マイナビ キャリアリサーチLab

職場での非認知能力とその評価のリアル
~評価する人・評価される人の2つの視点から考察~

長谷川洋介
著者
キャリアリサーチLab研究員
YOSUKE HASEGAWA
非認知能力ヘッダー

「今の職場で、自分の何が評価されているのか」「そもそも、自分の得意なことや能力って一体何だろう」。そのような悩みを持つビジネスパーソンに向けて、「非認知能力」をテーマに始まった本特集。 

前回は、仕事の成果に影響する非認知能力に関して、ビッグ・ファイブの中では「誠実性」がもっとも仕事の成果に影響すること、また「協力して成果を生み出す力」「主体的創造的に道を開く力」「批判的に問題を解決する力」といった能力も重要であることを、先行研究を通じて紹介した。

第3回となる今回は、実際の働く現場で非認知能力がどのように捉えられているのかに迫る。職場において誰かを評価する人は、その相手の非認知能力をどの程度認知し、評価しているのか。あるいは評価される人は仕事と非認知能力をどのように結び付けているのか。
マイナビキャリアリサーチLabでは、業種や職種・性別の異なる課長職以上の役職者(評価する人)5名、役職を持たない一般社員(評価される人)5名を対象に、職場における非認知能力のイメージとその活用・評価についてインタビュー調査を実施した。

※インターネット調査で、性別・年齢・雇用形態・現在の職場での役職者経験の有無などの属性に関して事前調査を行い、該当者の中から下記10名を選定し、オンラインでインタビューを実施

役職者
(評価する人)5名
性別・年代業種/職種
Aさん女性・30代医療・福祉・介護/歯科助手
Bさん男性・40代IT・通信・インターネット/人事
Cさん男性・50代流通・小売/法務
Dさん男性・40代IT・通信・インターネット/ITエンジニア
Eさん男性・40代IT・通信・インターネット/営業

一般社員
(評価される人)5名
性別・年代業種/職種
Fさん男性・30代機械・電気・電子/品質保証
Gさん女性・20代環境・エネルギー/カスタマーサービス
Hさん女性・50代サービス/経理事務
Iさん男性・30代IT・通信・インターネット/営業・研修講師
Jさん男性・30代素材/生産管理

評価する人から見た「うちの職場の非認知能力」

まず評価する人は非認知能力をどのように捉えているのだろうか。インタビュー対象者には、非認知能力を「数値で表すことの難しい能力・得意」として、評価する立場において自身が監督する職場では、どのような能力・得意を持つ人が活躍しているかを聞いた。 

「誠実性」への評価—取引先への真面目さ

●評価する人・ケース(1)
エンジニアとしてある顧客の大規模システム導入を担当していた部下がいたが、顧客から「(その部下のエンジニアを)トレーナーとしてうちの社内に常駐させてほしい」と依頼があった。なぜそのエンジニアが顧客からそれほどまでに気に入られ、特別な評価を受けられたのかと考えていたが、そのエンジニアは顧客の懐に入るために「飲みニケーション」の場を活かし、顧客からの些細な相談にも親身に応えていたことがわかった。エンジニアとして製品を納品するというビジネスの関係だけでなく、顧客とコミュニケーションを取ろうという姿勢を貫いていたということを知り感心し、これこそ、これから生き残っていくエンジニアの姿だと思った 
…Dさん(IT・通信・インターネット/ITエンジニア) 

エンジニアとして製品の品質のみにコミットするだけでも、仕事としては十分だったにも関わらず、顧客の相談に乗り真摯に対応する姿勢を貫いた。そのことが顧客からの評価、さらにはDさんからの評価にもつながっていたようだ。 

このDさんのケースについて、第2回で仕事の成果と相関関係があるビッグ・ファイブの一つとして紹介した「誠実性」(※1)との関係で見てみよう。誠実性とは「良心性」「真面目さ」のような性質を内包し、ルールや規則に対する真面目さ・責任感のような意味を持つ。
※1「誠実性」:感情や行為をコントロールする力、良心性、達成力の高さ、責任感の強さに関する因子。誠実性が高い人は、真面目で粘り強く、達成力があるとされている

