてしまったAさんのケースを見ていきましょう。

Aさんは法人顧客を担当する営業部門で実績を上げてきました。きめ細かな顧客のニーズ把握と決裁権者へのタイミングを捉えた提案活動により、法人顧客との継続的な成約に定評がありました。

個人成績が高かったことから、営業実績が評価され、チームリーダーとして数名のメンバーを任されることになります。Aさん自身も引き続き、これまで関係のある顧客に貢献できることにやりがいを感じていましたが、リーダーになってからは次第に仕事ぶりへの評価に変化が生じるようになります。

Aさんのチームでは、Aさん自身が個人としての業務目標を達成するものの、チームとしては目標未達の状態が続き、チーム全体としての実績は低迷し数字の伸びが鈍化していました。Aさんは個人で成績を上げる術には長けていましたが、営業手法をメンバーに共有し、チーム全体の成績につなげることに難しさを感じていました。

昇進後、Aさんは上司から“マネージャーとして仕事ができていない”という注意を受け、定期的に実施される360度多面評価において、チームメンバーからの評価は低いものでした。

Aさんの例では、個人の営業能力は高いものの、昇進に伴い「チーム全体の成績を上げる」ようにと期待される役割が変化したことにより、マネージャーという職責に対する結果を上げることができず「仕事ができない」と思われてしまった事例になります。

実際のキャリア相談でも、個人で高い業績を上げていた社員が昇進・昇格でマネージャー職となった際、仕事で求められる役割に変化が生じ、個人プレーの頃と比較して思うように結果が出ず戸惑うケースは少なくありません。

チームでの成績を上げるためには、個人の営業能力だけでなく、人を束ねるチームマネジメントが問われます。部下や同僚への働きかけや教育・指導が必要となるため、単独で成績を上げてきた人ほど「自分一人であれば達成できるのに、他の人への共有や展開、働きかけ方がわからない」という状態に陥ってしまうことがあります。

職責・ポジションでギャップを感じる場合、個人プレイヤーとして業績に貢献している場合も多く、次のステップでマネージャーとしてチームを束ね業績貢献する視野を持つことは、組織と個人の成長に繋がります。

ただし、個人によっては、協働や管理業務よりは個人プレイヤーとして貢献する方が成果を上げられるという場合もあるため、挑戦意欲は持てる環境としつつも個人の適性に合った昇進となるように上位者が組織作りを考える必要があります。

職責ギャップについての対応策

この場合の対応策としては、まず昇進時にマネージャーとプレイヤーの役割の違いをしっかりと本人に動機づけを行うこと、単独でなくチームとしてのマネジメントを行うために必要な能力を得られるよう企業で管理者向けの研修を行うこと、等があります。

そのままプレイヤーとして目標数字を持つプレイングマネジメントが可能な部署であれば、個人実績でチームに貢献するという選択肢もありますが、比重として大きくマネージャーとしての役割が求められる場合は任命の際に本人の適性と意思確認の必要もあるでしょう。

まず、マネージャーへの任命に伴い、仕事の役割と責任が変わったことを社員自身が理解する必要があります。チームとして営業実績をあげていくためには、自分自身の売上だけに目を向けるのではなく、チーム一人ひとりの仕事内容を理解し、進捗を継続的に確認していく姿勢が欠かせません。

もし、メンバーがつまずいていれば、相手に合わせた助言や指導を行い、チームとしての底上げを図ることもマネージャーの役割です。マネージャーの業務として営業に加え、メンバーのケアやサポート、育成指導も含まれるという意識を持ち、個人の視点からチーム全体を俯瞰する視点を持つことが求められます。

そのためにも、マネージャーとして全体を把握し、適切に働きかけていけるように、新人リーダー層を対象とした階層別研修等を通じて管理職全体の底上げを図り続けることが求められます。加えて、昇格時の不安払拭を目的としたキャリア面談を併せて実施することも有効です。

ケース2:仕事内容のギャップ

決められたルーチン業務には取り組めるが、変化や工夫が求められる仕事が苦手なBさんの場合

次は、仕事内容によって周囲からの評価が分かれたBさんのケースを見ていきます。

Bさんは、マーケティング担当としてデータ解析やトレンド分析を担ってきました。日々分析する数値指標はボリュームがあるもののある程度固定的であり、週報と月報で変化部分を数値投入して上長に資料化して報告することが主業務でした。

