“誰かを喜ばせたい”が原動力!絵画コンクールが映し出す子どもたちのキャリア観

東郷 こずえ
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
KOZUE TOGO

小学生将来なりたい職業コンクールとは

全国の小学生を対象に初開催された「マイナビ小学生将来なりたい職業コンクール 」は、絵と文章で「何のためにはたらくか」を表現する企画であり 、3,283件の応募から入賞作品とランキングが示された。

結果は、子どもたちが身近な生活の体験、憧れの人物、そして他者への思いやりを手がかりに、職業を意味づけていることを浮き彫りにした。本稿では、ランキングの傾向や「なりたい職業」を選んだ理由から、子どもたちの夢の“原動力” を探っていきたい。

小学生将来なりたい職業ランキングの結果

小学生の将来なりたい職業ランキングは、募集テーマとして「みなさんは何のためにはたらきたいと考えますか。将来やってみたいおしごとを絵と文章で表現してください。」を提示し、その職業を絵で表現したうえ、職業名とその理由を記入してもらった結果に基づき、職業名をランキング形式で示したものである。【表1】

【表1】マイナビ小学生将来なりたい職業ランキング2025(トップ10)
【表1】マイナビ小学生将来なりたい職業ランキング2025(トップ10)

ランキング上位には、パティシエ・パティシエール、サッカー選手・監督など、野球選手・監督などが並び、保育士、美容師、警察官、教師、イラストレーター、飲食店員、看護師が続いた。ここから三つの特徴が読み取れる。

第一に食に関する職業の強さである。家庭の記念日や手作りの菓子など、日常的な体験が家族を代表とした“誰か”の笑顔に結びつく経験として記憶され、職業への憧れに転化している。

第二に人を助ける仕事への志向である。消防士や医師、獣医師、自衛官など、困っている人や動物への援助を通じて社会に役立ちたいという気持ちが表れている。

第三にスポーツ選手への憧れである。家族や友だちと共有したスポーツ体験、メディアで目にするトップアスリートの姿が、感動を生み、職業動機を感情面から強く支えている。

これらの特徴の根底には、「誰かを喜ばせたい」「役に立ちたい」という価値観が一貫して存在しているようだ。

子どもたちの「この職業になりたい」理由

ここからは実際に「この職業になりたい理由」として書かれたコメントを確認していく。

【なりたい職業】 「パティシエ」(小2)
「私は大きくなったらパティシエになりたいです。それは、みんなにおいしいケーキをたくさんたべてしあわせになってほしいからです。私の弟がおたんじょう日のときに、お母さんとフルーツがたくさん入ったケーキをつくったら弟がよろこんでくれてうれしかったです。私がひらくケーキやさんでは、おきゃくさんのこのみのものをつかったケーキや、このみの形をしたケーキなど、みんながよろこぶケーキをつくりたいです。」

弟のためにケーキを作った経験を通じて、「自分がしたことで喜んでもらえた」という思い出から、家族以外のほかの人にも喜んでもらえる職業として「パティシエ・パティシエール」を選んだようだ。


【なりたい職業】「だいくさん」(小1)
「ぼくは、ものづくりがだいすきです。だからだいくさんになって、いつかおばあちゃんのために大きなおうちをたてます。『けん玉こうむてん』という名まえです。3かいだての大きなおうちには、エレベーターもついていて、おばあちゃんのためにきつけのおへやと、あみものするおへやもつくります。おばあちゃんがよろこんでくれますように。

「ものづくり」が大好きだという気持ちと、家族(祖母)に喜んでもらいたいという気持ちの両方を満たすことができる仕事ということで「大工」が選ばれている。


【なりたい職業】「メジャーでかつやくする野球せんしゅ」(小3)
「大たにせんしゅみたいにホームランをうってかつやくして、みんなをよろこばせたり、みんなをおどろかせるほどの、ホームランをうてるせんしゅになりたいです。そして、かつやくできる野球チームを作りたいと思いました。大たにさんは、まいかいテレビでは、ホームランをうっているのでわたしもまけないようにどりょくしてホームランをうちたいです。大たにさんをこすメジャーでかつやくする、じょせいはつの野球せんしゅになりたいです。」

メジャーリーガーの大谷選手へのあこがれ(好きという気持ち)とそのプレーによって他者を喜ばせたいという気持ちから「メジャーで活躍する野球選手」が選ばれている。女子児童ということもあり、女性初の「プロ野球選手」という点にも強いあこがれを持っているようだ。


【なりたい職業】「動物たちを元気にするじゅう医」(小4)
「私の家には犬がいます。お世話は大変だけれど、とてもかわいくて、大好きな家族です。いっしょにいると楽しいし、いつまでも元気でいてほしいです。私は動物が好きなので、本当はもっとたくさんの動物がいたらいいなと思います。そして、動物たちと楽しく過ごしたいです。だから大人になったらじゅう医になって、動物たちを元気にしたいと思います。動物たちが元気になれば、私もうれしいし、元気になれます。」

