未来の自分を考える重要性|変化の時代に求められる「キャリア・アダプタビリティ」

朝比奈あかり
著者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

近年、働き方やキャリアのあり方は大きく変化している。終身雇用や年功序列といった従来の前提が揺らぐなか、個人が主体的にキャリアを形成し、変化に適応していく力の重要性が高まっている。こうした背景のもとで注目されているのが「キャリア・アダプタビリティ」である。

キャリア・アダプタビリティとは、自身のキャリア形成を主体的に進め、環境変化に適応する能力を指す。この能力は、

  • 関心(Concern)
  • 統制(Control)
  • 好奇心(Curiosity)
  • 自信(Confidence)

という4つの資源(C)から構成されるとされている。

この中でも、出発点となるのが「関心(Concern)」である。どのような働き方をしたいのか、どのような生活を送りたいのか、といった問いに向き合うことが、キャリア形成の第一歩となる。

では、実際にどの程度の人が「未来の自分やキャリア」について関心を持ち、考えているのだろうか。今回、こうした「関心」の実態を明らかにするため、新たに調査を行い、その内容を分析した。調査対象者は日本全国の15~64歳23,792人となっている。詳しい調査概要については記事最下部に記載した。

未来の自分について考えているか

未来の自分のことを考えている割合

調査によると、未来の自分について「考えている」と回答した人は71.2%と、7割以上にのぼった。頻度についても「週に1回程度」が16.9%で最多となっており、「ほぼ毎日」とする人も16.1%存在するなど、未来について思いを巡らせる行為は決して特別なものではなく、日常的に行われている様子がうかがえる。【図1】

【図1】未来の自分のことを考えている割合/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図1】未来の自分のことを考えている割合/未来の自分について考える重要性に関する調査
設問文:あなたが未来についてどのくらいの頻度で考えているかを教えてください。
※「考えることはない」を除いた割合を「考えている割合」とした

未来の自分について考えるタイミング

未来の自分について考えるタイミングを聞くと、「寝る前にふと将来を考える」(60~64歳)や「夜寝る前などリラックスした状態で考える」(40代)といった声が挙がっており、日常の中のふとした瞬間に思い浮かべているケースが複数見られた。

また、「年始や誕生日などの節目」(20代)や「仕事の区切りとなるタイミング」(20代)、「勉強中やSNSを見ているとき」(15~19歳)、「家族との電話や体調不良時」(50代)など、そのきっかけは多様である様子がうかがえた。【図2】

【図2】未来の自分について考えるタイミング/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図2】未来の自分について考えるタイミング/未来の自分について考える重要性に関する調査

どのくらい先の未来について考えているか

次に、どのくらい先の未来について考えているかを聞くと、想定する期間は「1年から5年後」が最多となり、比較的近い将来を思い描く傾向がみられた。【図3】

【図3】どのくらい先の未来について考えているか/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図3】どのくらい先の未来について考えているか/未来の自分について考える重要性に関する調査
※回答者:未来の自分を考えている16,947人

考えている未来の自分の姿

未来の内容はポジティブ・ネガティブどちらが多いか

自分自身の未来の姿として考えている内容については、「ネガティブな内容が多い」(37.0%)とする割合が「ポジティブな内容が多い」(22.7%)を上回り、理想像だけでなく、不安や現実的な側面も含まれていることがうかがえる。【図4】

【図4】考えている未来の内容/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図4】考えている未来の内容/未来の自分について考える重要性に関する調査

具体的な「未来の自分の姿」

未来の自分の姿について自由回答で聞くと、「都会で一人暮らしをしながら憧れの職業に就きたい」(15~19歳)といった将来への期待がある一方で、「今とあまり変わらない環境で過ごしていると思う」(20代)や、「親の介護や仕事の両立を考えている」(20代)、「環境が変わる可能性も含めてさまざまなパターンを想像している」(30代)など、その内容は多様である。

どのくらい先を考えるかによっても思い描く未来は人それぞれであり、前向きなイメージだけでなく、不確実さや現実的な想定も含めて考えられている様子がうかがえる。【図5】

【図5】具体的な「未来の自分の姿」/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図5】具体的な「未来の自分の姿」/未来の自分について考える重要性に関する調査

未来の自分について考えることで生じた変化

未来の自分について考えることで生じた変化については、その内容や程度に幅がみられた。「今できることを見直すきっかけになった」(15~19歳)や「目標に向けて何をすべきか考え、日々の過ごし方が変わった」(50代)といった声がある一方で、「少しずつ良くなるかもしれないと考えるようになった」(20代)など変化としては小さいがポジティブな変化を感じるような声も見られた。
また、「変わろうと思いつつ先延ばしにしてしまい、変化が少ない」(20代)や、「ネガティブな変化があった」(30代)といった回答もみられ、必ずしも前向きな変化につながるとは限らない様子もうかがえる。

調査からは、未来の自分を考えるという小さな行動によって、日々の行動や今の自分の過ごし方を少しだけでも意識するきっかけになっている様子が見られた。【図6】

【図6】未来の自分について考えることで生じた変化/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図6】未来の自分について考えることで生じた変化/未来の自分について考える重要性に関する調査

人生への納得感との関係

さらに注目すべきは、「未来について考えている人」と「考えていない人」との間で、現在の人生に対する納得感に差がみられる点である。未来について考えている人では、「納得感がある」「どちらかといえば納得感がある」とする割合の合計が41.4%であったのに対し、考えていない人では14.3%にとどまった。
この結果から、未来について思いを巡らせることが、直接的に何かを変えるとは限らないものの、現在の自分に対する捉え方にも一定の違いがみられる可能性が示唆される。【図7】

【図7】未来の自分について考えているか × 人生への納得感/未来の自分について考える重要性に関する調査
【図7】未来の自分について考えているか × 人生への納得感/未来の自分について考える重要性に関する調査

最後に

こうした結果を踏まえると、キャリア・アダプタビリティの「関心」は、必ずしも明確な目標設定や行動変容を伴うものでなくてもよく、まずは「少し先の自分を考える」という小さなきっかけから始まるものといえるのではないだろうか。

変化の大きい時代において、キャリアを取り巻く環境は今後も不確実性を増していくと考えられる。だからこそ、自らのキャリアに関心を持ち、主体的に向き合う姿勢が一層重要になる。未来の自分について思いを巡らせることは、その第一歩として有効な行動のひとつといえるだろう。はじめから大きな目標を考えなくてもよいので、まずは自分のキャリアについて関心を持つことから始めてみてはいかがだろうか。

キャリアリサーチLab研究員 朝比奈 あかり

調査概要

内容 未来の自分について考える重要性に関する調査
調査期間

2026年5月27日(水)~ ​2026年5月28日(木)

調査対象

日本全国の15~64歳

調査方法 外部パネルによるインターネット調査
有効回答数

23,792人

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