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非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年9-10月)

  • 最低賃金 全国平均1,055円に関して「納得している」アルバイト就業者は4割にとどまるアルバイト就業者が「適正だと思う最低賃金」は平均1,297円
  • アルバイトを雇用している企業の66.9%が、最低賃金改定にともない賃上げを実施現在の最低賃金に対して、半数以上の企業が「負担に感じている」

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、全国の企業、個人それぞれを対象に実施した、「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年9-10月)」の結果を発表しました。

トピックス

  • 非正規雇用における企業の求人ニーズは個人の求職ニーズを11.8pt上回り、売り手市場が続く【図1】
  • 最低賃金 全国平均1,055円に関して「納得している」アルバイト就業者は4割にとどまる【図2】
  • アルバイト就業者が「適正だと思う最低賃金」は平均1,297円。一方で、現在「1,200円未満」の時給で働くアルバイトは6割を超える【図3】
  • アルバイトを雇用している企業の66.9%が、最低賃金改定にともない賃上げを実施。賃上げ実現のために行った施策は「正社員の削減」がトップ【図4、5】
  • 現在の最低賃金に対して、半数以上の企業が「負担に感じている」。業種別では[飲食・宿泊]・[小売]が6割を超える結果に【図6】

調査詳細

求人ニーズ・求職ニーズ

企業の求人ニーズ(2024年9-10月に非正規雇用者の採用活動を行った企業の割合)は27.8%(2024年7-8月比:横ばい、2023年9-10月比:2.9pt増)となり、個人の求職ニーズ(2024年9-10月に非正規雇用の求職活動を行った個人の割合)は16.0%(2024年7-8月比:0.6pt減、2023年9-10月比:2.7pt減)となった。

求人ニーズが求職ニーズを11.8pt上回っており、採用が困難な売り手市場が続いている様子がうかがえる。【図1】

【図1】企業の求人ニーズ/個人の求職ニーズ
【図1】企業の求人ニーズ/個人の求職ニーズ

【個人】2024年最低賃金改定

最低賃金改定に納得しているか

  • 最低賃金 全国平均1,055円に関して「納得している」アルバイト就業者は4割にとどまる

2024年11月時点のアルバイト就業者に、2024年10月に改訂された最低賃金の全国平均額1,055円の納得感を聞いたところ、「納得している(納得している+どちらかといえば、納得している)」は39.5%にとどまった。【図2】

【図2】24年10月の最低賃金改定に納得しているか
【図2】24年10月の最低賃金改定に納得しているか

適正だと思う最低賃金の全国平均時給と現在の時給

  • アルバイト就業者が「適正だと思う最低賃金」は平均1,297円
  • 一方で、現在「1,200円未満」の時給で働くアルバイトは6割超える

2024年11月時点のアルバイト就業者に、「適正だと思う最低賃金」を聞くと、「1,200円~1,299円(27.4%)」が最も多く、「1,200円以上」と回答した人の合計は71.5%にのぼった。

また、「適正だと思う最低賃金」の平均は1,297円だった。一方で、アルバイト就業者に「現在の時給」を聞いたところ、「1,000円~1,099円(31.3%)」が最も多く、「1,200円未満」と回答した人の合計は64.6%となり、適正だと思う時給と現在の時給でギャップがあった。【図3】

【図3】適正だと思う最低賃金の全国平均時給/現在の時給
【図3】適正だと思う最低賃金の全国平均時給/現在の時給

【企業】2024年最低賃金改定

最低賃金の引き上げを受けてパート・アルバイトの賃上げを行ったか

  • アルバイト雇用している企業の66.9%が、最低賃金改定にともない賃上げを実施
  • 賃上げ実現のために行った施策は「正社員の削減」がトップ

アルバイトを雇用している企業に、2024年10月の最低賃金の引き上げを受けて、自社の賃上げを行ったかを聞いたところ、「最低賃金を下回ったため、最低賃金額まで賃上げした(39.8%)」が最も高かった。

