2027年卒新卒採用・就職活動の基礎とトレンド~AI普及で変わった、学生・企業の価値観~

井出 翔子
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
SHOKO IDE

3月1日は、政府の就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議によって定められた就職・採用活動日程における広報活動開始日、いわゆる就職活動の解禁日である。

このタイミングに合わせて、マイナビキャリアリサーチラボでは、2027年卒学生の動向や企業の採用活動の展望、また近年注目されるAIの普及による雇用環境の変化について講演を実施した。本コラムはその内容を紹介するものである。

2027年卒採用の企業動向

前年(2026年卒)の採用結果と今年(2027年卒)の採用予定

2026年卒の採用充足率(内定者数/募集人数)をみると、69.7%と4年連続で減少し、同時期の調査と比較して過去最低の結果となった。【図1】

【図1】 「採用充足率」年次推移/2026年卒企業新卒内定状況調査
【図1】 「採用充足率」年次推移/マイナビ 2026年卒 企業新卒内定状況調査

こうした実績を踏まえ、2027年卒採用の予定数としては、「前年並み」とする企業が最多で、63.0%となっている。【図2】

【図2】採用予定数(経年比較)/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図2】採用予定数(経年比較)/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

2027年卒の採用環境の見通しを5段階で聞いた結果では、7割を超える企業が厳しくなる(「非常に厳しくなる」+「厳しくなる」)と回答しており、採用しやすくなると考える企業はほとんどない結果だった。【図3】

【図3】採用環境の見通し/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図3】採用環境の見通し/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査


こうした結果から、2027年卒の採用市場が、昨年に引き続き売り手市場となることが予想される。

売り手市場での企業の取り組み

厳しい採用環境の中、企業の活発な動向が見てとれる。

インターンシップ・仕事体験の実施率は2027年卒11月調査時点で、約7割の企業が実施した・もしくは実施予定との回答しており、この結果は年々右肩上がりに増加している。【図4】

【図4】インターンシップ・仕事体験実施率/マイナビ 2027年卒 インターンシップ・キャリア形成支援活動に関する企業調査
【図4】インターンシップ・仕事体験実施率/マイナビ 2027年卒 インターンシップ・キャリア形成支援活動に関する企業調査

エリア別にみると、特に北海道(87.5%)、北陸(82.2%)、甲信越(80.8%)などが高く、8割を超える状況だ。【図5】

【図5】インターンシップ・仕事体験実施率(エリア別)/マイナビ 2027年卒 インターンシップ・キャリア形成支援活動に関する企業調査
【図5】インターンシップ・仕事体験実施率(エリア別)/マイナビ 2027年卒 インターンシップ・キャリア形成支援活動に関する企業調査

また近年注目される初任給の引き上げについても多くの企業が積極的だ。引き上げ予定と回答した割合が、年々増加し、2027年卒では合計で55.4%だった。うち、最多回答は「現時点ですでに引き上げており、さらに引き上げを行う予定(48.7%)」で、引き上げが定着してきている様子が見受けられる。【図6】

【図6】初任給の引き上げについて/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図6】初任給の引き上げについて/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

このように、厳しい採用環境のなか、企業がインターンシップ等の実施や、初任給引き上げなど、様々な工夫を凝らしている状況となっている。

2027年卒の学生動向

インターンシップ等の取り組み状況

2027年卒学生の活動状況をみると、インターンシップ等のキャリア形成プログラムの参加率は85.6%と過去最高水準で、近年は横ばいの状況が続いている。また平均の参加社数は、インターンシップ(5日間以上)0.8社、仕事体験3.4社、オープン・カンパニー&キャリア教育5.7社だった。【図7】

【図7】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率・平均参加社数/マイナビ 2027年卒 大学生広報活動開始前調査
【図7】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率・平均参加社数/マイナビ 2027年卒 大学生広報活動開始前調査

エリア別にみると、参加率が高いのは東北エリア(91.9%)、インターンシップ(5日間以上)の平均参加社数が多いのは東北エリア(1.5社)、関東エリア(1.0社)だった。【図8】

【図8】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率・平均参加社数(エリア別)/マイナビ 2027年卒 大学生広報活動開始前調査
【図8】インターンシップ等のキャリア形成プログラム参加率・平均参加社数(エリア別)/マイナビ 2027年卒 大学生広報活動開始前調査

