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成長に重要なコンフォートゾーンの抜け出し方

キャリアリサーチLab編集部
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自己成長や部下の育成などにおいて、コンフォートゾーンという言葉を耳にすることが増えている。コンフォートゾーンとは、その人が安心してストレスなく過ごせる心理的な領域のことを指す。 
 
一見すると良いものに思われるが、個人が成長し続けるためには、このコンフォートゾーンを抜け出すことが重要とされる。自身のキャリアアップや部下の育成においても、理解しておきたい概念だ。 
 
この記事では、コンフォートゾーンを抜け出すことの重要性とその方法を含めて詳しく解説していく。

コンフォートゾーンとは 

コンフォートゾーンとは、その人が安心して過ごせる心理的な領域を指す。このゾーン内では、ストレスを感じることなく、安定した状態で過ごすことができる。具体的には、日常的に行って慣れている仕事や活動、慣れ親しんだ環境、気心が知れた人間関係などが含まれる。 

コンフォートゾーンで起きるものごとは自身のスキルや経験で対処できることがほとんどであるため、刺激が少なくリラックスして過ごせる反面、自身の成長やスキルアップにはつながりづらい状態となる。

コンフォートゾーンのほかにも、成長に関わる心理的な領域として「ラーニングゾーン」と「パニックゾーン」が存在する。続いてはこの2つの領域について関係性とともに見ていく。 

ラーニングゾーン・パニックゾーンとの関係 

ラーニングゾーン 

コンフォートゾーンの外側にはラーニングゾーンが存在する。ラーニングゾーンとは、自分の能力や経験値よりも少しハイレベルなことを求められるゾーンで、新しいスキルや知識を習得するための挑戦が行われる領域である。このゾーンでは、不安やストレスがかかるが、適度な緊張感によって集中力が高まることもある。 
 
具体的な場面としては、新しいプロジェクトに参加することや、新しい技術を学ぶことが挙げられる。この経験によって成長を遂げ、スキルの幅を広げることなどにつながり、新しいスキルを自然に使えるようになると、その居場所がコンフォートゾーンとなり、コンフォートゾーンが広がっていくことにつながる。 

パニックゾーン 

ラーニングゾーンのさらに外側にはパニックゾーンが存在する。パニックゾーンとは、自分の思考や能力が追い付かず、過度なストレスや不安が生じる領域である。 

このゾーンでは、プレッシャーが大きすぎて、逆にパフォーマンスが低下し、学習が阻害されるほか、新しいことへのチャレンジ自体を諦めてしまうことがある。具体的な場面としては、あまりにも難しい課題に取り組むことや、慣れない環境や過度なプレッシャーの中で仕事をすることが挙げられる。 

3つの心理領域/マイナビが作成
3つの心理領域/マイナビが作成

コンフォートゾーンを抜け出すメリット 

コンフォートゾーンは一見、個人にとって居心地がよくリラックスできるなど良いものにも見え、この領域で業務や活動していくことを望んでしまいそうだが、意識してラーニングゾーンに身を置くことが自己成長のうえでは重要とされる。次に、コンフォートゾーンを抜け出すことによるメリットについて解説していく。 

自己成長の促進 

コンフォートゾーンからラーニングゾーンに移るメリットではまず、自己成長が挙げられる。新しいスキルや知識を習得することで、自分の能力を高めることができる。たとえば、新しいプロジェクトに参加することなどにより、これまでに経験したことのない課題に取り組むことができ、結果としてスキルの幅が広がる。

パフォーマンスの向上 

適度な緊張感が集中力を高め、パフォーマンスを向上させることもある。コンフォートゾーンでは安心できる代わりに退屈も感じやすいのに対して、ラーニングゾーンでは、不安やストレスがかかるが、それによって逆に集中力が高まる。そのため生産性があがったり、いつも以上の力を発揮したりしてイノベーションを生み出すことがあるのだ。 

適応力の向上 

ラーニングゾーンで新しい環境や状況を体験することによって、変化に対する適応力が養われるというメリットもある。進学や転勤などで環境が変わったり、新しい活動に挑戦したりする経験を重ねることで、変化への抵抗が少なくなり、新しい環境やできごとに柔軟に適応できるようになる。 変化の大きいVUCA時代において重要視されている、新しい状況に対応できる力が高まることにつながるのだ。

コンフォートゾーンに留まるデメリット 

反対に、コンフォートゾーンに留まり続けた場合には、成長の機会を逃すというデメリットがある。新しい挑戦や経験を避けることで、スキルや知識の向上が妨げられてしまうのだ。 

