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大学生アルバイト就業者の「年収の壁」に関するレポート(2024年)

  • 大学生アルバイト就業者の40.4%が「就業調整をしている」。そのうち7割が「103万円の壁」を意識、特定扶養控除にも影響
  • 年収の壁が撤廃された場合、7割の大学生が「もっと働きたい」と回答。アルバイトで働く大学生の約半数が「経済的ゆとりがない」という結果も
  • 大学生のアルバイト就業者の現在の年収「103万円以上」は4.9%にとどまる。一方、希望の年収では「103万円以上」が19.1%にのぼる

現在議論になっている「年収の壁」の問題は、アルバイト就業者と密接に関係しており、特に大学生の働き控えに影響していると考えられる。マイナビの調査では、アルバイト就業者のうち31.5%が「就業調整をしている」と回答し、就業調整をしている大学生アルバイトの7割が「103万円の壁」を意識していることがわかっている。

アルバイトで働く人がどのように年収の壁と向き合い、どのように考えているのか。今回は、2024年にアルバイト就業者を対象に実施した調査から、年収の壁の実態と大学生のアルバイト就業者の働くニーズについて考察する。

調査詳細

就業調整の割合・年収の壁の種類

  • 大学生アルバイト就業者の40.4%が「就業調整をしている」
  • そのうち7割が「103万円の壁」を意識、特定扶養控除も影響

マイナビが実施した「アルバイト就業者調査(2024年)」によると、アルバイト就業者全体のうち31.5%が「就業調整をしている」と回答した。属性別では、大学生の40.4%が就業調整をしていた。【図1】

【図1】就業調整をしているか
【図1】就業調整をしているか

就業調整をしているアルバイト就業者の就業調整ライン(年収の壁の種類)を聞いたところ、全体では「自分の所得税の非課税限度額を超えないようにする(103万円の壁)」が41.9%と最も高かった。また、大学生は「103万円の壁」が68.0%ともっとも高く、全体と比較をしても特に高い結果となった。年収103万円を超えると税法上の扶養から外れ、特定扶養控除に影響することも考慮していると考えられる。【図2】

【図2】就業調整のライン(年収の壁の種類)
【図2】就業調整のライン(年収の壁の種類)

年収の壁が撤廃された場合の就労意欲

  • 「年収の壁」が撤廃された場合、7割の大学生が「もっと働きたい」と回答
  • 大学生の約半数が「経済的ゆとりがない」という結果も

就業調整をしているアルバイト就業者のうち、「年収の壁」がなくなった(一定の年収額を超えて働いても手取りが減らなくなる)場合、「もっと働きたい」とした人は54.6%。大学生では72.1%だった。【図3】

【図3】年収の壁が撤廃された場合の就労意欲
【図3】年収の壁が撤廃された場合の就労意欲

また、大学生のアルバイト就業者に経済的ゆとりがあるか聞いたところ、「経済的ゆとりがない(「あまりゆとりがない(38.7%)」+「全くゆとりがない(10.5%)」の計)』は49.2%に上った。【図4】

【図4】経済的ゆとりがあるか
【図4】経済的ゆとりがあるか

これらの結果からも、大学生が「103万円の壁」のために働き控えを行う現状や、経済的な余裕がないとする人の存在がうかがえる。

大学生の年収の実態

  • 大学生のアルバイト就業者の現在の年収「103万円以上」は4.9%にとどまる
  • 一方で、希望の年収では「103万円以上」が19.1%にのぼる

大学生のアルバイト就業者の「現在の年収」は「90万円~102万円(28.8%)」が最も多かった。一方で、「103万円以上」は4.9%にとどまっており、「103万円の壁」を意識して就業時間や収入を調整している傾向がうかがえる。

また、大学生のアルバイト就業者の「希望の年収」では「103万円以上(19.1%)」と、5人に1人は103万円以上の収入を希望している結果となった。【図5】

【図5】大学生アルバイト就業者 現在の年収/希望の年収
【図5】大学生アルバイト就業者 現在の年収/希望の年収

調査担当者コメント

この調査では、3割を超えるアルバイト就業者が就業調整を行っている実態がわかった。特に、アルバイトをする大学生の多くが所得税の控除に関わる「103万円の壁」を意識して働いている。また年収の壁がなくなり、一定の年収額を超えて働いても手取りが減らなくなった場合、「もっと働きたい」とした大学生は7割を超えている。大学生の経済的なゆとりのなさや収入の制限をしている実態もうかがえる結果となった。

一方、年収の壁には、社会保険の控除に関わる 「130万円の壁」 「106万円の壁」もある。手取りの収入への影響も大きい、この『社会保険の壁』の年収ラインを超えないように働き控えをする人も多いと考えられる。「年収の壁」がなくなった場合に「もっと働きたい」とした人もアルバイト就業者全体で半数を超えており、この結果からも「手取りの収入の減少」への抵抗感がうかがえ、主婦層を含めたアルバイト就業者の働く時間に影響していることも考えられる。

アルバイトで働く人の「お金」に対する関心は、年金給付など将来的な視点もあると思うが、「現在の手取り収入(今使うお金)」に対してより強い関心があるのだろう。

企業の人手不足や働き控えの解消に向けては、働く人の現在の収入への影響も踏まえながら、『税金の壁』だけでなく年収の壁全般の在り方について議論を深めることが必要と考える。

キャリアリサーチラボ 研究員 宮本 祥太

調査概要

内容 アルバイト就業者調査(2024年)
調査期間

2024年2月15日~2月19日

調査対象 現在アルバイトをしている10~70代の男女
調査方法 インターネット調査
回答数
9,000サンプル

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