一方でこのDさんの部下は、真面目さ・責任感のベクトルを顧客に向け、単に与えられたタスク(エンジニアとして納品さえすればよい)だけではなく、顧客との密なコミュニケーションを通じて真摯に向き合う姿勢に徹していたことが、顧客からの評価に留まらず、Dさんにも評価された。仕事の成果と強い相関があるとされる「誠実性」だが、単なる自分自身の内面に課された真面目さや責任感ではなく、他者やそれを含めた状況などに対して誠実さのベクトルを向けることが評価されたのだ。飲みニケーションという手段に着目すると「外向性」の表れという側面もあるが、顧客と向き合うための手段としての飲みニケーションの背後に、Dさんは顧客と向き合おうとする部下の誠実性を見出し、それが評価につながったことが、このエピソードから読み取れるのではないだろうか。

【図1】Dさんのエピソードにおける「誠実性」(マイナビ作成)

「協調して成果を生み出す力」への評価

前述の「誠実性」のほか、評価する人へのインタビューの中で目立っていたワードは、「協調性」「協働」「コミュニケーション」などであった。 

●評価する人・ケース(2)
人事業務を担当する入社4年目の部下は、開発部門ではないにもかかわらず、プログラミングスキルを活かし、日常業務を効率化するシステムを作り上げた。ときにははるかに年上のベテラン先輩社員も巻き込みながら自発的に開発を進めていた。情報系の学科出身だからか、自身のプログラミングスキルは大して特別なものではないと思い込んでいたようだが、そのシステムづくりを通じて自分の価値に気付いたようだった。それまでは矢面に立って何かをする性格ではなかったが、それ以降は社内のアイデアコンテストに出るなど前向きな姿勢に変化した。人事のような非開発部門からアイデアコンテストに出ること自体珍しく、社内でも注目を集めていた。 
…Bさん(IT・通信・インターネット/人事) 

●評価する人・ケース(3) 
個人営業の歯科医院なので、患者とのコミュニケーションが上手に取れる人、患者を安心させられるような対応が求められる。そのような振る舞いができていると、患者のリピート率が増えたり、患者から「あの助手さんはいいね」といったフィードバックをもらうことが増えるので、評価につながりやすい 
…Aさん(医療・福祉・介護/歯科助手) 

Bさんへのインタビューからは「他者を巻き込む」ことで社内業務効率化に役立つシステムを作り上げたことの評価、Aさんへのインタビューからは丁寧な「コミュニケーション」によって通院する患者を思いやり不安を取り除くような対応への評価が、それぞれ語られた。 

仕事の成果との関係性が指摘される非認知能力は「誠実性」のほかにもいくつか挙げられたが、この2人へのインタビューからは「外向性」(※2)、「協調性」(※3)などが評価されている様子がうかがえる。 
※2「外向性」:社交性、積極性、活発さ、外界への興味関心に関する因子。外向性が高い人は、他者との関わりを好む特徴がある 
※3「協調性」:他者への共感力、配慮、思いやりに関する因子。協調性が高い人は、親切で貢献することを好み、争いを避ける特徴がある 

Bさんのエピソードにおける「外向性」、Aさんのエピソードにおける「協調性」(マイナビ作成)

このように、非認知能力という数値化しづらい能力や得意も、上司からの評価の対象となっていることがインタビューを通してわかった。 

評価される人から見た「わたしの非認知能力」

では一方で評価される人は、仕事における非認知能力についてどのように捉えているのだろうか。評価する人と同様に、「協調性」「共感性」といったワードがインタビューでは多く見られた。

協調性・共感性といった非認知能力を活かせたと思う自身の仕事

●評価される人・ケース(1)
わたしは性格が温和で、人と対立するのが好きではない。ただ人とのコミュニケーションは大切だと思っているので、話したくない人とでも仕事上コミュニケーションを取ることができる。職場に派閥があり仕事に差し支えが出たことがあったが、めげずに相手に感謝の言葉を伝えることで、向こうの態度が変わってきたことがある。そのことによって仕事における人間関係の大切さを強く感じた 
…Hさん(サービス/経理事務) 

●評価される人・ケース(2) 
携帯ショップのスタッフに対して研修を行う上で、現場の声をよく聞いて、スタッフの人からの提案に対して積極的にフィードバックを行うなど、現場スタッフへの共感性はとても大事だと思う 
…Iさん(IT・情報・通信/営業・研修講師) 

