休憩の取り方で仕事の生産性が上がる、とよく言われる。人は長時間同じ行動を取ると注意力が下がったり、筋肉が疲れたりするため、適切な休憩が必要なことは誰もが知ることだろう。
本稿では、そんな「休憩と生産性」の関係について、マイナビが行った調査や先行研究から整理する。効果的な休憩の取り方でパフォーマンス向上を目指したい人や、自社の休憩制度を考えたい企業担当者はぜひ読んでみてほしい。
マイナビ調査から見る休憩の傾向
まず、マイナビが行った「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」において、仕事のやり方や休憩時間について聞いた結果を紹介する。
休憩を十分に取得できていると思うか
「職場で定められた休憩を十分に取得できているか」については、「十分に取得できていると思う」が49.1%、「十分に取得できていないと思う」が18.6%であった。
この結果と職場環境の柔軟性、つまり「休憩に入る時間や、休憩を取る場所を柔軟に決められるかどうか」を掛け合わせると、休憩タイミングなどを柔軟に自分で決められる環境で働いている人は十分に休めており、反対に休憩に関する柔軟性がない環境で働いている人は現状の休憩に満足していない傾向にあった。【図1】
【図1】「職場環境の柔軟性」×「定められた休憩を十分に取得できていると思うか」/「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」
※「全体」の数値には「定められた休憩を十分に取得できているか(休憩がとりやすいか)」という問いに対して「どちらともいえない」と回答した人の結果が含まれている
休憩と仕事への満足度・会社への満足度
また、調査では「仕事への満足度」「会社への満足度」も聞いており、前出の「職場で定められた休憩を十分に取得できているか」の結果も掛け合わせて見てみる。【図2】【図3】
【図2】「定められた休憩を十分に取得できていると思うか」×「仕事への満足度」/「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」
※「全体」の数値には「定められた休憩を十分に取得できているか(休憩がとりやすいか)」という問いに対して「どちらともいえない」と回答した人の結果が含まれている
【図3】「定められた休憩を十分に取得できていると思うか」×「会社への満足度」/「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」
※「全体」の数値には「定められた休憩を十分に取得できているか(休憩がとりやすいか)」という問いに対して「どちらともいえない」と回答した人の結果が含まれている
まず、全体の仕事に満足している割合(満足度が高い、やや満足度が高いの合計)は36.5%、会社に満足している割合(満足度が高い、やや満足度が高いの合計)は29.6%である。
定められた休憩を十分に取得できている人は、仕事に満足している割合は45.0%、会社に満足している割合は39.5%と、全体平均よりも8~10pt程度高い結果となった。
続いて、「仕事への満足度」「会社への満足度」と、「職場環境の柔軟性」の結果も見る。【図4】【図5】
【図4】「職場環境の柔軟性」×「仕事への満足度」/「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」
※「全体」の数値には「休憩に対し職場環境の柔軟性があるか」という問いに対して「どちらともいえない」と回答した人の結果が含まれている
【図5】「職場環境の柔軟性」×「会社への満足度」/「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」
※「全体」の数値には「休憩に対し職場環境の柔軟性があるか」という問いに対して「どちらともいえない」と回答した人の結果が含まれている
休憩が取りやすい(柔軟性がある)と思っている人は、仕事に満足している割合は46.7%、会社に満足している割合は39.9%と、こちらも全体平均よりも10pt程度高い結果となった。
反対に、休憩が取りにくい(柔軟性がない)と思っている人は、仕事に満足している割合は25.0%、会社に満足している割合は19.5%となり、全体平均よりも10~11pt程度低い結果が出ている。
これらの結果から、休憩をしっかり取得できること、休憩に関して職場に柔軟性があることは、仕事や会社への満足度を上げることができるといえるだろう。
休憩時間と休憩の取り方
次に、平均して1日何分ほど職場で定められた休憩を取得できているかについては、「31~60分」と回答した人が70.1%おり、平均で57.9分間という結果であった。
この結果と前出の職場環境の柔軟性で見ると、休憩時間が61分以上の人、51~60分の人は半数以上が「柔軟性がある」と回答した。
ただし、休憩時間については業種、職種によりばらつきがあり、上記の傾向が一概にあてはまるとも限らない点に注意したい。
「正社員のワークライフ・インテグレーション調査」では、ほかにも休憩に関する設問がある。休憩の取り方については、全体で「ひとりで過ごしていることが多い」人が57.1%、「誰かと過ごしていることが多い」人が16.3%という結果であった。
休憩と生産性に関する先行研究
ここからは、休憩と生産性についてどのような研究がなされてきたのか、先行研究を確認する。
日本国内での先行研究―適切な休憩のタイミングと長さ