また、創造性や問題解決能力が低下するという問題もある。柔軟な思考や新しいアイデアは新しい状況や課題に直面する体験によって生まれることが多いが、これを避けることで、同じ方法や考え方に固執してしまうからだ。 

コンフォートゾーンを抜け出すためのポイント 

では、そのように成長において重要な「コンフォートゾーンからの脱出」には、どのように取り組めば良いのか。続いてはコンフォートゾーンを抜け出すために実施すると良いことを紹介していく。自分自身の成長だけでなく、管理職の場合、部下のステップアップなどを考えるうえでも参考にしてほしい。 

自己認識の向上 

コンフォートゾーンを抜け出すためには、まず自分自身をよく理解することが必要だ。自分の強みや弱み、興味や価値観を把握することで、どのような挑戦が自分にとって有益かを見極めることができる。

自己認識を高めるためには、自己分析やフィードバックを活用することが有効である。たとえば、自己評価シートを使って自分のスキルや経験を振り返ったり、同僚や上司からのフィードバックを積極的に受け入れたりすることが挙げられる。 

部下の育成などにおいて、「自己認識を促す」立場から知っておきたいフィードバックの伝え方については、下記のコラムでも紹介しているため、参考にしてほしい。 

キャリア目標の設定と計画 

自己認識が向上したあとは、具体的なキャリア目標を設定してそれに向けた計画を立てることが重要である。目標を設定することで、何を達成したいのかが明確になり、行動の指針となる。 

目標は具体的で現実的なものであるべきであり、達成可能な期限を設けることが望ましい。たとえば、「1年以内に新しいスキルを習得する」や「次のプロジェクトでリーダーの役割を担当する」といった具体的な目標を設定することが考えられる。 ただ、この際、自身の能力に対して高すぎる目標を立てるとパニックゾーンに入ってしまう可能性もあるため、自己分析に基づく適切な目標設定をすることも重要だ。

目標設定については、下記の記事で、マネジメントの視点で「部下の主体性を促す目標設定」という観点からポイントを紹介しているので、こちらも参考にしてほしい。 

小さな挑戦から始める 

大きな変化を一度に求めるのではなく、小さな挑戦から始めることが効果的である。小さな成功体験を積み重ねることで、自信を持ち、次のステップに進むことができる。また、このような経験を積み重ねることでラーニングゾーンが自身にとって快適になっていく。 

具体的な行動としては、新しいプロジェクトに参加する、異なる部門の業務を手伝う、新しいスキルを学ぶためのオンラインコースを受講するなど、小さな挑戦を積極的に取り入れることが重要である。 

前向きに継続する 

設定した目標を達成している自分をイメージして、前向きに取り組むことで新しいチャレンジへの不安や恐怖が薄れて行動しやすくなる。また、新しいことへの挑戦は失敗もつきものだが、そこで挑戦を断念してしまうと失敗体験として記憶に残ってしまい、次の挑戦がしづらくなってしまう。ステップアップしている自分を想像しながら、ポジティブにコツコツと取り組んでいくことが重要なのだ。 

周囲の支援やサポートシステムの活用 

最後に、周囲の支援やサポートシステムを活用することが重要だ。家族や友人、同僚、メンターなど、周囲の人々からのサポートを受けることで、挑戦を乗り越える力を得ることができる。

たとえば、メンターからのアドバイスを受けたり、同僚と情報交換を行ったりすることで、現在の状況をよりよくするための新しい視点やアイデアを得ることができるだろう。 

まとめ 

コンフォートゾーンを抜け出すことは、自己成長のために不可欠である。新しいスキルや知識を習得し、変化に対応する力を養うことで、スキルアップにつながったり、パフォーマンスが向上したりすることが期待できる。また、そのような成長がキャリアアップやその後の選択肢の幅を広げることにもつながるだろう。 

前述のように、コンフォートゾーンは自身にとって居心地の良い環境や状態であるため、進学や転勤などの外部要因のきっかけがなかった場合、その快適な状態に居続けてしまう。今回紹介したようなポイントを踏まえながら、意識的にコンフォートゾーンから一歩踏み出す機会をつくっていくことが重要だ。

このような、「安心できる場所」を出て自身を成長させることについて、キャリアの観点からは以下の記事で「自分のホームを広げ、キャリアの幅を広げていく」上でのポイントについて解説している。そちらもあわせて参考にしてほしい。

また、自身を成長・変化させつづけることで、自分の意志で変幻自在にキャリアを築いていくという考え方の「プロティアンキャリア」については以下の記事で解説している。こちらも参照してほしい。

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