中年期に陥りやすいミッドライフクライシスとは?原因と乗り越え方のヒント

キャリアリサーチLab編集部
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ミッドライフクライシス(中年の危機)とは

ミッドライフクライシスとは、「中年の危機」とも呼ばれ、中年期である40~50代にかけて、自身の人生に対する悩みや葛藤を感じる心理状態を指す。人生の折り返しに差し掛かり、それまでの人生やキャリアを振り返って、「これでよかったのか」など疑問や不安を抱えるようになる状態である。

「ミッドライフクライシス」を回避するには、この心理状態につながる要因などを適切に理解し、対策を講じて人生の再評価と自己実現を図ることが重要だ。本記事では、ミッドライフクライシスの原因や症状、具体的な対策について詳しく解説する。

ミッドライフクライシスの症状

ミッドライフクライシスの症状は、精神的、行動的な側面に現れる。これらの症状は個人によって異なるが、一般的には以下のようなものがある。

精神的症状

ミッドライフクライシスの代表的な症状としては、自己評価の低下や将来への不安、過去の選択に対する後悔などがあげられる。また、人生の意味や目的に対する疑問が生じることもあり、気力の低下やうつ病にもつながることがある。

参考:人生に対する満足度の調査データ

マイナビライフキャリア実態調査2024年版(ライフ編)によると、「自身の人生に満足しているか」という質問に対して「(あまり+ほとんど+全く)そう思わない」と回答した割合は、40代と50代が30%台となっており、40代が33.0%、50代が32.0%だった。【図1】

【図1】自身の人生に満足しているか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2024年版(ライフ編)を再集計
【図1】自身の人生に満足しているか/
マイナビ ライフキャリア実態調査 2024年版(ライフ編)を再集計

また、私生活についての回答を見ても、「(やや+)不安を感じている」人の割合は40代と50代が高く3割を超えている。【図2】

【図2】仕事以外の私生活についてどう感じているか/マイナビ ライフキャリア実態調査 2024年版(ライフ編)を再集計
【図2】仕事以外の私生活についてどう感じているか/
マイナビ ライフキャリア実態調査 2024年版(ライフ編)を再集計

この調査だけでは中年期になって不満足や不安を感じるようになったのか、この世代特有の特徴なのか定かではないが、40~50代がほかの世代に比べて人生全般に満足できていないことや私生活で不安を抱えていることがわかる。

また、40~50代で区分しているデータではないが、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」を見ても、2019年から2024年まで40~64歳の生活満足度がほかの年代に比べて低くなっており、特にコロナ禍を経てその傾向が強くなっていることがわかる。【図3】

【図3】生活満足度の推移/内閣府「満足度・生活の質に関する調査」を元にマイナビが作成
【図3】生活満足度の推移/内閣府「満足度・生活の質に関する調査」を元にマイナビが作成

行動的症状

また、上記のように人生に停滞感を抱くようになることで突発的な行動につながることもある。たとえば、急に仕事を辞めたり、充分な知識を得る前にリスクの大きい投資や起業を始めたりなど、人生に変化をもたらそうという焦燥感によって、衝動的な行動をとることがあるのだ。

ミッドライフクライシスの原因

ではなぜ、そのような心理状況に陥るのか。原因は多岐にわたるが、主に社会的要因、個人的要因、生物学的要因の3つに分類される。

社会的要因

社会的な要因としては、長年同じ企業に勤めている人が仕事に対するマンネリを感じたり、キャリアアップの限界を感じたりすることも影響する。20~30代からのさまざまな経験を経て仕事において新鮮さが薄れることや現状以上のキャリアを目指すことが現実的でないと感じるようになることで人生の停滞感や焦燥感につながるのだ。

個人的要因

個人的な自己評価や自己認識の変化も要因の一つだ。人生の中盤に差し掛かると、これまでの人生を振り返り、達成できなかった目標などが浮かび上がり、過去の選択への後悔や現状への疑問につながることがある。プライベートでは、家族や友人との関係性の変化も影響する。子供の独立や親の介護など、家庭内での役割が変わることで、自分の存在意義や役割について考え直すことが増えるのだ。

生物学的要因

まずは加齢による身体的変化があげられる。体力の低下や健康問題が増えることで、これまでのように活動的に過ごすことが難しくなり、精神的な不安やストレスが増加する。また、更年期に伴うホルモンの変化が精神的な不安定さを引き起こしたり、ほかの要因によって生まれる悩みや葛藤を増大させたりすることにもつながる。

