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キャリア教育を進めていくうえで必要になってくるPBLとは?

キャリアリサーチLab編集部
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PBL (Project Based Learning)とは?

文部科学省が推薦するアクティブラーニングの一つであるPBLは課題解決型学習を意味する。授業を聞き、インプットを中心とする従来の受動的な学習とは異なり、自ら課題を決め、仮説を立て、課題策を模索し、まとめ、発表する、といった能動的な学習方法である。

また、従来の学習方法は、ほとんど個人で完結する形だった。PBLはグループで課題を解決したり、他者に発表をし、フィードバックをもらったり、逆に自分が他者の話を聞いたりと、自分以外の人間とも関わる必要がある。課題の結果よりも、課題に向き合うプロセスを重視する学習方法だ。

なぜ今必要なのか?

情報技術の革新による社会環境の変化、経済・産業の構造の変化、雇用の多様化・流動化が進み、それらに対応していくためキャリア教育の重要性が叫ばれるようになってきた。

単純な作業はAIやロボットに代替され、これからはAIには不可能な創造的な思考力や判断力が求められると言われている。また、社会環境が変化していくことによって多種多様な人々と関わることも増えてくるだろう。多くの人と関われば、身の回りの環境も変わっていく。

これからも変化し続ける社会で生きていくには、変化に対応していく力を育てていくことが不可欠である。そして、変化に対応していく力を身につけていくために有効になってくるのがPBLだ。

得られるもの

変化に対応していく上でPBLは重要と書いたが、では、具体的には何を得られるのか。大きく3つに分けて説明していく。

主体性をもって学習する力
PBLは自らテーマや課題を設定するため、身の回りの疑問や課題を探すことになる。提示された問題ではなく自ら見つけた問題を解決するため、調査方法や学習方法を考えたり、自分の考えを発信したり、能動的に活動することになるので主体性が身につく。

成功体験
キャリア教育を進めていくうえで成功体験もまた、必要になってくる。自ら考え発表し、さらにその発表を他者に承認されるという成功体験は、学ぶ楽しさや自信になり、また学習しようという意欲になり、成長につながる。フィードバックをもらうだけではなく、逆に他者にフィードバックをすることで、課題に対する理解をより深めることもできる。

社会的な能力
メンバー同士でグループワークやディスカッションを進めていく中で、各々の特性が見えてくる。リーダーシップをとる者、順序立てが得意な者、新しいアイデアを生み出す者。自分の強みや特性を知ることは、能力を活かし活動していくうえで重要となる。学習した内容そのものだけではなく、どうしたら伝わりやすいか、メンバーとどのようにやり取りすれば良いかなどのコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力といった社会的な能力も身につけることができる。

PBLの流れ

PBLの進め方に決まりはないが、以下のような流れで進めることが多い

1.課題を見つける
何を課題にするか、自ら探して決める。すでに正解があるもの、現実にある社会問題、答えの出せない問題など、何を設定しても良い。

2.課題に対する問題点を探す
課題で起きている事象を理解し、問題点を探す。チームで話し合いながら理解を深め、論理的な解決方法の仮説を立てる。

3.調査をする
仮説を元に調査・学習方法を考える。アンケート調査やインタビュー、書籍やネットでのリサーチなど問題解決に必要な情報を調査し、学習を進めていく。

4.結果を解決策に反映させる
各々の調査結果や学習した情報を持ち寄りチームで共有する。情報を元に話し合い、解決策に反映させる。仮説との違いを比較する。

5.内容をまとめ、発表する
それまでの学習で得た情報やディスカッションをまとめ、発表する。問題解決やコミュニケーション、プレゼンテーションに対するフィードバックをもらう。

PBLのこれから

PBLの重要性や有用性は大いに注目されているが、まだまだ普及していないというのが現状だ。PBL学習には明確に正解がないことや、チーム内でも意欲のある者とそうでない者との間で取り組みに差が出てしまう場合もあり、評価をつけることが難しい。課題や問題を決定する際にも、ファシリテーターの力量に左右されてしまう。そもそもPBL自体があまり知られていないので、現場の人間も手探り状態であることが多い。

PBLによって得られる「主体性」は、企業の多くが学生に求めており、学生自身も身につけたいと思っている。「マイナビ2022年企業新卒採用調査」において企業に「選考時に重視する力」を聞いたところ、「主体性」が82%で最多だった。また、「マイナビ 2022年卒内定者意識調査」では、学生の「これから社会で働く上で身に付けていきたいと思う能力・力」は、「主体性:物事に進んで取り組む力」が42.0%で最多だった。

課題は多く残っているが、PBLはうまく活用すれば、能動的に学習し主体性を身につけることができる。変化に激しい現代において、生き残っていくための鍵として今後重要となってくるだろう。

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