大学生低学年のキャリア観-高校時の『文理選択』と『進路選択』-

中島英里香
著者
キャリアリサーチLab研究員
ERIKA NAKASHIMA

はじめに

現在、多くの大学生はインターンシップや仕事体験を通じて就職活動を行い、就職先を決定している。一方、厚生労働省の調査によると、新規学卒就職者の約3割が入社後3年以内に離職しているという現状だ。多くの学生がキャリア形成活動を本格的に始めるのは大学3年生である。しかし、本来「キャリア」とは、過去の選択や経験の積み重ねによって形成されるものであり、大学入学前の進路選択や高校時代の意思決定が、その後のキャリアにどのような影響を与えているのかを考える必要がある。

そこで本連載では、積極的なキャリア形成活動が始まる前の大学1、2年生を対象に、大学入学前のキャリア選択から今後の活動までの一連の流れを探っていく。

本コラムでは、その第一歩として、高校時代の文理選択や大学受験時の進路選択がどのように行われているのかを見ていく。

低学年のキャリア観

大学低学年のキャリアの方向性

『大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)』において、大学1、2年生にキャリアの方向性(大学卒業後の進路)が決まっているかを尋ねたところ、45.3%の学生が「決まっている」(※1)と回答した。【図1】  

※1「具体的に決まっている」「どちらかといえば、決まっている」の計 

さらに、高校生の時に大学卒業後の仕事・キャリアを意識して大学や学部・学科を選択したかを尋ねると、キャリアの方向性が決まっている学生では74.8%が「意識していた」と回答し、決まっていない学生より20.7pt高い結果となった。(※2)【図2】 

※2 意識していた:「強く意識していた」「意識していた」「どちらかといえば、意識していた」の計
意識していなかった:「全く意識していなかった」「意識していなかった」「どちらかといえば、意識していなかった」の計 

【図2】大学卒業後のキャリアを意識した大学選択か
【図2】大学卒業後のキャリアを意識した大学選択か
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

この結果から、キャリアの方向性が決まっている学生ほど、大学や学部選択において将来を意識していることがわかる。また、文理にわけてみると、文系学生よりも理系学生のほうが意識していた割合が高い結果であった。【図3】

【図3】大学卒業後のキャリアを意識した大学選択か(文理別)
【図3】大学卒業後のキャリアを意識した大学選択か(文理別)
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

キャリアを意識し始めたタイミング

大学1、2年の段階でキャリアの方向性が決まっている学生は、いつからキャリアを意識し始めたのだろうか。キャリアの方向性が決まっている学生に対して、希望している仕事やキャリアを意識し始めた時期を尋ねたところ、もっとも多かったのは「高校時代」(39.6%)であった。【図4】

【図4】希望している仕事・キャリアを意識し始めた時期
【図4】希望している仕事・キャリアを意識し始めた時期
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

高校生は文理選択など大きな進路決定を行う時期であり、多くの学生にとってキャリアを意識する契機となっていると考えられる。さらに、幼少期から高校生までに意識し始めた割合の合計は71.3%であり、キャリアの方向性が決まっている学生の多くは大学入学前に意識し始めていることが明らかである。これらを踏まえて、次章では、この「高校時代」の進路選択に焦点を当てる。 

高校時代の選択

文理選択

高校時代において、キャリアの大きな決定要因となるのが「文理選択」と「進路選択」であろう。高校での文理選択理由について尋ねたところ、キャリアの方向性の方向性によらず、もっとも多い理由は「得意科目があったから」であった。  

一方で、キャリアの方向性が決まっている学生は決まっていない学生に比べて、「将来を考えたときにその選択のほうが有利になるため」(38.9%)という回答が11.8pt高く、文理選択の時点で将来を見据えた選択をしていることがわかる。

また、方向性が決まっていない学生は方向性が決まっている学生よりも「苦手な教科があったから(そうでない方を選択した)」(36.2%)の割合が6.5pt高く、将来のビジョンがまだない学生は、得意・不得意を基準に選択している傾向がみられた。【図5】  

【図5】高校時の文理選択理由
【図5】高校時の文理選択理由
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

大学受験時の志望校選び

大学受験で志望校を決める際に重視したことは、キャリアの方向性によらず、もっとも多かった回答は「学びたいことが学べるか」であった。 

方向性が決まっていない学生よりも方向性が決まっている学生の方が割合として高かったものは「学びたいことが学べるか」(60.8%, 12.0pt差)、「希望する就職先に入るため」(21.6%, 9.5pt差)といった回答であり、学習内容や就職先を重視していることがわかる。

一方で、方向性が決まっていない学生の方が高かったものは「学費が安いか」(25.8%, 10.1pt差)、「家から通えるか」(38.6%, 8.4pt差)といった回答であり、条件面を重視する傾向がみられた。【図6】 

