
SNS就活最前線!SNSを活用する学生の事情(第1章)
目次
はじめに
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の発展に伴い、就職活動の方法も大きく変化しており、大学生の間で情報収集におけるSNSの利用が広がりつつある。また、企業もSNSを活用した採用などで創意工夫が見られ、SNSから採用成功につなげるといった事例もある。
このようにSNSを活用した就職活動(SNS就活)は近年急速に進化を遂げ、学生と企業双方にとって日常的に活用するものになりつつある中、デジタルネイティブである今の就活生がどのようにしてSNS就活を行っているのか。本コラムでは昨今の学生のSNS就活について、そしてさまざまな情報が飛び交う世の中で学生が感じていることにも触れていく。
SNS就活とは?
SNS就活とは、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用した就職活動のことを指す。学生の就職活動ではさまざまな形で情報が発信されているSNSを活用することでさらに手軽に、効率よく、素早く、最新の情報を得ることができるようになった。また、企業発信のアカウント以外にも就活ノウハウを発信するアカウントや企業を紹介しているアカウントなどもよく見られ、より就職活動の可能性を広げることとなった。
デジタルネイティブと呼ばれる今の就活生
26年卒の学生が就活準備でSNSを使っている割合を見てみると、68.2%の学生が就職活動でSNSを活用していた。様々な場面でSNSを使いこなすことができているのは彼らがデジタルネイティブと呼ばれる世代だからである。
デジタルネイティブとは、幼少期からインターネットやデジタル技術に囲まれて育った世代を指す言葉である。この世代は、1990年代以降に生まれた人を指し、生まれたときからデジタル機器やインターネットに囲まれてきた世代であるためデジタル技術を自然に使いこなすことができる。【図1】

デジタルネイティブの特徴の一つは、情報収集とコミュニケーションの手段がデジタル化している点だ。インターネットは彼らの日常生活の一部であり、情報を即座に得ることができる。また、SNSやメッセージングアプリを通じたコミュニケーションは、彼らにとって欠かせないツールであり、リアルタイムでの情報交換や意見発信が可能である。
デジタルネイティブ世代とSNS就活は、現代の就職活動において切っても切れない関係にある。情報収集の場面では手段の一つとして活用するのが当たり前のものとして積極的に使っており、これを就職活動でも積極的に活用している。【図2】

従来の就職活動との違い
テクノロジーの発達によって就職活動就活はどのように変わったのか
インターネットやSNSの登場によって就職活動はどのように変わったのだろうか。大きく変わった点としては、コミュニケーションの方法や、情報収集のやり方が挙げられる。ここでは、インターネット登場前と登場後、そしてSNSの登場後の3つのフェーズで変化を追ってみる。
コミュニケーションの方法
インターネットの登場前は、就職活動におけるコミュニケーションは主に電話や郵送が中心だった。企業とのやり取りは手紙や電話で行われ、面接の案内や結果通知も郵送で行われていた。手紙は正式な書類としての役割を果たし、企業からの通知や応募者からの問い合わせに使用された。電話は、急ぎの連絡や詳細な質問に対応するための手段として利用されていた。
インターネットの登場により、就職活動におけるコミュニケーションはメールが主なコミュニケーション手段となり、企業とのやり取りが迅速かつ効率的になった。面接の案内や結果通知もメールで行われるようになり、求職者はリアルタイムで情報を受け取ることができるようになった。また、企業の公式ウェブサイトや求人情報サイトを通じて、企業との直接のやり取りが可能になった。これにより、求職者は企業の採用担当者と直接コミュニケーションを取ることができるようになった。
SNSの登場によって、企業とのコミュニケーションはダイレクトメッセージを通じて企業と直接やり取りすることが可能になった。SNSを活用することで、企業の採用担当者や現役社員と直接つながることができ、より具体的な質問や相談ができるようになった。また、SNS上での企業の投稿や社員のコメントを通じて、企業の雰囲気や文化をより深く理解することができるようになった。
情報収集の方法
インターネットの登場前は、情報収集は、就職情報誌や大学のキャリアセンターが主な情報収集の手段だった。就職情報誌は、企業の求人情報や業界の動向を掲載しており、求職者にとって貴重な情報源となっていた。
大学のキャリアセンターは、企業との連携を通じて求人情報を提供し、学生に対してキャリアカウンセリングや就職活動のサポートを行っていた。しかし、これらの情報源は限られており、情報を得るためには時間と労力がかかっていた。また、情報の更新頻度が低いため、最新の求人情報を得ることが難しいという課題もあった。
インターネットの登場により、企業の公式ウェブサイトや求人情報サイトから情報を得ることができるようになった。これにより、情報収集が容易になり、求職者はより多くの情報を短時間で収集できるようになった。企業の公式ウェブサイトでは、企業の概要や採用情報、社員の声など、詳細な情報が提供されており、求職者は企業の雰囲気や文化を理解することができるようになった。
SNSの登場により、企業の公式アカウントや社員の投稿、業界のニュースなどから情報を得ることができるようになった。これにより、求職者は最新の情報を迅速に収集できるようになり、就職活動の効率がさらに向上した。企業の公式アカウントでは、採用情報や企業の最新ニュース、イベント情報などがリアルタイムで発信されており、求職者は常に最新の情報を把握することができる。SNSの活用により、求職者はより多くの情報を効率的に収集できるようになった。
学生が活用しているSNSとは
日常生活で活用しているSNS
では学生が日常的に活用しているSNSにはどのようなものがあるのだろうか。マイナビが大学生に実施した調査結果を見てみると、活用している割合がもっとも高かったのはLINEで93.5%、次がX(旧Twitter)で74.5%、その次がInstagramで74.3%、YouTubeが68.6%、TikTokが28.3%と続いた。
LINEに関しては2017年卒の学生から90%以上を維持しており、日常的なコミュニケーションツールとしての便利さで支持されている。X(旧Twitter)やInstagramは、リアルタイムで情報を発信・拡散する能力に優れており、特にニュースやトレンド情報を素早くキャッチするために使われることが多く、最新情報を手に入れるための重要なツールとなっている。
また、近年ではInstagramのリールやYouTubeのYouTube Short、やTikTokで共有される短い動画形式が多くの人々に広がりつつあり、短時間で楽しめるコンテンツがより手軽に情報を得る手段として活用されている。【図3】