売り手市場でもインターンシップ等に積極的に取り組む背景

企業の採用意欲が高く、学生優位とされる売り手市場にあっても、インターンシップ等に対する学生の取り組みが低下している様子は見られない。その背景には、近年の学生の安定志向が背景にあると考えられる。

企業選択のポイントを経年で聞いた結果を見ると、2019年卒ごろまでは「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」が最多だっが、年々減少している。その一方で「安定している会社」の回答が右肩上がりに増加し、学生の安定志向が高まっていることがわかる。【図9】

【図9】企業選択のポイント(上位3項目)/マイナビ 2026年卒 大学生就職意識調査
【図9】企業選択のポイント(上位3項目)/マイナビ 2026年卒 大学生就職意識調査

今の学生の安定志向の高さには、時代背景が影響している可能性が考えられる。2027年卒学生の多くがコロナ禍で大学受験を経験し、その後は紛争や円安・物価高といった社会背景の中で学生生活を過ごしてきた。この先どうなるかわからないという不安の中で、安定を求め、失敗したくないと考えるようになったのではないだろうか。【図10】

【図10】2027年卒学生が生まれてからこれまでの主な社会事象/マイナビ作成
【図10】2027年卒学生が生まれてからこれまでの主な社会事象/マイナビ作成

以下のコラムでは、こうした近年の学生の安定志向や失敗を恐れる特徴を「ネタバレ就活」として解説しているので、参考にしてほしい。

AIの普及による学生の不安

昨年2025年は、AIの普及により、アメリカのテック企業などを中心に新卒採用の縮小や停止という話題が多数報道された。将来に対する不安感が強く、安定志向の日本の学生に、さらに不安を感じさせるようなニュースだったのではないだろうか。

将来の働く環境への不安

AIの普及により、将来の働く環境について不安になったことはあるかを聞いた結果、不安になったことがあると回答した学生は約8割だった。具体的な不安の内容として多かったのは、「やりたい仕事がなくなってしまうのではないか(41.8%)」「企業の採用数が減っていくのではないか(38.3%)」などとなった。【図11】

【図11】AIの普及により、将来の働く環境について不安になったことはあるか/マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査1月<インターンシップ・キャリア形成活動>
【図11】AIの普及により、将来の働く環境について不安になったことはあるか/マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査1月<インターンシップ・キャリア形成活動>

AIの普及による就職観への影響

AI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観に影響を受けたかについて聞くと、影響を受けた割合が3年で2倍以上になった。

【図12】AI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観に影響を受けたか/マイナビ 2024年卒 大学生活動実態調査(5月)・マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査12月<インターンシップ・キャリア形成活動>
【図12】AI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観に影響を受けたか/マイナビ 2024年卒 大学生活動実態調査(5月)・マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査12月<インターンシップ・キャリア形成活動>

AIの普及による就職観への影響の理由を聞くと、多い回答のカテゴリは主に4つで「仕事がなくなる不安・回避」「成長領域への志向」「企業のAI活用・将来性」「非代替性の重視」だった。【表1】

【表1】AI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観に影響を受けた理由(自由回答)/マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査12月<インターンシップ・キャリア形成活動>
【表1】AI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観に影響を受けた理由(自由回答)/マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査12月<インターンシップ・キャリア形成活動>

学生の就職観や企業選びにおける考え方に、AIの普及が影響している様子がみてとれる。

日本の新卒採用の変化と今後

学生がAIの普及による将来の仕事や働き方を危惧している中、企業の動向としてはどうだろうか。

AIの普及による新卒採用数の変化

企業調査にて「AIの浸透による新卒採用数の変化」があるかを聞いた結果、9割が「変わらない」という回答となった。「減る」という回答も4.0%あったが、「増える」という回答の方が5.7%と多い。【図13】

【図13】AIの浸透による新卒採用数の変化/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図13】AIの浸透による新卒採用数の変化/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

企業の採用予定数が減少することを不安視している学生にとっては朗報と言えそうだ。

AIの浸透で変わる業務

しかしながら、仕事内容には変化がありそうだ。新入社員に任せている業務とAIの代替可否について、

  • 新入社員に任せている業務
  • AIに代替可能な業務
  • AIに代替不可能な業務

をそれぞれ見ていきたい。

以下の図は<新入社員に任せている業務>の降順の結果である。回答が多かったのは「データ入力」「集計業務」「定型的な資料作成」などだった。【図14】

【図15】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せている業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図14】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せている業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