人との対立を好まない性格(=争いを避ける傾向=「協調性」)ゆえに、あえて嫌な相手ともコミュニケーションを厭わず、結果として人間関係の円滑化に成功したというHさんは、職場での振る舞いに「協調性」がうまく働いたケースだろう。またIさんのように相手の声をよく聞きフィードバックを行うという姿勢にも、他者への興味関心、配慮といった共感性をベースにした協調性を見ることができる。

Hさんのエピソードにおける「協調性」、Iさんのエピソードにおける「協調性」(マイナビ作成)

このように、仕事の効果との相関関係が認められている「誠実性」や「協調性」などは、仕事において活かせる非認知能力として、評価する人・評価される人ともに認識していることがインタビューを通してわかってきた。

他のインタビューからも、周囲との関係性を意識した発言や、協調性・コミュニケーション能力に関する内容が多かった。第2回では、アメリカに比べて日本においては協調性がプラスに働くという日米の違い(集団主義と個人主義)についても述べたが、今回のインタビュー対象者に外資系企業の従業員がいないため厳密な検証はできなかったものの、少なくとも日本においては、仕事において協調性や他者への配慮を重視する傾向があり、それが仕事の成果に影響しているものと考えられる。

非認知能力を評価に組み込むことの重要性

では次に、非認知能力のように数値化しづらい得意・能力を評価されることで、評価される人にどのような効果・変化が現れるのかを見ていきたい。インタビューからは、非認知能力を評価されたことでプラスの効果があったという声が多く見られた。また一方で、非認知能力がまったく評価に加味されないことで仕事のモチベーション低下につながっている、という声もあった。 

非認知能力を評価されることで、自身にどのような変化・効果が現れたか

●評価される人・ケース(3)
コミュニケーション能力や適応力、柔軟性などを評価されたことで、その上司や職場のためにより頑張ろうと思えた 
…Gさん(環境・エネルギー/カスタマーサービス) 

●評価される人・ケース(4)
「初対面の相手ともうまく関係性を築けている」と評価された。自分は人見知りが強いが、評価されたことで自身の強みに気付き、自分から行動しようと思うようになった 
…Iさん(IT・通信・インターネット/営業) 

●評価される人・ケース(5)
年功序列での評価であり、非認知能力を評価されたことは一切ない。評価されないためやりがいもなく、仕事のモチベーションは下がっており、転職も検討している 
…Fさん(機械・電気・電子/品質保証) 

GさんやIさんのインタビューからは、自身の非認知能力を評価されたことで、職場や仕事へのロイヤリティが上がったり、自身の隠れた強みに気付いたりといったプラスの効果が見られた。
対して、非認知能力をまったく評価に加味されない年功序列の組織に属するFさんは、モチベーション低下によって転職意向が高まっている状況だ。Fさんの組織は、従業員の数値化しづらい能力や行いを無視してしまうことで起こる弊害を、非常にわかりやすく示しているケースであり、非認知能力を評価に取り入れることの重要性を感じさせるものだと言えよう。

非認知能力への評価と仕事のモチベーション(マイナビ作成)

非認知能力を評価に組み入れることの難しさ

非認知能力の評価が仕事のモチベーションや職場へのロイヤリティに影響を与えていることがわかった。では評価する人はその影響力を理解していないのだろうか。結論から言ってしまえば、評価する人もその影響を理解しているが、数値化できないからこそ、非認知能力を評価に組み入れることの難しさを語るエピソードも多く聞かれた。
改めて人事考課の代表的な内容を説明すると「業績評価・能力評価・情意評価」の3項目から成り立っているケースが多く、非認知能力は能力評価、あるいは情意評価の項目で評価されることが多い。
非認知能力:数値化された実績の比率が「0:10」ではいけないことは、非認知能力がまったく評価されないことで仕事のモチベーションが下がったというFさんのエピソードなどを見れば明らかであるが、両者をどの程度のウェイトで扱うべきかについては、評価する人へのインタビューからもその工夫についてや評価する際の難しさに関する声があった。 