~ Z世代の就活生の“日常”と“将来”を徹底研究! ~ / n = 2,337
就職活動の情報収集において用いられているSNS
では、就職活動に向けた情報収集で使われているSNSはなんだろうか。マイナビが大学生に実施したアンケートによると、就活準備でもっとも活用されている割合が多かったのはLINE(公式アカウントなどのトーク機能を利用)が45.6%、次がX(旧Twitter)で36.4%、その次がInstagramで32.7%、YouTubeが26.0%となった。さらにLINE(オープンチャット)が16.7%、TikTokが12.9%と続いた。
LINE(公式アカウントなどのトーク機能を利用)が活用されている理由として、企業の公式アカウントをフォローすることで、最新の求人情報やイベント情報をリアルタイムで受け取ることができるからと考えられる。企業がLINEの公式アカウントを活用している場合、そのアカウントを友達登録するだけでアカウントからその企業の情報やイベント情報を受動的に得ることが可能になる。
X(旧Twitter)に関しては、企業の公式アカウントや業界に特化したアカウントをフォローすることで、最新の求人情報や企業の動向を即座にキャッチできる。また、就活生同士が体験談やアドバイスを共有することも多く、リアルタイムで多様な視点からの情報を得ることができることや、その企業の口コミを見ることができるのもX(旧Twitter)の強みであるといえる。
InstagramやYouTube、TikTokは主にビジュアルコンテンツを通じて情報を収集することが可能であり、企業の投稿やストーリーズ(またはShort形式の動画)を通じて、職場環境や企業文化を直感的に理解することができる。また、就職活動準備に役立つアドバイスを提供するコンテンツも豊富で、履歴書の書き方や面接対策など、具体的なスキルアップのための情報も得られる。【図4】

情報過多の中、学生が感じていること
学生が感じる難しさ
情報量が増えるにしたがって様々な情報を日々目にする中、学生が実際に就職活動準備の場面で企業情報を探す際にどのような難しさを感じているのか。企業情報を自分で探す際に、どのような難しさを感じるかを聞いたところ、72.4%が「情報が多すぎて整理できない」と回答した。
特にSNS上では、膨大な情報が日々更新されるため、必要な情報を効率的に収集し、整理することは難しいだろう。さまざまな情報がより手軽で便利に得られるようになった一方で、SNS就活ではその活用能力が問われている。
また、SNS上には公式情報だけでなく、個人の主観による意見や口コミも混在しているため、どの情報が信頼できるのかを見極めるのが難しい。特に活動を始めたばかりの学生にとって、聞きなれない就活用語や活動の基礎知識などが乏しい中で膨大な情報に触れることは大きな負担になると考えられる。【図5】

おわりに
SNS就活は、学生にとって非常に有益なツールである一方で、情報過多と情報の信憑性という懸念を持ち合わせている。オーストラリアでは2024年11月に16歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決し、未成年がSNSの情報に触れることを制限する形となった。
このようにインターネットやSNSでデマに触れないようにする規制をかけようとする動きが出ている。それだけ多量で、かつ信憑性が疑われる情報を目の当たりにする機会がインターネットやSNSの登場によって増えているので、情報の信頼性を自己判断し、効率的に情報を整理するためのスキルが求められる。
また、インターネットやSNSの登場によって対面で得られる情報の重要性も高まっており、ネット上で得られた情報を確かめる手段として、リアルな活動の場と合わせて活用することで信憑性を担保することも可能になるであろう。ネットと対面を使い分けることによってよりよい情報を取得することが可能になるのではないだろうか。