キャリア形成の発展プロセスと入社後の活躍に向けて(第8回学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード開催報告)

宮地太郎
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
TARO MIYAJI

学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワードとは?

学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード表彰式受賞法人集合写真

2025年で8回目の開催となった「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」は学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシップやキャリア形成支援に係る取り組みを表彰するアワードだ。

学生の職業観涵養を促進する効果的な取り組みを周知することで、プログラムの質的向上および実施企業数の増加を実現し、学生と企業のより精度の高いマッチングを目指している。

今回の第8回の大きなトピックスとして、前回と同等の応募条件となるインターンシップもしくは就業体験を含んだプログラムの応募コースである「インターンシップ/仕事体験部門コース(就業体験型)」に加えて、主に大学低学年次(大学1年生・2年生)を対象として実施されるプログラムの応募コースとなる「低学年向けキャリアプログラムコース」が新設された。

第8回の結果

インターンシップ/仕事体験コース(就業体験型)

「大賞」に輝いたのはヒルトングループの「Travel with Purpose – あなたのキャリアと旅をする5日間 -」、「文部科学大臣賞」に三条市立大学の「BE INNOVATIVE TECHNOLOGIST~地場で学ぶ産学連携実習~」、「地方創生賞」には信州大学/富山大学/金沢大学の「ローカル越境プログラム『ENGINEインターンシップ』」。

「優秀賞」に鹿児島大学/日本航空株式会社/日本エアコミューター株式会社、株式会社DAY TO LIFE、名古屋商科大学、株式会社ニトリホールディングスが、「入賞」には大阪シティ信用金庫、株式会社静岡銀行、東京海上ディーアール株式会社、名古屋産業大学 が選出された。

低学年向けキャリアプログラムコース

「低学年キャリアデザイン賞」に選出されたのは2プログラム。株式会社エービーシー商会の「What types of job does the KAISHA consist of?~会社はどのような仕事で構成されているのか~」と地域志向型インターンシップ ネットワークinいわて/横浜国立大学/駿河台大学/岩手大学の「地域×キャリアデザインプログラムinいわて」の合同プログラムが選出された。

第1回から選考委員を務める法政大学 キャリアデザイン学部 梅崎修教授は審査講評の中で以下のように述べた。

「今回の第8回では、低学年向けキャリアプログラムの表彰が新たに始まったことが大きな変化として挙げられ、『低学年部キャリアプログラムというのは 一体どういう内容であるべきなのか』と『3年次からのプログラムというのは本来どのようにあるべきなのか』が重要なテーマとして浮かび上がった。この両者の関係性からは、プログラムごとの独自性を鑑みて、キャリア発達に応じた適切なプログラム提供がなされたものが優れたプログラムとして評価されている。」

開催報告

実行委員長の久保潤一郎氏からは開催報告が行われた。前年のキャリアデザインカンファレンス内で「低学年からのキャリアデザインへの取り組みが学生の学習意欲の向上に寄与する」という可能性が示唆されたことを受け、低学年向けキャリアプログラムコースプログラムを新設、低学年向けの特徴的なプログラムを表彰し、効果的なキャリア形成支援の事例として広く発信することを目指すと宣言した。

開催報告 実行委員長 久保 潤一郎氏
開催報告 実行委員長 久保 潤一郎氏

続いて応募数に関しては今回の第8回ではインターンシップ・仕事体験向けコースで応募プログラム数1,077(企業1,005・大学66・地方自治体6)。低学年キャリアプログラムコースで応募プログラム数128(企業62・大学66・地方自治体3)という結果となった。

法人規模別に見ると5,000人以上の大企業からの応募が前年比で約122%。学校団体からの応募も約120%と、より多様な企業・学校・団体からの応募があった。エリア別の応募状況は、特に地方での取り組みが活発化しており、東京以外からの応募が全体の77.4%を占めるなど、全国各地でのキャリア支援の広がりがみられると語った。

キャリア形成の発展プロセスと入社後の活躍に向けて

「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」ではカンファレンスを開催し規範となるべきプログラムを表彰・周知すると共に、学生アンケートの調査結果・分析をもとにインターンシップやキャリア形成支援の持つ役割と未来についての考察と示唆も行っている。

分析を行っている実践女子大学 人間社会学部 初見康行准教授は、前年度の調査結果より、低学年のキャリア形成活動の意味・効果として在学中の「学習意欲の向上」が示唆されるとし、今回はより踏み込んで、「学習意欲の向上」によって何が起きるのか?をテーマに「キャリア形成の発展プロセス(前半部)」と「入社後の活躍に向けて(後半部)」について考察を発表した。

実践女子大学 人間社会学部 初見康行准教授
実践女子大学 人間社会学部 初見康行准教授

キャリア形成の発展プロセス(前半部)

