マイナビ キャリアリサーチLab

非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)

  • 2024年度最低賃金改定に対し、4社に1社が「引き上げるべきではない」
  • 3人に1人がスポットワークの仕事を「探した」と回答。今後スポットワークを探したい人は51.8%

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、全国の企業、個人それぞれを対象に実施した、「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」の結果を発表しました。

トピックス

  • 非正規雇用における企業の求人ニーズは個人の求職ニーズを8.2pt上回り、売り手市場が続く【図1】
  • 2024年度最低賃金改定に対し、4社に1社が「引き上げるべきではない」と回答。引き上げが行われた際の対応策では、「正社員の労働時間の短縮」「非正規社員の労働時間の短縮」が上位に【図2、3】
  • 3人に1人がスポットワークの仕事を「探した」と回答。今後スポットワークを探したい人は51.8%。単発性や融通性にメリットを感じる傾向【図4、5】
  • 7割以上が入社後研修を「丁寧にしてほしい」と回答。研修スタイル・研修期間の理想と現実にギャップがみられる【図6、7】

調査詳細

求人ニーズ・求職ニーズ

企業の求人ニーズ(24年5-6月に非正規雇用者の採用活動を行った企業の割合)は25.4%(24年3-4月比:0.3pt増、23年5-6月比:1.4pt減)となり、個人の求職ニーズ(24年5-6月に非正規雇用の求職活動を行った個人の割合)は17.2%(24年3-4月比:0.7pt増、23年5-6月比:0.2pt減)となった。

求人ニーズが求職ニーズを8.2pt上回っており、採用が困難な売り手市場が続いている様子がうかがえる。【図1】

企業の求人ニーズ/個人の求職ニーズ/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図1】企業の求人ニーズ/個人の求職ニーズ

2024年度最低賃金引き上げ

2024年度最低賃金改定に対し、4社に1社が「引き上げるべきではない」と回答。引き上げが行われた際の対応策では、「従業員の労働時間の短縮」を検討か。

2024年度の最低賃金改定で賃金を引き上げるべきか聞いたところ、「最低賃金の引き上げはせずに、現状の金額を維持するべき」が22.4%、「最低賃金を引き下げるべき」が4.5%となり、4社に1社が最低賃金引き上げに難色を示す結果となった。

最低賃金を引き上げるべきではないと回答した企業を業種別にみると、[サービス]が35.0%(全体比:8.1pt増)で最も高く、[小売]30.7%(全体比:3.8pt増)、[飲食・宿泊]27.8%(全体比:0.9pt増)と続いた。【図2】

2024年度の最低賃金改定で賃金を引き上げるべきか/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図2】2024年度の最低賃金改定で賃金を引き上げるべきか

これらの業種は、「引き上げるべきではない」のスコアが低い[ソフウェア・通信][医療・医療福祉]などの業種に比べて時給水準が低い傾向にある。加えて、非正規比率が高く、事業運営のために多くの人員を必要とする業種でもあり、1人あたりの賃金のベースアップによる人件費の負担が大きいと考えられる。

また、2024年度に最低賃金引き上げがあった際の対応策では、「正社員の労働時間の短縮」「非正規社員の労働時間の短縮」「売上増に向けた新たな販路の拡大」が24.2%でトップに並んだ。【図3】

2024年度の最低賃金引上げが行われた際の対応策/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図3】2024年度の最低賃金引上げが行われた際の対応策

スポットワーク

3人に1人がスポットワークの仕事を「探した」と回答。今後スポットワークを探したい人は51.8%。単発性や融通性にメリットを感じる傾向。

24年5-6月に非正規の仕事を探した人のうち34.5%が「スポットワークの仕事を探した」と回答。また、今後スポットワークを探したいと答えた人は51.8%に上った。多くの年代で就業意向が5割程度となっており、幅広い世代でスポットワークが浸透していることがわかる。【図4】

スポットワークの仕事探し/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図4】スポットワークの仕事探し

パート・アルバイトの仕事と比べたスポットワークのメリットを聞いたところ、求職者側は「単発性」「時間の有効活用性」が上位となり、企業側は「融通性」「単発性」が上位となった。求職者・企業側ともに時間融通が効きやすいことにメリットを感じている傾向がうかがえる。【図5】

パートアルバイトと比べた時のスポットワークのメリット・デメリット/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図5】パート・アルバイトの仕事と比べた時のスポットワークのメリット・デメリット

