マイナビ キャリアリサーチLab

変化し続ける自分をつくる「プロティアンキャリア」とは?

キャリアリサーチLab編集部
著者
キャリアリサーチLab編集部

人生100年時代といわれている現代で「定年退職したら老後は年金で隠居生活する」という様式は消えつつある。マイナビが行った「ライフキャリア実態調査」では一人平均1.9回退職経験があり、1度も退職経験のない人はわずか21.2%。人生におけるキャリアの転機は多くの人に訪れる。

これまでの退職回数/マイナビライフキャリア実態調査2022年版
これまでの退職回数/マイナビライフキャリア実態調査2022年版

また、仮に退職経験がなくても、終身雇用制度の崩壊により、生涯で一つの仕事だけを続ける働き方は難しくなってきている今、定年後のキャリアを考える必要もあるだろう。新卒から定年まで勤めた会社を退職した後に、いきなり他の会社に就職するだとか、フリーランスとして仕事をするだとか、急に新しいことを始めるのは難しい。ある程度の準備が必要だ。

目まぐるしく変化していく社会で、私たちも都度変化を求められる。これからは目の前のことだけではなく、10年先、20年先も考えていかなくてはならない。
そんな未来のことを考えていくうえで必要となるのがプロティアンキャリアだ。本コラムではプロティアンキャリアについて解説し、現代のキャリア構築について考察していく。

プロティアンキャリアとは

社会や経済の変化に合わせて、自分の意志で変幻自在に形成するキャリアのことである。1976年にダグラス・Tホール教授によって提唱された理論で、プロティアンとはギリシア神話に登場するプロテウス神に由来する。プロテウスは獅子や大蛇、水や樹木など、環境に応じて、自らの姿を思うままに変えることのできる変幻自在の神である。そこから転じて、プロティアンは「変化し続ける」「変幻自在な」という意味として使用される。

プロティアンキャリアでは、組織のなかでの地位や給与ではなく、自己成長や仕事の充実感を指標にして自分のキャリアを考えていく。理想のキャリアを歩むためには、まず自分の状況を整理し、理想のキャリアに向けて必要なものを洗い出す。必要なスキルを身につけるために勉強したり、今までとは違った働き方をしたりする必要があるかもしれない。さまざまな状況に対応し、変化しながら新しい経験を蓄積していく。そして、経験を蓄積することで、また新たな変化に対応できるようになり、自己実現や働く上での満足感につながってくるのだ。

従来のキャリア観との違い

プロティアンキャリアは、個人が組織に属するのではなく、組織は個人がキャリアを形成する場として活用する、という考え方である。

従来の考え方は、会社や組織の中でどう昇進していくかが重要視された。対してプロティアンキャリアは、個人が生きていくために必要なものは何かを重視する。キャリアの成否を決めるのは自分であり、組織は自分を固めるための土台にすぎない。

これからは、一つの会社だけで長く勤め上げていくのは珍しくなってくるだろう。転職を前提としたキャリアも考えていかなくてはならない。そのためには、社内だけではなく社外でも通用する技術を身につける必要がある。
プロティアンキャリアにおいて、優先すべきは自分の目標である。組織の中でどのようにキャリアを形成するのかを考えるのではなく、自己実現のために何をするかが重要になってくる。

プロティアンキャリアを形成するには

では、プロティアンキャリアを形成するにはどうしたら良いか。一般的なキャリア論は、今まで自分がしてきたことをベースに考えるが、プロティアンキャリアはそれに加えて「これからの未来をどうしたいか」を含めて考える。

① 自分の現在の状況、現在地の確認
② 過去に自分がしてきたことの棚卸
③ 将来どうなりたいかを考える

この3つを確認し、ある程度未来の方向性を確保することで、将来のために今自分が何をすべきが見えてくる。従来のキャリア形成は、組織がやるべきことの優先順位を決めていた。自分でやるべきことを決め、将来のために経験を蓄積していくことでプロティアンキャリアは形成される。

変化し続ける自分を作る

人間は年をとるごとに自分の生き方や働き方が確立されていく一方で、行動や考え方を変えることが難しくなっていく。しかし、変化がないということは経験が蓄積されないということだ。変化しにくいマインドのままでは、しなやかに自分のキャリアを作り上げようとしても難しいだろう。

では、どうすれば良いか。変化し続ける自分を作るには、日ごろから小さな変化をし続けることが必要だ。はじめてのことにチャレンジしてみたり、普段関わらないタイプの人と関わってみたりするのも良いだろう。その積み重ねによって変化しやすい自分を作ることができる。終身雇用が約束されず、定年後のキャリアも考慮しなければならない現代において、より良い人生を歩むには、プロティアンキャリアを形成し、何度も変化し続ける自分をつくることが重要となるのだ。

関連記事

キャリア自律

コラム

人生100年時代。なぜ、いま キャリア自律が求められるのか?

コラム

自律分散型の働き方とジョブ・クラフティング
– 武蔵大学・森永雄太氏

転職活動における行動特性調査 2022年版

調査・データ

転職活動における行動特性調査 2022年版