また、「最低賃金を下回ったため、最低賃金額を超えて賃上げした(13.0%)」と「元々最低賃金を上回っていたが、さらに賃上げした(14.1%)」を加えて「賃上げした(計)」は66.9%にのぼった。【図4】

【図4】24年10月の最低賃金の引き上げを受けてパート・アルバイトの賃上げを行ったか
【図4】24年10月の最低賃金の引き上げを受けてパート・アルバイトの賃上げを行ったか

賃上げを実現するために行った施策

最低賃金を下回ったため賃上げをした企業に、賃上げを実現するために行った施策を聞いたところ、「正社員の削減(19.1%)」が最も多く、正社員を含めた人員体制を調整しながら対応した企業が多いことがうかがえた。【図5】

【図5】24年10月の最低賃金改定をうけた賃上げを実現するために行った施策(複数回答)
【図5】24年10月の最低賃金改定をうけた賃上げを実現するために行った施策(複数回答)

最低賃金の負担感

  • 現在の最低賃金に対して、半数以上の企業が「負担に感じている」
  • 業種別では[飲食・宿泊]・[小売]が6割を超える結果に

アルバイトを雇用している企業に、24年11月時点の最低賃金の負担感を聞いたところ、「負担に感じている(負担に感じている+やや負担に感じている)」は53.3%となった。業種別に「負担に感じている」と答えた割合をみると、[飲食・宿泊]・[小売]が特に高く、6割を超えた。【図6】

【図6】現在(24年11月時点)の最低賃金の負担感
【図6】現在(24年11月時点)の最低賃金の負担感

調査担当者からのコメント

2024年10月の最低賃金改定における平均引き上げ額は過去最大の51円となり、最低賃金の全国加重平均額は1,055円になりました。かつてないペースで水準が上がっていますが、企業・アルバイト就業者双方にとって、課題がある状況が浮き彫りになりました。

アルバイト就業者が「適正だと思う最低賃金」と「現在の時給」にはギャップがみられます。売り手市場や現在議論されている「最低賃金1,500円への引き上げ」の流れも追い風に、アルバイトで働く人の賃上げに対するニーズや関心はますます高まると予想されます。

一方で、企業の視点でみると、最低賃金改定を受けて人件費増加の負担の大きさが感じられます。特に、アルバイトが多い[飲食・宿泊][小売]などの業界では影響が大きいようです。賃金改定は雇用の現場にも変化を与え、正社員を含めた人員体制の見直しや配置調整、労働時間の分配調整などの対応に企業が迫られている様子もうかがえます。

企業の持続的な賃上げに向けては「人への投資」を生産性の向上に繋げ、付加価値を高めるというサイクルが欠かせません。企業は賃上げの実行と合わせて、非正規人材のスキルアップやモチベーション向上の施策に対してアプローチすることも大切と考えます。

キャリアリサーチLab研究員 宮本祥太

調査概要

調査名 非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年9-10月)
調査期間 企業:2024年11月1日(金)~11月6日(水)
個人:2024年11月1日(金)~11月6日(水)
調査対象 <企業>
スクリーニング調査:従業員数10名以上の企業に所属している全国の経営者・役員または会社員で、自社の採用方針を把握している人
本調査対象:上記のうち、自社の非正規雇用労働者の採用方針について把握しており、直近2カ月以内に採用活動を行った又は新規採用を行った人
<個人>
スクリーニング調査:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)
本調査:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)のうち、直近2カ月以内に非正規雇用の仕事探しをした人
調査方法

外部パネルによるインターネット調査
<調査機関:自社調べ>
※本レポートは、「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年9-10月)」「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(2024年9-10月)」2つの調査をもとに構成されている。

有効回答数 企業…スクリーニング調査:15,000名 本調査:863名
個人…スクリーニング調査:15,940名 本調査:1,605名

引用元調査

非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年9-10月)

非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(2024年9-10月)

詳しくはPDFデータをご覧ください

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