「学習意欲の向上」によって何が起きるのか?学習意欲の向上は一過性のものなのか?大学生活に対して中長期的な影響があるのか?という疑問に対し、「学習意欲の向上」と9か月後の追跡調査より「学習態度の向上」の関係を分析したところ、「学習意欲の向上」によってその後の「学習態度が向上する」ことがわかった。

図 「学習意欲の向上」と9か月後の追跡調査より「学習態度の向上」の関係
「学習意欲の向上」と9か月後の追跡調査より「学習態度の向上」の関係

さらに一歩進んで、「学習態度の向上」によって何が起こるのか?という新たな疑問に対しては「学習態度の向上」によって「大学の学習と職業選択の一貫性が強くなる」ということがわかったと続ける。

最後に疑問として、大学の学習と職業選択の一貫性が高まることで、何が起きるのか?に対し、「社会人として活躍する準備がより整っていく」、企業の目線であれば「働く意欲が高く、大学の学びと仕事内容がしっかり結びついた学生が入社してくる可能性が高まる」と語り、大学の学びと職業選択の結びつきが強まることは学生・企業・大学にとって有意義な結果をもたらすというキャリア発展のプロセスを発表した。

図 キャリア発展のプロセス
キャリア発展のプロセス

さらには本プロセスをいつから始めた方が良いのか?に対しては「低学年から開始した方が学生生活全体への波及効果が大きい可能性がある」とし、学生の興味に合わせた履修・学科選択・ゼミ選択など幅広い学習活動に影響をおよぼす可能性があると前半部をまとめた。

図 前半部まとめ
前半部まとめ

入社後の活躍に向けて(後半部)

「入社後の活躍に向けて(後半部)」では卒業後の活躍に向けて、学生が在学中のキャリア形成活動で行っていくべきことは?早期離職の防止、ワーク・エンゲージメント向上に向けて企業・大学がキャリア形成活動で支援すべき内容とは?の疑問に対して解説を行った。

社会人1年目を対象とした働く目的の「数」とワーク・エンゲージメントの関係に関する調査では、働く目的の「数」とワーク・エンゲージメントの向上には関連があることが示唆され、全世代向けの調査(20代~50代の大卒正社員)でも、働く目的の「数」とワーク・エンゲージメントの関係が確認された。

さらに重要なポイントとして、「働く目的(仕事観)」の中に「お金を得る」が強く入っているかどうかであり、以下のようにまとめた。

図 働く目的の「数」とワーク・エンゲージメントの関係
働く目的とワーク・エンゲージメントの関係のポイント

以上の結果を踏まえた上で、キャリア形成活動の発展に向けた実務的な示唆とは?という疑問に対し、キャリア形成活動を通して学生の働く目的を重層化するということをハンバーガーにたとえ、提案した。

図 イメージはハンバーガー
イメージはハンバーガー

学生が多様な働く目的を見つけ、意味付けていくことを企業・大学がサポートしていくこと、ポイントは1段目の「お金を得る」を否定せずに働く目的を積み重ねていくこと。

さらに企業・大学は「働く目的の重層化」をどのような方法でサポートできるのか?という疑問に対し、働く目的には万人にとっての共通部分と人によって異なる部分がある前提に立ち、特定の目的を強要するやり方(ティーチング)は上手くいかない。

ハンバーガーで言えば具材を企業・大学が指定してはいけない、働く目的は人によって正解が異なることを前提として、コーチングによる「対話」を通して各人の働く目的を「引き出し・意味付けていく」ことを提案した。

さいごに学生の「働く目的」の形成を企業・大学が支援していくことが非常に重要なポイントであると訴え、正解への道筋は多様であるからこそ、アワードで表彰されるようなフラッグシップとなるキャリアデザインプログラムの共有は重要であると締めくくった。

図 コーチングによる「対話」を通して各人の働く目的を「引き出し・意味付けていく」ことを提案
働く目的は人によって正解が異なることを前提として

最後に

「第8回キャリアデザインカンファレンス」の様子は、HP(https://internship-award.jp/)でアーカイブを公開しており、本コラムで紹介した、久保潤一郎実行委員長の開催報告、法政大学 キャリアデザイン学部教授 梅崎修氏の審査講評、実践女子大学 人間社会学部准教授 初見 康行氏のキーノートスピーチに加えて、学生選考委員会メンバーによるパネルディスカッションもあり、本アワードで大切にしている学生の視点も垣間見ることができる。

また表彰を受けた大賞や文部科学大臣賞、地方創生賞、低学年キャリアデザイン賞の受賞プレゼンテーションを視聴することができる。受賞法人のプログラムに対する熱意が伝わる素晴らしい内容なので是非ご覧いただきたい。

キャリアリサーチLab主任研究員 宮地 太郎

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