産学連携PBLで挑むリアルな課題-神戸大学×マイナビPBLプロジェクト 

服部幸佑
著者
キャリアリサーチLab研究員
KOUSUKE HATTORI

はじめに

今回、マイナビは神戸大学大学院経営学研究科の服部泰宏教授とそのゼミ生とともに、マイナビと合同で産学連携型のPBL(Project-Based Learning)に取り組んだ。今回のプロジェクトは2025年4月にスタートし、約4か月間にわたって進行。学生たちはマイナビの担当者とディスカッションを重ねながら、働き方やキャリアに関する課題解決に挑戦した。 

本コラムでは、プロジェクトの概要と成果を振り返るとともに、服部教授へのインタビュー、さらに参加したゼミ生の声を紹介する。課題解決に向けた試行錯誤のプロセスが、学生にどのような成長をもたらしたのかを紹介していく。 

PBLとは

このパートでは、PBLとは何なのかを説明する。PBLは「Project Based Learning」または「Problem-Based Learning」の略で、課題解決型学習を意味する。文部科学省が推奨するアクティブラーニングの一つであり、従来の講義中心の受動的な学習とは異なり、学生が自ら課題を設定し、仮説を立て、調査や分析を行い、解決策をまとめて発表するという能動的な学習方法である。 

特徴的なのは、課題解決の結果よりもプロセスを重視する点だ。PBLでは、個人で完結する学習ではなく、グループで協働しながら課題に取り組む。他者との議論やフィードバックを通じて、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力といった社会的スキルも養われる。 

PBLが注目される理由

なぜ今PBLが必要とされるのか。その背景には、情報技術の進化や産業構造の変化、雇用形態の多様化がある。単純作業はAIやロボットに代替される一方で、人間には創造的な思考力や判断力が求められる時代になった。変化し続ける社会で生き抜くためには、主体的に学び、課題解決に取り組む力が不可欠であり、その力を育む手法としてPBLが注目されている。 

PBLから得られるもの

学生に「HPやナビサイト等の公式情報よりも口コミやSNS投稿などの非公式情報や匿名情報のほうが、よりリアルな情報が得られると思うもの」を聞いた。もっとも多かった回答は「社員の本音や不満点」で50.6%である。また「実際の残業時間や労働時間(42.7%)」、「給与や待遇面などの実態(39.8%)」、「職場の人間関係や雰囲気(37.3%)」などが続き、実態に近いリアルな情報を求めていることがわかる。

上位の回答を見てみると、学生にとって比較的ネガティブな観点での内容が多いことがわかる。企業は、あえて自社のネガティブな情報を発信するというのことには、非積極的であると思われる。学生はなぜネガティブな情報を求めるのだろうか。

なぜ匿名情報や非公式情報を見るのか

PBLによって得られるものは大きく三つある。 

  • 主体性
  • 成功体験 
  • 社会的能力 

第一に、主体性だ。自ら課題を設定し、解決策を考える過程で能動的に学ぶ力が身につく。第二に、成功体験が挙げられる。自分の考えを発表し、他者に認められる経験は自信と学習意欲を高める。第三に、社会的能力だ。チームでの協働を通じて、リーダーシップやコミュニケーション能力など、社会で必要とされるスキルを磨くことができる。 

PBLは正解のない問いに挑む学習であり、うまく活用すれば学生の主体性を育み、変化に対応する力を養う重要な教育手法である。 

神戸大学 服部教授のインタビュー 

今回のプロジェクトを企画・指導したのは、神戸大学経営学研究科の服部泰宏教授である。服部ゼミでは、企業と連携したPBLを積極的に取り入れ、学生に実践的な学びの場を提供してきた。今回の取り組みもその一環であり、産学連携によるPBLがどのような狙いを持ち、学生や企業にどのような価値をもたらすのかを探るため、服部教授に話を聞いた。 

マイナビ:今回のPBLの目的について改めて教えていただけますか?

服部泰宏(神戸大学教授):今回のマイナビさんとの取り組みで特に重要な点は、「女性活躍」や「成長」といった、すでに議論が進んでいるテーマをもう一段深めて考えてみるということです。例えば、女性の採用比率に課題を持っている会社はあると思いますが、一歩先取りした会社では何が起こっているのか?といったことを考えてみるというものです。単に今までしてきた議論をもう一回繰り返すのではなく、もう一歩話を進めてみるということができたのではないかと思います。 

マイナビ:確かに、議論されている課題ですが、学生も世間一般の回答は持っていても、さらにどうしていくべきかを考えるのは難しいですよね。先生としても、その「経緯」を重視されているのでしょうか?

