はじめに
近年、初任給の引き上げや物価高騰といった経済的な変化が続く中、若年層の間でお金に対する関心が高まっている。特に大学生にとっては、「年収の壁」などの制度的な制約が注目されるようになり 、アルバイトの時間や収入に対する意識もより現実的なものとなってきている 。
「2026年卒大学生のライフスタイル調査」を見てみると、75.4%の大学生が定期的なアルバイトを行っており割合は高いといえる。
【図1】 定期的なアルバイトをしているか/2026年卒大学生のライフスタイル調査(n=1,633)
そのような状況の中で、大学生たちが限られたアルバイト収入をどのように使っているのかを調査したデータを見ると、その目的には娯楽のためでもあれば、貯金を意識したお金の配分も見られ、大学生ならではの価値観や優先順位が少しずつ見えてきている。
本稿では、貯金を軸に、大学生たちのお金の使い道にどのような傾向があり、それが将来を見据えたときにどのように変化するのかを見ていく。
大学生のアルバイトの目的
大学生にとって、代表的な収入源のひとつがアルバイトだ。アルバイトから得た収入は、生活費だけでなく、大学生生活を充実させるためのさまざまな目的に使われている。大学生のアルバイト調査(2025年)の結果からは、アルバイトの目的が「貯金」と「趣味への支出」という形で浮かび上がっていることがわかる。
目的は「貯金」と「趣味」が過半数
「大学生のアルバイト調査(2025年)」によると、大学生がアルバイトをする目的として、「貯金をするため」が53.7%、「趣味のため」が52.6%と、いずれも過半数を占め、ほぼ同程度の割合である。
【図2】 アルバイトをする目的/「大学生のアルバイト調査(2025年)」(上位抜粋)(n=903)
この結果は、大学生たちが限られた収入の中でも、「今の充実」とほぼ同等に「備え」を大事にしていることを示している。自分らしい大生活を楽しむだけでなく、お金を貯めることも同じくらいの優先順位を持っているということが推測できる。
貯金の目的についてさらに踏み込んでみると、大学生のお金の価値観にある一定の傾向が見えてきた。次節では、貯金の「使い道」に焦点を当てて、大学生の行動と意識の関係を見ていく。
貯金をするのも趣味のため?
「2027年卒大学生キャリア意向調査5月<インターンシップ・キャリア形成活動>」で、貯金を就職活動以外にどのように使おうと考えているかを尋ねたところ、「大学生生活の趣味のため(旅行、美容、推し活など)」という回答が77.0%という結果になった。
この結果は 、たとえ貯金として収入から一定の金額を確保しておいたとしてもその目的が趣味関連の充実にあるという、いわば「貯金も趣味のため」ということを示している。つまり、大学生にとっては「貯金をする」という行動が、今の楽しみや趣味を充実させるための手段として位置付けられていると考えられる。
【図3】 キャリア形成活動(または就職活動)以外の用途で、貯金をどのような目的で使おうと思っているか/2027年卒 大学生キャリア意向調査(5月)<インターンシップ・キャリア形成活動>(上位抜粋)(n=3,051)
このように「貯めて“未来”に備える」よりも「貯めて“今”を楽しむ」という姿勢が見られ、長期的な視野よりも今、自分が主体的に経験したいことへの投資を優先していることがうかがえる。
では、大学生が「社会人になった自分」を想像したとき、そのお金の使い道はどのように変わっていくのだろうか。次章では、社会人になることを想定した場合の調査をもとに、大学生の金銭感覚の変化を見ていく。
社会人になったときのお金の使い道
大学生が社会人になったときの生活を想像したときに、どのようなお金の使い方をしようと思っているのか。ここでは、「大学生が社会人になったら」と仮定して回答した調査をもとに、将来への意識の変化を「Want(お金をかけたい)」と「Must(お金をかけなければいけない)」という2つの視点から探っていく。
Want-娯楽への投資
「2025年卒大学生活動実態調査(7月)」によれば、「社会人になったらお金を“かけたい”と思うもの」としてもっとも多かったのは「娯楽費」(59.0%)である。
大学生の「“今”の楽しみを大切にする」価値観は、社会人という新たなステージでも引き継がれ、生活の中にある余暇や自己充実の時間に引き続き投資したいという意識が強いといえる。