家族として大切にしている飼い犬のお世話を通じて愛情をはぐくむなかで、飼い犬以外の動物に対しても「元気にしたい」という気持ちが芽生え、「獣医師」が選ばれている。


【なりたい職業】「海上保安官(飛行士)」(小6)
私のなりたい職業は、海上保安官です。飛行士(パイロット)としてヘリコプターを操縦し、海で救助を待つ人を助けに行きたい、と思っています。私の父は、国が指定する難病です。私は、医師になって、父の病気を治すことはできないけど、「人を助ける仕事をしたい」と思っています。海と船が大好きなので、海上保安庁の航空機のパイロットになり、船よりも早く要救助者を助けに行きたいと強く思っています。

闘病する家族の姿をみて芽生えた「人を助ける仕事をしたい」という気持ちと、「海と船が大好き」という自分が好きなものの両方が実現できる仕事として「海上保安官(航空士)」が選ばれている。


【なりたい職業】「花屋さん」(小6)
「私は将来、花屋さんになりたいです。花屋さんで働く母を見てそう思うようになりました。花屋さんには、誕生日などのお祝い用や大切な人やペットとのお別れのためなど、さまざまな理由でお客さんが買いに来るそうです。そういったお客さんの気持ちに応える事ができて喜んでもらえた時は、何より嬉しく本当にやりがいを感じるそうです。私も花でたくさんの人を元気にしたりいやしてあげられる様な花屋さんになりたいです。」

家族が働いている姿を見て、あこがれを抱くようになった「花屋さん」、家族が働きながら感じていることを聞いて、自分自身も「花を通じてたくさんのひとを元気にしたい」という気持ちが芽生えたようだ。


今回紹介したのはほんの一部であるが、なりたい職業を選んだ理由を見ると、小学生は自分自身の「好き」な気持ちや得意なことを生かそうとする「自己実現を求める気持ち」と他者に役にたつことや誰かに喜んでもらおうとする「社会貢献の気持ち」の両方を大切にしながら「なりたい職業」を選んでいることが読み取れる。

小学校のキャリア教育プログラムとの接点

小学校におけるキャリア教育は、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義されている(文部科学省「キャリア教育」)。

この定義のもと、自己理解・社会理解・課題対応能力・将来設計能力の育成が重視されており、特に小・中・高等学校では「体験活動」だけでなく、教育活動全体を通じた体系的な実施が求められている。

また、学年や校種を超えて学びと成長の記録を継続するための「キャリア・パスポート」の活用が推奨されている。キャリア・パスポートは、児童生徒が自らの目標や体験、振り返りを記録し、「見通し→実践→振り返り」のサイクルを通じて自己変容を自己評価できるように設計されている。

子どもたちが日々の生活を通じて得た「私は〇〇が好き」「誰かを喜ばせたい」と感じる気持ちを、そのままにするのではなく、学びや体験を記録し、自分の思いや成長を振り返る機会が重要となると考えられる。

キャリア教育においてはそれが「キャリア・パスポート」となるが、今回実施されたマイナビ小学生将来なりたい職業コンクールで「なりたい職業」を描いたり、その理由について書いたりすることでそれに近い体験ができたのではないだろうか。

将来へのイメージが少しずつ具体的になっていく。また、身近な大人や地域の人との交流を通じて、さまざまな仕事や生き方に触れる機会が広がれば、子どもたちの夢や選択肢もより豊かになるだろう。

おわりに

小学生が身近な大人や地域の人との交流を通じて、さまざまな仕事や生き方に触れる機会を通して、将来へのイメージを少しずつ具体的にしていく。その思い描く“なりたい職業”には、「誰かを喜ばせたい」「自分の好きなことを形にしたい」といった、素直で温かな気持ちが込められている。

こうした思いを、学校や家庭、地域がそれぞれの立場でやさしく受け止め、子どもたちが自分らしく夢を育んでいける環境を整えていくことが大切だと感じる。

日々の学びや体験を通じて、子どもたちが自分の気持ちに気づき、周囲の大人や仲間と語り合いながら、少しずつ将来のイメージを広げていく。そうした積み重ねがやがて社会全体の力となり、“誰かを喜ばせたい”という静かな情熱が未来を動かす原動力になっていくだろう。
※100位までの結果はこちら

マイナビ小学生なりたい職業ランキング2025(1~100位)
マイナビ小学生なりたい職業ランキング2025(1~100位)

関連記事

キャリア教育とは?日本における歴史を振り返り、その目的を再考する

コラム

キャリア教育とは?日本における歴史を振り返り、その目的を再考する

子どもの未来に必要な力を育むキャリア教育の意義-筑波大学 人間系 教授 藤田晃之氏

コラム

子どもの未来に必要な力を育むキャリア教育の意義-筑波大学 人間系 教授 藤田晃之氏

実社会に関わる「探究学習」を通して身に付ける「問う力」ー東京大学大学総合教育研究センター教授  佐藤 浩章氏

コラム

実社会に関わる「探究学習」を通して身に付ける「問う力」ー東京大学大学総合教育研究センター教授  佐藤 浩章氏