教員の働き方改革にフォーカスしたシリーズ企画第3回は、スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)の配置を中心とした”チーム学校”としての取組を進めている千葉市教育委員会にインタビュー。同教育委員会の取組は、文部科学省「令和3年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」において好事例として紹介されている。
スクール・サポート・スタッフに対し各学校が有効にマネジメントできるよう、仕事を依頼する際に使用する「業務依頼書」のひな型や、学校やスクール・サポート・スタッフ向けに業務内容等を記載した「業務の手引き」を作成したとのこと。
本稿では、千葉市教育委員会事務局 教育総務部 教育職員課で課長を務める川島政美さんに、この取組を始めて数年経った変化やその後の成果などを伺った。
スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)とは
スクール・サポート・スタッフとは、教員の事務作業をサポートする仕事を担う人のことで、教員免許などの資格は不要である。文部科学省の資料によると、業務内容は以下があげられている。
- 学習プリントや家庭への配布文書等の各種資料の印刷
- 採点業務の補助
- 来客対応や電話対応
- 学校行事や式典等の準備補助
- 各種データの入力、集計
- 掲示物の張替
- 各種資料の整理等の作業 など
その他、各学校長が指示した内容を行うが、児童生徒への指導支援はできない。教員の業務負荷軽減のため、各自治体での導入が進められている。
以下のインタビューを通して、スクール・サポート・スタッフ導入後の成果などを聞いた。
時間をかけた段階的な取組で長時間労働を改善
質問:教員の働き方改革が話題となっておりますが、千葉市の教員の方々の働き方においてはどのような課題がありましたか。
川島:全国的な傾向と同じく、千葉市でも時間外在校等時間が多いこと、業務の負担が多いこと等が課題としてありました。そこで千葉市では、平成23年度以降、児童生徒に向き合う時間を確保するための業務改善に向けて「学校現場の勤務負担 軽減検討会」を立ち上げました。
検討会では、会議や行事の削減、事務の効率化、各種非常勤職員や支援員の配置、学校徴収金の公会計化(※1)などを進めてきました。
※1: 給食費など学校での徴収金を地方公共団体の会計に組み入れ、徴収・管理を効率化する取組のこと
勤務負担軽減に一定の効果は見られたものの、教職員の時間外在校等時間の削減には結びついているとは言い難い状況にあり、さらに改善をするべく平成31年1月に取組の方向性を示した「学校における働き方改革プラン」を策定しました。令和3年度末にプランを改編し、さらに3年間の実施期間を経て、令和6年度末に2度目の改編を行い、令和7年度から令和9年度までのプランとして取組を実施しています。
また、新たな教育的課題への対応も必要になっていると感じています。具体的には、不登校児童生徒や特別な支援が必要な児童生徒の増加、保護者の価値観の多様化、一人一台端末タブレットの導入と効果的な活用等があげられます。これらは複雑化・多様化する「学校に求められる役割」であると受け止め、取組を進めています。
質問:教職員の時間外在校等時間がなかなか減らなかったとのことですが、具体的な数値を教えてください。
川島:全校種における時間外在校等時間は平成29年度の平均が49時間、平成30年度は54時間であり、長時間勤務の教職員が多い実態でした。小学校・中学校それぞれの年度ごとの時間外在校等時間の推移は図の通りです。
千葉市立の小学校・中学校 月当たりの平均時間外在校等時間の推移/千葉市教育委員会提供データをもとにマイナビ作成
スクール・サポート・スタッフの導入-依頼内容や依頼方法を工夫
導入の背景
質問:スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)の導入について伺います。この取組を始めた背景を教えてください。
川島:平成30年度から文部科学省「補習等のための指導員等派遣事業」により配置支援が実施されました。新型コロナウイルス感染症対応のための令和2年度補正予算により、大規模追加配置が行われ、令和3年度、令和4年度とさらに拡充されました。このことから、国をあげて推進していることがわかります。令和3年には、学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行により、教員業務支援員が制度化されています。
千葉市では、教員業務支援員事業の目的を「教職員の事務的な業務の一部を担うことで、教職員の業務量を軽減し、教職員が子供の学びの保障に注力できるようにする」「働き方改革の成果指標に基づき、教職員の勤務負担軽減を図る」とし、平成30年、モデル校3校に教員業務支援員の配置を行いました。令和2年度以降、配置を拡充し、令和7年度は市立学校の全校に配置を行っています。
モデル校の実施で見えた課題と成功例
質問:モデル校3校への配置で見えた課題や、それに対してどのように対応したかを教えてください。
川島:初めはどのような業務をしたらよいか、またどのように業務をお願いしていったらよいかがお互いに把握しきれていませんでした。そこで、「スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)業務の手引き」マニュアルを作成しました。