仕事中の休憩についての研究は数多くなされているが、なかでも近年のものを見てみると、稲葉ら(2015)は数理モデルを用いて、休憩には効率を高める効果がある一方で、長すぎる・頻繁すぎる休憩は逆効果になることを示し、仕事効率を最大化する休憩のタイミングと長さが存在すると指摘した。
三木ら(2018)の実験では、休憩中の過ごし方によって作業パフォーマンスが変化することが示され、特に「寝る」「スマートフォンを見る」「タバコを吸う」といった休憩行動がパフォーマンス向上効果を示すことが明らかになった。
荻野(2020)は、デスクワーク中の休憩に軽い運動を取り入れることで、校正課題(出版などで行われる印刷部などの文章中の誤りを修正する「校正」の課題)の正答率が向上する傾向が見られ、短時間の運動が集中力維持に役立つ可能性を示した。
ほかにも、日本建築学会環境系論文集に掲載された党・陳・田辺(2023)の研究では、休憩時間や光環境の違いが作業成績や疲労感に与える影響を検証し、適切な休憩が知的生産性向上に寄与する可能性が示されていると報告された。
これらの研究から、適切なタイミング、長さの休憩を取ることにより仕事の生産性向上につながるといえる。
海外での先行研究―休憩の量から質・設計へ
休憩と仕事の生産性については、海外でも多数の研究がなされている。
1998年にMeijman & Mulderにより提唱された「Effort–Recovery Model」は、労働によって消耗した心理的・身体的リソースは、適切な休憩やオフ時間によって回復するという考え方だ。このモデルは、ストレスと健康を関連付けるワーク・エンゲイジメントなどの文脈でよく引用され、労働衛生の観点から休憩の重要性を説明する際に使われる。
近年海外でよく研究されているのがマイクロブレイクで、30秒〜数分程度の極めて短い休憩を、作業の合間に頻繁に挟む方法である。マイクロブレイクの有効性については、1990年代からすでに研究が行われており、Henningらの研究では、数分程度の短い休憩を頻繁に挟んでも生産性は低下せず、むしろ疲労の蓄積を防ぐことが示されている(Henning et al., 1997, 1999)。
そして、Albulescu et al.ら(2022)による研究では、ストレッチや散歩などの数分程度の休憩は、心身の疲労を軽減し、その後の業務のエネルギー(活力)とパフォーマンスを向上させることを明らかにしている。
ほかにも、過去80本以上の研究を包括的にレビューしたLyubykh et al.(2022)は、仕事中の休憩がウェルビーイングとパフォーマンスに及ぼす影響を体系的に整理し、休憩の効果は時間や形式よりも、主観的に回復的であるかどうかに大きく依存すると結論づけた。
休憩と生産性については海外で多くの研究者によって研究されており、近年では「休憩の量」から「休憩の質・設計」へ転換している傾向が見られる。
休憩の取り方―具体的なテクニック
ここからは、具体的な休憩のテクニックについて紹介する。
ポモドーロテクニック
ポモドーロテクニックは、1980年代後半にイタリア人のフランチェスコ・シリロが提唱した時間管理法である。大学生時代、集中力が続かないことに悩んでいたシリロが、トマト型のキッチンタイマー(イタリア語で「ポモドーロ」)を使って学習時間を区切ったことが起源とされている。
方法はシンプルで、25分間の集中作業+5分間の休憩を1セットとし、これを繰り返す。4セット終了後には15〜30分程度の長めの休憩を取る、というものだ。
このテクニックの特徴は、「集中力が続く時間は意外と短い」という前提に立っている点にある。タスクを25分という小さな単位に分割することで、着手の心理的ハードルを下げ、集中と休憩のリズムを意識的につくることができる。
心理学・認知科学の分野では、人間が思考や判断・行動を行う際に消費する「脳のエネルギー(認知リソース)」である”注意資源”は時間とともに消耗し、適切な休憩で回復することが知られている。ポモドーロテクニックはこの特性に合致した実践的な方法といえる。特に、締め切りのある作業や単独で進める業務、先延ばししがちなタスクとの相性がよい。
52/17ルール
52/17ルールは、生産性測定ツールを提供するDeskTime社が2014年に公表したデータ分析をきっかけに広まった休憩法である。同社ツールを利用する数千人規模のデータを解析し、生産性が高い上位ユーザーの多くが、約52分作業し、約17分休憩するというリズムで働いていることを発見した。
この方法では、前述のポモドーロテクニックよりも長めの集中時間を確保する点が特徴となる。52分間連続して作業することで、単純作業だけでなく、分析や執筆など「思考が深まるまでに時間がかかる仕事」にも対応しやすい。
ここで重要なのが、17分の休憩を「完全な非作業時間」として使うことだ。DeskTime社の報告では、生産性が高い人ほど、休憩中にメール確認や軽作業を行わず、歩く・離席する・頭を空にするなど、仕事から距離を置いている傾向が見られた。
このルールは、脳の覚醒と疲労が一定周期で上下するという生理学的特性とも合致しており、持続的な集中力を保ちたい知識労働者に向いている。
マイクロブレイク
前述したように、マイクロブレイクとは、30秒〜数分程度の極めて短い休憩を作業の合間に頻繁に挟む方法である。人間工学や労働心理学の研究から有効性が示され、概念として広まってきた。
研究では、短時間であっても作業から意識を切り離す時間を取ることで、疲労感や集中力低下を軽減できることが報告されている。たとえば、1〜2分立ち上がって身体を動かす、目を閉じて深呼吸する、視線を画面から外すといった行為が該当する。