女性の更年期による身体的な変化とキャリアにおける課題や、それを打開する施策については下記のコラムで語られている。こちらも参照してほしい。

ミッドライフクライシスを乗り越えるための具体的な方法

原因を見ると、年齢によって多くの人が迎える変化などが影響してミッドライフクライシスが起きていることがわかる。そのように誰にでも起こり得るミッドライフクライシスを乗り越えるための方法について、キャリアの再構築、新たな趣味や活動の開始、悩みの相談の点から詳しく見ていく。

ライフキャリアを再構築する

ミッドライフクライシスを経験する多くの人々は、これまでの人生やキャリアに対する疑問や不満を抱えている。このような場合、新たなライフプランやキャリアパスを模索することが有効だ。例えば、自己分析を行い、自分の強みや興味を再評価することで、新たな職業や趣味に挑戦することができる。また、スキルアップや資格取得を目指すことで、キャリアの幅を広げることも可能だ。

ミドルシニアのキャリア構築に関する参考コラム

人生100年時代といわれる現代で、人生やキャリアをどのように考えていくべきかについては、企業側の取り組みや課題もあわせて以下の連載で語られている。こちらも参照してほしい。

また、さまざまなキャリアの歩み方の例を知ることも自身のキャリアを考えるうえでの参考になるかもしれない。以下のシリーズでは40代から50代でセカンドキャリアを切り開く女性の実例を紹介している。こちらもヒントにしてほしい。

新たな趣味や活動をはじめる

ミッドライフクライシスを乗り越えるためには、新たな趣味や余暇活動を始めることも有効だ。これにより、日常生活に新たな刺激や楽しみを見出すことができる。例えば、スポーツやアート、ボランティア活動など、自分が興味を持つ分野に挑戦することで、自己実現を図ることができる。また、新たな趣味や活動を通じて、同じ興味を持つ人々との交流を深めることも可能だ。

サードプレイスを持つことの重要性

このような、趣味やボランティアなどといった、自宅や職場以外の居場所は「サードプレイス(第三の場所)」と呼ばれ、昨今注目を集めており、マイナビの調査でも、正社員の5人に1人はサードプレイスを持っていることが分かっている。【図4】

【図4】サードプレイスを持っているか/正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査
【図4】サードプレイスを持っているか/正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査

また、サードプレイスを持つ人の方が、自己効力感が高いことや、仕事と私生活の満足度が高いという結果が得られており、家族や職場以外のコミュニティを持っていることがプライベートにも、キャリアにもよい影響を与えている可能性があることがわかっている。【図5、6】

【図5】サードプレイスを持っているかどうか×自己効力感/正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査
【図5】サードプレイスを持っているかどうか×自己効力感/正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査
【図6】サードプレイスを持っているかどうか×仕事と私生活の満足度/正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査
【図6】サードプレイスを持っているかどうか×仕事と私生活の満足度/
正社員の「サードプレイス」と「働くモチベーション」に関する調査

さらに、サードプレイスを持つことについては定年後の働き方を考えるうえでも重要とされている。40~50代のころから社外のコミュニティに関わることで定年後に挑戦したいことやその準備を考えながらより主体的にキャリアを考えられることにつながるのだ。詳しくは下記のコラムを参照してほしい。

悩みを1人でえない

ミッドライフクライシスは、家族や友人との関係性が変わり、孤立感を感じることによってさらに悩みを深めてしまうという側面がある。このため、積極的にコミュニケーションを図ることで悩みを相談できる状態をつくることが重要だ。

たとえば、家族との時間を大切にし、共通の趣味や活動を通じて絆を深めることや友人との交流を再開、新しい人間関係を築くことも精神的な支えとなる。前述のサードプレイスの構築は、このような人との交流という意味でも、有効といえるだろう。さらに、専門家に相談することでより本質的なアドバイスを受けることも手段の一つとして考えておけるとよいだろう。

まとめ

今回は、これまでの人生に焦燥感を抱くようになるという「ミッドライフクライシス」について見てきた。「中年の危機」とも呼ばれるこの心理状態は、中年期に起こる社会的、生物学的な変化も影響しており、仕事や私生活で目標を達成してきて人生に充実感を持っていた人にも起こり得るだろう。

このコラムで紹介したポイントや記事を参考に、それまでの人生やキャリアの積み重ねを肯定しながら新しいことにも挑戦し、新たな自分を発見することが、ミッドライフクライシスを乗り越えてさらに充実した人生にブラッシュアップさせることにつながるのではないだろうか。

また、ミッドライフクライシスのように、人生について悩みを抱える時期としては「クオーターライフライフクライシス」も存在する。こちらは下記のコラムで解説しているため、参照してほしい。

沖本麻佑
登場人物
キャリアリサーチLab編集部
MAYU OKIMOTO

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