モデル校では、スクール・サポート・スタッフに印刷や配布物の仕分けをお願いすることで、担任が児童生徒とともに過ごす時間が増え、またノートの点検をしっかり行うことができるといった成果がありました。教職員へのアンケート調査からも、印刷や配布物の仕分け等の負担軽減に効果があることがわかっています。
また、業務の依頼の仕方については、依頼書を作成し、スクール・サポート・スタッフに依頼をすることで、いつまでにどのようなことを依頼したいかがわかり、優先順位をつけてサポートができるようにしています。
これらの成功例をマニュアルにも記載することで、モデル校以外の学校も取り組みやすいようにしました。
導入により得られた効果
質問:スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)の導入によりどのような成果がみられましたか。
川島:時間外在校等時間の削減において成果が見られています。こちらは上述と同じ図ですが、全校種(高等学校、特別支援学校含む)で少しずつ削減が進み、令和5年度は平均37時間となりました。
千葉市立の小学校・中学校 月当たりの平均時間外在校等時間の推移/千葉市教育委員会提供データをもとにマイナビ作成
全教職員を対象にした「学校における働き方改革アンケート調査」では、負担軽減につながった取組としてもっとも多かったのが「スクール・サポート・スタッフ」の配置でした。配置してほしい専門スタッフを聞いた設問では、小学校で第2位(第1位は少しの差ですが専科非常勤講師)、中学校では第1位がスクール・サポート・スタッフという結果であり、学校運営になくてはならない存在として、今後も全校配置を維持してほしいという声があがっています。
また別の調査では、スクール・サポート・スタッフに業務をお願いすることで、児童生徒・保護者・地域の対応時間が確保されていることがわかりました。ある管理職から「自らの仕事と依頼できる仕事の線引きが明確になり、業務効率化につながっていると感じている。その分、先生方とのコミュニケーションや保護者・児童対応にあてることができている」という意見がありました。
一方で新たな課題も
川島:学校の規模はそれぞれ異なりますので、児童生徒数が多ければ、その分印刷業務等の業務も増えていきます。教職員数が多い学校においてスクール・サポート・スタッフが一人では、「忙しそうにしていて業務を頼みにくいこともある」という意見もあり、大規模校には複数配置を進めてほしいという声が寄せられています。
また、学校の規模が大きくなるほど、どこまでの業務を頼んでよいのかわからない、依頼書作成の手間があり突発的に頼みにくいなど運用の仕方に課題が残ります。学校現場からは頼める業務の範囲や業務時間、人数を増やしてほしいという声が多いですね。
業務効率化、環境改善などさまざまな視点から幅広い取組を実施
質問:スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)の導入以外で、働き方改革のためにされている取組はありますか。
川島:「学校における働き方改革プラン」では、実行プログラムとして5つの柱をもとに取組を進めています。5つの柱は、「柱1 業務精選」「柱2 外部人材の活用」「柱3 負担軽減・業務の効率化」「柱4 働く環境の改善」「柱5 意識改革」とし、さまざまな取組を進めています。
- 調査等文書削減プロジェクト
- 学校家庭間連絡ツールの活用促進
- ICTの環境整備・部活動の段階的な地域展開
- 教職員のメンタルヘルス対策、保護者や地域の啓発
- 働き方改革の好事例の発信
- 自動応答電話の設置
- 専科指導教員の配置
- 正規職員による休暇等補助職員の配置
- セーフティウォッチャー制度による登下校の見守り など
これらの取組のなかには、地域や家庭の方にご理解やご協力をいただく必要があるものもあります。たとえば学校家庭間連絡ツールの活用については、導入前は各家庭から学校に電話というかたちで朝の欠席連絡をしていました。
電話回線は限られており、話し中でつながりにくいという負担も。現在は、すべての学校で連絡ツールを導入し、入学時や転入時にツールの活用をお願いしています。緊急な連絡を一斉に家庭へ伝えたり、ツール利用により手紙を配る必要がなくなったりというメリットもあります。
教職員の心身の健康を守り、チーム学校として児童生徒と向き合う
質問:最後に、千葉市教育委員会として今後注力していきたいことや取り組みたいことを教えてください。
川島:前述したように、千葉市では「学校における働き方改革プラン」を策定しています。「教職員の一人一人の心身の健康保持を実現し、いきいきと教育活動が行えるようにする」ことを目標に、令和7年度から令和9年度までの3か年計画で5つの実行プランを進めていきます。
給特法が改正され、新たな「学校と教師の業務の3分類」が示されるなどの動きを受け、改編したプランの検証を進めながら、目標の実現を目指します。時間外在校等時間の削減のみにとらわれることなく、チーム学校として児童生徒と向き合うために、教職員の健康保持の実現に向けた取組を進めていきたいと考えております。
そのためには、教職員の質の向上、地域・保護者の理解促進等、学校・家庭・地域・行政の連携を一層深めてまいります。
<編集後記>
スクール・サポート・スタッフの導入を中心に、幅広い取組で教員の働き方改革を行っている千葉市教育委員会へのインタビュー。教員の方々の長時間労働や業務負荷の重さが長年課題視されていますが、何度も方向性を見直して改善に取り組まれてきた結果、確かな効果が出ていることがよくわかりました。
また、現場から「もっと長時間いてほしい」などの声が挙がるほど、スクール・サポート・スタッフが学校運営にとって必要不可欠な存在であることも印象的でした。