Bさんが分析したデータは数値にミスが少なく、傾向分析も的確で、周囲からも一目置かれる存在でした。

しかし、会社の方針変更により、Bさんの仕事内容に変化が生じてから、Bさんの仕事ぶりに変化が生じてしまうことになります。

会社では、従来行ってきたデータ解析は外部にアウトソーシングし、実際に打って出る施策に力を入れていくこととなりました。

Bさんの業務はデータを読み解くことではなく、データを基に施策を企画し、実行する仕事に変わりました。施策内容によって、実行に必要な手立ても異なり、Bさんは毎回変更の伴う施策実施についていけないと感じるようになりました。

一人で黙々と仕上げる仕事を得意としていたBさんにとって、外部とのやりとりも増え、周りに振り回されることが増えたように感じています。データ解析では一目置かれていたBさんでしたが、施策実行部隊になってからは目に見えて元気がなく、自信を失ってしまったように見えます。

Bさんの例では、定型的な業務では力を発揮していたものの、やり方が毎回変わる変化の多い仕事内容は不得手なケースです。仕事内容の変化に伴い、自己効力感が低下しています。

企業において、同じ仕事に未来永劫従事することは考えにくく、得意な仕事、苦手な仕事が存在します。最初は苦手だったとしても新たな業務に挑戦することで、また違う世界が見えてくる可能性も否めません。

ただし、企業において違う個性を持つ人が集まるからこそ、明らかに苦手な業務に従事させ続けることが得策とも限らず、ジョブローテーション等を通じて個人の持つ資質が最大限活かせる道をつくることも企業のミッションです。個人の持つ資質を開花させ、能力開発により強みを伸ばすことが、企業の生産性向上にもつながるためです。

仕事内容のギャップについての対応策

今回のBさんの対応策として、Bさんが本来持つ強みを発揮できるよう組織として適材適所の観点でチーム編成の見直しを行っていくことも有効です。自己申告制度等で本人の意向が反映できる制度で適性を生かす新たな挑戦を後押しすることもできるでしょう。同じチームでタイプの異なるメンバーとの人員組み合わせで補完し合うこともできます。

Bさんが苦手だとしても、業務上必要な業務であれば、リスキリングの一環として新たな業務経験を得ていくBさん個人としての自助努力も必要となります。

ケース3:バックオフィス業務のスキルギャップ

専門職としては有能だが、一般事務が苦手なCさんの場合
※医療、介護、保育等の専門職でよくあるケース

次は、専門職として現場支援では高い能力を発揮しているものの、一般事務業務が苦手なために“仕事ができない”と評価されてしまった事例を見ていきます。

Cさんは、介護職としてベテランで長年の業務経験があります。目の前の患者さんの対応にやりがいを感じているため、マネージャーにならないかと声をかけられるもののバックオフィス業務が苦手なため管理職は固辞し、現場主義で働いています。

夜勤もこなしており、現場の同僚からの評価は高いのですが、上司が変わってからは「仕事ができない」と言われることが増えています。患者さんの日常の様子は熟知しているのですが、上司への報告がない、資料提出が遅い、といつも注意を受けています。

報告は上司に直接報告するか資料で提出することになっているのですが、上司は会議や出張に出ていることが多く、患者さんの対応を優先している間に書類作成や報告がタイムリーにできないことが続いているためです。

現場のことは分かっているのに、と思うものの事務仕事は苦手なため後回しにしてしまい、取り組むのも億劫な状態が続いています。転職も考え始めていますが、パソコンを使うのが苦手なため会社員は無理でつぶしが効かないと思って悩んでいます。

Cさんのケースでは、専門職として現場対応実務能力はあるものの、一般的な事務仕事が苦手で後回しにしてしまい上司からの評価が得られないケースです。

医療専門職では「つぶしがきかない」「パソコンが苦手」というケースは意外と多く、閉じた職場の中で医療以外での自分の立ち位置を見失うケースも少なくありません。また、医療専門職以外の保育士等でも「保育は好きだが、事務仕事ができない」「保護者とのやりとりに一般的なビジネスマナーが問われることがあり知識がないため注意されることがしばしばある」というケースに立ち会うこともあります。

