新卒は「ポテンシャル」、中途は「即戦力」
新卒採用と中途採用では一般的に、人材に求める特性や評価基準が異なる。「企業人材ニーズ調査2025年版」では、新卒採用担当者と中途採用担当者の双方にそれぞれの採用に対するスタンスを聞いている。データからは、新卒採用では「ポテンシャル」を、中途採用では「即戦力」を重視する傾向がみられた。【図4】
【図4】採用スタンス(採用担当・雇用形態別)/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:新卒採用担当者と中途採用担当者
第二新卒「人柄・性格」の内面重視
では、企業は第二新卒人材に何を期待しているのか。「第二新卒人材を採用するうえで重視する内容」の結果をみると、「人柄・性格」がもっとも多く、「専門知識・スキル」「実務経験」「基礎学力」などの他の項目に比べて顕著にスコアが高い。【図5】
【図5】第二新卒採用で重視する内容/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:第二新卒採用を実施しているとした正社員採用担当者
第二新卒採用では、候補となる人材の内面の部分や会社との価値観の一致度がより重視されることが推察できる。求職者側の目線で考えれば、新卒・中途で重視されがちな能力や基礎学力以外で勝負する余地があるとも解釈できる。
「人柄・性格」はどの属性を採用するうえでも企業が重視すべき基本事項の一つであろう。その点、新卒採用・中途採用と根本では通ずる部分も多いだろうが、ポテンシャル重視の新卒採用や即戦力重視の中途採用とは少し毛色が違う感じもうかがえる。
なぜ第二新卒採用を狙う?
新卒・中途「充足できない」現状
ではなぜ、企業は若手獲得を第二新卒採用に託すのか。「第二新卒採用を行う理由」の結果では、「新卒人材が充足できない」「中途即戦力人材が充足できない」が上位となっており、新卒採用・中途採用の代替・補完として機能していることがみてとれる。
他にも、「採用がしやすい(採用確率が高い)」「新卒人材よりも仕事・職場に馴染みやすい」「中途即戦力人材よりも仕事・職場に馴染みやすい」などの項目もスコアが高く、第二新卒ならではのメリットを感じている企業もありそうだ。【図6】
【図6】第二新卒採用を行っている理由/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:第二新卒採用を実施しているとした正社員採用担当者
採用リソース不足の問題
背景には、企業の人事リソースの制限もある。正社員採用担当者(新卒・中途もしくは両方担当)に自社の採用課題を聞いた結果では、「応募が集まらない」「応募が集まっても採用に繋がらない」「採用までに時間がかかる」が上位3項目となった。【図7】
【図7】自社の採用課題/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:正社員採用担当者
結果から示唆されるのは、企業が人材獲得のためにリソースを割いたとしてもすぐに採用に至るとは限らない、という厳しい実態であろう。余力を持って順調に採用できている企業も中にはあるだろうが、限られた人と時間と費用の中で何とか採用活動を行っている企業も少なくないだろう。
採用コスト上昇の問題
視点を変えて、新卒採用と中途採用の現状を示すデータからも、企業が第二新卒採用を行う意味を考える。調査では、新卒採用担当者・中途採用担当者にそれぞれの採用の「採用コスト(1人採用するのにかかるコスト)」について聞いているが、前年(2024年)に比べて「増えている」とした割合は、新卒採用担当者で46.9%、中途採用担当者で44.0%となった。2024年の結果と比較しても新卒・中途ともに「増えている」とした割合が高くなっている。【図8】
【図8】採用コスト(採用担当・雇用形態別)/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:新卒採用担当者と中途採用担当者
また、1人あたりの人件費も上昇傾向にある。新卒採用担当者・中途採用担当者にそれぞれの採用において「採用目標達成のため、この1年で基本給をあげたか」を聞いたところ、新卒採用・中途採用ともに約7割が基本給の引き上げを行っていた。2024年結果と比較しても新卒・中途ともに引き上げを行った割合が高くなった。【図9】
【図9】基本給引き上げの有無(採用担当・雇用形態別)/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:新卒採用担当者と中途採用担当者
ただ一方で、基本給の引き上げの効果は限定的である可能性もうかがえる。「この1年で基本給をあげた」とした企業の採用担当者に引き上げの効果をたずねた結果では、新卒採用・中途採用ともに「採用者の質」「採用者の数」が「向上した」とした割合は、いずれも4割を下回り、「変わらない」が多数派となった。【図10】
【図10】基本給引き上げの効果(採用担当・雇用形態別)/マイナビ企業人材ニーズ調査2025年版 回答者:基本給をあげたとした新卒採用担当者と中途採用担当者
競争が激しい市場を受け、多くの企業が足並みを揃えるように引き上げをする節もうかがえる。そのような状況下では、給与水準の引き上げが必ずしも成果に結びつくとは限らないのが現状ではないだろうか。
二層のコストが影響?
新卒採用・中途採用の現状を照らし合わせてみると、第二新卒の活況も合点がいく。一般的に、新卒一括採用はまとまった期間で多くを採用できるメリットがある反面、入社に至るまでの期間が長く、必要時に必要数を調達しにくく柔軟性に欠ける。
かたや、社会全体で賃上げの機運も高まる中で、採用者あるいは従業員1人あたりの人件費が上がっている傾向がみられる。そうなると当然、即戦力となり得るような中途人材は市場価値が高く、人件費がかさむ。さらに、専門性・経験値を備えた優秀な人材を探し当て、入社してもらうには時間と手間を有するはずだ。
このような金銭と時間の二層のコストが企業の採用ターゲットに影響し、第二新卒採用の需要に繋がっていると考える。
さいごに
ここまで第二新卒採用を「市場動向」「期待」「目的」の三つの観点で捉えた。第二新卒採用市場は熱を帯び、今後さらに市場が活況となることが予想される。
企業の視点で考えると、第二新卒採用は正社員採用の調整弁として機能している様子がうかがえる。コスト面の優位性もありそうで、ビジネス環境の変化が激しく賃金水準がハイペースであがる今の時代と親和的な採用手法であると言えよう。
今後は生産年齢人口が一層減少していく未来が待っており、若手採用は一段と厳しさを増していく。であれば、企業は様々さまざまな属性に採用の可能性を見出しながら、幅広い文脈で人材を確保しようとする視点が大事になるだろう。
一つの組織に限定しないキャリア形成は昔に比べて一般的になっているし、初職の仕事を数年で辞めることは必ずしも「あきらめ」とは限らない。戦略的撤退や飛躍への挑戦の可能性もある。「とりあえず3年」のような固定概念で、はじめから採用候補から外すようなことがあればもったいない。人にはそれぞれのキャリアがあり、固有の強みと特性がある。
新卒とか中途とか、学力とか経験年数とか、そのような固定的な考え方で採用を仕切るのではなく、あらゆる選択肢と手段で採用を捉えることが今後企業にとって重要ではないだろうか。人そのものに目を向けながら、人材を見極め、育てていく視点がより一層求められると考える。
キャリアリサーチLab研究員 宮本 祥太