【図6】志望校を決める際に重視したこと
【図6】志望校を決める際に重視したこと
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

この結果から、キャリアの方向性が決まっていない学生は今の自分が選べる範囲のなかから進路を決めている可能性が考えられる。 

高校教員からの影響

これまで、学生の選択を見てきたが、大学選びにおいて無視できないのが、進路指導などで関わる「高校教員」の存在である。将来の仕事・キャリアを考える上で、これまでに影響を受けてきた人を尋ねると、「両親」に次いで「中学・高校の教員」が2番目に多い回答であった。【図7】 

【図7】仕事・キャリアを考える上で、影響を受けてきた人
【図7】仕事・キャリアを考える上で、影響を受けてきた人
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

さらに、現在通う大学が高校教員に勧められた大学かどうかを尋ねると、全体で約半数の学生が教員に勧められた大学に入学していることがわかった。また、キャリアの方向性が決まっている学生の方が、決まっていない学生よりもその割合は高い傾向にあった。【図8】

【図8】入学した大学は高校の教員から勧められた大学か
【図8】入学した大学は高校の教員から勧められた大学か
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

学生が考える高校教員にその大学を勧められた理由として、全体でもっとも多かったのは「学べる内容」(50.7%)であり、キャリアの方向性が決まっている学生では58.2%と、決まっていない学生より14.6pt高い結果であった。 

一方、キャリアの方向性が決まっていない学生では「学べる内容(43.6%)」と「偏差値(44.0%)」や「学校区分(国立 / 公立 / 私立)(40.3%)」が同程度の割合であり、学生は高校教員から条件面での勧めがあったと感じているようだ。【図9】  

【図9】(学生が考える)高校の教員がその大学を勧めた理由
【図9】(学生が考える)高校の教員がその大学を勧めた理由
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

このことから、キャリアの方向性が決まっている学生は将来のビジョンを明確に持ち、学べる内容を重視した進路指導を受けているといえる。一方、方向性が決まっていない学生には、条件面を含めた助言があったことが予想される。 

学生の後悔

これまでの進路選択を振り返って

もし、高校生に戻れるとしたら自分の進路選択(文理選択、大学選びなど)について今と異なる選択をするかを尋ねたところ、多くの学生が「今と同じ進路選択をする」と回答したが、一方で約3割の学生は「今と異なる進路選択をする」と回答した。【図10】

【図10】もし、高校生に戻れるとした場合の進路選択
【図10】もし、高校生に戻れるとした場合の進路選択
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

具体的な変更希望を分類すると、「大学」、「大学での学ぶ内容」、「文理選択」を変えるという回答が多かった。【表1】 

【表1】もし、高校生に戻れるとしたら今とどのように異なる選択をするか
【表1】もし、高校生に戻れるとしたら今とどのように異なる選択をするか
出典:大学生低学年のキャリア意識調査8月(2028・2029年卒対象)

詳細をみていくと、「大学」については、“受験しなかった大学を受験する”や“もっとレベルの高い大学で学びたかった”と受験の際に挑戦しなかったことを後悔し、そこにチャレンジしたいという意見がよくみられた。 

「大学での学ぶ内容」については、“将来の夢が決まったので、行きたい就職先に行くための勉強ができる大学にいく”といった前向きに進路を変更したいという希望や、“幅広く活躍ができる学部にいきたい”と将来の夢はないものの、将来の選択が増えるような進路に進みたい、といった意見がみられた。

「文理選択」については“苦手な科目があり、文系を選択したが、戻れるのであれば苦手を克服してでも理系を選択する”と文理選択に対する後悔が見られた。 

以上の結果より、半数以上の学生は現在の選択に満足しているが、一部の学生は後悔や将来を見据えた変更希望を持っていることがわかる。特に、将来を見据えた際に別の選択をするという意見がみられ、“キャリアの見通し”が進路選択に対する満足に影響している可能性が示唆された。 

まとめ 

今回は、学生のキャリアについて重要な時期と考えられる“高校時代”の進路選択についてみてきた。

文理選択では「得意科目」や「好きな科目」が重視され、大学選びでは「学べる内容」がもっとも重視されていた。キャリアの方向性が決まっている学生は、将来を見据えた選択をしている一方で、方向性が決まっていない学生は「学費」や「家からの近さ」といった条件面を重視する傾向がみられた。

また、高校教員の影響も大きく、方向性が決まっていない学生は高校教員から「偏差値」「学校区分(国立 / 公立 / 私立)」といった条件面から大学を勧められており、キャリアビジョンや進学目的が曖昧な学生は、条件面でマッチした大学を前提とした狭められた選択肢の中から進路を選択しているのかもしれない。 

マイナビキャリアリサーチLab 研究員 中島英里香

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