バックオフィス業務のスキルギャップについての対応策

この場合の対策として、専門職と一般事務の比重をどのように考えるかという事業所の意向にもよるところも大きいです。

現場からの声を受けて、現場支援を優先し事務的な部分はシステムやツールに置き換え、間接部門に移し現場専門職の負荷を減らす場合もあります。また、専門職だとしても最低限の事務仕事は必要な業務の一環として割り切り、パソコン操作の研修で各人のスキルアップを求める場合もあります。

組織/個人がどちらの業務を優先するかにもよりますが、一般的なパソコンスキルはもちろんAIやDX促進が進む中、専門分野以外のリスキリングも求められており、今後ますます増えてくるケースとも言えるでしょう。

ケース4:仕事に対する価値観のギャップ

仕事には熱心だが、成果に繋がらない業務に時間をかけるため、評価が得られないDさんの場合

次は、仕事への意欲は高く懸命に働いているものの、仕事ぶりに年代でのギャップがあり評価が得られないケースです。

Dさんは定年後に再就職として新規開拓の営業職として勤務しています。

定年後なかなか次の雇用先が決まらなかったこともあり就労意欲は高く、前職の仕事で大事にしてきた“足で稼ぐこと”をモットーにして日中は自社サービスの新規開拓営業に懸命に励んでいます。

一社でも多くを回りたいと思っているため、常に帰社が遅くなり残業も発生しています。

直行直帰も許可されているため、早出や残業もまめに報告しているものの、上司から「残業が多すぎる、外でどのような業務をしているかわからない」と言われました。

体に鞭打って懸命に仕事をしているのに、若い管理職は何も分かっていない、と思うことも多いです。新規開拓として若い人よりも成果は上げているものの営業後の事務処理が追い付かず残業が多すぎることと、上司の指揮命令に従わないという理由で、年下の上司から「仕事ができない」と言われ、評価されていません。

Dさんのケースでは、働くこと自体への意欲はあるものの意欲が度を越えて指揮命令系統を逸脱し、やらなくてもよいことを自分勝手に判断しているため評価が得られないケースになります。

仕事に対する価値観のギャップについての対応策

職業人生が長くなる中で、働き方の変化やジェネレーションギャップ、年齢が若い上司が年上の部下をマネジメントすることも増えており、本人だけでなく上司側から「どのように年上の社員に指導したらいいのか」という相談も増えています。

この場合、仕事のやり方が生き様に通じる場合もあるため、指摘には注意が必要です。仕事ぶりを労うとともに貢献してくれていることには感謝を述べつつ、期待する業務内容を伝える機会を持つことが必要になります。

評価項目も定性部分をどのように評価しているのか、懸命に取り組んでいることだけでは評価に直結しない、という事実を伝えるとともに言い方や接し方で自尊心を傷つけずモチベーションを下げないことが必要になります。

高い就労意欲を生かすためにも、社員自身が会社を取り巻く環境を理解し、時代の流れに合わせて考え方のアップデートを行うことも求められます。年代差のあるメンバーへの動機づけ、マネジメント手法とも相まって、特にシニア社員の多い職場で、経験と叡智を成果に活かすために配慮が必要なケースです。

まとめ

ここまで“あの人は仕事ができない”は本当か?というテーマで現場事例も踏まえて、ご紹介してきました。

仕事ができない、と思われてしまうのは、本人の能力が低いわけではなく、職責や環境、時代の流れに合わせたスキル取得、仕事のやり方等とのミスマッチも想定されます。

実際の現場支援においても、本来期待する役割について「仕事ができないとされている本人」とキャリア面談を通じて丁寧にやりとりできれば、期待するパフォーマンスにつながるケースを見てきました

一度仕事ができないと周囲からラベリングされると自尊心も傷つき、コミュニケーションがますます希薄になる場合がありますが、個別面談を通して心情吐露と現状の課題整理を行うことで一歩前進と成長につながります。

個人だけでなく、組織として何を期待するのかを明確にし、個人の持つ資質や経験を如何なく発揮できるように働きかけることが齟齬を減らし、実力の発揮にもつながります。

働く社員はもちろんのこと、マネジメント層が多様な社員の個性を理解し、一人ずつに寄り添い働きかける姿勢も求められています。 時代に合わせた多様な可能性を信じ、社員の能力が彩り豊かに開花するように参考にしていただければ幸いです。

※本記事に記載している事例は、これまでの多くの相談内容に見られた共通点をもとに、内容を整理・再構成したものであり、特定の個人を指すものではありません。

矢部栞
担当者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

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