服部泰宏(神戸大学教授):まさにそうです。「成長」についても成長したいなと多くの学生さんが思っていると思いますが、具体的にどう成長したいのかは考えたことがない人が多い。今回のPBLでは、「ちゃんと考えてこなかったことについてとことん考えてみましょう」といった言葉の意味を解像度高く考えることがポイントでした。 

マイナビ:ありがとうございます。産学連携についてもお話を伺えればと思います。産学連携のPBLを実施する大学も増えていますが、企業と連携するPBLで学生に身につけてほしいことは何でしょうか?

服部泰宏(神戸大学教授) まず、リアルな課題を理解することです。授業や講演で女性活躍やリスキリングなどワードとしてはたくさん聞いていると思いますが、企業が本当に悩んでいるのは単純に女性活躍を推進しましょうってことではなく、実際はなかなか進まない現実があるといったことがリアルな課題だと思っています。 

そういったリアルな課題を理解するということがまず大事なところだと思っています。もう一つが、挑戦していくにあたって自分たちが持っている武器が通用しない部分もあるということを実感してほしかったです。 

例えば、分析やインタビューで取ったデータを分析しただけでは当然企業の人を納得させることはできないと思います。その分析結果で何がわかるのか、またはもう一歩踏み込んで分析をしないと大人を納得させられないのだと気づくというような、そういったところを肌感覚で理解してほしいと考えていました。 

マイナビ:社会人になった時に、学生時代に積み重ねたものがどれくらい通用するか、あるいは何が足りないかを知ることが大事なのですね。

服部泰宏(神戸大学教授):そうです。教室の限られた空間では全く問題なかったものが、現実の課題になると難しい。そういう距離感みたいなものを理解してくれたら嬉しいなと思っていました。 

マイナビ:先生が思う、PBLの課題や、もっとこうしたいと思う点はありますか? 

服部泰宏(神戸大学教授):良くも悪くも大学のPBLは「借り物の空間」になりがちであるという点です。外から来たお客様をお迎えするというような、お互いがある種の遠慮がちな空間になってしまっているので、本気のフィードバックが出ないこともあります。

また、データなんかを渡す時にも現実のデータはすごくノイズがあって、すんなり分析ができるものではないことも多いと思いますが、PBLだとクリーニングしたデータで分析ができてしまうと思います。ただ現実はそうではないと思っています。理想は、どこから手をつけるべきかを自分で考え、課題を絞り込む経験が本当は大事なのだと思っています。 

マイナビ:学生にとって厳しい経験も必要だということですね? 

服部泰宏(神戸大学教授):そうです。本気でぶつかり合い、あらゆるものを動員しないと解けない課題に取り組むことが重要です。小手先の知識だけではなく、自分の経験やインプットをフル活用する必要があると思っています。 

マイナビ:貴重なお話ありがとうございました。

実際に参加した学生のインタビュー 

続いて、実際にPBLに参加した学生のインタビューも紹介する。

篠原さん(4年生 女性活躍に関する研究に参加)

今回のPBLに参加してみて、自分の力不足を痛感しました。ただ、女性活躍について考える良い機会になりましたし、研究では「良い問いを立てること」の大切さを学びました。

三年生の時は与えられたタスクをこなすだけでしたが、問いを立てて、それをどう検証していったらいいかみたいなところの思考のプロセスがわかるようになっていました。次、何をしたらいいのかっていうところがわかって見通しが立っていたというところが成長したポイントで、今回は頭を使って考えることができました。 

森下さん(3年生 女性活躍に関する研究に参加)

今回のプロジェクトは初めての経験だったので、難しかったというのが正直な感想です。調査の進め方をつかむのに必死でしたが、ミーティングに参加する回数が増えるにつれてやり方もわかってきて、先輩たちとも仲良くなれたので、研究が楽しくなりました。

参加して良かったと思っています。ただ、テーマ決めの時に緊張していて、主体的に意見を出せず、先輩に任せきりになってしまいました。実現性についても深く考えられていなかったのですが、研究の進め方やその中で考える力を身に着けることができたと思っています。

おわりに

今回のPBLは、学生が企業のリアルな課題に向き合い、主体的に考え抜く貴重な機会となった。正解のない問いに挑む中で、問いを立てる力や協働する力、そして現実との距離感を理解する力が養われたことは、今後のキャリア形成において大きな財産になるはずだ。

産学連携によるPBLは、単なる学習手法にとどまらず、学生と企業双方に新しい視点や気づきをもたらす。今回の取り組みで得られた知見や経験が、次世代の人材育成や企業の課題解決に生かされることを期待している。 

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