非正規雇用の入社後研修

7割以上が入社後研修を「丁寧にしてほしい」と回答。研修スタイル・研修期間の理想と現実にギャップがみられる。

直近3年以内に非正規雇用の仕事を経験した人のうち73.2%が、入社後研修(入社後おおむね半年以内に行われる新人研修)を「丁寧にしてほしい」と回答した。直近の研修期間(平均)は11.8日に対して、理想の研修期間は14.1日(平均)だった。【図6】

非正規の仕事における入社後研修を丁寧にしてほしいか/研修期間の現実と理想/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
【図6】非正規の仕事における入社後研修を丁寧にしてほしいか/研修期間の現実と理想

企業が行う研修では、「口答指導メイン」が48.6%、「マニュアル指導メイン」が27.3%となり、口答指導が主流となっている。一方で、求職者が望む理想の研修では、「口答指導メイン」が36.6%、「マニュアル指導メイン」が38.5%となり、マニュアル指導が口答指導を上回った。

また、企業が行う研修では、「基礎スキル重視(基礎スキルを覚えたうえで実践へ移る)」が32.5%、  「実践スキル重視(実務をしながら実践スキルを覚える)」が39.1%で、実践スキルを重視としている。しかし、理想の研修では、「基礎スキル重視」が39.1%、「実践スキル重視」が30.0%となり、基礎スキル重視型が実践スキル重視型を上回った。【図7】

【図7】現実の研修スタイル×理想の研修スタイル/マイナビ「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)」
図7】現実の研修スタイル×理想の研修スタイル

調査担当者からのコメント

2024年度の最低賃金改定を前に、企業の賃金引き上げへの懸念がうかがえました。昨年度から続く賃上げの気運の高まりによって他社と足並みをそろえる形で賃上げをしたり、物価高により人件費の負担が大きくなっていたりと、企業側の苦慮の様子が推察されます。

また、スポットワークが社会に浸透しつつあることもうかがえます。求職者視点では空いた時間に効率よく働く手段として、企業視点では局所的に必要人材を補う手段として、双方のニーズが重なっている部分も多く、今後さらに普及すると見込みます。

人材獲得に向けて、企業は賃金を上げていくことも求められますが、それだけでなく、「効率よく働きたい」という求職者ニーズも考慮しながら、多様化する就労スタイルをうまく活用して適切に人員配置を行うことも一つの有効策です。個々の労働力を高めるための教育の充実も含め、人件費への投資を組織の生産性向上に繋げる仕組みを考える必要があると思います。

キャリアリサーチラボ 研究員 宮本祥太

調査概要

調査名 非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年5-6月)
調査期間 企業:2024年7月1日(月)~7月10日(水)
個人:2024年7月1日(月)~7月4日(木)
調査対象 <企業>
スクリーニング調査:従業員数10名以上の企業に所属している全国の経営者・役員または会社員で、自社の採用方針を把握している人
本調査対象:上記のうち、自社の非正規雇用労働者の採用方針について把握しており、直近2カ月以内に採用活動を行った又は新規採用を行った人
<個人>
スクリーニング調査:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)
本調査:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)のうち、直近2カ月以内に非正規雇用の仕事探しをした人
調査方法 外部パネルによるインターネット調査
<調査機関:自社調べ>
※本レポートは、・「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年5-6月)」
・「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(2024年5-6月)」2つの調査をもとに構成されている。
有効回答数 企業…スクリーニング調査:15,500名 本調査:887名
個人…スクリーニング調査:16,500名 本調査:1,576名

引用元調査

非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年5-6月)

  1. 採用活動の実施状況
  2. 新規採用の状況
  3. 過不足感
  4. 雇用調整状況
  5. 2023年度の最低賃金引き上げによる企業での賃上げ状況
  6. 2023年度の最低賃金引き上げを受けて、賃上げしたことによる影響
  7. 2024年度の最低賃金の引き上げに関する賛否
  8. 2024年度の最低賃金の引き上げが行われた場合の影響
  9. 年収の壁・支援強化パッケージの認知度・利用有無
  10. スポットワーカー採用状況とメリット・デメリット
  11. 非正規雇用者への入社後研修の期間・方法
  12. エリア別・企業規模別集計
  13. 業種・職種区分について

非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(2024年5-6月)

  1. 求職状況
  2. 今後の求職予定
  3. 新規就業状況
  4. スポットワーク
  5. 入社後研修
  6. お金と労働時間のバランス
  7. 職種区分について

レポート内目次

  1. 非正規雇用市場の需給バランス
  2. 非正規雇用市場の新規採用・新規就業の状況
  3. 非正規雇用市場の今後の予定
  4. 2024年度最低賃金引き上げ/スポットワーク/入社後研修

詳しくはPDFデータをご覧ください

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