【図4】 社会人になったらお金を“かけたい”と思うもの/2025年卒 大学生活動実態調査(7月)(n=2,646)
Must-備えへの意識
一方で、「お金を“かけなければいけない”と思うもの」としてもっとも多かったのは「将来のための貯蓄」(65.9%)である。社会人になることを見据えたときに、大学生たちが「“未来”への経済的な備え」への必要性を強く意識していることが示されている 。
【図5】 社会人になったらお金を“かけなければいけない”と思うもの/2025年卒 大学生活動実態調査(7月)(n=2,646)
「“今”の楽しみのための貯金」から「“未来”の備えへの貯金」へ
この変化は、生活に対する視点の変化であり特に将来への備えに対する現実的な意識が芽生え始めていることを意味している。
その背景には、将来への不安があると考えられる。「2025年卒大学生活動実態調査(9月)」によると、大学生が将来について不安に感じていることのトップは「老後の貯蓄(生活費)が足りない」(39.4%)である。
収入が得られる具体的な見通しが立っていない段階で、老後資金にまで関心が及んでいることは注目に値する。
【図6】 学生の将来の不安/マイナビ 2025年卒 大学生活動実態調査(9月)(上位抜粋)(n=2,042)
このような意識は、大学生たちが社会人というステージを想定したときに、“今”の楽しみにお金を使いたいという願望にとどまらず、それと並行して「“未来”への備え」の意識も醸成されていることを示している。
結果として、「“今”の趣味や娯楽にお金をかけたい」という意識は残しながらも、それ以上に「“未来”への貯金にかけなければ」という優先度が高まっていることがわかる。
将来のための貯金意識
これまでの調査結果からは、大学生が目の前の生活におけるお金の使い方として「趣味・娯楽」に重きを置いている実態や、社会人を見据えた際の「貯蓄への備え」への意識の高まりが見えてきた。将来に向けても堅実な考えが強い世代ではあるが、大学生のうちから将来のための貯金をすることへの考えについても見ていく。
「2027年卒大学生キャリア意向調査5月<インターンシップ・キャリア形成活動>」によれば、「学生生活の間で将来のために貯金をすることについてどう思うか」という問いに対し、「とても重要だ」が41.4%、「まあ重要だ」が35.2%と、合計76.6%の大学生が「重要である」と回答している。
【図7】 学生生活の間で将来のために貯金をすることについてどう思いますか/2027年卒大学生キャリア意向調査5月<インターンシップ・キャリア形成活動>(n=3,051)
こちらの質問に対しての自由回答を見てみると「学生の頃からお金を貯めるという習慣を付けておくことで、就職後も貯金をすることが当たり前になると思ったから」「将来お金を貯金する練習になるから」「お金の管理の仕方や大切さが学べるから」と寄せられていた。
【図8】 学生生活の間で将来のために貯金をすることについてどう思いますか/2027年卒大学生キャリア意向調査5月
<インターンシップ・キャリア形成活動>(自由回答)
大学生がお金を使う際に「今の楽しみ」を優先しているように見えながらも、同時に将来を見据えた視点を持ち合わせていることを物語っており、将来に向けて自分自身でお金を管理できるようになることの必要性を意識している様子がうかがえる。
「趣味のための貯金」と「将来のための貯金」という二軸の中で、限られた収入の中で“今しかできないこと”を大切にしながらも、将来の安心や選択肢のために備えるという意識も決して希薄ではない。
おわりに
大学生のお金に対する意識には、大学生のときと社会人を見据えたときとで変化があることがわかった。大学生時点では「趣味や娯楽」にお金をかけたいという意識が強く、「貯金」はそのための手段として捉えられる場面が多かった。
しかし、社会人としての将来を想像する場面になると、「娯楽費」にお金をかけたいという考えは共通しつつも、将来のための貯金を”しなければならない”という意識が芽生えるようだ。
大学生生活の中で「お金をどう使うか」「どう貯めるか」と向き合う姿勢は、単なる家計管理にとどまらない。大学生の頃からの貯金や消費管理を通じて培われる計画性は、貯金という枠組みを超えて、就職活動やキャリア設計、さらには人生の意思決定全般においてもこの世の中を生きていくうえで確かな力となっていくのではないだろうか。