マイクロブレイクの利点は、「忙しくても実行しやすい」点にある。長い休憩を取りづらい職場環境でも導入しやすく、特に長時間のデスクワークや単調作業による疲労蓄積を防ぐ手段として有効だ。
アクティブレスト
アクティブレストは、「休憩=何もしない」という発想を転換し、軽く身体を動かすことで回復を促す休憩法である。「積極的休養」とも呼ばれ、スポーツ科学や産業保健の分野で用いられてきた考え方であり、近年はオフィスワークにも応用されている。
具体的には、軽いストレッチ、短時間の散歩、肩回しや体操などが該当する。長時間座り続けることで血流が低下すると、脳への酸素供給も滞り、集中力の低下や倦怠感につながる。WHOの「身体活動・座位行動ガイドライン」でも、座りっぱなしは健康リスクを高めることが指摘されている。
アクティブレストは、この状態をリセットする役割を果たし、短時間の軽運動を挟むことで、身体的不快感の軽減だけでなく、主観的な集中力や作業効率が維持されやすくなる。特に、身体のこわばりや午後の眠気を感じやすい人に向いている休憩法といえる。
コーヒーナップ
コーヒーナップは、コーヒーを飲んだ直後に15〜20分の仮眠を取る休憩法である。さまざまな研究報告を通じて、実用的な休憩法として関心を集めた。
この方法は、カフェインの作用機序を利用している。カフェインは覚醒作用を持つが、摂取してから脳に作用するまで20〜30分程度かかる。一方、短時間の仮眠は脳内に蓄積したアデノシン(眠気の原因物質)を減少させる。
そのため、「仮眠を取ることでアデノシンを減らし、目覚めるタイミングでカフェインが効き始める」という相乗効果が起こり、通常の仮眠よりも覚醒度が高まりやすいとされている。
英国ラフバラ大学のジム・ホーンとルイーズ・レイナーによる実験研究では、カフェインのみ、仮眠のみの場合よりも、コーヒーナップの方が注意力や作業パフォーマンスを維持しやすいという結果が報告されている。ただし、夕方以降に行うと夜間睡眠に影響する可能性があるため、実施は午後早めまでが望ましい。
効果的な休憩取得でパフォーマンス向上を
本コラムでは、仕事の生産性と休憩の関係を、マイナビ調査や先行研究から見てきた。これまで研究されてきた具体的な休憩方法もさまざまあり、効果的な休憩の取り方で仕事の生産性向上を目指せることは明らかだろう。
効果的な休憩は、個人の工夫だけでなく、制度として整備する必要もありそうだ。そこで「休憩と生産性」をテーマにしたシリーズとして、今後は実際に休憩によって仕事のパフォーマンスを向上させている企業にインタビューを行う。企業の担当者は、従業員の休憩について改めて検討してみてほしい。
<参考文献>
稲葉 優太・谷口 歩・中益 朗子(2015)「仕事効率を最大にする休憩のタイミングと長さ」
数理解析研究所講究録, 1966, 18–22.
三木 隆裕・寺田 努・前田 俊幸・唐澤 鵬翔・安達 淳・塚本 昌彦(2018)「休憩時間の過ごし方が作業パフォーマンスに及ぼす影響の調査」
電子情報通信学会技術研究報告, 117(451), 17–24.
荻野 隼(2020)「休憩時の運動が生体情報と集中力に及ぼす影響」
第36回ファジィシステムシンポジウム講演論文集, 35–36.
党 姚澤・陳 佳樟・田辺 新一(2023)「自席に短時間休憩が知的生産性に与える影響に関する研究」
日本建築学会環境系論文集, 88(809), 619–627.
Henning, R. A., Jacques, P., Kissel, G. V., Sullivan, A. B., & Alteras-Webb, S. M. (1997). Frequent short rest breaks from computer work: Effects on productivity and well‑being at two field sites.
Ergonomics, 40(1), 78–91.
Henning, R. A., Sauter, S. L., Salvendy, G., & Krieg, E. F. (1999). Microbreak length, performance, and stress in a data entry task.
Ergonomics, 42(2), 365–381.
Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). “Give me a break!” A systematic review and meta‑analysis on the efficacy of micro‑breaks for increasing well‑being and performance.
PLOS ONE, 17(8), e0272460.
Lyubykh, Z., Gulseren, D., Premji, Z., Wingate, T. G., Deng, C., Bélanger, L. J., & Turner, N. (2022).Role of work breaks in well-being and performance: A systematic review and future research agenda.
Journal of Occupational Health Psychology.
Horne, J. A., & Reyner, L. A. (1997).Suppression of sleepiness in drivers: combination of caffeine with a short nap.
Psychophysiology, 34(6), 721–725.