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「公務員志望」の学生が求めているものは?公務員イメージ調査から、採用担当者が意識すべきポイントを探る

キャリアリサーチLab編集部
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新卒採用の人事担当者のもつイメージとして「公務員志望の大学生は、安定志向の強い学生である」というのが一般的なのではないだろうか。しかし、一概にそうとはいえない。

このコラムでは、マイナビが実施した「大学生公務員イメージ調査」を基に「公務員志望の大学生が安定志向なのか」「なにを就職に求めているのか」を「公務員志望者」と「公務員の就職を考えたが、やめた人」の比較から探っていこうと思う。

公務員志望は安定が決め手なのか?

マイナビでは、マイナビ2025年会員のうち「2025年春に卒業予定の大学生・大学院生」に向け、「大学生公務員イメージ調査」を行った。

この調査で私が注目したのが「公務員を就職先として考えている学生はやや増加し、4人に1人に」というものだが、その中でも、【図1】の『<公務員になりたい理由>「考えている人」と「考えたがやめた人」の比較』という設問である。

【図1】 公務員になりたい理由「考えている人」と「考えたがやめた人」の比較/2025年卒大学生公務員のイメージ調査
【図1】 公務員になりたい理由「考えている人」と「考えたがやめた人」の比較/2025年卒大学生公務員のイメージ調査

「公務員を志望している人」と「公務員を考えたがやめた人」に「公務員になりたい理由」を聞いたところ、公務員という働き方でもっともイメージの強い「安定しているから」と答えたのは「公務員を志望している人」が68.3%。「公務員を考えたがやめた人」が67.2%、差は1.1%だった。

つまり、公務員を選ぶときに「安定」は理由の決定打にはならないのだ。

「公務員志望者」が本当に求めるものとは?

前述のように安定を求める割合は、「公務員志望者」も「公務員を考えたがやめた人」もあまり変わらない。では、公務員志望者である「公務員を志望している学生」が本当に求めているものはなんだろうか。

次に、公務員志望者が公務員を考えたがやめた人よりも重視しているものを探っていく。図1の『<公務員になりたい理由>「考えている人」と「考えたがやめた人」の比較』という設問を詳しくみていくと「公務員を志望している人」と「公務員を考えたがやめた人」でもっとも差が大きい要素は、「社会・市民のために働ける」と「社会貢献度」である。

「社会貢献度が高いから公務員になりたい」と回答しているのは「公務員を志望している人」で38.3%、「公務員を考えたがやめた人」で17.7%。公務員を志望している人は、やめた人よりも2.16倍も「社会貢献度が高い」という理由から公務員になりたいと思っていたのだ。

また、「社会・市民のために働ける」と回答した人の差はさらに大きく、「公務員を志望している人」は41.2%、「公務員を考えたがやめた人」は18.7%と、22.5ポイントである。ここから「社会貢献」「社会・市民のために」という点を重視していることが見えてくる。

「公務員になりたい」気持ちを高める要因とは?

では、どうすれば公務員になりたいという気持ちを高めることができるのか。就職先として公務員を「考えたがやめた」「もともと考えていない」学生に限定して、「公務員になりたい気持ち」はなにが改善されれば高まるのかを聞いた設問をみていく。【図2】

【図2】どのようにすれば公務員になりたい気持ちが高まると思うか(複数選択)/ 2025年卒大学生公務員のイメージ調査
【図2】どのようにすれば公務員になりたい気持ちが高まると思うか(複数選択)/2025年卒大学生公務員のイメージ調査

2024卒と2025年卒を比較すると「堅苦しいイメージが払拭されれば」という回答は減少しているが、「仕事内容について知る機会があれば」は変わらず高く、「公務員の待遇が改善されれば」は、2024年卒と比べて2025年卒の割合が高くなっている。

なかでも注目したいのは「公務員の待遇が改善されれば」の伸びである。2022年卒から年々増加しており、待遇改善が一つのカギとなると言えるだろう。

地域への貢献をアピールする

では、公務員志望者の志望度を高めるために、具体的にどのような施策が考えられるだろうか。公務員を「考えている」と回答した学生のみに「公務員として勤務したい都道府県」を選んでもらい、その理由を聞いた。すると圧倒的に多かったのが「生まれ育った場所だから」という回答だった。【図3】

【図3】最も勤務したい都道府県を選んだ主な理由を1つ選択してください/ 2025年卒大学生公務員のイメージ調査
【図3】最も勤務したい都道府県を選んだ主な理由を1つ選択してください/2025年卒大学生公務員のイメージ調査

一方で「都会に出てみたいから」という回答は極端に少ないことがわかる。これは公務員を志望する学生が貢献したい社会というのは、「自分が生まれ育った地域社会」と考える人が多いといえるだろう。

公務員を志望する学生の志望度を高めるためには、学生が「生まれ育った地域社会」に大きく貢献できることをアピールすることで注目してもらえるのではないだろうか。たとえば、学生向けの説明会や就職情報を提示する場合に優先度を高めるべき一つにどのように「地域社会に貢献できるのか」という情報を盛り込むことも手かもしれない。

まとめ

これまでの内容をまとめると、公務員を志望する学生の約7割は安定を求めているが、それは公務員志望をやめた人も同じであり、差はない。そして、公務員志望者は「安定しているかどうか」に加えて「社会貢献」という要素が重要になっている。

また、待遇に関しても改善を求めているため、「安定した環境で、安心して社会貢献ができる」というメッセージを伝えることも重要である。特に地域住民、地域社会に公務員としての活動や取り組みがどのように活かされ、貢献しているかを具体的にイメージできる形で伝えることが重要だと考えられる。

当たり前かもしれないが、こうした組織としての姿勢をきっちりと示し、表現することが公務員志望の学生に向けて決め手になるのではないだろうか。


著者紹介
黄 慈権(ファン・チャゴン)
広告代理店にてコピーライターとして就業した後、フリーライターとして独立。サッカー誌にて連載コラムを執筆し、単著「【内田篤人】夢をかなえる能力(ぱる出版)」を上梓。スポーツライターをしながら採用支援、ライティング業務等を行い、介護事業会社にて人事部長を経験。外国人採用に力を入れ、「登録支援機関設立」に携わる。現在、フリーランスの人事、ライター、データ・サイエンティストとして活躍中。

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