続いて、<新入社員に任せている業務のうち、AIで代替可能な業務>について聞いた結果を見ると、もっとも多かったのは「議事録作成」で、現在新入社員にこの業務を任せている企業の約9割が代替可能と回答した。その他、「データ入力」「集計業務」「定型的な資料作成」などは現在新入社員に任せている業務としても上位で、かつAIで代替可能という割合も8割を超えている。これらが今後新入社員の業務として無くなっていく可能性が高いと考えられそうだ。【図15】

【図15】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せていて、AIで代替可能な業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図15】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せていて、AIで代替可能な業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

最後に、<新入社員に任せている業務のうち、AIに代替不可能な業務>を聞いた結果をみてみたい。もっとも多かったのは 「トラブル発生時の対応やリカバリー」だった。その他、「顧客への提案」「顧客要望のヒアリング」などの顧客対応業務が多くあがり、こうしたコミュニケーションが求められる業務はAIが浸透してもなくなりづらい業務だと言えるだろう。【図16】

【図16】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せていて、AIで代替できない業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図16】新入社員に任せている業務とAIの代替可否<新入社員に任せていて、AIで代替できない業務>/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

AI時代に新卒採用を行う価値

9割の企業が新卒採用数は変わらないとしている中、AI時代に新卒採用を行う理由を聞いた。回答として多かったのは「若手人材の長期育成を重視しているため(65.1%)」「将来の幹部候補を確保するため(48.8%)」などで、加えて上場企業では「新しい発想や柔軟な思考を取り入れたいから」「組織文化や価値観の継承が必要だから」も上位にあがった。また、「AI時代に積極的に新卒採用を行う理由はない」とする回答は1.5%ときわめて少ない結果だ。【図17】

【図17】AI時代に新卒採用を行う理由/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図17】AI時代に新卒採用を行う理由/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

さらに、AI時代において、新入社員に求める(伸ばしてほしい)スキル・能力については、1位「コミュニケーション力(50.0%)」、2位「問題解決力(46.4%)」という結果だった。AIに代替できない業務として、顧客対応やトラブル対応などが上がっていたことからも、こうした能力が期待されているとみられる。【図18】

【図18】AI時代において、新入社員に求める(伸ばしてほしい)スキル・能力/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査
【図18】AI時代において、新入社員に求める(伸ばしてほしい)スキル・能力/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査

AI活用の方針や新卒採用への影響に関する説明

AI活用の方針や、新卒採用への影響について、企業が現在している説明と学生が求める説明とを比較した。学生が求める説明を見ると、1位は「AI活用の現状と将来像」で45.9%だったが、企業の回答結果を見ると、これについて説明する企業は14.3%と、31.6ptの差がある。また「現状、特に知りたいと思うものはない」とした学生は12.6%と、残りの約8割は何かしらの説明を求めていることがわかるが、企業の回答として「現状、特に意識して伝えているものはない」は45.0%と、半数近くの企業は意識して説明していないという実態が明らかになった。【図19】

【図19】AI活用の方針や、新卒採用への影響について、企業が現在している説明・学生が求める説明/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査・マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査1月<インターンシップ・キャリア形成活動>
【図19】AI活用の方針や、新卒採用への影響について、企業が現在している説明・学生が求める説明/マイナビ 2027年卒 企業新卒採用予定調査・マイナビ 2027年卒 キャリア意向調査1月<インターンシップ・キャリア形成活動>

まとめ

学生優位の売り手市場が続く状況の一方で、安定志向で、不安感の強い今の学生にとって、AIの普及による採用・雇用環境の変化はさらに不安を強める要素だろう。ただし幸いなことに、現状では、AIが普及しても新卒採用数は変わらないとする企業9割と、日本の新卒作用縮小の兆しは見られない結果だ。

しかしながらAI時代において、日本の雇用市場に変化がないかというとそうではない。現在新入社員に任される業務のうち、事務的な業務はなくなる可能性が高い。顧客対応などは今後AIが普及してもなくならない業務であり、新入社員に対して、より一層「コミュニケーション力」への期待が一層高まっていくとみられる。

こうしたAIの影響や新卒採用の変化について、学生は企業の説明を求めている。学生の不安に寄り添った丁寧な説明をしていくことが、企業に求められているのではないだろうか。

マイナビキャリアリサーチLab主任研究員 井出 翔子

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