●評価する人・ケース(4)
(自分の部下である課長職に対して)コミュニケーション能力などに比重を置きすぎず、エンジニアとしての本質(納期遵守・原価率などの数字評価)をメインに置くように伝えている。数値で表せない能力は、補足的な評価項目であるが、クライアント先に御礼めぐりをする際にお褒めのお言葉をもらったときなどに、しっかりと認識するように心掛けている。 
…Dさん(IT・通信・インターネット/ITエンジニア) 

●評価する人・ケース(5)
目に見える実績:内面で、6:4くらいで評価している。個人的には5:5でもいいかなと思っているが、自分の上司との考えにギャップがある。自分の部下について内面的な部分もきちんと評価してもらうために、自分の上司に対しては部下の内面を独自に数値化して報告している 
…Eさん(IT・通信・インターネット/営業) 

●評価する人・ケース(6)
若手社員はまだ目に見える実績が少ないので、非認知能力を高めに評価に加味している(実績:非認知能力=6:4)。ベテラン社員は、非認知能力はある意味基礎体力的な位置づけなので、実績での評価を高めにしている(実績:非認知能力=8:2)。 
…Bさん(IT・通信・インターネット/人事) 

非認知能力が評価において占める割合は5割未満というケースが多いようだが、非認知能力はあくまで補助的な評価要素として捉えられていることと、そして評価する人自身とそのさらに上の上長(二次評価者)との間の評価スタンスの違い、などがその背景にあった。
数値で示しづらい要素を評価することの難しさが表れていると言えるが、中にはBさんのように社員の経験年数に応じて非認知能力を評価するウェイトを変えているという企業もあり、評価におけるウェイトの差こそあれ、非認知能力を戦略的に評価に取り入れている様子も見られた。 

数値化しづらい部分を評価する際の「公平性」「客観性」の問題

非認知能力を評価する際にもう一つの問題としてインタビューを通して浮きあがってきたものが、非認知能力という「数値で表しづらい」ものを評価する際の、公平性や客観性をどのように担保すべきかというものだ。 

●評価する人・ケース(7)
数値で客観的に扱いづらいこともあり、上司として公私混同しないように、公平性に気を遣っている。非認知能力を個人的には評価はしているが、本人に対して全面的にフィードバックはせず、あくまで数字で見える部分の評価を伝えるようにしている 
…Aさん(医療・福祉・介護/歯科助手) 

数値や実績という目に見えるものとは異なり、数値では表しづらいものを評価する上では、「公平性」(あるいは客観性)が問題となる。そのため、職場に不公平感を生むことを懸念し、数値で見えやすい評価を優先せざるを得ない、という場合があるようだ。

「公平性」の壁を乗り越えるために

では、公平性という問題を乗り越え、よりよい職場環境の構築のために非認知能力を適切に評価に組み入れるにはどうしたらいいだろうか。評価する人へのインタビューを通じて、数値で表しづらい非認知能力を客観的に評価するための工夫が見えてきた。 

●評価する人・ケース(8)
一人だと評価に偏りが生まれるので、評価のすり合わせを行っている。自分の部下のヒアリングを別の人にも行ってもらうことで、自分の感覚が正しいかを確認している 
…Cさん(流通・小売業/法務) 

●評価する人・ケース(9)
自分が見ることができる範囲は把握できるが、それがすべてではないため、各チームごとに個人が周りを評価してみようという取り組みをした。スタッフ同士で互いのいいところを見つけてフィードバックするというもので、そのおかげで普段のコミュニケーションも活発になった 
…Eさん(IT・通信・インターネット/営業) 

評価の偏りにより職場に不公平感が生まれないようするため、別の評価者の「第三者の視点」により「多角的に」を評価する。これにより、数値化しづらい(客観視しづらい)非認知能力を評価する際の公平性の問題を最小化しようとしているのである。

非認知能力を評価対象にしようとする際のイメージ(マイナビ作成)

非認知能力の評価をめぐる「理想と現実」

ここまで、上司・部下それぞれの立場から、非認知能力の活用やその評価についてどのような考えがあるのかを明らかにしてきた。インタビューを通じて、評価する人が評価される人の非認知能力を評価することが当人の仕事にプラスの影響を与えていることを見ることができたものの、それと同時に非認知能力を評価する難しさも見えてきた。
最後に、非認知能力の評価をめぐる理想と現実について感じることを、評価される人・評価する人それぞれにインタビューした内容を紹介しよう。 

評価される人から見た理想と現実

●評価される人・ケース(6)
仕事に対する前向きな気持ちや、それを行動に出すこと、人とのコミュニケーションなど、見えない能力も、もっと会社から評価してほしい。 会社は要領よくやる人を評価してしまうが、ひとつひとつコツコツとこなしていく、ひたむきな姿勢も評価してほしい。 表面上のものではない人間性を見ることも大切だと思う。  
…Hさん(サービス/経理事務) 

●評価される人・ケース(7)
積極的に資格を受けに行ったり外部の研修を受けに行ったりすることをより評価してもらえると、能力を伸ばそうと思う人が増えると思う。一方で必須資格を持ってはいないが「愛されキャラ」として場の雰囲気をよくしてくれるような人もいて、そういう人も評価してもらえればと思う。 
…Jさん(素材/生産管理) 

●評価される人・ケース(8)
上司は自分の仕事ぶりをほとんど見ていないが、自分はいろんな部署の人と仕事をするため、そういう他部署の人たちの上司に自分の仕事や振る舞いなどを評価してほしい。 
…Fさん(機械・電気・電子/品質保証) 

評価する人から見た理想と現実

●評価する人・ケース(10)
院長というある意味絶対的なトップ(評価者)がおり、院長の評価による部分が大きい。そのため、自分が中間管理職として評価している人でも、院長の覚え次第ではあまり評価につながらないなど、歯がゆく思うシーンもある。 
…Aさん(医療・福祉・介護/歯科助手) 

●評価する人・ケース(11)
数値に現れない部分をきちんと把握するのは大事だし、会社としても、そういう能力がないと管理職にはできないと考えており、自身の評価姿勢と会社の評価姿勢は全体的には一致している。 一方で、非認知能力は定量的に扱えるものではないと思うので、評価調整をするときに根拠を示しづらく、そこが難しい。非認知能力を定量的に示せればいいのだが。 
…Bさん(IT・通信・インターネット/人事) 

●評価する人・ケース(12)
数値評価は部下の納得感が得られやすい一方で、コミュニケーション能力などの評価を取り入れる気運が会社で増えている。数値評価ではないので納得感が得られづらい部分もあり、そこを懸念している。一人一人のエンジニアの理解を得られるかが、非認知能力を評価する上での今後の課題だと感じる。 
…Dさん(IT・通信・インターネット/ITエンジニア) 

●評価する人・ケース(13)
理想と現実のギャップは感じている。会社の上層部は数字を重視する傾向だが、働いている人があってこその会社だと思う。今後自分たちの仕事がAIに置き換わる可能性もあると考えたとき、内面性やコミュニケーションといったAIにはできない強みを評価することは、会社の財産にもなると思う。現状はそうした 非認知能力を自分なりに数値化して、それをさらに上長に報告して評価してもらっているが、できれば数値化せずそのまま評価したいというのが理想。自分自身は、上司から数値で評価されてしまうポジションだが、後輩たちにはそういう経験をさせたくないと考えている。  
…Eさん(IT・通信・インターネット/営業) 

「非認知能力の評価」をめぐるギャップは埋められるのか

評価される人・評価する人ともに、非認知能力をより評価に組み入れてほしいと考えている様子がうかがえた。ただ実際に部下を日々評価している上司の側の事情は若干複雑なようで、非認知能力を評価することで部下の納得感が得られるのか、数値化できないものを数値化せずに評価するにはどうしたらいいのか、という部分で、非認知能力を評価することの理想と現実のギャップを感じているようである。
前述で、チームのメンバー同士の評価を取り入れる、別の評価者に自身の評価をレビューしてもらうなど、第三者視点を多角的に取り入れることで公平性や客観性の問題を最小限にするような工夫も見られたが、課題を完全にクリアにすることは難しいのが現状だろう。 

今回は、評価される非認知能力、非認知能力を評価することの難しさ、理想と現実のギャップなどについて明らかにしてきた。
続く第4回は、こうして明らかになった理想と現実のギャップなどを踏まえて、企業への個別取材を行う。実際に同じ会社・職場で働く者同士として、評価する人・評価される人が非認知能力をどのように捉えているのかを、インタビューを通じて探っていく。 

キャリアリサーチLab 「大人の非認知能力」特集メンバー

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